特種東海製紙 【東証プライム:3708】「パルプ・紙」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティに関する考え方
当社グループは、持続可能な社会実現へ貢献すると共に企業価値を永続的に向上させていくため、「自然との共生」「社会・文化発展への貢献」「ステークホルダーとの信頼関係」、この3軸で構成される特種東海製紙グループサステナビリティ基本方針を制定しております。当方針の下、国内外の主要なフレームワークを参考とした社会課題の調査(外部環境の整理)、及び自社における取組内容の調査(内部環境の整理)を実施し、重点的に取り組むべきマテリアリティを抽出いたしました。以下に示す7つのマテリアリティの改善・解決に向けた企業活動を実施していくことで、社会・環境との共生を果たし、当社グループが成長し続けられるよう努めてまいります。
| マテリアリティ | KPI(定性目標) | 主な取組 |
地球環境との共生 | 気候変動問題への対応 | ・生産活動に伴うCO₂排出量の削減 | バイオマスボイラ導入による化石燃料使用比率の低減 |
社有林の活用と 生物多様性保全への貢献 | ・30by30に基づく ・森林資源維持活用 | 「生物多様性のための30by30アライアンス」への参加 | |
持続可能な サプライチェーンの維持 | ・「木材調達に関する基本指針」に基づく責任ある原料調達の推進 ・ホワイト物流の推進 ・人権DDと社内教育の実施 | 物流に係る業務プロセスの改善 | |
資源の有効活用と 環境負荷の低減 | ・古紙利用率の向上 ・廃棄物最終処分率の低減 | 廃プラスチックのリサイクル率向上 | |
安定した製品提供と 新製品の開発 | ・顧客満足度の向上 ・環境配慮型製品の拡充 | 脱・減プラ素材の製造・販売 | |
地域・社会との共生 | 地域・社会への貢献 | ・地域社会との対話の推進 | 地域行政と協働した環境教育の支援 |
安心安全に働ける 職場環境づくり | ・女性活躍の推進 ・休業災害の撲滅 ・エンゲージメントの強化 | 健康経営の推進 ダイバーシティに係る取組 |
(2)サステナビリティに関する取組
①ガバナンス
サステナビリティに係る各課題に対応するため、非財務情報等の取りまとめ及びグループを先導する組織として2022年7月にSDGs推進室を設置いたしました。SDGs推進室では各事業本部との対話によってリスクや機会、対応策等の妥当性や重要性の検証を行うと共に、担当役員を通じて検討結果に基づく方針や重要事項について取締役会へ付議・報告を行うこととしております。
当社グループのガバナンス体制及びサステナビリティに係る役割は以下のとおりであります。なお、コーポレート・ガバナンスの体制図につきましては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(1) コーポレート・ガバナンスの概要」に記載しております。
取締役会 | 環境全般課題にかかる評価、審議、監督および承認 気候変動リスクの対応策、機会追求施策についての承認 |
SDGs担当役員 | 環境全般課題にかかる業務遂行における統括責任者 気候関連での各種の取締役会への付議および報告 TCFD開示に関する重要な対外的説明 |
SDGs推進室 | 環境全般課題にかかる戦略、管理運用方針の立案および改変提案 気候変動リスク、機会項目および対応策についてのヒアリング TCFD提言に沿った開示情報のとりまとめ |
リスク管理委員会 | 気候変動リスクを含めたリスクアセスメントのレビュー、指導 |
各事業本部 | 気候変動課題も含めたリスクアセスメントの実行 気候変動課題にかかる収益機会の認識と改変提案 対応策(投資等)の付議と実行 |
経営企画本部 | リスク管理委員会の総括管理 SDGs推進室との気候変動課題にかかる戦略の協議、情報の共有 |
財務・IR本部 | リスク、機会の影響度の検討 気候変動影響を落とし込んだ財務情報の検討 |
②戦略
ⅰ.気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への対応
当社グループは2022年2月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言へ賛同、同年6月にはTCFDフレームワークに準じた情報開示を行いました。シナリオ分析にあたっては、IPCCやIEAのレポート等に示されている情報を参照し、以下に示す2つのシナリオを設定いたしました。
●4℃シナリオ=現状のまま何もしない状況で推移した場合の2030~2050年ごろの状況
●2℃シナリオ=2050年カーボンニュートラルに向けて法規制等も強化された場合の2030年ごろの状況
設定したシナリオに基づき、社会・経済情勢や自然的状況の変化を予測するとともに、当社グループの主要事業におけるリスク・機会を可能な限り洗い出し、このうち事業への影響が大きいと想定される事項を抽出・整理いたしました。また、重要なリスクと機会については、その一部について財務的インパクトの算定に向けた検討に着手し、社内での議論を開始いたしました。
株主・投資家等ステークホルダーとのエンゲージメント強化のため、開示情報の更なる充実に努めてまいります。
ⅱ.化石エネルギー起源CO₂排出量の削減
当社グループは、環境負荷低減・コスト競争力の2つの観点から早期よりバイオマスボイラを導入する等化石燃料からバイオマス系燃料への転換を進めてまいりました。これにより、2021年度における化石燃料使用比率を約2割にまで抑え、化石エネルギー起源CO₂排出量は2005年度比で▲69%となっております。
以上のように、現時点においても低炭素操業を実現できているものと認識しておりますが、これを更に推進するため、エネルギー起源CO₂排出量を2030年度までに2013年度比で38%削減、2050年度までにCO₂排出量ネットゼロを目指すロードマップを策定いたしました。2030年度目標の設定にあたっては、日本国が掲げる2013年度比▲46%のうちの産業部門に求める目標値▲38%に準拠すると共に、各事業本部より施策を抽出し2030年度のCO₂の削減予測量を算定いたしました。かねてより推進してまいりました省エネルギー化を継続すると共に、再生可能エネルギーの利用を拡大することで低炭素社会実現への貢献を目指してまいります。
ⅲ.人材の育成及び社内環境の整備
a.人事基本方針及び人材育成方針
当社グループは、2008年4月に人事基本方針として「人を最も重要な財産と位置づけ、従業員一人ひとりと信頼で結ばれ、全従業員が高いモチベーションを維持しつづける環境を整備すると共に、会社が永続的に成長できる組織風土を醸成する」を掲揚いたしました。これに基づく人財育成方針、社内環境整備方針を定め、従業員にとって「明るく生き生き働ける会社」、「誇りを持って働ける会社」、「夢を持って働ける会社」、「安全で安心して働ける会社」を目指してまいります。
また、人財育成方針につきましては、2017年に第4次中期経営計画“NEXT 10”の策定と併せて制定し、10年後を見据えた「成長戦略」と「基盤事業の強化と変革」を実現するための人財育成に取り組んでおります。
人財育成方針
1.能動的な人財
・指示待ちではなく、自ら考え判断し、責任を持って行動する人財
・常に問題意識を持ち、自分で新たな課題を発掘し、 自分で解決する人財
・周囲に対して自ら積極的に提案や働きかけができる人財
2.スペシャリスト
・特定の専門領域で、自ら知見を高め、イノベーションを起こす人財
・他社(人)には真似できない、当社(自分)固有の技術や技能を探求し続ける人財
・当社の財産である技術や技能を、次世代に伝承する人財
3.海外に通用する人財
・将来を見据えて、海外でのビジネスや事業構築にチャレンジする人財
・外国語力や国際的教養の向上に努め、外国人とのコミュニケーション力を有する人財
・当社の技術・技能を海外ニーズに適応させ、当社価値を国際的に広め伝える人財
4.多様な人財の活躍推進
・多様な価値観や育児介護等の制約条件のもと、能力を最大限に発揮し職務を全うする人財
・ワークライフバランスの実現に向けて、職務の工夫や改善により労働生産性を向上させる人
財
・仲間一人ひとりの違いを受け止め、相互協力できるチーム形成に貢献できる人財
b.人財育成方針実現に向けた具体的な取組
(キャリア形成支援)
キャリアプラン制度により、社員が主体的・能動的に目指すキャリアや働き方について考え、上司との面談により中長期的なキャリアプランを策定し、資格制度上のキャリアコース選択や教育研修、ジョブローテーションや配置等に反映させる仕組みとしております。
また、キャリアコースに高度な専門性を認定するエキスパート職を設け、管理職と同等の処遇とすることでスペシャリストの育成を図ると共に、公的資格の取得を奨励・補助する制度により自己啓発を支援しております。
(教育制度)
次世代経営人財の選抜研修、階層(キャリアコース)別研修、専門性や語学力向上のための研修、海外視察研修、世代や属性別のキャリア研修、国内外の大学・大学院やこれに準ずる教育研究機関に留学派遣する制度等、人財育成方針に則したカリキュラムを整備し、自ら手を挙げて能動的に取り組むスタイルを取り入れた制度運用を行っております。
(ダイバーシティの推進)
多様な人財が個々の能力を最大限に発揮できる環境整備を重要課題の1つとして、中でも女性活躍推進をその中核と位置付け、人事教育部に設置したダイバーシティ推進チームを中心に、女性活躍推進法に基づく行動計画として策定した「管理職および候補者層における女性の比率の向上」、「職域の拡大」、「仕事と家庭の両立支援策の充実と利用促進」の実現にむけて、アンコンシャスバイアスの払拭やキャリア意識の醸成などの意識改革、工場部門への女性配置に関する職場ヒアリング、両立支援制度の情報発信等、様々な取り組みを行っております。
c.社内環境整備方針
社内環境整備方針として「『明るく生き生き働ける会社』『安全で安心して働ける会社』を目指し、安全第一を最優先として位置付け、労働災害の撲滅と心身の健康維持増進を達成するため、一人ひとりが快適で働きやすい職場づくりを進める」を定め、安全衛生、ワークライフバランス、エンゲージメントの向上の取り組みを推進しております。
d. 社内環境整備方針実現に向けた具体的な取組
(安全衛生の取組)
「安全衛生年次方針」を定め、この方針を元に各事業所において具体的な取組みを実施しております。「安全」については、「危険の特定と低減対策の実施」及び「ルールの順守と危険感受性の向上」、「衛生」については、「心身の健康状態の把握と維持改善の習慣作り」を掲げており、リスクアセスメント活動や安全体感機等を用いた安全教育、生活習慣病予防対策の啓発等に取り組んでおります。
(健康経営の推進)
「従業員一人ひとりが心身ともに健康で安心して働ける会社を目指し、積極的に健康経営に取り組みます」と宣言し、各事業所の安全衛生部門が人事教育部門や健康保険組合と連携して、「健康維持増進」、「疾病予防」、「メンタルヘルス対策」、「働き方改革」の各種施策を実施しております。
(ワークライフバランスの推進)
新型コロナウイルスの感染拡大もあり、東京本社を中心に在宅勤務の運用が定着してまいりましたが、更なる時間や場所にとらわれない働き方の実現に向けて、長距離通勤や赴任をできる限りなくし、居住地から最寄りの拠点を本拠地として、必要に応じて在宅勤務や他拠点を併用するハイブリッド型勤務への転換を目指しております。
また、フレックスタイム制度の見直しや育児・介護と仕事の両立支援策の充実などの施策により、業務の生産性向上を図り、ワークライフバランスを推進してまいります。
(エンゲージメントの向上)
社員のエンゲージメントが高まるほど、生産性の向上や離職率の低下、利益率の向上等、様々な指標に好影響をもたらすと言われています。全社員のエンゲージメント状況を定量的、定期的に把握し、分析して改善施策の検討に活用することで、エンゲージメントレベルの向上を目指してまいります。
③リスク管理
企業を取り巻く環境が複雑かつ多様化する中、当社グループでは、リスクマネジメントを経営戦略や事業目的を遂行していく上で不可欠なものと位置付け、リスク管理委員会を中心として全事業所・従業員と共に取り組んでまいりました。
当社グループでは、特種東海製紙グループリスク管理規程に基づき、2018年に「リスク管理マニュアル」を制定し、所管部門ごとのリスク洗い出しと対応策の設定、これのモニタリングを実施しております。また、これらリスクアセスメントの状況はリスク管理委員会での定期的なレビューの結果を踏まえ、毎年見直しを行いながら進めております。
また、気候変動を主としたサステナビリティに係る新たなリスクが可視化されたことを受け、モニタリングや新たなリスクの把握を行っていくため、前述したガバナンス体制と併せリスク管理体制の見直しを行いました。具体的には、所管部門およびグループ会社自らが他の事業リスクとともに気候変動リスクを評価し、重要度の高いリスクについては対応策を検討・実行することにより、リスクの低減に努めてまいります。なお、気候変動等にかかるリスク評価の妥当性や対応策の有効性についての検討は、持続可能な社会実現に向けた当社グループの経営戦略にも直結することから、SDGs推進室において一元的に情報管理をしてまいります。
④指標と目標
項目 | 指標 | 目標値 | 実績 |
気候変動問題への対応 | 生産活動に伴うCO₂排出量の削減(SCOPE1,2) | 化石エネルギー起源CO₂を2013年度比38%削減(2030年度) | 31.1%削減 |
女性活躍の推進 | 女性のキャリア形成の支援 | 管理職及び管理職候補者層における女性比率10%(2025年度) | 7.5%(2022年度) |
(注) 1.当該指標と目標の対象範囲は提出会社単体であります。
2.女性活躍の推進にあたっては、上記「女性キャリア形成の支援」の他に「女性の職域拡大」「柔軟働き方に資する制度の利用率向上」を指標として掲げ各種取り組みを進めております。
3.女性活躍の推進の対象は提出会社原籍者とし、他社への出向者を含み、他社からの出向者を除きます。
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