野村不動産ホールディングス 【東証プライム:3231】「不動産業」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1)経営方針
①中長期経営計画
当社グループでは、グループ企業理念として「あしたを、つなぐ」を掲げております。この企業理念に基づき、2022年4月に当社グループが今後、持続的かつ高い利益成長を実現していくため、中長期経営計画を策定いたしました。
a.全体コンセプト
・野村不動産グループ 2030年ビジョン「まだ見ぬ、Life & Time Developerへ」の実現に向けて、
価値創造の考え方・手法を進化・変革
・高い利益成長、高い資産・資本効率を実現。高還元と高成長を両立
・「当社グループの持続的な成長」と「持続可能な社会への貢献」を一体と捉え、サステナビリティを推進
当社グループ経営体系図
「将来当社グループがどういった価値を社会やお客様に提供している企業グループになりたいのか」という目指す姿を明確にすべく、「野村不動産グループ 2030年ビジョン」を定めました。そして、そのビジョンのもと、価値創造の考え方・手法を、進化させ、また変革してまいります。
b.野村不動産グループ 2030年ビジョン
c.価値創造の進化・変革
本計画では、「高い利益成長と高い資産・資本効率の実現」を目指し、「国内デベロップメント事業の更なる拡大」「サービス・マネジメント分野の高い利益成長」「海外事業の着実な成長」を成長に向けた重点戦略と位置付け、計画を推進してまいります。そして、本計画を通じた当社グループの成長の成果を、しっかりとステークホルダーの皆さまに還元してまいります。
(2)経営環境
経営環境に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
①外部環境
国内外における様々な社会課題、当社事業を取り巻く環境の変化、人々の住まいや働き方等に関する価値観・志向の変化等を踏まえ、特に注視する外部環境は以下のとおりです。
■ 全社 <中長期的に注視していく事業環境> ・ 労働人口の減少や人材獲得競争の激化 ・ ライフスタイル・ワークスタイル・消費や余暇に関する価値観の変化 ・ デジタルテクノロジーの加速度的な進化 ・ サステナビリティに対する意識の高まり、リノベーション・既存ストック活用ニーズの増加 ・ 国内における少子高齢化の進展や人口の減少、世帯構成の多様化 ・ インバウンドの増加 ・ 国内における富裕層の増加継続と関連マーケットの動向 ・ 激甚化する自然災害の増加 ・ サイバー攻撃の増加
<今期特に注視する事業環境(不動産関連市場・資金調達環境・海外情勢)> ・ 国内外の金利上昇、インフレ進行等による経済情勢・資金調達市場・企業業績・個人消費等への影響 ・ 不動産売買マーケットやREIT 投資口価格の動向、機関投資家・個人富裕層等の不動産投資意欲の変化 ・ 国内外の資材価格や人件費の高騰による更なる工事費の上昇 ・ 海外事業の投資対象国における政治情勢・経済環境(金利・為替等)の動向
■ 各部門 <住宅部門> ・ 少子高齢化の進展による市場規模の変化 ・ 建築費の上昇 ・ 住宅ローン金利環境の変化 ・ ライフスタイルの変化・住まいに対するニーズの多様化 ・ サステナビリティ・カーボンニュートラルへの消費者意識の高まり ・ 地域活性化・建物老朽化・木密地域の解消など再開発や建替の社会ニーズ ・ 首都圏への人口流入回復による住宅需要の拡大 ・ 中長期的な、インバウンド顧客の増加の可能性
<都市開発部門> ・ 顧客の価値観の変化、個の重視、コミュニティの重視、健康重視、時間価値重視 ・ サステナビリティ・カーボンニュートラルへの消費者意識の高まり ・ 消費者物価、建築費、動光熱費などにおけるインフレの進行 ・ 国内外における金利上昇による、不動産売買市況への影響 ・ ワークスタイルとオフィスに求める機能への従業員の意識の変化 ・ スタートアップ企業の増加などによる、サービスオフィスなど多様なオフィスニーズの増加 ・ EC化の加速と2024年からの時間外労働の上限規制による、物流拠点ニーズの高まり ・ コロナ禍の終息による、ショッピングセンターや飲食店舗の来館数や売上の回復
<海外部門> ・ 各国の中長期的な経済成長 ・ アジア各国における金利高止まりによる住宅市場への影響 ・ 政策金利水準と収益不動産売買市場の動向 ・ 不動産開発を通じた社会課題解決への期待の高まり ・ 英国における厳しい環境規制に対する高機能なオフィスのニーズ拡大 |
<資産運用部門> ・ 伝統的資産運用からオルタナティブ資産運用へ ・ 国内外における金利上昇による不動産売買市況及び機関投資家の需要への影響 ・ 投資対象セクターの拡大(データセンター/インフラなど) ・ ESG投資の拡大
<仲介・CRE部門> ・ 都心部の中古不動産市場の価格上昇および堅調な反響の継続と郊外の購入ニーズの落ち着き ・ 地政学リスクの高まりに起因したアジア圏の投資家による収益不動産取引ニーズの増加 ・ 製造業の国内回帰による新規投資ニーズの増加 ・ 機関投資家のオルタナティブ投資ニーズの増加 ・ 業績好調な中小企業による、株高、資産ポートフォリオ見直しを背景とした堅調な購入ニーズ
<運営管理部門> ・ デジタル技術の進化 ・ 暮らし方、働き方の変化、入居者属性の多様化 ・ 人材獲得競争の激化(労働人口減少、少子高齢化) ・ 建物の高経年化 ・ インフレによる資材費や人件費のコスト上昇 |
②当社グループの競争優位性
長年にわたる豊富な事業実績を通じて培ってきた、当社グループの競争優位性は以下のとおりです。
(3)経営戦略
外部環境の認識及び当社グループの競争優位性を踏まえ、高い株主還元と年平均事業利益成長率8%水準を達成するため、事業ポートフォリオ戦略と部門別の成長に向けた基本方針を策定しております。
①事業ポートフォリオ戦略
各事業の特性を活かし、高い資産効率と利益安定性を両立する事業ポートフォリオを追求していきます。
②成長に向けた部門別の基本方針
部門 | 成長に向けた基本方針 |
住宅 | ・住宅分譲事業における「プラウド」の更なる進化(4,000~5,000戸の安定供給) ・多様化する顧客ニーズへ対応する商品・サービスメニューの拡充 ・再開発・建替事業の取組強化 ・賃貸住宅・ホテル等の収益不動産事業における事業量拡大への取組強化 |
都市開発 | ・働き方の変化等に対応したサービス提供の強化や、高機能物流などの成長分野への投資 拡大など、環境変化を事業機会に繋げる価値創造の進化 ・戦略的な資産入れ替えによる、含み益の実現化と賃貸ポートフォリオの強化 ・サステナブルな社会への貢献やデジタル技術を活用した新たな商品・サービス等の構築 |
海外 | ・成長著しいアジア各国における分譲住宅事業の着実な成長 ・先進国における収益不動産事業の取組強化 ・国内で培ったノウハウ・知見を活かした価値貢献領域の拡大 |
資産運用 | ・賃貸バリューチェーンの活用によるREIT事業の着実な成長 ・オルタナティブ投資ニーズの獲得に向けた私募ファンド事業の強化 ・野村グループとの協業による新たな領域(新規投資家層、新規セクター等)における 事業機会の獲得と拡大 |
仲介・CRE | ・高い効率と高い生産性を実現する人材育成やDXの活用による高品質なサービスの提供 ・リテール事業における、都心エリアへの人員増強による富裕層対応の強化 ・ミドル事業※における、野村グループや金融機関等との協業による各種ニーズの獲得 ・ホールセール事業における、顧客基盤に基づくCRE提案の推進・ファンドの 投資ニーズの獲得 |
運営管理 | ・お客様視点に立ったサービス追求による競争力のある商品・サービスの開発・展開 ・DXを活用した業務効率化・省人化の促進とサービス品質向上の両立 ・お客様資産の価値向上に資する高品質な改修・修繕工事の提案及び提供 |
※ 中堅・中小企業、企業オーナー、一部の個人投資家や富裕層向け不動産仲介事業
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
①利益目標に関する指標
国内における事業に加え、現地パートナー企業との共同投資を基本とする海外における投資・開発事業の利益及び戦略投資(M&A)の成果を適切に反映させるため、利益目標に関する指標を「事業利益」※とし、段階的な成長を図るべく以下のとおり中長期的な指針を掲げております。
※ 事業利益=営業利益+持分法投資損益+企業買収に伴い発生する無形固定資産の償却費
+海外部門におけるプロジェクト会社(※1)の持分売却損益
※1 不動産の保有・開発を主としたSPC等を指します。
※2 従前の事業利益の定義に「海外部門におけるプロジェクト会社の持分売却損益」を追加いたします。
なお、本定義への変更は、2025年3月期から適用いたします。
| 2025年3月期 | 2028年3月期 | 2031年3月期 |
事業利益 | 1,150億円 | 1,400億円~ | 1,800億円~ |
②財務・資本政策に関する指標
30%水準の自己資本比率を維持しながら、事業活動を通じた付加価値の創造により持続的な企業価値向上を図り、高い資本効率と安定的な株主還元を実現するため、財務・資本政策に関する指標を「ROA」・「ROE」・「総還元性向/配当性向」とし、以下のとおり中長期的な指針を掲げております。
| 2023年3月期~ 2025年3月期 | 2026年3月期~ 2028年3月期 | 2029年3月期~ 2031年3月期 |
ROA | 4.5%水準 | 5%水準 | 5%以上 |
ROE | 9%水準 | 10%水準 | 10%以上 |
総還元性向/配当性向 | 総還元性向 40~50% | 配当性向 40%水準 |
加えて、2025年3月期より、配当の安定性の向上を目的に、年間の配当金について、DOE4%を満たす水準を下限とすることを指針としております。
※ROA=事業利益/期中(平均)総資産
※ROE=親会社株主に帰属する当期純利益/期中(平均)自己資本
※総還元性向=(1株当たり配当額+1株当たり自己株式取得金額)/1株当たり当期純利益
※配当性向=1株当たり配当額/1株当たり当期純利益
※DOE=年間配当額÷期中平均自己資本
(5)重点的に取り組む経営施策
①着実な事業の推進と利益の積上げを図るための事業ポートフォリオの構築
各部門において、重点的に取り組む施策は以下のとおりです。
a.住宅部門
住宅分譲事業においては、事業量の確保に向け、再開発・建替事業の取組強化、多様化するニーズへ対応する商品ラインナップの拡充に努めてまいります。また、既存の住宅事業で培ってきた商品企画力等の強みを活かしてホテル事業のさらなる成長を図ってまいります。
b.都市開発部門
オフィス事業においては、テナント企業やワーカー向けに働き方の変化に対応した新しい商品・サービスの提供に努めてまいります。物流事業において、引き続き拡大する大型・高機能物流施設へのニーズや、輸送費の高騰を受けて変化するエリア毎のニーズに対応し、用地取得や商品企画を進めてまいります。商業事業においては、「モノ消費」から「コト消費」への消費スタイルの変化等に対応した商品企画、施設運営を進めてまいります。また、2025年2月に竣工を予定する「BLUE FRONT SHIBAURA(芝浦プロジェクト)S棟」の開業に向け、リーシングや開業に向けた運営体制の整備を進めてまいります。
c.海外部門
中長期的な経済成長が見込まれるアジア諸国での開発事業において、当社グループがこれまで国内で培ってきたノウハウ・知見を発揮すると共に、新たな現地パートナー企業の探索、英米をはじめとした収益不動産事業への取り組みの加速、ガバナンス体制の強化によるリスク管理機能の向上にも取り組んでまいります。
d.資産運用部門
REIT事業における着実な運用資産残高の拡大に加え、商品ラインナップの拡充等を通じた私募ファンド事業の拡大、野村リアルアセット・インベストメント株式会社の運用資産残高の早期積み上げ等に努めてまいります。
e.仲介・CRE部門
不動産の仲介・コンサルティング事業において、高度な専門性とデジタル領域での先進性を融合させ、法人・個人、国内・海外を問わず、多様化する顧客ニーズにワンストップで対応し、顧客満足度と生産性の向上に取り組んでまいります。
f.運営管理部門
運営管理事業において、デジタルテクノロジーの積極的な活用により、高効率且つ高品質なサービスの提供と省人化を推進してまいります。また、請負工事事業において、お客様の資産価値向上に資する改修・修繕提案を通じた、受注量の拡大に努めてまいります。
②賃貸資産ポートフォリオの戦略的入替の継続
当社グループにおいては、中長期的な視点で、賃貸資産の戦略的な入れ替えを実施し、良質な賃貸資産ポートフォリオの構築に努めるとともに、適切な時期での売却により開発利益・含み益の実現化を図り、回収した資金を再度不動産開発事業に投資することで、高い資産効率と持続的な成長を実現させる方針としております。
当連結会計年度においては、オフィスビルでは「PMO銀座Ⅱ」、物流施設では「Landport戸田」等が竣工しております。
引き続き、2025年3月期以降に竣工予定となる芝浦・日本橋等の大型複合開発プロジェクトを着実に推進するとともに、国内外の不動産市況の動向を踏まえた戦略的な売却を実践し、競争力のある賃貸資産ポートフォリオの構築に努めてまいります。
③価値創造の進化・変革につながるDXの推進強化
当社グループが関係する様々な事業分野においては、お客様への商品・サービスの提供におけるデジタルテクノロジーの活用が必要不可欠となってきており、急速な技術革新や革新的な新規参入企業の出現による顧客ニーズの変化等への対応が遅れた場合には、当社グループの競争優位性が低下し、業績にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。
当社の「DX戦略委員会」においては、デジタル技術の活用によりビジネスモデルそのものを変革することで競争優位性を確立する『DX領域』の審議を強化しております。また、DX・イノベーション推進部にて、新領域事業の研究・開発、イノベーション創発、DX戦略等の企画・推進・支援等を行っております。今後も、加速度的に進化するテクノロジーとそれに伴う顧客ニーズの変化を的確に把握のうえ、各部門のDXに関する重点実行テーマを選定し、デジタル技術を活用した既存ビジネスモデルの深化を進めるとともに、業態変革・新規ビジネスモデルの創出に向けた取り組みを強化することにより、当社グループの競争優位性の向上に努めてまいります。
④継続的な成長に向けた、よりチャレンジングな組織風土の醸成のための本社移転
当社グループは、2022年4月に策定した中長期経営計画、及び2030年をターゲットとする当社グループビジョン「まだ見ぬ、Life & Time Developerへ」のもと、高い利益成長と高い資産・資本効率を実現するためには、ビジネス領域の拡大と、その基盤となる組織としての成長を継続的に行う必要があると考えており、これを実現するために、当社グループ各社の本社※を、2025年2月に竣工を予定している大規模複合開発「BLUE FRONT SHIBAURA(芝浦プロジェクト)S棟」に移転することを決定しております。
この本社移転プロジェクトにより、グループのシナジー効果を最大化すると共に、下記の3つの環境を実現し、都心で空・海・緑を感じながら、自らその日の働きかたをデザインする新たな働きかた「TOKYO WORKation(トウキョウ ワーケーション)」を体現することで、継続的な成長に向けて、グループ全体でこれまで以上にチャレンジングな組織風土を醸成し、新たなビジネスへの挑戦・探索意欲を向上させ、 イノベーションの誘発や創出を実現していきたいと考えています。
本社移転を通じて実現したい3つの環境
・ ウェルビーイング
東京の利便性と自然環境が融合した稀有な立地環境・最新鋭のスペックを備えたオフィス環境を活かし、
社員一人一人が生き生きと充実した人生を過ごし、活力を持ち合わせられる環境
・ エンゲージメントハブ
グループビジョンを象徴する「BLUE FRONT SHIBAURA(芝浦プロジェクト)」を通して、社員が自然に
グループビジョンを理解・体感できる環境
・ ダイバーシティ&インクルージョン
働き方や働く環境に求められる価値観が変化した今だからこそ、オフィスの価値を再定義し、基準階
面積1,500坪の広大なスペースを活かした多様な働き方ができる空間づくりを計画。出社時の社員同士の
つながりの質を高め、多様な社員が積極的に協同し、知恵を出しあう仕組みを備えた環境
※当社グループ各社の移転対象範囲については検討中です。
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