企業兼大株主荏原製作所東証プライム:6361】「機械 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

(1) 当社のリスクマネジメントの体制

 荏原グループのリスク管理活動を統括し、審議、改善指導・支援を行う機関として、リスクマネジメントパネル(以下、「RMP」)を設置しています。RMPを中心としたリスクマネジメントの体制は下掲の図のとおりです。 RMPは代表執行役社長を議長とし、全執行役により構成しています。また、リスク管理における監督機能を発揮するために非業務執行の取締役が陪席し、必要に応じて助言等を行っています。RMPの審議状況は取締役会に報告され、取締役会が情報を的確に捉えて、監督機能を発揮できる体制を整備しています。あわせて、リスク対応の重要度に応じ全社的に対応が必要な場合には代表執行役社長を本部長とする対策本部を立ち上げ、全社で迅速に報告・連絡・判断をとるようにしています。

 当社グループの事業活動に関するリスクについては、執行役の職務分掌に基づき各執行役がそれぞれに管理し、重要事項については経営会議(代表執行役社長が意思決定を行うために必要な審議を行う業務執行会議体。詳細は「第4  提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」を参照ください)で審議します。事業活動を通じたサステナブルな社会・環境の構築にかかるリスクについてはサステナビリティ委員会(事業活動を通じてサステナブルな社会・環境の構築に寄与し、企業価値を継続的に向上させるため、事業とそれを支える活動の対応方針の審議、KPI及び目標の決定、並びに成果の確認を行う業務執行会議体。詳細は「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」を参照ください)が審議します。RMPはリスク管理活動を統括し、当社グループ全体のリスク対応体制を整備し、リスク対応活動を支援します。

 これらの執行会議体とガバナンス体制の全体像としては「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」およびホームページ https://www.ebara.co.jp/ir/governance/information/Basic-Policy-and-Framework.html を参照ください。


(2) 事業継続マネジメント

 大地震や大規模な感染症などの発生時、国民の生命・財産にかかわる重要な施設の機能継続や早期復旧を支援するために製品・サービスを提供することは、当社の重要な業務と考えています。そこで、事業継続マネジメントシステムを構築し、組織体制や計画をまとめています。

これについては、代表執行役社長を本部長とした統括本部を設置して、初動活動から事業継続および事業復旧まで一貫して全社の活動情況を把握し、全社的な指示や情報発信を行いつつ、「初動活動」においては、地域毎に設置した現地本部が避難、救助、消火等、社員等の安全確保や資産の保全のための活動を指揮する一方、「事業継続及び事業復旧活動」においては、重要業務の継続及び速やかな復旧をカンパニーが指揮する体制としています。


(3) リスク分析と当社グループの重要リスク

 当社グループの事業等に関するリスクについて、長期ビジョン「E-Vision2030」及び中期経営計画「E-Plan2025」の策定にあたっては、中長期的な社会情勢や市場環境の変動をシナリオプランニングによって分析しています。また、足下の当社グループを取り巻くリスクについては、事業特性に照らし想定し得るリスクのうちから当社グループにとっての発生可能性、影響度及び対策後の残存リスクを分析する、全社リスクアセスメントを定期的に実施しています。

 リスクアセスメントでは、当社グループの事業運営において想定される100を超える様々なリスク項目の中から、当社グループにとっての影響度と発生可能性がともに大きいもの、さらに「それらの対策が十分であるか」を評価の上で、グループ重要リスクとして特定し、主管部門や報告先執行会議体などのリスク対応体制を再整備し、RMPに報告しています。

 将来の気温上昇がもたらす事業への影響については、長期ビジョンの設定と平仄をあわせて、TCFD の枠組みに沿って気候変動因子を中心に2℃以下シナリオを含む複数のシナリオによって分析をおこなっています。

 それらに基づき、リスクについて全社共通のリスクと、当社が対面している市場別のリスクにまとめると、以下の表のとおりです。

 当社グループはリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存です。

①    全社共通のリスク

項目

影響度×起こりうる可能性

リスク内容

当社の対策

地球環境・気候変動

影響度大×起こりうる可能性大

・脱炭素の動きにより炭素税などのコスト負担増があり得、また化石燃料の代替など産業構造が大きく変わる可能性がある

・台風、火山噴火等の自然災害激甚化

 

 

・長期的・多様なシナリオ分析に基づくリスクと機会の予測と対策を実施
→TCFD提言に基づくシナリオ分析については
https://www.ebara.co.jp/sustainability/think/information/tcfd.html を参照ください。

・カーボンニュートラル施策の推進
→当社グループの2050カーボンニュートラルに向けた大方針を策定しました。詳細は
https://www.ebara.com/sustainability/environment/information/carbon-neutrality.html を参照ください。

・ハザード情報等に基づくBCM計画整備と継続的改善

・火山噴火ガイドラインを整備

 

国際情勢・地政学上のリスク

影響度大×起こりうる可能性大

・米中摩擦の激化、中東の紛争、ウクライナ情勢、東アジア情勢等による経済や金融、貿易への影響により事業活動上の想定外の制約や費用が発生
 

・個別の事変に対しては状況により社長を本部長とし関連執行役をメンバーとする対策本部を設置する

・全体として、リスクに鑑みたグローバルでのサプライチェーン・バリューチェーン構築

・有事に備えたリスクシナリオ分析とアクションプランの策定

 

市況等の変化

影響度大×起こりうる可能性大

・景気変動や市況変化に対応できないリスク

・顧客ニーズの変化を読み落とすリスク

・技術革新のキャッチアップに遅れ陳腐化するリスク

・特定顧客や市場に依存するリスク

経営上の事業戦略にかかる判断リスクであり、職務分掌に基づき各執行役がそれぞれにリスクの把握と管理を行うものとし、重要事項については経営会議で審議

感染症リスク

影響度大×起こりうる可能性大

・人命や健康はもとより、新型コロナウイルス感染症拡大で直面したロックダウンやそれに端を発するサプライチェーン機能不全、働き方の変化や情報セキュリティの課題など、将来発生しうる新たな感染症でも甚大な影響が想定される。

・感染症のBCM計画強化

・産業医と連携した感染予防・拡大防止策の実施

・サプライチェーン管理能力強化・これまでの取組を振り返り、対応ガイドラインを見直し予定

サイバーセキュリティリスク

影響度大×起こりうる可能性中

・外部からのサイバー攻撃、自社や委託先での人為的過失のみならず、自然災害やインフラ障害など不測の事態により、重要な業務やサービスの停止、機密情報・個人情報の漏洩、重要データの破壊・改ざんが発生する可能性

・ソフト/ハード対策強化、ISO27001準拠レベル体制整備

・情報セキュリティに関する社員および派遣社員等への教育・訓練の実施

・サプライチェーン管理能力強化

生成系AIへの対応方針を明確化

為替変動リスク

影響度中×起こりうる可能性大

・為替レートの変動による業績への影響

・為替予約等、適切な為替リスクヘッジの実施

項目

影響度×起こりうる可能性

リスク内容

当社の対策

品質偽装リスク

影響度大×起こりうる可能性小

・当社グループではグローバルの品質管理体制を強化しているが、他メーカで散発しており、当社グループで起こさぬよう警戒。

・データ計測に人の判断が入らないシステムの整備運用

・客先仕様について見積段階でフロントローデイングデザインレビューの実施

・ヒアリング等を通じ組織風土品質風土の継続改善を図っていく

サプライチェーンリスク

影響度大×起こりうる可能性中

(国際情勢や感染症によるサプライチェーンに関するリスクに加えて)

・サプライヤが人権抑圧などのESG/SDGs問題を起こすリスク

・サプライヤの後継者問題による廃業等の事業継続リスク
 
 

・サプライヤに対する人権その他ESG項目の監視強化

・代替調達先確保 

・サプライチェーンBCMの協力体制構築

・人権デューデリジェンス対応の強化


 
 

働き方と人材のリスク

影響度中×起こりうる可能性小

・E-Vision2030達成のために必要な人材の増員と強化にかかるリスク、急激な働き方の環境変化に追随した教育や育成についてのリスク

・新型コロナウイルスまん延により、社員の働き方が急速に変わり、メンタルヘルスなどへの影響

・人材データバンク整備と利活用、処遇制度や教育制度の強化と見直し

・コミュニケーションの工夫、メンタルヘルス対策

・グローバルエンゲージメントサーベイ結果に基づくエンゲージメント向上対応

10

契約リスク

影響度中×起こりうる可能性小

・賠償責任条項により問題発生時の損失が非常に大きくなる可能性

・契約締結時の交渉体制およびリーガルチェック体制の継続強化

11

M&Aリスク

影響度中×起こりうる可能性小

・事業投資の成果が出ない

・グローバル市場への展開でM&Aは有効な一つの手段であるが、当社グループにおけるM&A経験の不十分さ

・デューデリジェンスの徹底、外部アドバイザーとの協力体制強化

・M&A実務経験者を増やし暗黙知を含めた経験値の継受

・速やかに荏原グループ経営に組み込むためのPMI体制強化

・PMI実施ノウハウの蓄積・活用

② 対面市場別リスク

セグメント

対面市場

主要製品

主なリスク

当社の対策

建築・産業

建築設備・

産業設備

 

標準ポンプ(陸上ポンプ、水中ポンプ、給水ポンプ)、冷熱機械、送風機

・需要増加地域での規制強化と価格競争激化

・人口減少地域での建築設備需要減による市場縮小に伴う収益悪化

・製品開発による差別化、S&S事業への注力や業務効率化による競争優位性の確保

・グローバル市場でのリソースの戦略的最適化

エネルギー

石油・ガス
電力
新エネルギー

 

カスタムポンプ(ボイラ給水ポンプ)、コンプレッサ・タービン

・石油価格の変動により、急激な需要変動が発生

・脱炭素社会への移行により、客先の需要動向が変化

・景気後退時に受注量や販売価格が下落し、生産能力の余剰が発生する等、損益を圧迫する一方、景気好転時にはサプライチェーン起因を含む生産能力不足等が生じ、シェアを低下させるリスク

・水素等、次世代エネルギー関連事業の促進

・需要の変化に対し、先行指標の確認等による、高い予測精度での投資計画の策定・実施とリソース管理

・需要の変化に対し、リードタイム短縮や設計・製造の自動化等、効率化による損益分岐点の低下

・需要の変化に対し、S&S事業比率の上昇による安定収益の確保

インフラ

水インフラ
 

 

カスタムポンプ(農業用ポンプ、排水ポンプ、上下水道ポンプ)、トンネル用送風機

・海外市場での規制強化と価格競争激化

・官製談合への巻き込まれなどによるコンプライアンス問題の発生

・製品開発による差別化、S&S事業への注力や業務効率化による競争優位性の確保

・グローバル市場へのリソースのシフト

・継続的なコンプライアンス教育と内部監査の実施

 

 

環境

固形廃棄物処理

都市ごみ焼却プラント、産業廃棄物焼却プラント

・人口減少と循環経済への移行による焼却処理する廃棄物の減少

・労働市場の縮小による、施設オペレーションの人材不足の懸念

公共事業特有のコンプライアンスリスク

・新技術やライフサイクルアセスメント(LCA)などによる差別化、業務効率化による競争優位性の確保

・継続的なコンプライアンス教育と内部監査の実施

精密・電子

半導体製造

 

真空ポンプ、CMP装置、めっき装置、排ガス処理装置

 

 

・半導体需要の動向により、客先の投資や稼働が大きく変動

・景気後退時に受注量や販売価格が下落し、生産能力の余剰が発生する等、損益を圧迫する一方、景気好転時にはサプライチェーン起因を含む生産能力不足等が生じ、シェアを低下させるリスク

・需要の変化に対し、先行指標の確認等による、高い予測精度での投資計画の策定・実施とリソース管理

・需要の変化に対し、リードタイム短縮や設計・製造の自動化等、効率化による損益分岐点の低下

・需要の変化に対し、S&S事業比率の上昇による安定収益の確保

(4) 顕在化したリスクへの対応状況

 経営に重要な影響を及ぼすような重要かつ全社的に対応が必要な事態が発生した場合には、リスク対応体制として代表執行役社長を本部長とする対策本部を立ち上げ、全社で迅速に報告・連絡・判断ができるようにしています。159期に発生したリスクおよびその対応としては以下のとおりです。

① 新型コロナウイルス感染症対策

 新型コロナウイルス感染症に対して、当社グループでは、社長を本部長とする新型コロナウイルス感染対策本部を設置し、グループの感染状況を週次で確認しながら、感染予防策を継続的に講じ、従業員及び家族、協力会社等へのワクチン職域接種を進め、Withコロナ期間における新しい働き方を実践してきました。その間取締役会は感染状況と取組状況を把握しつつ中長期視点での対策を監督する一方、各拠点では各国政府・地域の方針に準じて、感染拡大防止に努めながら、事業活動を継続してきました。5月の新型コロナ感染症の5類感染症への移行に伴い、ポストコロナ期間への移行に対応して、社員及びお客様をはじめとするステークホルダーの皆さまの健康と安全、感染拡大の防止を第一に、いっぽうで社会や産業に製品・サービスを提供する企業として感染予防策を継続的に講じながら、お客様の事業や生活への影響を最小限に抑える事業活動を新しい働き方の下で行っています。

② 地政学リスクへの対応

 ウクライナ情勢について、当社グループでは2022年より社長を本部長とする対策本部を設置し、従業員およびパートナー企業をはじめとするステークホルダーの皆さまの安全を最優先に、情報収集と情報分析、グループ内の意思統一を図ってきました。当社グループは、各国の法規制を遵守しつつ、社会や産業に製品・サービスを提供する企業として必要な対応をおこなっています。

 当社グループのロシア及びベラルーシ向けの取引は相対的に小さいものであり、ウクライナ情勢に直接起因する事業全体への影響は軽微です。

 また、貿易摩擦から始まった米中経済対立の拡大を始めとするその他地政学上の問題については、懸念される事象に対して幅広く情報収集情報分析をおこなったうえで、状況に応じ、社長を本部長とする対策本部を構築し、危険地域からの退避やその他の従業員およびパートナー企業への行動指針、グローバルサプライチェーンの見直し等を、事前の準備に沿って実施していきます。

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