西日本鉄道 【東証プライム:9031】「陸運業」 へ投稿
企業概要
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
(1) 経営方針、経営戦略等
① 会社の経営の基本方針
当社グループは、「『出逢いをつくり、期待をはこぶ』事業を通して、“あんしん”と“かいてき”と“ときめき”を提供しつづけ、地域とともに歩み、ともに発展します。」という「にしてつグループの企業理念」に基づき、鉄道・バスの運輸業を軸に、地域に密着した多様な事業を展開しています。
② 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、1908年の創業以来、様々な時代の変化を乗り越えながら今日に至りますが、今後のポストコロナ社会における長期的な経営環境につきましては、デジタル化の加速、脱炭素社会の進展、生活スタイルの多様化等、これまで以上に変化のスピードが急激で、不確実性の高い時代が続くものと認識しています。
このような環境下においてもサステナブルな成長を実現するため、2022年11月、これまでの事業モデルの延長ではなく、想定した未来像から遡るバックキャストの手法で、当社グループの存在意義と実現したい社会、ステークホルダーへ提供していたい価値、その達成に向けた基本的な事業戦略等で構成した新長期ビジョン「にしてつグループまち夢ビジョン2035」を策定いたしました。
本長期ビジョンでは、提供していたい価値を実現するための基本スタンスを「濃(こま)やかに、共に、創り支える ~Grow in harmony with you~」とし、「出逢いをつくり、期待をはこぶ」事業の進化と新領域への挑戦を両輪としたビジネスモデルの変革、そして従業員一人ひとりが自己成長やチャレンジを実現しながらいきいきと働き、最大のパフォーマンスを発揮できる環境の整備や、事業の効率性とサステナビリティを意識したポートフォリオの構築等に取り組んでまいります。
※長期ビジョン「にしてつグループまち夢ビジョン2035」の詳細は、当社グループホームページでご確認ください。
https://www.nishitetsu.co.jp/ja/ir/management/vison.html
(2) 経営環境ならびに優先的に対処すべき事業上および財務上の課題
① 今後の経営環境の変化
わが国においては、より一層の生産年齢人口の減少、デジタル化の加速、生活スタイルの多様化、アジアを中心とした新興国の経済成長と市場拡大等、経営環境が絶えず変化していくことが想定されます。
また、当社グループにおいても、「福ビル街区建替プロジェクト」等大型開発プロジェクトの着実な推進や、事業基盤となる人財の確保等、様々な課題に直面しています。
加えて、コロナ禍を経た社会情勢の変化、ウクライナ情勢等の地政学的リスクの高まりによる原材料価格の上昇や金融資本市場の変動等、先行き不透明な状況が続くものと予想されます。
② 優先的に対処すべき事業上および財務上の課題
当社グループでは、2023年3月に、「にしてつグループまち夢ビジョン2035」の実現に向けた第1ステップとして、第16次中期経営計画(2023年度~2025年度)を策定いたしました。本計画では、テーマを「サステナブルな成長への挑戦~Challenge for sustainable growth~」とし、5つの重点戦略に基づき、将来に向けた持続可能な公共交通事業の構築、福ビル街区建替プロジェクトの完遂や、ノウハウを活用した固定資産に頼らない事業モデルの基盤構築、新領域事業への挑戦、多様な人財を確保するための待遇の見直し、サステナブルな成長を支える人財力強化等に向けて取り組みを進めてまいります。
さらに、2024年3月に、第16次中期経営計画の最終年度目標の達成に向け、必要な施策の追加・修正を反映した2024年度計画を策定いたしました。本計画では、第16次中期経営計画に掲げた基本方針・重点戦略のもと、「新たなライフスタイルの需要取り込み」、「人的資本経営の着実な推進」、「資本効率を意識した経営の実践」等の着眼点を加え、「にしてつグループまち夢ビジョン2035」実現に向けた基盤づくりとして、さらなる構造改革と企業価値を高める成長戦略を推進してまいります。
〈2024年度計画〉
第16次中期経営計画の各重点戦略における取り組みは以下のとおりです。
(重点戦略1から3までに係る取り組み/事業領域別)
■収益改善ならびに運営コストの削減
・運賃改定に向けた検討
■お客さまの利用シーンにあわせた濃やかでシームレスな移動サービスの提供
・九州MaaSの構築
2024年度サービス開始に向けた事業者間およびモード間連携の推進
■国内外の観光・MICE需要の獲得・受入環境の整備
・インバウンド増加への対応(高速・空港関係路線のさらなる増強)
太宰府ライナーバス「旅人」、高速バス福岡~湯布院線の増強
福岡市地下鉄との連携によるデジタル乗車券造成
タッチ決済の導入駅拡大
■天神大牟田線・貝塚線開業100周年にあわせた施策の実施
・開業100周年を記念したNFT(非代替性トークン)の販売やイベント実施
■新技術を活用したサービス・事業への挑戦
・自動運転バス実証実験の推進
■ノウハウ等を活用した新たな収入源の獲得拡大・新たなスキームづくり
・AI活用型オンデマンドバス「のるーと」の外販強化
・nimocaバスシステムの外販継続
・レトロフィット電気バス車両改造の事業化の検討
■収益性の改善
・駅や商業施設のリニューアル
西鉄久留米駅ビルリニューアル(2024年9月完了予定)
チャチャタウン小倉、ソラリアプラザのリニューアル
・北九州市八幡東区・平野における複合開発の推進
商業施設の開業(2024年7月予定)、住宅分譲開始(2025年6月予定)
■福ビル街区建替プロジェクトの完遂
・竣工に向けた建築工事の推進(2024年12月竣工予定)
環境性能認証(CASBEE ウェルネスオフィス)の取得に向けた取り組み
集客、賑わい創出のためのアート計画の推進
・天神の価値やビルの魅力を高める運営計画の構築
ICTの活用による付加価値向上
開業プロモーションの企画実施
■天神等福岡都心部における地権者共働の開発プロジェクト等の推進
・(仮称) 天神二丁目南ブロック駅前東西街区プロジェクト
都市計画推進協議会に参画
・(仮称) 天神一丁目15・16番街区プロジェクト
再開発準備組合に参画
・福岡家庭裁判所跡地における複合開発(2030年開業目標)
基本設計の開始
■沿線開発、地域拠点を中心としたまちづくり
・連続立体交差事業による周辺開発・店舗開発
桜並木駅店舗の開業準備
春日原駅・白木原駅における工事着工・リーシングの開始
沿線高架下における基本計画の策定
■国内の事業エリア・業容の拡大
・福岡県・首都圏外の中核都市(熊本、岐阜、札幌等)における
分譲マンション等開発事業の展開
・新規ホテル出店計画の着実な推進
ソラリア西鉄ホテル大阪本町(仮称)の開業準備(2026年度冬開業予定)
・賃貸用物流不動産事業の拡大
・区画整理事業への参画を通じた戸建事業の展開
・旅行業における自治体と連携した地域観光開発の推進
国・自治体へのソリューション提案
自治体・観光系外郭団体との連携による大型イベントへの参画
■海外でのまちづくりに向けた事業の拡充
・海外不動産事業の着実な推進
・新規ホテル出店計画の着実な推進
西鉄ホテル クルーム バンコク シーロムの開業準備(2024年夏開業予定)
■天神のまちづくりへの持続的関与、まちづくりの加速化
・アセットマネジメント事業への参入(私募ファンドの組成)
・安定した開発利益やプロパティマネジメント・ビルマネジメント受託機会の創出
■収益性の向上・改善
・ストア事業の物流の効率化による配送コスト低減
■新規店舗出店・リニューアルの実施
・交通結節点に位置するにしてつストアの新規出店・リニューアル
・雑貨館インキューブ天神店のリニューアル
体験型店舗、コミュニケーションの場としての店舗づくりを推進(2025年春オープン予定)
■フード事業(中食・外食)の強化
・既存チェーン店(やりうどん、ぎおん亭)の新規出店・改装
■デジタルを活用した事業拡大
・にしてつストアにおけるプラットフォーマーとの連携や移動販売による店舗外売上の拡大
■国際物流事業グループにおける全体最適目線での管理・統括組織の設置検討
■DX推進による業務効率化
・顧客ポータルサイトの構築
・貿易情報プラットフォームとの連携
■フォワーディング事業の拡大(スケールメリットの獲得)
・物量の拡大を目指した機動的な入札対応の推進
■九州での事業強化
・半導体産業の集積が進む熊本地区での事業拡大
・食品ビジネスの拡販
■ロジスティクスセンターの拡大
・関東におけるロジスティクス強化に向けた拠点の新設
「関東ロジスティクスセンター」の稼働
■重点品目の選択と集中
・航空、自動車、半導体、食品、アパレルにおける航空輸出入の取扱重量の拡大
■海運事業の強化に向けた品目戦略を掲げた販売促進
■空港の地上支援業務(グランドハンドリング)の拡大
・福岡空港・北九州空港・成田国際空港における受託拡大
■エネルギー領域における事業拡大
・再生可能エネルギー電源開発事業の拡大
沿線自治体との連携
・系統用蓄電池事業の事業化
蓄電所2ヵ所の設置準備(2024年5月末より順次完工予定)
・BaaS事業の事業化 ※BaaS(Bus(Battery)as a Service)
EVバスの充放電制御の実証検討
■新たな事業・サービスの創出
・農水産領域における事業拡大
・他社との協業によるオープンイノベーションの推進
・M&A・アライアンスによる事業創出
出資先スタートアップ等への成長支援、事業提携、M&A(中計3カ年投資総額:50億円)
(重点戦略4および5、ならびに財務・資本に係る取り組み)
■2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取り組み
・レトロフィット電気バスの導入拡大、エネルギーマネジメントの試験運用
2024年度以降、西鉄グループで34台/年のペースで導入予定
バス事業における電気料金抑制を目的としたマネジメント実証実験の実施
・既存施設への再生可能エネルギーの採用検討
西鉄ホテルズ全国13ホテルにおいて使用電力をCO2フリーの再生可能エネルギー由来電力への
切り替え
・環境に配慮した開発の推進
ZEH-M Oriented仕様マンション・ZEH住宅の供給拡大
新築案件におけるZEB化の検討
・グリーンロジスティクスへの取り組み
コンテナラウンドユースへの取り組みの推進
モーダルシフト[鉄道輸送活用]の推進
SAF(Sustainable Aviation Fuel)プログラムの利用促進
※SAF:主にバイオマス由来の原料から製造された航空燃料のことであり、CO2排出量を削減可能
■サステナブルな成長を支える人財確保と人財力強化に向けた取り組み
・事業拡大を見据えた多様な人財の確保
採用競争力の向上および各事業の人財確保に向けた待遇改善実施
各事業の特性に応じた職種別人事制度の検討
・サステナブルな成長を支える人財力強化
にしてつグループまち夢ビジョン2035の実現に向けた未来洞察志向の浸透・アップデート
キャリア研修の実施、資格取得支援の拡大
・タレントマネジメントによる組織と個人のパフォーマンス最大化
タレントマネジメントシステムの導入・運用開始
自己啓発支援ツール拡大等の自律的な成長を支援するための仕組みづくり
社内公募/FA制度の検討
・多様な価値観、ライフステージに寄り添った施策の拡充
育児休業取得率向上に向けた施策の推進
健康経営推進計画の実施
■安全性確保に向けた取り組み
・施設設備の安全対策強化
「鉄道駅バリアフリー料金制度」を活用したホームドアの整備
デジタル技術を活用したメンテナンスの効率化
・安全マネジメントの取り組み継続
・健康に起因する事故防止強化の研究
・重大事故防止に向けた取り組み
■資本効率を意識した経営の実践
・事業ポートフォリオマネジメントの推進(ROIC等の活用)
・ROEの向上を意識した規律あるBSマネジメント・CFマネジメントの実施
■海外事業におけるガバナンス強化
・事業を展開する各国の協業先との連携強化
■投資家・株主への情報開示の充実
・統合報告書の発行
※ 第16次中期経営計画(2023年度~2025年度)および2024年度計画の詳細は、
当社グループホームページでご確認ください。
https://www.nishitetsu.co.jp/ja/ir/management/managementplan.html
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、持続的な成長と企業価値向上のため、収益力を高めると共に、経営の効率化を図ってまいります。達成状況を判断するための客観的な指標として、収益力の成長性を示す「連結事業利益」、「連結EBITDA」、財務健全性を示す「NET有利子負債/EBITDA倍率」、資産効率を示す「ROA」、資本効率を示す「ROE」を採用しております。
第16次中期経営計画(2023年度~2025年度)における経営数値目標(連結)は次のとおりです。
| 2026年3月期計画 |
連結事業利益(注)1 | 250億円 |
連結EBITDA (注)2 | 500億円 |
NET有利子負債/EBITDA倍率 | 6.8倍 |
ROA(総資産事業利益率) (注)3 | 3.5% |
ROE(自己資本当期純利益率) | 7.0% |
(注) 1 連結事業利益=連結営業利益+事業投資に伴う受取配当金・持分法投資損益等
2 連結EBITDA=連結事業利益+減価償却費+のれん償却費(営業費)
3 総資産は鉄道の受託工事前受金相当額を除いて算出しています。
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