阪急阪神ホールディングス 【東証プライム:9042】「陸運業」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
1.会社の経営の基本方針
当社グループでは、都市交通、不動産、エンタテインメント、情報・通信、旅行及び国際輸送の6つの事業を主要な事業領域と位置付け、グループ経営機能を担う当社(純粋持株会社)の下、阪急電鉄㈱、阪神電気鉄道㈱、阪急阪神不動産㈱、㈱阪急交通社及び㈱阪急阪神エクスプレスの5社を中核会社として、グループ全体の有機的な成長を目指しています。
当社グループは、鉄道事業をベースに住宅・商業施設等の開発から阪神タイガースや宝塚歌劇など魅力溢れるエンタテインメントの提供に至るまで、多岐にわたる分野において、それまでになかったサービスを次々と提供することにより、沿線をはじめ良質な「まちづくり」に貢献するとともに、社会に新風を吹き込み、100年以上の長い歴史の中で数々の足跡を残してきました。そして、これらの活動等を通じて、暮らしを支える「安心・快適」、暮らしを彩る「夢・感動」を絶えずお客様にお届けしてきました。今後も、グループの全役員・従業員が、お客様の日々の暮らしに関わるビジネスに携わることに強い使命感と誇りを持ち、そうした思いを共有し、一丸となって業務にあたっていく上での指針として、以下のとおり「阪急阪神ホールディングス グループ経営理念」を制定しています。
阪急阪神ホールディングス グループ経営理念 | |
使命(私たちは何のために集い、何をめざすのか) | |
「安心・快適」、そして「夢・感動」をお届けすることで、お客様の喜びを実現し、社会に貢献します。 | |
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価値観(私たちは何を大切に考えるのか) | |
お客様原点 | すべてはお客様のために。これが私たちの原点です。 |
誠実 | 誠実であり続けることから、私たちへの信頼が生まれます。 |
先見性・創造性 | 時代を先取りする精神と柔軟な発想が、新たな価値を創ります。 |
人の尊重 | 事業にたずさわる一人ひとりが、かけがえのない財産です。 |
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行動規範(「価値観」を守り、「使命」を果たしていくために、私たちはどのように行動するのか) | |
1. 私たちは、出会いを大切にし、お客様の立場に立って最善を尽くします。 | |
2. 私たちは、法令遵守はもとより、社会的責任を自覚して行動します。 | |
3. 私たちは、仕事に責任と誇りを持ち、迅速にやり遂げます。 | |
4. 私たちは、目先のことのみにとらわれず、中長期的な視点で考えます。 | |
5. 私たちは、現状に満足することなく、時代の先を見据えて取り組みます。 | |
6. 私たちは、思いやりの心を持ち、お互いを認め合います。 | |
7. 私たちは、活発にコミュニケーションを行い、風通しのよい職場をつくります。 | |
8. 私たちは、グループ全体の発展のために力を合わせます。 |
2.サステナビリティ宣言
当社グループでは、2020年5月に発表した「阪急阪神ホールディングスグループ サステナビリティ宣言」に基づき、ESG(環境・社会・企業統治)に関する取組を着実に推し進めています。
このサステナビリティ宣言では、当社グループがサステナブル経営を進める上での基本方針や6つの重要テーマ等を定めており、これをベースに、これからもお客様や地域社会等との信頼関係を構築しながら、持続的な成長を図り、ひいては持続可能な社会の実現につなげていきます。
なお、サステナブル経営の推進にあたり、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」(※1)及び「国連グローバル・コンパクト」(※2)への対応として、2021年5月に賛同の意を表明しています。
※1 「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」…2015年に、G20の要請を受け、金融安定理事会の作業部会として設置されたものであり、投資家等の適切な投資判断に資するよう、企業等に対して、気候変動に伴うリスクと機会の特定、その財務的な影響の試算、気候変動に対応する事業戦略等を開示することを推奨しています。
※2 「国連グローバル・コンパクト」…1999年の世界経済フォーラムで提唱された企業の行動規範であり、企業等に対し、人権・労働・環境・腐敗防止の4分野において、10原則を遵守し実践するよう要請しています。
<サステナビリティ宣言の概要>
基本方針
~暮らしを支える「安心・快適」、暮らしを彩る「夢・感動」を、未来へ~ 私たちは、100年以上積み重ねてきた「まちづくり」・「ひとづくり」を未来へつなぎ、 地球環境をはじめとする社会課題の解決に主体的に関わりながら、 すべての人々が豊かさと喜びを実感でき、 次世代が夢を持って成長できる社会の実現に貢献します。 |
6つの重要テーマ | 取組方針 |
① 安全・安心の追求 | 鉄道をはじめ、安全で災害に強いインフラの構築を目指すとともに、誰もが安心して利用できる施設・サービスを日々追求していきます。 |
② 豊かなまちづくり | 自然や文化と共に、人々がいきいきと集い・働き・住み続けたくなるまちづくりを進めます。 |
③ 未来へつながる暮らしの提案 | 未来志向のライフスタイルを提案し、日々の暮らしに快適さと感動を創出します。 |
④ 一人ひとりの活躍 | 多様な個性や能力を最大限に発揮できる企業風土を醸成するとともに、広く社会の次世代の育成にも取り組みます。 |
⑤ 環境保全の推進 | 脱炭素社会や循環型社会に資する環境保全活動を推進します。 |
⑥ ガバナンスの充実 | すべてのステークホルダーの期待に応え、誠実で公正なガバナンスを徹底します。 |
<サステナビリティ宣言の位置づけ>
3.優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
(1) 長期ビジョンについて
当社グループでは、コロナ禍をきっかけとした急速な社会変化や、SDGs・2050年カーボンニュートラル(脱炭素社会)への意識の高まり等、社会経済環境や事業環境の変化に対応し、持続的な企業価値の向上を実現していくために、2022年5月に「阪急阪神ホールディングスグループ 長期ビジョン-2040年に向けて-」を策定しました。
この長期ビジョンでは、今後推進していく「芝田1丁目計画(大阪新阪急ホテル・阪急ターミナルビルの建替え、阪急三番街の全面改修等)」や「なにわ筋連絡線・新大阪連絡線計画」等の大規模プロジェクトの利益貢献が期待できる2035~2040年頃を見据えながら、その実現に向けた戦略や財務方針等を下記のとおり定めています。
今後の経営目標については、2035~2040年頃の成長イメージに加え、その通過点として2030年度の経営目標(財務指標・非財務指標)を下記のとおり掲げています。
2030年度における経営目標(財務指標・非財務指標)
<財務指標>
収益性 | 事業利益 (注) 事業利益…営業利益+海外事業投資(不動産事業等)に伴う 持分法投資損益 | 1,300億円+α(※2) |
財務健全性 | 有利子負債/EBITDA倍率 (注) EBITDA…事業利益+減価償却費+のれん償却額 | 5倍台 |
資本効率 | ROE (注) ROE…親会社株主に帰属する当期純利益÷自己資本 | 中長期的に7%水準 |
<非財務指標>
・ CO2排出量の削減率 (2013年度比)△46% ・ 鉄道事業における有責事故ゼロ | ・ 従業員満足度の継続的向上 ・ 女性管理職比率 10%程度 ・ 女性新規採用者比率 30%以上を継続 |
2035~2040年頃の成長イメージ
大規模プロジェクトの竣工・開業による利益貢献に加え、阪急阪神DXプロジェクトの一層の 推進等により、2030年度の事業利益(1,300億円+α)からさらなる利益伸長を目指す |
当社グループでは、現在、この長期ビジョンで掲げた戦略に沿って、海外不動産事業の規模拡大をはじめ、様々な取組を推し進めていますが、当社グループを取り巻く事業環境は、同ビジョン策定時に想定していた以上のスピードで変化しています。そうした中でも、当社グループが持続的に成長していくためには、既存事業の伸長に注力することはもとより、成長する市場にも新たに積極果敢に進出していくことによって、利益の拡大を図り、安定的な資金創出力を確保・維持していくことが必要となります。加えて、昨今の資本市場からの要請等に鑑みますと、中長期的に企業価値の向上を目指していくうえでは、経営目標の中でも、ROE8%水準を意識した資本効率の向上がとりわけ重要と考えられます。
こうしたことを踏まえ、当社グループでは現在、市場の将来性や資本効率等の観点から、事業ポートフォリオや経営資源の配分のあり方等について継続的に検討を深めています。これにより、変化する事業環境の中でも、様々なステークホルダーの期待に応え、持続的に成長できる企業グループとなることを目指していきます。
※1 当社グループがDX(デジタル・トランスフォーメーション)に関して新たに取り組む施策(デジタル領域での新サービスの提供やグループ共通IDの導入等)の総称
※2 事業利益1,300億円を目指すとともに、阪急阪神DXプロジェクト等での上積み(+α)に挑戦します。
(2) 中期経営計画の進捗等について
当社グループでは、長期ビジョンの実現に向け、中期的な取組を反映した具体的な実行計画として、2022年度から2025年度までの4か年の中期経営計画を策定し、それに則った施策を推し進めています。
2023年度については、都市交通事業において旅客数に一定の回復がみられたことや、不動産事業においてホテルの宿泊需要の回復に加え、分譲、賃貸及び海外不動産等の各事業も伸長したこと、またエンタテインメント事業において阪神タイガースが18年ぶりのリーグ優勝及び38年ぶりの日本シリーズ制覇を果たすなど、スポーツ事業が好調に推移したこと等により、着実に利益を伸ばすことができました。
2024年度については、不動産事業においてマンション分譲戸数が増加するものの、スポーツ事業での減益を見込むこと等により、事業利益は1,070億円、親会社株主に帰属する当期純利益は700億円と予想しています。そして、現行の中期経営計画の最終年度となる2025年度については、ここ数年間で新たに着手・推進した取組の成果を発現させていくことで、事業利益は1,180億円、親会社株主に帰属する当期純利益は750億円、「有利子負債/EBITDA倍率」は6.9倍、ROEは7%水準となる見通しです。
また、株主還元については、経営基盤の一層の強化に努めながら、総還元性向(※3)を30%とすることで、安定的な配当の実施と自己株式の取得に取り組むことを基本方針としています。このうち、配当については、近時の業績の推移等を踏まえて、2024年度の利益配分から、1株当たりの年間配当金を55円から60円(中間配当金30円、期末配当金30円)に引き上げることを予定しています。
※3 総還元性向…親会社株主に帰属する当期純利益に対する年間配当金総額と自己株式取得額の合計額の割合
(注)事業利益=営業利益+海外事業投資(不動産事業等)に伴う持分法投資損益
(2022年度以前は、海外事業に係る持分法適用会社が存在していなかったため、営業利益=事業利益)
(3) 宝塚歌劇団の事案について
当社グループは、2023年9月に宝塚歌劇団宙組劇団員が逝去された件について、宝塚歌劇団における組織運営の不備により、亡くなられた劇団員に対し、長時間の活動を余儀なくさせ過重な負担を生じさせたこと、及び、宝塚歌劇団内において、厚生労働省指針(令和2年厚労省告示第5号)が示す「職場におけるパワーハラスメント」に該当する様々な行為を行ったことによって、当該劇団員に多大な心理的負荷を与える事態を引き起こしたことを認めました。持株会社である当社としても、このような事態を引き起こしたことを厳粛に受け止め、以下の再発防止に向けた取組を着実に実行していくとともに、さらなる改善策を検討していきます。
① 「一人ひとりの活躍」に向けた取組のさらなる推進
各事業の特性に応じた形で、相談・救済の窓口の再周知やハラスメント調査・研修等の施策をより強化するとともに、外部の専門家の助言を得ながら「ビジネスと人権」を意識した施策のPDCAサイクルをさらに推進することなどにより、当社グループの事業活動に関係する人権リスクを防止・軽減していきます。
② 宝塚歌劇団に対するガバナンス機能の強化
宝塚歌劇団について、当社グループのコンプライアンス体制やリスク管理体制の中で、組織としての特性に合った形で適切なマネジメントを行い、当社の宝塚歌劇団に対するガバナンス機能を強化していきます。また、当社監査部門等による監査を強化することで牽制機能の実効性を確保するとともに、当社として、継続的にモニタリングを実施していきます。
そして、宝塚歌劇団では、興行計画や稽古スケジュールの見直しと併せて、活動時間管理の強化や、劇団員の心身の健康管理体制の強化など、現場のサポートやケアを行う体制・仕組みを強化し、劇団員が良好なコンディションのもと活動に打ち込める環境の整備を進めています。また、現場の問題を把握し、意見を吸い上げる仕組みを強化するため、各種相談窓口の利用促進を図るとともに、職場環境(心理的安全性等)を把握するための調査を実施しています。これらの取組をより実効性の高いものとするために、当社グループで歌劇事業を運営する阪急電鉄㈱に外部有識者で構成されるアドバイザリーボードを設置し、専門的知見から助言を受けて、今後の取組に生かしていきます。
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