ABEJA 【東証グロース:5574】「情報・通信業」 へ投稿
企業概要
当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、「ゆたかな世界を、実装する」を企業理念に掲げ、テクノロジーの産業界への社会実装を支援することにより、産業横断的なイノベーションを創出し、社会に貢献し続けることを目指しております。どのような素晴らしいテクノロジーであっても、それが社会に実装されていない場合は価値を見出すことはできない、という背景に基づいております。
そのため、当社は「テクノプレナーシップ」(進化するテクノロジーを用いて(Technology)、どのような社会を実現していくかを問い続ける姿勢(Liberal Arts)、そしてこの円環を推進する力(Entrepreneurship)の造語)を行動精神とし、「テクノロジーの力で産業構造を変革する」というミッション、「イノベーションで世界を変える」というビジョンのもと、事業活動に取組んでおり、これらの活動が企業価値の最大化につながると考えております。
また、当社は、「テクノプレナーシップ」の行動精神に基づき、SDGs(持続可能な開発目標)に取組む企業の目標達成を支援しており、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点においても重要なカルチャーを醸成していると考えております。具体的には、当社では、AIに関する課題について外部の有識者が倫理、法務的観点から協議する委員会「Ethical Approach to AI(EAA)」を2019年7月に設立し、委員からの意見や知見を、経営や事業へ反映できるよう努めております。
図1:テクノプレナーシップ概念図
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は中長期的な企業価値の向上を図るため、デジタルプラットフォーム事業における「トランスフォーメーション領域」、「オペレーション領域」のビジネスを成長させるとともに、2領域で得た知見を事業基盤であるABEJA Platformに蓄積し、継続的に強化・発展するサイクルを形成することが重要と考えております。このため、当社は、顧客支援の総量である売上高、当社事業の基盤となるABEJA Platformの活用を示すABEJA Platform関連売上比率、安定的な収益獲得を示す継続顧客からの売上比率、当社の収益力を示す営業利益を重要な指標としております。
(3)経営環境
当社が創業した2012年は、AI(人工知能)、機械学習の研究分野において、ディープラーニングが登場し大きなブレークスルーが起きた年であり、それまでと比べ、AIを活用できる事業領域が大幅に拡大したといわれております。
産業界においては、「第4次産業革命」と呼ばれるAI、IoT、ビッグデータ、ロボットの活用が成長戦略の中核として捉えられるようになり、労働力が減少する市場において、生産性の向上や技術の継承、ビジネスモデル自体の変革を目的として、デジタルトランスフォーメーションの推進が重要なテーマとして掲げられております。
当社がTAM(Total Addressable Market)と捉えております国内エンタープライズIT市場の市場規模は、2021年は11兆6,405億円、2026年は15兆4,979億円(年間平均成長率5.9%、CAGR:2021年-2026年)と予想されております(出所:IDC Japan 株式会社「国内クラウド市場予測、2022年~2026年」、2022年5月)。
また、当社の事業が属するデジタルトランスフォーメーションの国内市場は、2021年度の2兆3,174億円から、2025年度には4兆1,000億円(年間平均成長率15.3%、CAGR:2021年度-2025年度)、2030年度には6兆5,194億円(年間平均成長率12.2%、CAGR:2021年度-2030年度)にまで成長すると予想されており、こちらを当社はSAM(Serviceable Available Market)と捉えております(出所:株式会社富士キメラ総研「2023 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望」)。
国内AIシステム市場に限定しますと、別の調査では、2022年の3,883億6,700億円から2023年には4,930億7,100万円、2027年には1兆1,034億7,700万円(年間平均成長率23.2%、CAGR:2022年-2027年)になると予想されております(出所:IDC Japan 株式会社「2023年 国内AIシステム市場予測を発表」、2023年4月)。
上記市場成長率を鑑みると、相対的に旧来のITシステムに比較して、デジタルトランスフォーメーション市場やAI市場の成長率が高いことが予想されており、当社の事業機会は大きくなると想定されます。
なお、当社は、「ABEJA Platform」を中心とした「トランスフォーメーション領域」、「オペレーション領域」において、様々な段階・ニーズの企業に対してサービス提供を行っており、一気通貫型で顧客を長期的に支援したいと考えております。個々のサービスを単独で比較した場合、コンサルティングファームやシステムインテグレータなどの競合は存在しますが、当社は一気通貫型のプラットフォーム「ABEJA Platform」とそれに紐づく実装ノウハウを有しており、上流から下流まで一元的にサービス提供できる強みがあり、当該観点から参入障壁は高いと考えております。
(4)経営戦略
当社は、今後も拡大を続けるデジタルトランスフォーメーション市場の中で、さらなる事業成長を目指すため、以下の強みを背景に経営戦略を立案しております。
当社の強み
① 2012年より継続して培ったABEJA Platformと技術パートナー
当社は、2012年から継続的に、デジタルトランスフォーメーションの実行に必要な、データ生成からデータ収集、データの加工、データ分析、AIモデリングまでのプロセスを提供し、継続的・安定的な運用を行うソフトウェアであるABEJA Platformの研究開発を行っており、当該プラットフォームが当社の大きな強み、競合優位性であると考えております。
セキュリティ/テクノロジー水準の向上についても継続的に取組んでおり、2018年にはAmazon Web Service(AWS)より「AWS Machine Learning Competency Partner」に国内初の認定を受けたほか、2019年にはGoogle Cloudより「GCP Technology Partner」の認定を受けております。また、NVIDIA CorporationともGPUによる大規模計算の研究開発を行うなど、当社の技術がパートナーから高い評価を受けていることの表れであると考えております。
また、足元では、当社独自の大規模言語モデル(ABEJA LLM Series)のABEJA Platformへの搭載等を進めております。
② デジタルトランスフォーメーション推進の実績、実行力
当社は、SOMPOホールディングス株式会社(介護事業・保険事業のDX推進、デジタル人材の育成支援等の取組み)やヒューリック株式会社(オフィスビル事業のDX推進等の取組み)、ダイキン工業株式会社など、業界横断的に300社以上の顧客企業との取引実績を有しており、顧客企業の競争優位の源泉となるビジネスプロセスにABEJA Platformを導入しております。
これらの実績、経験は、デジタルトランスフォーメーションを推進するためのビジョン策定やグランドデザイン策定に活かされ、また実務経験に基づいたプランニング力、プランを具現化する実行力につながっております。加えて、戦略策定からプラン実行、運用までの一連のプロセスを、顧客に並走する伴走型で支援できることが強みとなっています。
さらなる実績、実行力の増強を企図し、2022年7月に三菱商事株式会社及び同社子会社の株式会社インダストリー・ワンとの間で地域のDX推進に関する業務提携を、2023年10月に中部電力株式会社との間で中部エリアを中心とした自治体・地域のDX支援に関する業務提携を行いました。強固なパートナーシップのもと、当社の経営資源を活用して地域のDX推進の早期実現に寄与し、また「ゆたかな世界を、実装する」という当社の企業理念の実現も見据えて協業を進めてまいります。
なお、元三菱商事株式会社常務執行役員ビジネスサービス部門CEOの占部利充氏、元船井電機株式会社代表取締役会長兼社長の板東浩二氏を顧問として招聘し、大手企業へ当社サービスを提供する上で、継続的なアドバイスをいただいております。
③ テクノプレナーシップに基づく優秀な人材の採用と定着
当社は、創業者を含めて多くのエンジニア、データサイエンティストが、ビジネス開発に携わっております。行動精神である「テクノプレナーシップ」のカルチャーを大切にし、優秀なエンジニアやテクノロジーに精通する社員を採用、育成しております。
社内には専属で研究開発を行う「ラボ」を設置し、AIを中心としたテクノロジーの事業活用に関する研究開発や、社内での勉強会、ナレッジの共有に取組み、組織としてテクノロジースキルの向上を図っております。このようなエンジニア文化とそれを支える各種取組みによって、テクノロジー企業としての競争力を維持しております。
また、東京大学松原仁教授・松尾豊教授、名古屋大学安田孝美教授に代表される世界的な研究者を技術顧問として招聘し、研究最新動向に関連した助言など、継続的なアドバイスをいただいております。
当社の経営戦略
① 顧客基盤の拡大と深耕
当社は2012年の創業より、300社以上のデジタルトランスフォーメーション推進を支援し、成長してまいりました。今後も国内デジタルトランスフォーメーション市場の拡大は見込まれており、当社の一層の成長・拡大の機会が存在しております。当社は、これまでの実績から得た知見やABEJA Platformを推進力として、新規顧客の獲得(顧客基盤の拡大)、既存顧客との取引関係の多様化(深耕)を図り、収益基盤の拡大を目指してまいります。
図2:顧客基盤の拡大と深耕に向けた取組みのイメージ図
② ABEJA Platformの拡充
国内においても、デジタルトランスフォーメーションの進展に伴い、企業の抱える課題やニーズは多様化・複雑化してくることが見込まれます。当社は、基盤となるABEJA Platformの機能追加と、UI/UX等をはじめとする既存機能の改善を継続的に行い、多様化する顧客ニーズに対応し、提供価値の向上を図ってまいります。
また、ABEJA Platformの汎用的なソフトウェア群を用いた業界横断・業界特化の汎用ソリューションとして展開し、幅広い顧客ニーズへの対応を図るとともに、プリセールス人材の拡充等により、顧客の多様化するニーズや潜在的なニーズを的確に把握し、提案品質、提供価値の向上につなげてまいります。
③ 人材の採用、育成とカルチャーの醸成
今後の市場拡大と当社の業容拡大に向けて、継続的に優秀な人材を採用、育成し、組織力の強化を図ることが重要と認識しております。当社の魅力である「最先端技術を活用した案件が多数あること」、「実運用を目指す思想とノウハウを有していること」、「技術に対する意識が高く、職種の垣根なく幅広い経験を積めるCDO輩出集団であること」を発信、アピールすることにより、人材の獲得につなげてまいります。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の主な課題は以下のとおりであります。
① 国内デジタルトランスフォーメーション・リテラシー向上
国内デジタルトランスフォーメーション市場の拡大が見込まれる一方、企業内ではデジタルトランスフォーメーションやデータ利活用を推進する「IT人材」の不足が課題となっております。また、2030年には、継続したIT需要の拡大、労働人口の減少等により、国内の「IT人材」は約45万人不足するといわれております(出所:経済産業省「IT人材需給に関する調査」2019年3月)。
当社は、一般社団法人日本ディープラーニング協会を通じた活動や自社カンファレンス、大学での講演等を通じて、AIやデジタルトランスフォーメーションに関するリテラシーの向上、「IT人材」の育成に努めてまいります。
② 人材の採用・育成
当社は、デジタルトランスフォーメーション市場の拡大、顧客ニーズの多様化に迅速に対応していくため、多様な経歴、専門性を持った「テクノプレナー人材」の確保、育成が必要と考えております。当社のミッションや事業内容に共感し、高い意欲を持った優秀な人材を採用していくため、積極的な採用活動を進めるとともに、働きやすく自己研鑽できる環境づくり・仕組みの構築に取組んでまいります。
③ 認知度の向上
当社は、これまで自社カンファレンスの開催や広報活動、マーケティング活動等を通じて、認知度の向上を図ってまいりました。今後も引き続き、より一層の当社及び当社サービスの認知度向上のため、広報活動やマーケティング活動を推進し、人材の採用や新規顧客獲得につなげてまいります。
④ システムの安定性強化
当社はインターネットを介したサービス提供を行っているため、当該システムを安定的に稼働させることが重要と考えております。そのために、サーバー設備の強化や、システム安定稼働のための人員確保等に努めてまいります。
⑤ 情報管理体制の強化
当社は、システム運用やサービス提供の遂行過程において、機密情報や個人情報を取り扱う可能性があり、その情報管理を強化していくことが重要であると考えております。現在、情報セキュリティに関する社内規程に基づき管理を徹底しております。また、当社は個人情報保護規程に基づき個人情報管理に努めており、2018年にプライバシーマークを取得しておりますが、今後も社内教育やシステムの整備などを継続し行ってまいります。
⑥ 内部管理体制の強化
当社は成長段階にあり、業務運営の効率化やリスク管理のための内部管理体制の強化が重要な課題であると考えております。このため、コーポレート機能を充実させ、経営の公平性・透明性を確保するため、強固な内部管理体制の構築及びコーポレート・ガバナンスの充実に取組んでまいります。
⑦ 財務の充実と非連続な成長を支える資金の確保
当社は今後の事業拡大に伴う人材採用などに加え、非連続的な成長を目的とした戦略的なM&Aを実行するため、財務の充実と安定化を進めていくことが重要と考えております。今後も多様な資金調達手法を検討しながら、長期的な当社の成長を実現することに努めてまいります。
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