熊谷組 【東証プライム:1861】「建設業」 へ投稿
企業概要
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
当社グループは長期的な成長を実現し、かつ持続可能な社会の形成に貢献していくため、ESGの視点を経営に取り入れており、事業活動を通して社会課題の解決(社会価値)と事業収益の拡大(経済価値)の双方を追求していくことをサステナビリティの基本方針としている。
(1)ガバナンス
当社は、サステナビリティ分野を含む経営上の重要事項を「経営会議」(議長:社長)にて審議している。また、経営会議を補佐する機関として「サステナビリティ推進委員会」(委員長:経営戦略室長)を設置している。
「サステナビリティ推進委員会」は、事業本部長等により構成されており、ESG・SDGsの視点から、企業の長期的な成長・持続可能な社会形成に資する施策全般を検討する組織である。他の経営会議体と連携し、サステナビリティ分野を推進するための方針や制度の検討などを行っている。
取締役会では、上記プロセスについて報告を受け、取組状況の監督を行っている。
(2)戦略
① 環境保全
当社グループは、限りある資源が循環し、ひと・社会・自然が豊かであり続ける社会を目指して、「持続可能な社会」の実現のために「気候変動リスクへの対応」「ゼロエミッションの達成」「生物多様性に配慮した取組み」等を個別課題に挙げ、目標を定めて取り組んでいる。また、2021年2月にRE100イニシアチブに加盟し、カーボンニュートラルの達成に向け再生可能エネルギー電力の導入を積極的に推進している。
気候変動リスクへの対応
気候変動に伴う「リスク」には、GHG排出に関する規制の強化等の「移行」に起因するものと、自然災害の頻発・激甚化等の「物理的」な変化に起因するものが考えられる。一方で気候変動に伴う「機会」として、新たな市場における需要の増加等が考えられる。当社では短期(概ね3年以内)・中期(概ね3年超~10年以内)・長期(概ね10年超)の3つの時間軸から気候変動関連の「リスク」(「移行」と「物理的」に分類)と「機会」を特定した。
② 人的資本
a 基本的な考え方
当社グループ発展の基盤として人財の確保と育成、それらが健全に機能する職場環境の整備に力を入れている。現在、建設業では若手技術者などの不足、熟練の技術者の退職により、人財減少が深刻化している。こうした状況を踏まえ、当社では女性活躍の推進はもちろんのこと、高齢者の再雇用制度、ジョブリターン制度を制定し、さらに非正規雇用社員の正社員登用などにも積極的に取り組んでいる。
b 採用について
当社は、従業員の高齢化や世代間の不均衡を解決し、ダイバーシティを意識した採用活動を行っている。新卒・中途採用については、今後の業績推移等に基づき、5年後、10年後の総社員数・職種・年齢分布などを考慮した採用計画を策定している。また、2019年度からはジョブリターン制度を設けている。
c 人財育成について
「自らを高め、未来をつくり、人を支える」、そんな人財の育成を目指して、様々な取組みを実施している。2019年4月に当社の育成指針となる「人財育成計画」を策定した。
当社の人財育成は、自ら目標を定め、計画をたて、強い意志で自己の能力開発に努める自己啓発を前提とするものとし、社員自らの能力開発に対し、その効果を高め会社の目標と連動させるべく、会社が行う人財育成の基本方策を次の4つと定めている。
ⅰ ジョブローテーション
複数の職場や異なった職務を経験することで、幅広い知識と考え方を修得させることを目的にジョブローテーションを行っている。社員のキャリアと将来的に希望する職務や、社員一人ひとりの適性を踏まえて、計画的、段階的な異動により、キャリアパスを形成している。
ⅱ OJT
日常の業務を通して、上司及び先輩が、部下及び後輩に対し、職務遂行に必要な知識、技能、態度等を意識的、計画的、体系的、継続的に指導・育成していく。「目標設定」「達成度確認」の面談を実施するとともに、求める人財像に即したスキルの習得状況チェックを行っている。
ⅲ 集合研修
OJTの補完と専門知識の修得、自己啓発の意欲を向上させることを目的として、教育訓練や研修を計画的に行っている。社員が修得すべきスキルのガイドラインを定め、専門知識を高めるための各分野別研修と階層別研修を年次毎に実施している。目的に合わせて集合研修とオンライン研修を使い分け、高い受講率を維持しながら効果的な研修を実施している。
ⅳ 自己啓発支援
技術士、一級建築士などの公的資格の取得を奨励し、受験者を対象に補講や模試を実施し、社員のスキルアップにつながる自己啓発を支援、促進している。
なお、人事評価や業務遂行におけるコミュニケーションとして、期初に目標設定面談、半期に進捗確認面談、期末に自己評価確認面談、さらに評価結果についての面談と1年間で計4回、社員とその上司による面談を実施している。また、将来の職場配置や能力開発についての希望は、全ての社員が社内の申請システムから「キャリアプラン申告」をいつでも人事総務部へ直接申告することができる仕組みがある。
d ダイバーシティ企業として
当社は性別、年齢、国籍、性自認・性的指向(LGBTQ)、障がいの有無等にかかわらず、全ての人が活き活きと働くことができる職場環境の実現に取組み、ダイバーシティ、働き方改革の推進による業績の向上を目指している。
当社は、社長を委員長として各本部長で構成する「ダイバーシティ推進委員会」を設置し、本部・支店・グループ会社よりダイバーシティ推進担当者を選任して、推進体制を構築している。また、各部門の代表者により制度・施策を検討する「働き方改革ワーキング」を設置し、全社横断型でダイバーシティ及び働き方改革を推進している。
当社のダイバーシティ推進部はそれらの運営や実効性を高める役割を担っており、人財活躍推進と働き方改革推進を統合して取り組んでいる。
e 働き方改革の推進について
当社はこれまで働き方改革として、テレワーク・時差出勤・フレックスタイムなどの制度を導入、業務プロセスの見直し・DXの推進など生産性の向上や業務の効率化に関わる施策、また意識改革に努めている。
2023年度は2024年に働き方改革関連法案が建設業に適用される前年にあたることから、新たに「働き方改革アクションプラン2023」を策定し、1年前倒しで時間外労働上限規制の厳守を掲げ、一人ひとりがアクションプランに沿った行動に取り組んでいく。こうした一人ひとりの行動に加えて、さらなる多様な働き方の促進、職場環境の整備、業務の効率化など会社全体として働き方改革を推進していく。
〈働き方改革アクションプラン〉 |
全社員が「働き方改革アクションプラン2023」に沿った行動計画に取り組む |
社長方針→各本部の年度計画→各支店の年度計画→部署の年度目標→各社員が年間の時間外労働時間の目標値を設定し管理する |
行動計画 |
〇経営トップからの定期的なメッセージの発信により社員の意識改革を図る |
〇時間外労働状況の見える化を図る |
〇継続的に業務の効率化・平準化に取り組む |
〇時間外労働の削減に向けて諸規則・運用ルールを徹底する |
f 健康経営について
当社では社員の健康を何よりの経営資源と捉え、本社人事総務部内に健康推進室を設置し、全支店の産業医並びに健康推進担当者が連携して社員の健康を全面的にサポートする体制を整えている。また、社員健康推進計画を年度毎に策定し、PDCAのスパイラルアップを図った健康推進活動を行っている。
なお、新型コロナウイルス感染症においては、対策本部や社員に対して最新情報を随時提供しており、特に重症化リスクが高い社員に対しては受診・面談の勧奨などのサポートを行っている。
当社は、優良な健康経営を実践している法人として、経済産業省と東京証券取引所が創設した「健康経営優良法人」の認定を取得している。今後は社員だけではなく、当社の現場作業員への健康施策も強化していく予定である。
・ハイリスク者への取組み
社員の健康診断結果は全ての産業医による入念なチェックが行われ、フォローが必要な社員には受診・面談の勧奨並びに継続的なサポートを行っている。また、長時間労働による脳・心臓疾患やメンタルヘルス不調を防止するため、対象者への疲労蓄積度チェックと希望者への産業医面談を毎月欠かさず実施している。その他にも、海外、震災復旧現場など特殊な環境下にある職場に対しては産業保健専門職による訪問や社員面談などによる特別なフォローアップを行っている。
・メンタルヘルスに関する取組み
ストレスチェック、社員研修(セルフケア&ラインケア)、職場復帰支援等、一次予防から三次予防まで幅広く活動を行っている。
③ 人権の尊重
当社グループは、全ての役職員がお互いの多様性を認め合い、事業に関わる全ての人の人権を尊重している。2023年1月に「熊谷組グループ人権方針」(以下、本方針)を策定し、本方針に基づき、人権デューデリジェンスを実施している。
熊谷組グループ人権方針(抜粋)
1.適用範囲
熊谷組グループ(熊谷組と連結子会社7社(国内6社、海外1社))を対象とし、すべての役職員に適用されます。また熊谷組グループのビジネスパートナー、サプライヤーおよびその他の関係者に対して本方針の支持を求め、人権を尊重し、侵害しないように求めます。
2.規範や法令の尊重・遵守
世界のすべての人々が享受すべき基本的人権について規定した人権に関する国際規範を支持、尊重します。また事業を行う国や地域で適用される法令を遵守し、各国や地域の法令が国際的な規範と異なる場合は、より高い基準を優先します。
3.企業活動全体を通じた人権の尊重
事業活動を通じて起こりえる人権への負の影響を防止し、人権尊重の責任を果たしていきます。
4.人権デューデリジェンスの実施
人権デューデリジェンスの仕組みを構築し、これを継続的に実施します。
5.救済、是正
人権に対する負の影響を引き起こした場合は、その是正・救済に取り組みます。
6.教育、研修
すべての役職員が本方針について十分な理解を得られるよう適切な教育、研修を実施します。
7.対話、協議
事業活動が人権に及ぼす影響について関連するステークホルダーとの対話と協議を継続して行います。
8.情報開示
人権尊重の取組について、定期的な開示を行います。
当社グループは、本方針に基づき、企業活動による人権への負の影響を防止・軽減することを目的とし、人権デューデリジェンスにおいて、リスクの特定や評価を継続的に実施している。
人権デューデリジェンスは、「人権方針専門部会」という「サステナビリティ推進委員会」の下部組織により検討している。
人権デューデリジェンスのプロセス
1 負の影響を特定
当社グループの事業活動で人権への負の影響が生じる可能性が高く、リスクが重大な項目を特定する。
2 実態の調査
実態の調査では、対象者との対話により人権への負の影響の有無を確認する。
3 負の影響の停止・是正
負の影響があった場合は速やかに対応を行い、負の影響を防止・軽減に努める。
4 情報開示
取組みの進捗などを定期的に開示し、ステークホルダーと共有する。
(3)リスク管理
当社は、事業活動に伴うリスクの把握・低減及び機会の最大化に努めており、重要な事項については、個別案件毎にリスク・機会を抽出・評価のうえ、経営会議・取締役会にて意思決定を行っている。各事業部門においては、業務プロセスに内在するリスク・機会を抽出・評価のうえ、必要な対応策を検討し年度計画に反映している。この取組みの状況については四半期毎にモニタリングを実施し、経営会議体にて報告している。気候変動を含む環境リスク・機会に関しては、「サステナビリティ推進委員会」における報告・議論を経て、経営会議・取締役会にて報告・審議している。
(4)指標及び目標
① 気候変動
当社は、「(2)戦略 ① 環境保全」において記載した、気候変動リスクへの対応について、温室効果ガスの削減目標(スコープ1・2・3)を設定しており、当該目標及び実績は以下のとおりである。
② 人的資本
当社は「(2)戦略 ② 人的資本」において記載した、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いている。当該指標に関する目標及び実績は以下のとおりである。
指標 | 2023年度の目標 | 2022年度の実績 |
新卒採用者に占める女性割合 | 25%以上 | 30.4% |
年度採用人数 | 149人 | 132人 |
新任管理職数に占める新任女性管理職数の割合 | 7%以上 | 7.9% |
子の出生に伴う男性の休暇取得率 | 70%以上 | 73.9% |
時間外労働時間数/月 | 30時間以下 | 21.4時間 |
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