企業兼大株主髙島屋東証プライム:8233】「小売業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

(1)経営方針

2022年度は、「百貨店の収益構造の変革と、グループ利益の最大化」を経営目標に、国内百貨店の構造改革やグループ会社の収益力強化、グループESG戦略の推進などに取り組んでまいりました。

国内百貨店における、営業力強化とコスト削減の両面から構造改革の取り組みでは、店頭運営体制を見直し、捻出した要員により外部委託業務を内製化するなど、コスト削減は一定の成果につながり、総額営業収益販売管理費比率は2019年度比で大きく改善いたしました。

その結果、2022年度の連結業績は、大幅な増収増益となり、コロナ前の2019年度に対しても増益となりました。総額営業収益は、コロナ影響の縮小に伴う消費マインドの改善に加え、国内百貨店での大口受注や、為替差益による海外グループ会社の業績押し上げもあり、国内百貨店・グループ会社ともに増収となっております。

販売費及び一般管理費につきましては、光熱費などの増加要因がありましたが、コスト構造改革の順調な進捗や会計処理変更による影響もあり、前年からは4億円の減少となりました。計画からも14億円良化しております。営業利益は、当初2023年度の目標としておりました300億円を、1年前倒しで達成いたしました。また、固定資産の売却などによる特別利益もあり、親会社株主に帰属する当期純利益は2006年度の253億円を上回る過去最高益を達成いたしました。

次年度は、髙島屋グループ3カ年計画(2021~2023年度)の最終年度として、大胆な発想による新しい挑戦を通じてグループの収益力をさらに盤石なものとし、2031年の髙島屋創業200周年、そして、その先の将来にわたって成長し続ける基盤づくりを果たすための極めて重要な一年と捉えております。

こうしたなか、次年度は、「百貨店の営業力強化」、「人的資本経営の推進」、「グループ会社の業界競争力獲得」、「グループESG戦略の深化」に取り組んでまいります。

尚、企業活動にあたり、コンプライアンスは、あらゆる業務の基盤となる項目として全従業員の共通理解とします。一人ひとりが、法律やルールを主旨から正しく理解するとともに、それらの変化にも速やかに対応し、開かれた組織風土の中で実効性を高めてまいります。

[経営目標]

「持続的な成長と飛躍に向けたグループ経営の土台づくり」

~2031年創業200周年へ向けた基盤構築~

[経営課題]

①百貨店の営業力強化

②人的資本経営の推進

③グループ会社の業界競争力獲得

④グループESG戦略の深化

(2)経営戦略等

(2-1)グループ経営戦略

当社グループは引き続き、グループ総合戦略「まちづくり」(以下、まちづくり戦略)を基本とし、国内百貨店、国内グループ、海外事業とのシナジー効果の発揮に努めます。

まちづくり戦略には2つの考え方があります。1つは、拠点開発によるまち全体の流れを作るアンカーとしての役割発揮、もう1つは、事業開発による館の魅力の最大化です。

●まちづくり戦略の概念図

百貨店を中核とするまちづくりで成長領域を拡大

(2-2)サステナビリティへの取り組み

当社のグループ経営理念「いつも、人から。」は、SDGsが目指す「誰一人取り残さない」社会の実現と強く結び付くものです。2006年には、経営理念をもとにCSR活動領域を策定し、現在もそれに即した経営の推進や情報の開示を行っています。活動領域には、事業活動を通じて得た利益をさまざまな人々に還元する「経済的役割」や「コンプライアンス(法令遵守)」といった基本的な活動に加え、「企業倫理」に基づく行動や新しい価値の創造、社会問題の解決など「社会的役割」の実現といった活動があります。

こうした従来のCSR経営にSDGsの概念を融合し推進しているのが、「グループのESG経営」です。「環境に優しいより豊かな生活・文化の提案」・「多様な価値観への対応、多様な人材の活用」・「お客様視点に立った経営」など、当社ならではの価値提供を通じ、ステークホルダーの皆様からの共感を獲得することで、「すべての人々が21世紀の豊かさを実感できる社会の実現」に貢献していくことを目指しています。

当社は、ESG経営の重点課題として、「脱炭素化推進RE100」や「ダイバーシティ推進」をはじめとする10の項目を設定しています。脱炭素化推進では、LED化による電力使用量の削減、再生可能エネルギー由来電力への転換を進めています。また、ダイバーシティ推進では、女性の活躍・ジェンダー平等に向けた取り組みや、外国人従業員の生活者としての受入れなど、多様な価値観や能力を尊重し、あらゆる人材がその能力を最大限発揮でき、やりがいを感じられるダイバーシティ&インクルージョンの実現に向けた環境整備や意識啓発に取り組んでいます。

グループESG経営を推進することで、従来型のビジネスモデルから脱却し、時代や社会の要請に合わせて変革していくことが重要であり、結果として社会課題の解決はもちろんのこと、事業成長の好機にもつながるものと考えます。

当社がグループ総合戦略として位置づける「まちづくり戦略」も、コミュニティやサステナビリティの観点からESG経営と密接な関係にあります。「街の賑わいを創出し、地域との共生を図る」「商品や環境、サービスを通じて新しい価値を提案・提供する」ことは、さまざまな社会問題の解決に応用・発展させていくことができます。さらに当社は百貨店を中核に国内外で各グループ事業を展開しており、また優良な顧客基盤や店舗の立地、お取引先とのネットワークを有していることから、地球上のさまざまな問題にアプローチできる強みやポテンシャルを持ち合わせています。まちづくり戦略を推進する中で、短期的・中長期的両方の視点で社会課題の解決に取り組むことで、グループのさらなる成長を目指すと共に、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

{グループESG経営概念図}

{重点課題とKPI}

{TCFD提言への賛同}

 当社は、グループ経営理念体系の「5つの指針」のひとつに「地球環境を守るためのたゆまぬ努力」を掲げています。また「髙島屋グループ環境方針」においても、地球温暖化の防止やCO2排出量の削減に重点を置くなど、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。

 このグループ環境方針は、ESG経営で掲げる環境課題を解決につなげる基本的姿勢でもあります。お客様やお取引先、地域社会など、多くの人々との直接的な接点をもつという事業特性を生かしながら、環境方針に基づくさまざまな活動に取り組んでいます。

 しかし一方で、近年は気候変動や資源の枯渇、生物多様性の減少といった環境問題がより深刻化しており、環境問題への取り組みの重要性や緊急性が高まっています。特に中核事業である百貨店事業では、化石燃料などの地下資源による電力の大量消費や、プラスチックや食品ごみの大量廃棄、衣料品の過剰在庫など、現行のビジネスモデルが環境負荷を前提としていることをリスクと捉えています。

 そこで当社は、従来型のビジネスモデルから、地球資源を再生・修復するビジネスモデルへと変革し、環境課題解決と事業成長の両立に取り組みます。また、TCFD提言に賛同し、TCFD提言が推奨する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理とリスクに対する取り組み」「指標と目標」の4つの開示項目に基づき情報開示のさらなる拡充を図ってまいります。

{TCFD提言が推奨する開示項目に沿った情報開示}

 TCFD提言が推奨する4つの開示項目<ガバナンス><戦略><リスク管理><指標と目標>と、項目毎の具体的な開示内容に基づき、当社グループは、気候関連情報を開示しています。

 a)ガバナンス(環境課題に関するガバナンス)

①取締役会が気候関連課題について報告を受けるプロセス、議題として取り上げる頻度、監視対象

 髙島屋グループでは、グループESG経営で掲げる環境課題への取り組みを通じ、企業価値の向上や持続的成長を図り、お客様や株主・投資家をはじめとしたステークホルダーの皆様からのご期待に応えるためには、コーポレート・ガバナンスの強化は経営上の重要な課題と認識しています。

 グループESG経営を組織内に浸透させ、当社がお客様や株主などステークホルダーの皆様との信頼関係を深め、社会的責任を重視した経営を持続的に推進するうえで、その支えとなるのが内部統制システムであると考えています。内部統制システムに関わる主な会議としては、社長を委員長とする「髙島屋グループCSR委員会」及び「髙島屋グループリスクマネジメント委員会」を設置しています。

 「グループCSR委員会」は、2022年度より半期に一度開催し、コンプライアンス経営の徹底に加えて内部統制の状況や、新しい社会課題に対するCSR領域への取り組み状況をグループ横断的に検証し、強化する体制を整えています。

 「グループリスクマネジメント委員会」は、必要に応じ都度開催し、主管部門が各部門と連携し、案件ごとにラインを通じて内部統制の強化を図っています。コンプライアンスリスク・自然災害リスク等の予防、極小化に向けグループ横断的に統制を図っています。また、新たなビジネスへのチャレンジ等、事業戦略上発生するリスクに対しては、リターンとのバランスを考慮しながら的確にコントロールし、グループ全体のリスクマネジメント体制の確立に取り組んでいます。

 さらに、ESG経営を組織内に浸透させ、設定した重点課題に対する取り組みを確実に推進していくため、グループ視点での方針管理、進捗管理を充実させる「グループ環境・社会貢献部会」を四半期毎に開催し、より一体的でかつ実効性が発揮できる体制を整えています。

②経営者の気候関連課題に対する責任、報告を受けるプロセス(委員会等)、モニタリング方法

 取締役会は、当社の業務執行がグループ全体として適正かつ健全に行われるために、取締役の職務執行状況を適切に監督すると共に、実効性あるグループ全体の内部統制システムの基本方針に基づく運用状況や課題について定期的に確認しています。

 社長が委員長を務める「グループCSR委員会」は、ESG重点課題の進捗状況を報告し、改善点に対しては速やかに次年度の活動へ反映するなどPDCAサイクルを徹底し、毎年度モニタリングを行っています。その内容については取締役会に報告し、取締役会による監督体制のもと、環境課題の取り組みに対するガバナンスの強化に努めています。

 また、社長が委員長を務める「グループリスクマネジメント委員会」は、当社の業務執行に伴うさまざまなリスクを抽出し、リスク発生時の損失極小化に向けた対応等、協議された内容については、取締役会へ報告を行っています。

●内部統制システム体制図

●ESG重点課題 推進体制図

 b)戦略(気候関連シナリオ分析)

①短期・中期・長期のリスク・機会の詳細

 当社は、将来の気候変動が事業活動に与えるリスクと機会、財務影響を把握するため、従業員選抜型ワークショップを開催し、TCFDが提唱するフレームワークに則り、シナリオ分析の手法を用いて、2050年時点における外部環境変化を予測し、分析を実施しました。気候変動に伴う自然環境の変化や資源の枯渇等は、長期間にわたり当社の事業活動に大きな影響を与えるため、百貨店のみならずグループ事業全体において、従来型のビジネスから、地球資源を再生・修復するビジネスへと変革していくことが必要であると認識しています。当社が目指す将来社会を見据え、環境・社会領域におけるESG重点課題10項目は、2030年時点の達成目標(中長期)や、年度毎の数値目標(ロードマップ)を設定し、PDCAサイクルにて進捗管理を行っています。

②リスク・機会が事業・戦略・財務計画に及ぼす影響の内容・程度

 TCFDが推奨する気候変動関連リスクを移行リスク・物理的リスクの2つのカテゴリーに分類し、当社の事業活動に甚大な影響を及ぼす可能性がある主要なリスク項目を特定しました。また、「2℃以下シナリオを含む、様々な気候変動関連シナリオに基づく検討」を行うため、当社は、IPCCやIEA等のシナリオを参考に、事業活動や財務に及ぼす影響を分析し、持続可能な成長に向け、その対応策を検討・推進しています。当社のシナリオ分析は、パリ協定の目標である「2℃未満」と、CO2排出量削減が不十分な「4℃」の2つのシナリオを想定し、TCFDが推奨する典型的な気候変動関連リスクと機会を参考に分析を行いました。

想定シナリオ

 

2℃未満

シナリオ

気候変動対応の厳しい法規制施行による事業運営コストの増加

エネルギーコストや商品価格の高騰に伴う、商品調達リスクの拡大

消費者の環境意識の高まりによる新たなマーケット獲得

4℃

シナリオ

自然災害の多発・激甚化に伴う店舗被災、サプライチェーンの断絶など、営業機会の損失

エネルギー価格の高騰や資源不足に伴う商品調達リスクの拡大

環境負荷を前提としたビジネスモデルから脱却できない企業に対する市場からの淘汰

髙島屋グループのリスク・機会の概要と事業及び財務への影響

リスク・機会

の分類

髙島屋グループ 気候変動関連リスク・機会の概要

事業及び
財務への影響

+2℃未満

+4℃

リスク

市場と 技術

* 再生可能エネルギーへの転換に伴う調達コスト増加

* 環境マーケット需要の獲得遅れに伴う競争力低下

大きい

大きくなる

評判

* 環境課題への対応遅れに伴うステークホルダーからの信用失墜、ブランド価値の毀損、組織会員離反

非常に

大きい

非常に

大きくなる

政策と

* 炭素税の導入、プラスチック循環促進法への対応など、規制強化に伴う事業運営コストの増加

軽微

物理的

リスク

* 大規模自然災害の発生に伴う店舗閉鎖や、サプライチェーン断絶に伴う営業機会損失

機会

エネルギー源

* 省エネ推進に伴う電力使用コスト削減

* 災害に備えた事業活動のレジリエンス確保

市場

* ESG経営の推進によるステークホルダーからの共感獲得、企業価値向上

* 高まる環境意識に対応した商品・サービスの提供によるマーケット獲得

③シナリオに基づくリスク・機会及び財務影響とそれに対する戦略・レジリエンス

 2030年時点を想定した2つのシナリオにおける事業及び財務への影響に関し、規制強化に伴う炭素税の導入や、再生可能エネルギー由来の電力調達コストが財務に影響を及ぼすものと考え、2℃未満シナリオにおける財務影響を試算しています。

当社への財務影響

2030年時点を想定した財務影響

炭素税導入

約25億円コスト増

※EUの炭素税価格(約11千円/t-CO2)を基準に、

 当社2019年時点のCO2排出量(約230,516t)より算出

再エネ由来の

電力調達

約16億円コスト増

※現状の調達電気との料金格差(約4円/kwh)に、

 当社2019年時点の電力使用量(約392,824Mwh)より算出

 当社は、気候変動関連リスクに対する事業活動や財務に与える影響などを踏まえ、持続可能な社会の実現に貢献することを目指し、社会課題解決と事業成長の両立を図る「グループESG経営」を推進しています。その一環として、2019年、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来の電力で調達することを目指す国際的イニシアチブ「RE100」に参加し、「2050年までに事業活動で使用する電力の100%を再生可能エネルギーに転換すること」を目標とし、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを推進しています。また、店舗ごとに設備を省エネ効率の高い機器へと順次更新すると共に、既存照明をLED照明へ変更することにより、使用電力及びCO2の削減に努めています。国内百貨店では2011年~2021年までに約22,500Mwhの電力使用量を削減し、約10,000t-CO2のCO2排出量削減を実現しました。

 さらに当社は、まちづくり戦略を通じ、「街のアンカーとして役割発揮」「館の魅力最大化」に取り組み、環境に配慮した商品やサービス、店舗施設の提供など、新しい価値を提案する次世代商業施設づくりを推進し、新たなマーケット獲得に取り組んでいます。グループ経営においても、これまで百貨店に集中していた経営資源をグループ内で有効活用し、既存事業の収益強化と将来の成長に向け事業規模の拡大や新規事業の開発を進めるなど、気候変動関連リスクの抑制に努めると共に、マーケット変化に積極的に対応し、新たなビジネス機会獲得に取り組んで参ります。

 c)リスク管理とリスクに対する取り組み

①気候変動関連リスクの特定・評価プロセスの詳細、重要性の決定方法

 当社は、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある気候変動関連リスクとして、「自然災害(地震・台風・洪水等)」、「ESG経営への取り組みの遅れ」、「サプライチェーンの破綻」等を事業等のリスクとして特定しています。これらのリスクに適切に対応するため、当社は、社長を委員長とする「髙島屋グループCSR委員会」及び「髙島屋グループリスクマネジメント委員会」を設置し、コンプライアンス経営の徹底に加え、内部統制の状況や新しい社会課題に対するCSR領域への取り組み状況等をグループ横断的に検証しています。

 「髙島屋グループリスクマネジメント委員会」では、「グループの成長戦略の実行を阻害する事象」又は「事業活動継続と持続的成長を阻害する事象」を重要リスクであると定義し、気候変動に伴う重要リスクを特定、最終的に取締役会へ報告しています。

②重要な気候変動関連リスクの管理プロセスの詳細、優先順位付けの方法

 気候変動関連リスクと機会は、当社の事業活動に大きな影響を及ぼすため、「髙島屋グループ環境・社会貢献部会」や「髙島屋グループCSR委員会」において、グループESG経営重点課題で掲げた環境課題に対し、年度計画に基づく取り組み内容や進捗状況を確認し、取締役会へ報告しています。

 「髙島屋グループリスクマネジメント委員会」で特定した気候変動関連リスクは、「発生頻度・可能性」・「事業への影響度」を評価基準にリスクマップを策定し、その重要性を評価しました。

 当社は、リスク管理体制を含む内部統制システムの整備に取り組み、気候変動関連リスクの予防・極小化に向け、グループ横断的に統制を図ると共に、新たなビジネスへのチャレンジ等、事業戦略上発生するリスクに対しては、リターンとのバランスを考慮しながら的確にコントロールするなど、グループ全体のリスクマネジメント体制の確立に取り組んでいます。

③全社リスク管理への仕組みの統合状況

 気候変動関連リスクは、当社の事業活動に甚大な影響を及ぼす可能性があり、当社は、「髙島屋グループCSR委員会」及び「髙島屋グループリスクマネジメント委員会」を通じ、リスク発生時の対応やリスク管理体制の強化に努めています。リスクに対する取り組みとして、脱炭素社会の実現に向けた「RE100」や「EV100」の推進、廃棄プラスチックや食品ロスの削減、循環型ビジネスの構築等に取り組むと共に、自然災害の激甚化に伴う営業機会損失を最小限に抑制するため、店舗や施設のレジリエンスを高める設備投資や、EC事業・グループ経営の強化等に取り組んでいます。

 d)指標と目標

①気候変動関連リスク・機会の管理に用いる指標

 当社は、気候変動関連リスク・機会を管理するための指標として、Scope1・2・3温室効果ガス排出量、及び事業活動で使用する電力に占める再生可能エネルギー比率を指標として定めています。

②温室効果ガス排出量(Scope1・2・3)

 百貨店事業を中核に位置付ける当社は、環境負荷を前提とした現行のビジネスモデルをリスクと捉え、環境課題の解決に向けて取り組んでいます。2019年、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来の電力で調達することを目指す国際的イニシアチブ「RE100」に参加し、脱炭素化推進に取り組んでいます。当社の2021年度Scope1・2温室効果ガス排出量は、約203千t-CO2、国内百貨店におけるScope3温室効果ガス排出量は、約2,772千t-CO2排出しています。

●温室効果ガス排出量

 

範囲

2018

2019

2020

2021

温室効果ガス排出量

CO

※1

連結

Scope1

排出量(t)

12,153

24,953

21,055

20,197

Scope2

排出量(t)

119,468

205,563

178,090

183,301

Scope1-2

排出量(t)

131,621

230,516

199,145

203,497

国内

百貨店

Scope3

排出量(t)

3,449,427

3,382,417

2,495,547

2,772,244

フロン類

排出量

※2

連結

(海外除く)

CO-t

1,353

1,552

1,609

1,580

※1 CO2排出量(Scope1-2)は2018年度までは国内百貨店(㈱高島屋・分社含む)の数値です。

2019年度より国内外グループ会社も含めた連結ベースで算出しています。

※2 店内で使用している冷凍・冷蔵庫のフロン漏えい量を、フロン排出抑制法に基づき、CO2換算した数値です。

2018年度までは国内百貨店(㈱高島屋・分社含む)の数値です。

③気候変動関連リスク・機会の管理に用いる目標及び実績

 当社は、2019年「RE100」に参加しております。「2030年度にScope1・2温室効果ガス排出量30%以上削減」、「2050年度までにScope1・2温室効果ガス排出量ゼロ」を目標として設定し、毎年度の数値目標を設定したロードマップに基づき、脱炭素社会の実現に向け、取り組んでいます。当社は、2019年度Scope1・2温室効果ガス排出量を基準に、中長期の温室効果ガス排出量削減目標とRE達成目標を設定し、脱炭素化を推進しています。

 2021年度は、当初計画から前倒しを行い、グループ5施設(流山おおたかの森の3施設、髙島屋大宮店、日本橋3丁目スクエア)に、再生可能エネルギー由来の電力を導入しました。また、2022年度においても、流山おおたかの森S・C ANNEX2、こもれびテラスなど5施設に再生可能エネルギー由来の電力を導入し、脱炭素化を加速しています。

Scope1・2

単位

2019年度

2025年度

2030年度

2050年度

温室効果ガス排出量

t-CO2

230,516

208,961

161,361

0

削減量(19年度比)

△21,555

△69,155

△230,516

温室効果ガス削減目標

△9.4%

△30%以上

△100%

RE達成率

0%

8.6%

30%以上

100%

(3)経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等

2023年度の連結経営目標は以下の通りです。

〇総額営業収益              9,400億円 ( 2019年度比      +209億円 )

○総額営業収益販売管理費比率      25.2% (    同       △ 3.1% )

〇営業利益             350億円 (    同        + 94億円 )

〇自己資本比率            36.3% (    同        △ 0.9% )

〇ROE(当期純利益/自己資本)   5.5% (    同        + 1.9% )

〇EBITDA総資産比率       5.0% (    同        + 0.9% )

〇純有利子負債EBITDA倍率    2.0倍 (    同        △ 0.2倍 )

○ROIC(投下資本利益率)     4.5% (    同        + 1.4% )

(4)経営環境及び対処すべき課題

 次年度は、水際対策緩和によるインバウンド需要の回復が見込まれる一方、物価高に対する消費者の生活防衛意識の高まりなど、国内個人消費の動向は決して楽観視できません。そうした中で持続的な成長を果たしていくためには、構造改革の成果である総額営業収益販売管理費比率の改善などを土台に、社会や経済、お客様ニーズの変化に対応しながら、売場づくり・接客・営業・目利き・仕入といった、百貨店の「人」を起点にした本質的な営業力を高め続けていく必要があります。

 当社においては、企業の競争優位の源泉や、価値向上の大きな推進力となるのは、「人」や「ノウハウ」などの無形資産であると位置づけ、「人的資本経営」を推進し、人材への戦略投資による専門性・多様性の育成・獲得に取り組んでまいります。

 また、当社はグループの各商業施設において、次年度、原則休業日を設定することといたしました。お取引先を含む従業員の就労環境の改善に取り組み、働く場としての当社の魅力向上を図ることで、継続的な人材確保を果たしてまいります。

 サステナビリティに関しては環境問題への対処も緊急性を増しています。当社は、経営理念において「地球環境を守るためのたゆまぬ努力」を掲げております。これを体現するため、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)(※1)提言に賛同し、気候変動が事業活動や財務に及ぼす影響の分析を行い、持続可能な社会の実現に貢献するための対応策を検討・推進いたします。循環型ビジネススキームの構築や食品廃棄物の削減などの取組過程において、グループ全体で社会課題の解決に取り組むことで、ステークホルダーからの信頼・共感を獲得し、グループのブランド価値の向上と、持続的成長を可能とする事業基盤の強化につなげてまいります。

 特に、次年度は多種多様なステークホルダーとの接点を有する当社の強みを発揮できる領域に重点を置いた取組を推進いたします。その一環として「エコ&エシカル」な商品・サービスによりサステナブルなライフスタイルを提案する「TSUNAGU ACTION」(※2)を本格始動し、より多くのお客様に共感・参画いただける活動としてまいります。

<百貨店業>

 百貨店業におきましては、国内百貨店の営業力強化と収益安定化を図ってまいります。大型5店舗で取り組んだ構造改革については、品揃え・サービス面における改善点を早急に修正いたします。品揃えについては部門間の連携を深化させ、ライフスタイル軸の商品調達・プロモーションを推進いたします。販売面においては、販売手続の簡素化に取り組むと共に、デジタルツールの活用による業務効率化を図り、販売やサービスの質的向上につなげてまいります。

 百貨店独自の価値提供による売上増大に向け、従来とは異なる切り口での高鮮度な催事やプロモーションなど、新しい企画の開発や、かつて当社が強みとしていた「海外商材の輸入ビジネス」のスキーム再構築に向けた計画の策定に着手いたします。

 品揃えや売場づくりの基礎となる顧客政策については、お客様の属性やライフスタイルを基軸に多様化・細分化するニーズに即したマーケティング戦略を深化させ、お客様へのアプローチ精度向上を図ります。

 ECにおきましては、ギフト対応の多角化と品揃えの拡充に取り組みます。また、お客様との接点づくりを強化し、新規顧客の獲得を推進してまいります。

 飲食におきましては、株式会社アール・ティー・コーポレーションがセントラルキッチンの更なる活用を通じて食材調達の内製化を推進することにより、原価率の低減に取り組むと共に、核ブランドである「鼎泰豊」「リナストアズ」などの店舗のサービス向上と運営コストの見直しを図り、収益基盤を強化してまいります。

 海外百貨店におきましては、今後成長が見込まれるASEAN地区の各拠点において、引き続き経営資源を投下してまいります。シンガポール髙島屋は、開店30周年を機に営業力強化策を推進してまいります。ホーチミン髙島屋は、顧客支持の高い商品群の改装を行い、収益増大を図ってまいります。上海高島屋は、ゼロコロナ政策からの転換により経済活動が正常化しつつある中、グランドオープン10周年を契機に、オンライン販売や法人向け販売促進など新しいチャネルでの営業施策を講じてまいります。サイアム髙島屋は、政府方針の下、増大するツーリスト需要を取り込むと共に、顧客ニーズに対応した品揃えやサービスの拡充を図ってまいります。

<商業開発業>

 商業開発業におきましては、国内SCについてはローコスト運営モデルによる次世代型SCへの転換を加速させていきます。本年秋に京都髙島屋S.C.の開業や立川髙島屋S.C.のリニューアルオープンを予定しており、地域に根差した魅力的なSCを実現いたします。また、お客様のロイヤリティを基盤としたコミュニティを構築し、来店動機を創出することで新たなお客様層を開拓いたします。

 加えて、収益基盤の更なる安定化に向け、引き続き非商業シェアを高めることでアセットの多角化を推進し、新たな需要を開拓する新規事業を開発いたします。

 海外においては、引き続きベトナムを中心とした成長市場への投資を行います。商業開発・学校運営事業の「スターレイク・プロジェクトB計画」は、2025年の開業を目指して着実に計画を進めてまいります。

<金融業>

 金融業におきましては、グループ全体の顧客基盤強化の主体として、新たな成長の柱づくりを強力に推進します。カード事業は、コロナ禍で毀損した会員基盤の早期復元を図るため、新規カード会員獲得を行う体制づくりや、カードの魅力向上に取り組みます。

 ファイナンシャルカウンター事業と保険事業を展開するライフパートナー領域の事業は、カード事業に次ぐ金融の収益基盤として専門人材の配置など営業力を強化します。これによりライフプラン・資産アドバイザーからなる事業モデルを具現化し、専門性の強化とお客様提案・サービスの質的向上を図ってまいります。

 また「スゴ積み」においては、昨年のサービス開始時に入会されたお客様の積立が本年7月に満期を迎え、店頭利用がスタートいたします。これを機に認知度拡大と会員獲得に向けたキャンペーンを実施し、顧客基盤強化に取り組んでまいります。

<建装業>

 建装業におきましては、営業力とデザイン力を駆使した先行提案営業を確立すると共に、人材の補強や育成による専門性と多様性の発揮を通じて、業界競争力獲得を目指します。さらに、協力会社ネットワークを強化するなど技術を継承・発展させていくと共に、デジタル化による生産性向上や専門人材の定着化、ダイバーシティ推進にも取り組んでまいります。

<その他の事業>

 その他の事業におきましては、広告宣伝業を担う株式会社エー・ティ・エーが、業界競争力向上に向け、デジタルを駆使したクリエイティブ力・企画営業力のある人材の育成と専門性向上を図り、外部営業力を強化いたします。また、マーケティング力・お客様ニーズへの対応力を高めると同時に、事業領域の拡大も進めてまいります。

※1:気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)

気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどの様に行うかを検討するため設立された国際機関であり、投資家に適切な投資判断を促すため、気候変動に関連する財務情報開示を企業へ促すことを目的としている。

※2:TSUNAGU ACTION

「21世紀の豊かさ」を共に考え実践するために、エコ&エシカルをテーマにしたライフスタイルの提案を通じ、年間を通してお客様と共に取り組むサステナブルな営業活動。

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