駒井ハルテック 【東証プライム:5915】「金属製品」 へ投稿
企業概要
当社グループは、橋梁・鉄骨の製作及び架設段階での最先端の技術並びに風力発電に関する研究開発活動を行っております。当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は255百万円であります。
当連結会計年度の研究開発の部門別内容については以下のとおりであります。
―橋梁事業―
当連結会計年度に実施した研究開発項目についてその概略の内容を以下に示します。
1.建設生産システム全体の生産性向上へ資するICT技術を活用した研究開発
2.補修・補強工事に必要な要素技術の開発
3.新たな架設方法の開発
4.ケーブル系橋梁施工時における施工技術の更新と実施
5. 溶接部の非破壊検査システムの開発
6.安全性向上のための動画処理技術の開発
1.につきましては、前連結会計年度からの継続研究であります。官民研究開発投資拡大プログラム(通称PRISM)予算を活用して 国土交通省が実施する『建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト』で開発したハイブリッド計測により出来形一元管理を行う技術の実装を行っており、「ICTの全面的な活用」として受注工事で採用しています。汎用性を持たせるための改良と7件の施工実績によりNETIS登録を完了させました。引き続き受注工事への採用による安全性および生産性向上への寄与、精度向上、販売・導入拡大に向け取り組んでおります。
2.につきましても、前連結会計年度からの継続研究であります。これまで現場施工で重要となる継手部材の表面処理剤などの開発商品の販売促進や適用範囲の拡充に向けた検証試験を継続中です。
3.につきましても、前連結会計年度からの継続研究であります。新たな橋梁仮設用手延べ機の開発に当たり、性能確認試験を実施し商品化に向けた開発を継続しております。今後は、該当工事に採用,提案することで、受注機会の向上および収益確保を目指しております。また、手延べ機に採用した継手形式を応用したモジュール橋の開発検討にも着手しております。
4.につきましても、前連結会計年度からの継続研究であります。ケーブル系橋梁施工時の品質管理で重要となるケーブル張力計測・調整といった特殊技術について受注工事を対象に老朽化した計測システム等の更新、世代交代に伴う若手人材への対応を推進しました。今期は受注工事で特殊技術を用いて所定の施工品質を確保し業務を完了しました。
5.につきましては、鋼板の完全溶込み溶接部の非破壊検査の生産性向上に着目した自動検査システムの開発を行っております。環境部門と連携し洋上風車を構成するタワー部材などの大型部材の溶接部検査の効率化に活用するための高度な非破壊検査手法の選定、AI画像判定を用いた自動化処理について検討しております。
6.につきましては、製作施工時における安全性向上のためのシステム開発を学と共同で開始しております。現場の動画分析とAI判定を活用した危険予知の高度化、作業効率化に向けたシステムについて取り組んでおります。
当連結会計年度における橋梁事業の研究開発費は31百万円であります。
―鉄骨事業―
当連結会計年度に実施した研究開発項目と概略の内容を以下に示します。
1.780N/mm2級鋼(80㎏鋼)の全層多層サブマージアーク溶接施工法の確立
2.780N/mm2級鋼(80㎏鋼)を用いたエレクトロスラグ溶接の性能検証
3.板厚60mm~80mm角溶接のサブマージアーク溶接品質安定に向けた検証試験
4.エレクトロスラグ溶接の品質安定に向けた検証試験
5.ポータブルサブマージアーク溶接を用いた異形柱角継手の生産性向上試験
1.につきましては、前連結会計年度からの継続研究であります。780N/mm2級鋼(80㎏鋼)を用いた柱の製作で、角溶接は従来初層の割れ発生の観点から、下盛りCO2のあと多層サブマージアーク溶接の施工としておりました。これを施工効率の向上のため、初層から多層サブマージアーク溶接を実施できる施工技術を確立するための研究になります。当連結会計年度では1体追加試験を行う予定でしたが、優先度を低くしたため実施できていません。780N/mm2級鋼(80㎏鋼)を用いた柱を使用する物件が2024年度予定されていますが、数が少ないため従来工法で施工します。検証試験の1体分については材料を確保しているので次期連結会計年度には検証を行うように致します。
2.につきましても、前連結会計年度からの継続研究であります。780N/mm2級鋼(80㎏鋼)を用いた柱の製作のうち、内ダイアフラムをエレクトロスラグ溶接とした部位の性能と品質を確立するための研究になります。前連結会計年度にてミルメーカー3社分(JFEスチール,神戸製鋼所,日本製鉄)の試験体を共同研究として溶接し、全てのメーカーにおいて品質的に問題ないことが確認しております。次期連結会計年度に実工事における780N/mm2級鋼のBOX柱溶接施工試験を行い、合格後適用となります。
3.につきましても、前連結会計年度からの継続研究であります。既存サブマージアーク溶接の品質安定を図るため、特に板厚60mm~80mmについて性能検証試験を実施しております。当連結会計年度では、サブマージアーク溶接機のモーター能力の増強を行いました。その後80mm1パスサブマージアーク溶接を行いましたが、キュービクルの能力不足が発覚し、当初予定していた溶接条件での施工ができず、品質の安定化まで至っておりません。次期連結会計年度においては、キュービクル増設工事の実施と、当初設定の溶接条件による80mm1パスサブマージアーク溶接の検証を行います。またそれとは別に先行電極のワイヤ径見直し(6.4φ→5.1φ)による溶込み不足の改善を図っています。これはプレテストを当連結会計年度に実施し品質の安定化を確認しています。また、狭開先小パス数による多層サブマージアーク溶接の検証を始めており、次期連結会計年度も引き続きサブマージアーク溶接の生産性向上と品質の向上を図ってまいります。
4.につきましても、前連結会計年度からの継続研究であります。エレクトロスラグ溶接の品質安定化に向けた取り組みになります。当連結会計年度ではエレクトロスラグ溶接の始終端銅製エンドタブの形状を改良し、デポ処理作業軽減を図る予定としていましたが、業務都合でまだ検証試験が実施できていません。当連結会計年度ではスラグ巻込みのような溶接欠陥の改善を図るべく、定期的な打合せを行い、実際のマクロ試験片を作業者に見せ不具合発生の原因考察、フラックスの投入量、投入時期のタイミングなどを関係者で協議、周知したことにより、溶接品質はかなり改善出来ました。次期連結会計年度ではエンドタブ形状改良によるデポ処理作業軽減の検証試験を実施することに致します。
5.につきましては、当連結会計年度より実施した研究開発になります。昨今、異形のボックス柱が増えてきており、その場合従来のサブマージアーク溶接装置に入らないため、ボックスの角継手をCO2半自動溶接で施工していました。新規物件において、板厚が90mmの異形ボックス柱の角継手を持ち運び可能なポータブルサブマージアーク溶接にて施工することで生産性の向上を図ります。当連結会計年度において、既に施工試験を受験し合格しております。次期連結会計年度より実工事が流れるので、その効果を確認致します。
当連結会計年度における鉄骨事業の研究開発費は16百万円であります。
―インフラ環境事業―
環境部門における当連結会計年度に実施いたしました項目と概略の内容を以下に示します。
1.KWT300台風仕様の技術開発
2.ウクライナ国/再生可能エネルギーによる電力自給システム導入調査
3.1MW風力発電機の技術開発
4.洋上風車用タワーの高効率生産技術の開発
1.につきましては、既にラインナップとして製造・販売している中型風力発電機KWT300の台風仕様の開発をしています。沖縄県、九州南部などの一部には、風力発電機の規格で定められた最大設計風速でも導入が困難な地域が数多く存在します。そのような地域にも風力発電機の導入促進を図るため、最大設計風速が90m/sを超える風車の開発を進めています。現在は、沖縄県の宮古島で建設工事を進めており、今後は、各種試験を実施し、型式認証を取得します。
2. につきましては、再生可能エネルギーをガス所蔵施設の電源とするため、風況データの収集・分析を含む最適システムの検討に必要な調査を実施しました。本調査は、経済産業省の「令和4年度現地社会課題対応型インフラ・システム海外展開支援事業費補助金」を活用して実施しました。
3. につきましては、耐用年数を迎える総出力が2MW以下の風力発電所が全国に多数存在し、そのリプレイス需要に対応できる風力発電機が少ないことから、定格出力1MWで、台風地域にも対応できる風力発電機を開発しています。これまで、乱流に強い300kW風力発電機を生産してきた実績をもとに、風速の高いサイトへの導入促進による脱炭素化への貢献を図ります。
4.につきましては、前連結会計年度からの継続研究であります。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業「グリーンイノベーション基金事業/洋上風力発電の低コスト化/次世代風車技術開発事業/洋上風車用タワーの高効率生産技術開発・実証事業」を活用し、合理化溶接技術の開発、ブラスト・塗装ロボット施工システムの開発、AIを活用した非破壊検査システムの開発を進めております。
当連結会計年度におけるインフラ環境事業の研究開発費は207百万円であります。
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