企業兼大株主髙松コンストラクショングループ東証プライム:1762】「建設業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社は、グループ全体の技術向上をはかるため、髙松コンストラクショングループ技術研究所を設けております。髙松建設㈱および青木あすなろ建設㈱は当研究所内で、その他の子会社は自社施設で、各社が得意とする技術分野において研究開発活動をおこなっております。その主なものは次のとおりであり、当連結会計年度における研究開発費の総額は588百万円であります。なお、研究開発費につきましては各セグメントに配分しておりません。

(1) 髙松建設㈱

① 新型免震構造の実用化研究

 大地震に対する安心感をもたらすことができる免震構造のニーズが高まっています。髙松建設㈱では、東京都市大学との共同研究開発により、中低層の新型免震構造の実用化研究を進めております。従来の免震構造用積層ゴム支承は、建物の規模に応じて一品生産されてきましたが、新たに開発する積層ゴム支承は、建物の規模に応じて形状を大型にするのではなく、個数を調節することで設計する方式を採用し、「積層ゴムの製造+品質管理」と「構造設計+施工管理」の二つのプロセスを分離することが可能であり、免震部品の大量生産と品質管理の合理化が見込めます。この新しい積層ゴム支承を用いた免震構造を「新型免震構造」と呼んでおります。トータルコストで安価な免震構造の実用化を目指しております。

CLT-RC合成床スラブの開発 

 設計地震力は建物の重量に比例するため、建物の重量を減らすことができれば、柱・梁をスリム化し、鉄筋量を削減することが可能になります。そこで、床スラブの軽量化に着目し、CLT(直交集成材)とRC(鉄筋コンクリート)の合成構造によるスラブを開発します。本来RCだけが担う曲げモーメントとせん断力をCLTにも負担させることで、比重の大きいRCを減らし、建物重量を削減します。合成構造の細部の検討をすすめ、各種性能(構造・耐火・遮音)試験を実施しております。

③ 木造を活用した中層建物の開発

 地球環境問題への対応と持続可能な社会の実現に向けて、木材の活用が重要な選択肢となっています。木材の利用には耐火性やメンテナンスなどの大きな課題がある一方、コンクリートと比べて格段に軽量で、建設コストを削減できる可能性があります。髙松建設㈱独自の木造活用モデルを作成するため、大断面集成材を用いた純木造2方向ラーメン構造に関する研究開発を進めております。2方向ラーメン構造を実現するために新しい接合方法を開発し、実物大実験による構造性能検証をおこなっております。本接合方法により、高耐力・高剛性を確保できるのみならず、工期短縮・現場労務費縮減も可能となります。

ローコストZEH-Mの開発

 地球温暖化問題や資源エネルギー問題が深刻化する中、環境配慮型の建物としてZEH-M(ZEHマンション)が注目されています。しかし、初期費用の増大や設計上の制約などから、ZEH-Mの普及が進んでいないのが現状です。ZEH-Mの普及促進に向けて、外壁・窓・床・屋根などの外皮の断熱性能の向上や、エアコン・給湯器・換気システムなどの設備の高効率化など、ZEH-Mを実現するための省エネルギー技術を体系的に整備し、髙松建設㈱としてのZEH-M仕様を制定するとともに、より一層ローコストでZEH-Mを実現できる要素技術の開発に取り組んでおります。

⑤ コンクリートの品質向上技術に関する研究開発

 猛暑日・酷暑日が増加傾向にある昨今、気温が高く日射も厳しい施工現場では、コンクリートの温度も上昇し、スランプ低下による施工性の悪化、じゃんか(豆板)やコールドジョイントの発生が懸念されています。このような打ち込み不良を未然に防ぐために、JIS適合のあと添加型化学混和剤を活用する方策の検討を進めております。施工現場においてアジテータ車内のコンクリートに化学混和剤をあと添加することにより、コンクリートの流動性を高めようとするものです。本方策の実運用に向けて、あと添加したコンクリートの性能と品質に係る裏付けデータの整備と手順書の策定を実施しております。

⑥ CFT造施工技術に関する調査研究

 コンクリート充填鋼管構造(CFT造)は、他の構造と比べて強度と剛性に優れ、工期短縮や省資源などの利点もある一方、施工難易度が高く、鋼管の内部に隙間なくコンクリートを充填するためには高い技術力を必要とします。各種試験や実大施工実験を(一社)新都市ハウジング協会の指導の下で行いながら、コンクリートの品質管理方法と圧入状況・充填状況の管理・確認方法について調査・習得し、同協会が定める施工技術ランクの取得を目指しております。

⑦ 配筋検査システムの開発

 近年、熟練工の減少や品質管理の厳格化から、ICT技術活用による省人化、生産性向上が急務となっています。髙松建設㈱では、他社ゼネコンと共同で、AI(人工知能)および画像解析を活用した配筋検査システムを開発しております。撮影された画像より、鉄筋の径と本数、ピッチ等を算出、図面データと照合し、配筋検査を半自動化するものです。立体配筋のAI検知精度の向上・改善をはかり、2024年度から実用化の予定です。

(2) 青木あすなろ建設㈱

(建築事業)

① 制震ブレースを用いた耐震補強工法

 日本大学と共同開発した摩擦ダンパーを用いた既存建物の制震補強工法は、高性能・居ながら(居住しながら)補強がおこなえ、短工期・低コストを特長としており、制震補強工法として、我が国で初めて日本建築防災協会技術評価を取得しております。2024年3月期は、新築建物の制震化に用いる摩擦ダンパーの性能確認試験をおこない、技術資料を作成しました。

② 折返しブレースを用いた耐震補強工法

 折返しブレースは、断面の異なる3本の鋼材を一筆書きの要領で折り返して接合させた形状を有し、優れた変形性能を示すので、耐震性に優れた合理的な鉄骨造建物を建設できます(累計施工実績10件)。2024年3月期は、ブレース材の疲労特性を確認する実験をおこない、信頼性向上をはかりました。

③ CELBIC(適用拡大・再生骨材)に関する開発

 二酸化炭素排出量を削減するための環境配慮型コンクリートの開発に取り組み、2021年に建設材料技術性能証明を取得しております。2024年3月期は、適用範囲の拡大および再生骨材を用いたC種クラスの実用化に向けた実験を実施し、技術資料を作成しました。

④ 部分高強度鉄筋

 基礎梁端部の過密配筋の緩和およびコスト削減(鉄筋量削減、部材断面縮減、根入れ深さ低減)をはかるため、部分高強度鉄筋を用いた外付け新定着工法の開発に取り組んでおります。2024年3月期は、要素実験の実施により基本性能を確認、他に共同特許出願に向けた明細書を作成しました。

(土木事業)

① 既設橋梁の耐震性向上技術に関する研究

2013年より、首都高速道路グループと、摩擦ダンパーを既設橋梁の耐震性向上に応用する共同研究を実施しております。その成果により、これまで首都高速道路11号台場線(2020年、摩擦ダンパー6基)と首都高速道路1号上野線(2022年、摩擦ダンパー26基)の2件の耐震補強に摩擦ダンパーが採用され、設置工事が完了しております。現在は、「スライド機構」という新たな機構を組み込んだ摩擦ダンパーの開発に、首都高速道路技術センターと共同で取り組んでおります。スライド機構によって、橋軸方向の地震動の直角方向への影響が解消され、摩擦ダンパーの更なる採用増加が期待できます。2024年3月期は、終局耐力検証試験やスライド部検証試験を実施し、設計で必要となるデータを取得しました。2025年3月期は、試験データを詳細に分析したうえで各種マニュアルを策定し、実用化をはかる予定です。

② カーボンプール(CP)コンクリートの開発

 セメント焼成工程などで発生する二酸化炭素(CO2)を、コンクリート由来の産業廃棄物に固定化させるという「地域内循環の構築」、さらに新たな技術を用いて引渡しまでにCO2固定量を最大化する「カーボンプール(CP)コンクリートの開発」に取り組んでおります。これは、当社を含む企業・大学・国立研究開発法人がコンソーシアムを構成し応募したNEDO(※)・グリーンイノベーション基金事業「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト」に採択されたものです。事業期間は、2021年度~2030年度の10年間となっております。

(※)NEDOとは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の略称です。

③ 電気的性質を利用した盛土材(複合土質)の締固め管理方法の開発

 建設発生土など複合的な土質特性を持つ材料を用いた盛土の締固め管理において、複合的な土質をいかに適切に管理するかという課題を解決し、その適正化をはかるため、電気的性質を利用した締固め管理手法を開発しました。これは、小型・軽量な計測器をハンマードリルなど簡便な方法で土中に貫入し、導電率や比抵抗値を計測するもので、計測した比抵抗値等から、盛土の乾燥密度を算出することが可能です。2025年3月期は、現場実装を早期にはかるべく測定精度の更なる向上をはかる予定です。

④ クリップ型ばねを応用した技術の開発

2017年より、注入方式の接着系あと施工アンカー工法におけるアンカー筋の設置補助具として「あと施工アンカー用クリップ型ばね(製品名:アンカー留太郎)」を開発・実用化しております。アンカー留太郎の適用により、当該工法の施工品質と施工効率が向上します。2024年3月期は、アンカー留太郎のNETIS(新技術情報提供システム)登録が完了いたしました。2025年3月期は、アンカー留太郎の普及促進をはかりながら、独自技術である「クリップ型ばね」の特徴を生かした応用技術の調査研究をおこなう予定です。

⑤ AIを用いた省力化技術の開発

AIを用いたトンネル施工の省力化技術を開発しております。トンネル施工現場の施工データを解析し、施工条件と発破による掘削形状の相関を捉えます。求められた相関から、余掘りが低減できる掘削方法を提示するAIモデルの実証および精度向上を目指します。

(3) みらい建設工業㈱

① 「MC-Wake」航跡波接近警告システム(NETIS: QSK-230005-A)

 本技術は、AIS、GNSS、レーダーを利用し、航行する船舶による航跡波が工事箇所へ到達することを予測・警告するシステムです。本技術の活用で航跡波の襲来を警告し、作業船の動揺による挟まれ・転倒・転落事故の発生を防止します。

② 「MC-Caisson」ケーソン据付支援システム(NETIS: QSK-230004-A)

 本技術は、ケーソン据付作業において、据付計画位置までの残りの距離と向きをリアルタイムに自動計測し、位置誘導画面上に表示するとともにケーソン内の注排水を自動でおこなう技術です。本技術の活用で、ケーソン位置の計測、誘導値の表示およびポンプ操作を自動化することで、ケーソン据付作業を省人化させ、生産性および安全性を向上させる効果があります。

(4) 東興ジオテック㈱

① 落石トメジロー

 斜面に存在する不安定な転石・浮石の滑動や転倒を抑止する転石一体化根固め工法を実用化しました。山間部の道路や鉄道をはじめとする施設の安全確保をはかる必要がある現場を対象とする新しい落石防止対策工法として、今後の受注拡大に寄与させてまいります。

② 早期発芽力検定法

 これまで自社が保有する種子貯蔵出荷施設(RSセンター)で保管している法面緑化用の在来木本種子の品質証明に用いてきた技術ですが、このたび適用範囲を在来草本類にまで広げることができました。生物多様性国家戦略2023-2030を踏まえて今後引き合いが増加すると予想される在来種を使用した法面緑化の分野において、保有工法の環境保全上の優位性を持たせるための技術として、改善強化された「早期発芽力検定法」の活用を推進してまいります。

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