積水化学工業 【東証プライム:4204】「化学」 へ投稿
企業概要
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、様々な要因により実際の結果とは異なる可能性がある。
(1)サステナビリティ課題全般
①ガバナンス
当社グループでは、監督機能としての取締役会と、執行機能としての「サステナビリティ委員会」および傘下の7分科会からなる監督・推進体制により、ESG経営をグループ一体で進めている。
取締役会:
サステナビリティ委員会で審議した方針・戦略、全社リスクについて年2回報告を受け、最終決定するとともに、サステナビリティに関する執行側の取り組みを監督している。
サステナビリティ委員会:
社長を委員長、ESG経営推進部担当専務執行役員を副委員長とし、住宅カンパニー、環境・ライフラインカンパニー、高機能プラスチックスカンパニーの各プレジデントを含む業務執行取締役で構成され、年2回開催している。
委員会では、将来当社グループが直面する可能性のある全社的なリスクや機会を抽出・特定してマテリアリティを適宜見直すとともに、全社方針やKPIの決定、全社実行計画の策定を行います。また各分科会委員長による報告を受け、各マテリアリティの取り組み状況をモニタリングしている。
分科会:
サステナビリティ委員会の傘下組織として、当社グループのマテリアリティに関わる「環境」「CS品質」「人材」「安全」「コンプライアンス」「サイバーセキュリティ」「DX」の7分科会を設置している。各分科会は、コーポレートの担当役員を委員長とし、3カンパニーの担当役員および各カンパニー、コーポレート、コーポレート傘下のメディカル事業の主管部門長で構成され、年2回開催している。「サステナビリティ委員会」の決定内容に基づいたカンパニー別の具体施策立案と実行計画への落し込み、取り組み状況のモニタリングを行っている。その結果を各分科会委員長が「サステナビリティ委員会」に参加して報告、審議を行っている。
②戦略
当社グループでは、社会課題解決に取り組むことは、社会の持続性向上に直結しており、貢献の対価である売上高は、社会課題解決貢献量であると考えている。そしてその貢献の質・量を向上させることで当社グループの持続的な利益ある成長を図ることができ、またそのことで、お客様、株主、従業員、取引先、地域社会・地球環境といったすべてのステークホルダーへの貢献をさらに拡大していくことができると考えている。
・積水化学のESG経営
“Innovation for the Earth”というステートメントを中心に捉え、「サステナブルな社会の実現」と「グループの持続的な成長」の両立の実現を目指し、その鍵となる「Ⅰ.際立ち」「Ⅱ.社会課題解決」「Ⅲ.未来につづく安心」の3つのステップをステークホルダーとともに実践していくことを、当社のESG経営としている。
そして長期ビジョン「Vision 2030」実現のため、ガバナンス(内部統制)、DX、環境、人材(人的資本)、融合・イノベーションをESG重要課題(マテリアリティ)と特定し、各マテリアリティにそれぞれKPIを設定してESG経営の取り組みを進めている。
<3つのステップ>
Ⅰ.際立ち
社会に信頼される企業体制を「ガバナンス(内部統制)」と通じて実現し、際立つ「人材」の挑戦を原動力に「環境」「CS品質」で圧倒的な差異を持つ製品・サービスを生み出していく
Ⅱ.社会課題解決
「際立ち」をもとに、3つのアプローチ(貢献の量を増やす、質を高める、これらを持続的に提供していく)で社会課題解決を加速
Ⅲ.未来につづく安心
未来の世代も含めたあらゆる世代に安心してもらえるよう「未来につづく安心」という価値を、4事業領域(レジデンシャル、アドバンストライフライン、イノベーティブモビリティ、ライフサイエンス)で創出・拡大
・SEKISUI環境サステナブルビジョン2050
気候変動を含む環境課題に関しては、2050年に向けた方向性を「SEKISUI環境サステナブルビジョン2050」の通り描いている。また、“環境”における重要課題を認識し、2050年の到達目標からバックキャストして、中期にやるべきことを考え、環境中期計画を策定している。
当社グループが2050年に目指す地球の姿は、気候変動、資源循環、水リスクのすべての環境課題のゴールが同時に実現することで、生物多様性が健全な状態に保たれた、“生物多様性が保全された地球”である。企業活動において、地球上の自然資本、社会資本を利用していることを認識し、(1)サステナビリティ貢献製品の市場拡大と創出、(2)環境負荷の低減、(3)環境の保全、の3つの活動によって自然資本、社会資本のリターンに貢献し、気候変動、資源循環、水リスク、生物多様性といった地球上の課題解決に貢献する。そしてリターンへの貢献を加速していくために、当社のみならずステークホルダーの皆様と連携し、取り組みを推進していく。
③リスク管理
当社グループでは、専門領域別および海外地域別にリスク情報を網羅的に収集し、「起こりやすさ」と「インパクト」の2軸で評価を行っている。その結果を踏まえ、各専門領域の管掌役員による全社リスク検討部会において一元的評価を行い、全社重大リスクを特定している。これらリスクの発現を未然に防止する活動(全社リスク管理:ERM)と、リスクが顕在化した時に対応する活動(危機管理)を一元的に管理するリスクマネジメント体制を推進しており、この一元化により、組織の状況に応じて、常に変化するリスク危機に適応できる体制を構築している。
④指標及び目標
ESG重要課題(マテリアリティ)として特定したガバナンス(内部統制)、DX、環境、人材(人的資本)、融合・イノベーションについては、それぞれ全社KPIを定め、全社の中長期目標およびカンパニー別の中期・年度目標値を設定し、全社および各カンパニーの実行計画に落とし込まれている。
目標達成に向けた各種施策およびKPIの進捗状況は各分科会ならびに各カンパニーの予算会議でモニタリングされ、サステナビリティ委員会そして取締役会に年2回報告されるとともに、その進捗を経営層および一部管理職の賞与に反映させている。
※サステナビリティについての取り組みの詳細は、サステナビリティレポート2022を発行し、当社webサイトで開示を行っている。なお、サステナビリティレポート2023の発行は2023年7月を予定している。
<サステナビリティレポート>
https://www.sekisui.co.jp/sustainability_report/
(2)気候変動への対応(TCFD提言に沿った気候変動関連の情報開示)
①ガバナンス
気候変動に関するガバナンスは、前述のサステナビリティ課題全般のガバナンスに組み込まれている。特に、気候変動を含む環境課題の監督・執行体制については以下の通りである。
環境責任者会議:
再生可能エネルギーや資源循環など、重要案件ごとに設定し、定期的に開催(1回/月)。コーポレートとカンパニーの環境責任者が参加し、課題解決の進捗を確認し、解決策を検討。
②戦略
気候変動が当社グループおよび当社グループ事業に及ぼすリスクの抽出と、長期リスクに備えるための戦略を確認するにあたっては、国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次・第6次評価報告書を参考にし、気候変動シナリオ設定を行っている。
気候変動シナリオ
設定した気候変動シナリオをもとに、気候変動リスクがもたらす事業領域ごとのインパクト分析を実施し、長期リスクに備える戦略を検討している。分析に際しては、1.5℃シナリオと4℃シナリオを元に、気候変動の緩和が進む/進まないという軸と社会システムが地方に分散する/大都市に集中するという軸の2軸を設定し、さらに他の環境課題が気候変動課題と相互に及ぼし合う影響も考慮して、4つの気候変動シナリオを想定している。
気候変動リスクのインパクト分析結果
緑字:1.5℃シナリオ見直しに伴った事項
太字:イノベーション関連項目
これら想定される社会において、考えられる当社グループのリスクと機会の分析を行い、各シナリオで描いた社会が実現した場合に適応するための当社グループの戦略について検討した結果の概要は以下の通りである。
A) 脱化石スマート社会/1.5℃×集中化シナリオ
B) 循環持続社会/1.5℃×分散化シナリオ
C) 地産消費社会/4℃×分散化シナリオ
D) 大量消費社会/4℃×集中化シナリオ
③リスク管理
気候変動に関するリスク管理は、前述のサステナビリティ課題全般のリスク管理に組み込まれている。
④指標及び目標
当社グループは、気候変動は大きな社会課題であると同時に、当社グループにとって大きなリスクであると認識し、その解決に積極的に取り組んできた。2018年、化学業界初となるSBT認証を取得し、2030年にGHG排出量削減率を2013年度比で26%とする目標を掲げ、老朽設備更新の促進などの「エネルギー消費革新」、購入電力の再生可能エネルギー転換や自家消費型太陽光発電設備の導入などの「エネルギー調達革新」を進めてきた。
そして、気候変動がさらに喫緊の社会課題となる中、燃料使用設備の電化や低炭素燃料への転換、さらに「生産プロセス革新」による燃料由来GHG排出量の削減という技術的難易度の高い取り組みを前倒しで行い、2030年のGHG排出量削減率を以下の通り引き上げるという意思決定を2022年10月に行っている。また、これらの目標値はSBT認証を再取得している。(2023年3月)
・新たなGHG排出量削減目標
| 従来目標 | 更新目標 | 更新目標達成の手段 |
Scope1+2 | 基準年:2013年 目標年:2030年 削減率:26% (2℃目標) | 基準年:2019年 目標年:2030年 (変更なし) 削減率:50% (1.5℃目標) | 従来の購入電力の再エネ化に追加し、 低炭素燃料へ転換、電化、生産革新による燃料由来GHG削減の取り組み前倒し |
Scope3 | 基準年:2016年 目標年:2030年 削減率:27% | 基準年:2019年 目標年:2030年 (変更なし) 削減率:30% | 資源循環の取り組み(非化石原料へ転換、再生材料の使用拡大、廃棄物の再資源化)を追加し、原材料起因や生産プロセス、お客様での廃棄の際の削減を促進 |
・2021年度の進捗
| 排出量合計 (千t-CO2) | 削減率 |
Scope1 | 220 | 16.9%削減(2013年度比) |
Scope2 | 523 | |
Scope3 | 4,343 | 1.3%削減(2016年度比) |
※TCFD提言に沿った気候変動関連の情報開示の詳細は、TCFDレポート2022を発行し、当社webサイトで開示を行っている。なお、TCFDレポート2023の発行は2023年8月を予定している。
<TCFDレポート>
https://www.sekisui.co.jp/sustainability_report/report/#tcfd
(3)当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針
「従業員は社会からお預かりした貴重な財産である」という考え方に基づき、従業員が活き活きと働くことができる環境づくりに取り組むとともに、一人ひとりが自分の“得意技”を磨き、挑戦を通じて成長していくことを支援するさまざまな機会を提供する。
①考え方
Vision 2030 の実現に向けて、「全員が挑戦したくなる会社」すなわち「革新や創造がなされ、社会課題解決への貢献が拡大する姿」を目指し、人材マネジメントの転換(役割機軸の人事制度、挑戦の促進)を図り、人事戦略を推進している。
②ガバナンス
人事戦略の実現に向けて、2022年度より「ダイバーシティ推進委員会」を設置した。これは、経営における人材の多様性確保に関する事項について、執行に対する監督並びに助言をする機関である。専門の知見を持つ社外取締役の参画により、ダイバーシティへの取り組みを強力に訴求することが可能となった。また監督側と執行側の役割分担を明確にすることにより、ガバナンス強化につなげている。
執行機関としては、サステナビリティ委員会の下、人事担当役員が委員長となり、各カンパニーの人事部門長で構成された「人材分科会」を設置している。
③戦略
全員が挑戦したくなる活力あふれる会社の実現に向け、人材育成方針(※1)のもと、事業の成長スピードや変化に対応すべく人材を育成し、ビジネスリーダーの後継者確保、ならびに適所適材の実現を推進している。また、社内環境整備方針(※2)を立て、各国・地域に対応した多様な働き方・安心して働ける職場づくりを目指している。
※1.人材育成方針
A) ダイバーシティの促進
一人ひとりが持ち味を発揮し、活き活きと活躍できる風土をつくる
B) 挑戦の奨励
自ら手を挙げ、挑戦し続ける人材を応援する
C) 際立つ人材の育成
学び自ら成長し、得意技を持つ人材を支援する
※2.社内環境整備方針(ダイバーシティマネジメント方針)
「100年経っても存在感のある企業グループであり続ける」ためには多様性が不可欠との認識に立ち、従業員一人ひとりの「仕事・生活両面における志向」や「持ち味」が異なることを理解し、認め、積極的に活かす。
その組織風土創りに向け、雇用や活躍機会の提供、成長を支援する様々な環境整備を、従業員との対話を通じて図り続ける。
④主な取り組み
イ)活力あふれる会社の実現
・挑戦の促進
長期ビジョン達成に向けては、従業員一人ひとりが、従来のやり方にとらわれず、挑戦し続けることが最も重要であると考え、人的資本のKPIとして、「挑戦行動の発現度」を設定している。従業員が実際に挑戦行動をとっているか、挑戦行動をとりやすい組織であるかを従業員へのアンケート調査で定期的に調査し、職場単位の改善につなげている。
・エンゲージメント向上
挑戦の土台となる、会社に対してのエンゲージメント(仕事に対する情熱・会社に対する愛着)を測定するため、定期的に従業員へのアンケート調査を実施している。
調査結果については、カンパニー、グループ会社、各組織単位で分析し、改善施策の立案・実施を行っている。
組織横断での取り組みとして、国内グループ会社の人事部門が集まり、エンゲージメント向上に向けた改善活動を行っている。プロジェクトでは、先進他社事例の勉強会、社内好事例の共有と表彰、組織開発手法のセミナーなどを実施している。
ロ)ダイバーシティ推進(多様な人材の活躍)
・多様な人材の活躍支援(女性、障がい者、両立支援)
「ダイバーシティマネジメント方針」に基づき、「多様性」を性別、年齢、人種等の外見からわかる違いでとらえるだけでなく、経歴、価値観、性格などを含めた違いにも着目している。従業員一人ひとりの違いを理解し、認め、強みとして活かしていく。
中でも、女性活躍推進については、「女性採用の強化」「定着と活躍」「管理職創出」「管理職登用後の育成」の4段階に分けて取り組みを進めている。新卒採用時における女性比率は過去5年間で概ね3割に達しており、今後もこの比率以上を維持する方針である。その中で、基幹的な役割を果たすビジネスキャリアコースへの女性の採用を増やし、新入社員~入社4年目までに経験学習サイクル・キャリア形成などの研修プログラムを実施するなど、早期からリーダーシップや自ら学び挑戦しながら成長する意識の醸成を図っている。また、様々な両立支援の中でも、育児両立に向けた取り組みとして、育児・介護休業法改正への対応と、管理職へのイクボスeラーニング(受講者3,237人)などの男性の育休取得促進のための環境整備を
行った。障がい者に向けた取り組みについては、障がい者の採用を進めるとともに、障がい者が働きやすい環境づくりやキャリア支援を推進している。障がい者雇用にあたってはグループ各社のニーズに合わせ、業務の切り出しから就業環境の整備まで含めて専門家による支援を取り入れている。
・働き方改革と健康経営
多様な人材が活躍できる環境を整えるため、働き方改革と健康経営を推進している。
働き方改革では、労働時間削減の取り組みに加え、仕事の生産性向上に取り組んでいる。健康経営では、健康経営の基本方針を策定し、従業員の心身健康の課題解決に向けて取り組みを推進している。
⑤指標と目標(単体※1)
項目 | KPI | 実績(2022年度) | 目標(2025年度) |
人材マネジメント | 後継者候補準備率 ※2 | 77.0% | 100.0% |
| 研修時間 ※3 | 6.1時間 | 10.0時間 |
活力ある会社への変革 | 挑戦行動発現度 ※4 | 60.0% | 70.0% |
ダイバーシティ推進 | 女性採用比率 | 28.0% | 35.0% |
| 女性基幹職比率 | 4.5% | 5.0% |
| 男女賃金格差 ※5 | 68.6% | - |
| 男性育休取得率 | 68.1% | 75.0% |
※1 連結ベースでの開示は困難であるため、提出会社単体の指標と目標を開示している。
※2 ビジネスリーダー最上位ポストの後継候補者数÷同ポスト数
※3 年度における従業員一人当たりの研修受講時間
※4 長期ビジョン達成に向けた挑戦行動を、従業員が実際に発現したかをアンケートで測定
※5 制度上の賃金格差はなく、労務構成(年齢および資格)比による格差
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