石原産業 【東証プライム:4028】「化学」 へ投稿
企業概要
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、2020年の創立100周年を機に長期ビジョン「Vision 2030」を策定しました。
この第1ステージである中期経営計画「Vision 2030 Stage I」では、その取り組みの土台として「SDGs視点でのサステナブルな経営の取り組みの推進・強化」を位置づけ、この活動を実質的に実行していく目的で、2021年11月に「サステナブル推進委員会」を設立し、多岐にわたる具体的な施策を積極的に推進しております。
長期ビジョン「Vision 2030」と併せて定義したパーパス「化学技術でより良い生活環境の実現に貢献し続ける」のもとで、事業活動を通じて社会課題を解決することで、持続可能な地球環境・社会の実現に貢献し、新たな企業価値を創造し続けます。
(1)ガバナンス
サステナビリティに係わる具体的な取り組みは、社長直轄のサステナブル推進委員会の傘下にある各チームにて遂行しております。
・気候変動対策チーム・・・カーボンニュートラルに向けたCO2排出量の削減やTCFDに係る情報開示を推進
・人権デューデリジェンス推進チーム・・・当社グループのみならず、サプライチェーンを含めた人権リスクについて、PDCAを推進
・人的資本経営推進チーム・・・当社グループ全体の価値創造の源泉である人的資本の拡充や健康経営を推進
・統合報告書制作チーム・・・財務、非財務に係る当社グループの取り組み状況の的確な開示を推進
・DX推進チーム・・・業務効率化による働き方改革や、既存ビジネスの強化と新規ビジネスの創出を推進
各チームのメンバーは、取締役や執行役員をリーダー・サブリーダーにおき、当社関係部門、並びに関係会社も含めたメンバーで構成されております。
各チームの取り組みや施策については、1年に2回以上開催されるサステナブル推進委員会にて審議・報告され、承認事項は、取締役会に諮って決議されます。また、全チームを含めたサステナブル推進委員会の活動進捗状況は、3カ月ごとに取締役会に報告され、取締役会において監督を行っております。
(2)戦略
○気候変動
2022年度は、売上高の約半分を占め、CO2の排出量が多い無機化学事業を対象としてシナリオ分析を行い、主な気候変動リスク・機会を外部情報に基づいて整理し、それぞれのリスク・機会に関する将来予想データを収集しました。
これに基づいて、脱炭素社会への移行に伴うリスク・機会と気候変動に起因する物理的リスク・機会について1.5~2℃/4℃シナリオのそれぞれで検討し、当社グループの事業に2050年までに影響を与え得る重要なリスクと機会を分析しました。
現在は引き続き農薬事業に対象を拡大して、シナリオ分析を実施しております。
表)リスク重要度評価及びシナリオ分析から特定した事業リスク・機会(無機化学事業)
短期:0-5年、中期:5-10年、長期:10年以上
重要なリスク・機会の項目 | リスク | 事業機会・対応 | ||||
説明 | 時間軸 | 財務影響 | ||||
移行/ | 政策/規制 | 炭素税の導入、CO2排出量規制の強化 | CO2排出への炭素税賦課によるコストの増加 (1.5℃:約84億円(2030年)、約160億円(2050年)のコスト影響*) | 中~長 | 大 | ・石炭ボイラー等の燃料転換 ・生産体制の再構築 ・CO2回収及び再生可能エネルギーの利用 |
技術 | ・消費者ニーズの低炭素型製品への変化 ・電子部品材料の需要増加 | 低炭素型製品の開発の遅延 電子部品材料の開発・生産体制の遅延 | 中 | 中 | ・環境負荷低減につながる遮熱材料などの拡販と新技術・新製品の創出 ・積層セラミックコンデンサ(MLCC)向け電子部品材料の開発促進と生産体制強化 | |
市場 | 原材料コストの上昇(チタン鉱石・コークス等) | 調達コスト増や入手難による価格上昇 | 中 | 大 | ・収率の向上と廃棄物の削減 ・サプライヤーや業界と連携した調達段階のCO2削減 | |
エネルギー価格の変化 | 石油・重油・ガス・電気などの急激な価格変化 | 短~中 | 大 | ・多様なエネルギーミックス ・徹底した省エネ | ||
評判 | 顧客企業の環境配慮の意識の高まり | 脱炭素対応が遅れることによる受注減少や投資家評価の低下 | 中 | ― | ・積極的な環境負荷低減への取り組み ・情報開示の充実 | |
物理的/4℃ | 急性 | サイクロンや洪水などの極端な異常気象の過酷さの増加 | 被災による物損コスト及び逸失利益の発生 | 短 | 中 | ・BCP対策の拡充と訓練の実施 ・調達先の複数化 ・生産バックアップ体制の検討 |
*1.5℃シナリオ:2030年の炭素価格130ドル/tCO2、2050年の炭素価格250ドル/tCO2と想定(IEA Net Zero By 2050 参照)
〇人的資本、多様性
2030年までに国内外の社会で起こるとみられる、気候変動や食糧問題をはじめとする数々の変化を前提に、当社の存在意義(パーパス)「化学技術でより良い生活環境の実現に貢献し続ける」のもと、サステナブルな社会の実現に向けて貢献するとともに、その事業活動を通じて企業価値の向上を両立させるためには、当社グループの価値創造のコアがドライビングフォースとして機能し続けることが必要です。
それら価値創造のコアとその拡充に必要と考えられる経営戦略・人事施策を、当社では図のように特定・関連付けております。
また、経営戦略の達成には、これまでの延長線にない将来動向を踏まえ新たな挑戦による改革・変革を評価する文化と仕組みが必要であることから、当社の目指すべき人材像を「ものごとの基本を理解し、実践した上で“変える”ために、“変わる”ことのできる人」と規定し、当該人材像を基礎とした人事制度・評価制度とすることで、従業員一人ひとりの能力の発揮・成果が業績に反映され、働くことの意義や価値を認識・向上でき、会社と共に個人も成長できるようにすることを目指しております。
特に人材育成においては、目指すべき人材像の具体化として以下の5つを掲げ、その実現のための研修教育体系を整えております。
1.プロフェッショナルとしての責任感を持ち、高い成果を生み出す人材
2.変化に対し、敏感・柔軟で、難局を乗り越える力のある人材
3.会社の進むべき道、取組むべき課題を捉え、推進する人材
4.常に1段上、1歩前を目指し、進化し続ける人材
5.ステークホルダーと協働し、仕事を通じて共に成長できる人材
今後も「Vision 2030」の達成に向け、当該人材を育成するための施策、また当該人材が定着するための環境整備を推進すると共に、当社事業及びその事業環境の変化に応じ、必要なタイミングで戦略・施策の見直しや追加を実施します。
(3)リスク管理
当社グループは、16のマテリアリティ(重要課題)の中から、8つの最重要課題「気候変動・環境負荷低減」「技術開発力」「サプライチェーンマネジメント」「労働安全衛生・保安防災」「ダイバーシティ&インクルージョン」「BCP、リスクマネジメント」「コーポレート・ガバナンス」「DXの推進、業務効率化による働き方改革」を特定しております。
当社グループとして特に「気候変動対策の推進」や「人的資本経営の推進」は喫緊の重要課題であることを認識し、サステナブル推進委員会のもとに気候変動対策チーム並びに人的資本経営推進チームを設置しております。
各チームでは、気候変動リスクや人的資本経営に係るリスクの検討を行い、その結果をサステナブル推進委員会で評価・管理し、必要に応じて企業リスク管理委員会への報告を行っております。
(4)指標及び目標
○気候変動
当社国内グループはCO2排出量(Scope1+Scope2)の削減目標を下記の通りに設定しました。今後も引き続きカーボンニュートラルに向けた排出量削減に取り組むことにより、気候変動影響の緩和と適応を推進してまいります。目標と2021年度までの進捗は、以下の通りです。なお、Scope3については計測方法を検討し、開示に向けた議論を行っております。
2030年:CO2排出量30%削減を目指す(2019年度比)
2050年:カーボンニュートラル(実質排出ゼロ)に挑戦する |
表)当社国内グループの温室効果ガス(GHG)排出量[千t-CO2]
GHG排出量 (千t-CO2) | 2019年度 (基準年) | 2020年度 | 2021年度 |
Scope1 | 470 | 423 | 486 |
Scope2 | 19 | 19 | 22 |
合計 | 490 | 442 | 507 |
GHG排出量はGHGプロトコルに基づき算定
当社の主力生産拠点である四日市工場では、石炭火力によるコージェネレーションシステムにより、最適なエネルギーコストを実現し生産活動を行ってきました。しかしながら、気候変動による異常気象が顕在化してきていることから、四日市工場を主軸に当社国内グループ全体で、段階的にCO2排出量を削減し、カーボンニュートラルに挑戦するロードマップを策定しました。
〇人的資本、多様性
価値創造のコアに関連するものとして特定した項目について、その指標と目標を以下のように設定しております。
人的資本項目 | KPI | |||
目標数値 | 目標年度 | 2022年度実績 | ||
外部ナレッジ活用 | 中途採用者比率 | 安定的に50%以上 | 2022年度~ | 64.5% |
開発力指数 | 研究職人員比率 | 22%以上 | 2030年度 | 22.2% |
エンゲージメント向上 | エンゲージメント指数 | 4.7 | 2030年度 | 4.51 |
離職率(自己都合退職) | 3%以下 | 2022年度~ | 2.5% | |
人材育成 | 従業員一人あたり研修費 | 5万円/人以上 | 2022年度 | 5.0万円/人 |
人事制度改革 | 総合職・一般職の統合 | (定性的事項) | ― | 2020年度実施済み |
柔軟な働き方 | 育児休業取得率 | 男性30%
女性100% | 2025年度 | 男性36%
女性100% |
有給休暇取得率 | 80%以上 | 2030年度 | 81.9% | |
安全衛生 | 労働災害度数率 | 0達成 | 2022年度 | 0.70 |
女性活躍 | 女性管理職比率 | 10%以上 | 2030年度 | 7.6% |
採用者の女性比率 | 30%以上 | 2030年度 | 11.8% | |
組織強化・推進力向上 | サステナブル専任部門創設 | (定性的事項) | ― | 2021年実施済み |
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