企業兼大株主清水建設東証プライム:1803】「建設業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループの当連結会計年度における研究開発費は199億円であり、うち当社の研究開発費は190億円であります。研究開発活動は当社の技術研究所と建築総本部、土木総本部等の技術開発部署で行われており、その内容は主に当社建設事業に係るものであります。

 当社は、建築・土木分野の生産性向上や品質確保のための新工法・新技術の研究開発はもとより、多様化する社会ニーズに対応するための新分野・先端技術分野や、さらに地球環境問題に寄与するための研究開発にも、幅広く積極的に取り組んでおります。技術研究所を中心とした研究開発活動は、基礎・応用研究から商品開発まで多岐にわたっており、異業種企業、公的研究機関、国内外の大学との技術交流、共同開発も積極的に推進しております。

 また、2023年9月1日から運用を開始したイノベーション拠点「温故創新の森 NOVARE(ノヴァーレ)」(東京都江東区)内の施設の一つである「NOVARE Lab(ノヴァーレラボ、技術研究所潮見ラボ)」に技術研究所の一部機能を移転し、社内外と連携した研究開発を推進しております。

 これら研究開発の成果として、今年度も日本コンクリート工学会、土木学会、地盤工学会、空気調和・衛生工学会をはじめ、さまざまな学協会からの賞を受賞しております。

 当連結会計年度における研究開発活動の主な成果は次のとおりであります。

(1)脱炭素・資源循環・自然共生社会の実現に資する技術開発

①カーボンネガティブ仕様の環境配慮型コンクリート「SUSMICS-C」を現場適用

 バイオ炭(炭化した木質バイオマス)を混和することでコンクリート内部に炭素を貯留する環境配慮型コンクリート「SUSMICS-C」を千葉県印西市のグッドマンビジネスパーク ステージ6ビルディング2新築工事に適用しました。バイオ炭に固定されたCO₂量が、その他の材料製造等に起因するCO₂排出量を上回る、カーボンネガティブ仕様の配合を初めて適用し、バイオ炭を利用しない配合と比べて111%のCO₂排出削減を実現しました。また、本技術は㈱日刊工業新聞社主催の「第66回 2023年 十大新製品賞」において、本賞を受賞しました。

②カーボンネガティブを実現する脱炭素アスファルト舗装の共同開発に着手

 日本道路㈱と共同で、道路舗装に使用するアスファルト材に炭素を貯留する、脱炭素アスファルト舗装技術「SUSMICS-A」の開発に着手しました。CO₂固定効果のあるバイオ炭をアスファルト材の混合材料として用い、カーボンネガティブ舗装材の実用化を目指し、今後、実証試験を通じて施工性や耐久性を検証していきます。

③生産施設の環境性能評価指標「F-CaS」を制定

 生産施設の環境性能をCO₂排出量の観点から数値評価する独自の環境指標「F-CaS(エフキャス:Factory Carbon Score)」を制定しました。独自に開発したシミュレーションツールを用いて各生産設備のエネルギー消費量からCO₂排出量を求め、施設全体の環境性能をFーCaS値としてスコア化します。今後、FーCaS値に基づき、顧客ニーズに対し最適な施設計画の提案を行い、CO₂削減目標の達成やカーボンニュートラルに向けた中長期かつ総合的な支援を行います。

④街区熱融通システム「ネツノワ」を開発

 街区全体でエネルギーの有効利用を図る街区熱融通システム「ネツノワ」を開発し、当社施設「温故創新の森 NOVARE」に導入しました。街区内の複数建物の熱源機器を連携させ、総合的なエネルギー効率を踏まえて運転制御を最適化することで、エネルギー消費量とCO₂排出量を削減します。熱源の3割に再生可能エネルギーと未利用エネルギーを導入したケースの試算では、熱源消費エネルギーと熱搬送消費エネルギーの削減量が約20%に達することを確認しました。

⑤グリーン水素を活用した臨海副都心の脱炭素化に向けた取組みを推進

 脱炭素化に向けた取組みを推進するため、東京都港湾局、産業技術総合研究所、東京臨海熱供給㈱及び㈱東京テレポートセンターと、臨海副都心の青海地区においてグリーン水素を活用した事業に取り組み、全国初となる水素混焼ボイラーによる地域熱供給や水素と太陽光による電力供給モデルの構築に向けて共同研究を実施します。

⑥社会連携講座「物質サーキュレーション建設学講座」を開設

 東京大学大学院工学系研究科と、地球資源を考慮したサーキュラーエコノミー(循環経済)に資する物質循環型建造物の構築を研究テーマとする社会連携講座「物質サーキュレーション建設学講座」を開設しました。製品、素材、資源の価値を可能な限り長く保全・維持し、廃棄物の発生を抑制するサーキュラーエコノミーの社会実装に貢献していきます。

⑦PFAS汚染土壌の浄化試験を米国内で開始

 米国テキサス州で、人体への有害性が指摘されている有機フッ素化合物(PFAS)を含む土壌の浄化実証試験に着手しました。当社が独自に開発してきた土壌洗浄技術の実効性を検証し、処理効率を最大化できる技術の確立に取り組みます。今後、すでに軍用地等でのPFAS土壌汚染が顕在化し、規制面でも先行する米国での技術適用を目指します。将来的には日本国内において、PFASを含む泡消火剤が広範囲に散布された可能性のある施設や、PFASを製造・使用していた事業所等への技術展開を進めていきます。

⑧カーボンニュートラル社会の実現に向けた包括連携協定を締結

 早稲田大学と当社は「カーボンニュートラル社会の実現に向けた包括連携に関する基本協定」を締結しました。産学連携による最先端の技術や知見の活用を通じて、新たな価値の創造と社会問題や産業界の抱える諸問題の解決に導く事を目的とし、研究開発成果の創出と、研究・教育を牽引する人材の交流と育成、起業支援など新事業創出に向けた活動に取り組みます。

(2)生産性向上に資する技術

①天井仕上げ工事をアシストする「スカイランナー」、「スカイテーブル」を開発

 ㈱レンタルのニッケンと共同で、建築物の天井仕上げ工事のアシスト機械、電動走行作業台「スカイランナー」と無線操作式資材運搬・揚重機「スカイテーブル」を開発しました。両機を併用することで足場の移設作業が不要となり、作業員一人で天井資材の運搬・揚重・設置を連続的に進めることが可能となります。従来工法と比べ、約20%の作業効率向上が期待できます。

②遠隔地から建物の諸検査を実施できるメタバース検査システムを開発

 建築生産の効率化を目的に、遠隔地にいながら建物の諸検査を実施できるメタバース検査システムを開発しました。施工中建物の3次元スキャンをもとに、施工状況をリアルに再現した仮想空間の中に入り、設計図(3次元BIMデータ)との整合を自動計測機能により確認できます。実建物を対象としたシステム検証では、日本建築センターから「実用に供し得る」という評価を得ており、将来的には、このシステムを一般公開し、日本全体の建築生産の効率化に寄与していきます。

③ロボットで床版更新工事のマーキング作業を効率化

 東名高速道路所領橋他2橋床版取替工事にデンマーク製の自動マーキング(墨出し)ロボット「タイニーサーベイヤー(Tiny Surveyor)」を導入しました。事前の性能試験により、所定の測量・マーキング精度を確認できる設定を確認し、当該工事にロボット2台を投入することで、橋面のマーキング作業の生産性を約90%向上させました。今後、床版取替工事や空港等の大規模舗装工事に導入し、生産性の向上を図ります。

④山岳トンネル工事の遠隔施工管理システム「Shimizu Tunnel Excavation Laser guidance System」を構築

 施工管理業務の省人化・省力化を目的に、㈱演算工房、ニシオティーアンドエム㈱と共同で山岳トンネル工事の遠隔施工管理システム「Shimizu Tunnel Excavation Laser guidance System」を構築しました。コンクリート吹付け機に搭載した3Dスキャナや広角高精度カメラを介して、吹付け面の出来形計測や切羽の性状評価を、遠隔で効率的かつ安全に行えます。当社トンネル工事での実証施工では、吹付け面の出来形確認・調書作成の作業時間を従来の約6分の1に、切羽面の観察・判定を従来の約3分の1に短縮しました。

⑤AI・IoTを活用した造成工事の管理システム「Shimz-Smart-Site Analyzer」を開発

 AIやIoTを活用して造成工事の施工管理を効率化するシステム「Shimz-Smart-Site Analyzer」を開発しました。ダンプトラックに積載した土砂の有無を3Dスキャンによる点群データをもとにAIが判定し、GNSS(位置情報システム)によるダンプトラックの位置情報と併せてクラウド上で統合・分析します。現場内で稼働するダンプトラックの土砂運搬量や各集積場の土量をデジタル上でリアルタイムに一括管理でき、施工管理を遠隔地から少人数で行えます。本システムを福島大熊西地区基盤整備1期工事に適用し、有効性を確認しております。

⑥山岳トンネル工事における最適発破自動設計施工システムを開発

 山岳トンネル工事における発破作業の生産性向上を目的に、最適な発破パターンの自動設計施工システムを、古河ロックドリル㈱、㈱演算工房、㈱ジャペックスと共同で開発しました。地山性状のデータを自動計測・解析し、熟練技能者が経験と感覚をもとに行っていた穿孔数や火薬量など最適な発破パターンの設計を自動で行うことで、サイクルタイム・施工コストの大幅な削減が見込めます。当社トンネル工事現場での実証試験では、発破掘削の過不足を抑え、火薬使用量を削減できることを確認しました。

⑦シールドマシンの現在位置をARで確認できる「Shimz ARシールド」を開発

 ㈱菱友システムズと共同で、地中を掘進するシールドマシンの現在位置をタブレット端末のAR画面でリアルタイムに確認できるシステム「Shimz ARシールド」を開発しました。工事関係者や地域住民と、掘進イメージを円滑に共有できます。福岡県内の当社シールドトンネル工事現場で行った実証試験では、数㎝程度の誤差でシールドマシンの現在位置を捕捉できることを確認しました。今後、本システムをシールドトンネル工事の標準技術として工事現場に広く展開していきます。

(3)ものづくりを支援する技術開発

①建設3Dプリント材料「構造用ラクツム」を建築構造部材の施工に初適用

 3Dプリンティング用のコンクリート材として自社開発した「構造用ラクツム」を、「温故創新の森 NOVARE」における建築構造部材のプリント施工に初適用しました。構造用ラクツムは、3Dプリント材では国内で唯一、建築基準法上の指定建築材料として国土交通大臣の認定を受けているため、その積層造形体を構造部材として適用でき、施工の省力化・省人化に寄与します。今後、適用案件の拡大とプリント施工の更なる効率化に向けた技術開発に注力していきます。

②材料噴射型3Dプリンティングで有筋構造部材を高精度に造形

 材料噴射型の3Dプリンティング技術を用いて、鉄筋を内蔵した有筋構造部材を自動造形する技術を開発しました。実証試験では、所要時間2時間程度で、断面寸法510×210mm、高さ1.5mの柱部材を寸法誤差±5mm以下で造形でき、高い精度を確認しました。本技術による造形体は、在来工法による鉄筋コンクリート部材と同等以上の構造的な性能を有し、実用化されれば施工の省人化・省力化が期待できます。今後、造形精度の更なる向上、意匠性の高い複雑形状に対する技術確立を目指すとともに、新設構造物だけでなく既設構造物の補修・補強、応急復旧への適用も視野に技術開発を進めていきます。

③トンネル切羽のリアルタイム監視システムを開発

 山岳トンネル工事における安全管理の高度化を目的に、切羽の微細な変状を面的かつリアルタイムに捕捉する「トンネル切羽安全監視システム」を開発しました。切羽掘削面における振動挙動を高速・高精度に計測して可視化することで、従来では捕捉が困難だった切羽崩落の予兆を適時・的確に捉えられるようになり、作業安全性が飛躍的に高まります。当社の山岳トンネル工事現場に試験適用し、システムの有用性を確認しました。今後、本システムに注意報・警報発報機能を組み込み、切羽崩落災害の根絶につなげていきます。

④トンネル切羽クラック検知AIシステム「みまもりマスタ」を開発

 山岳トンネル工事現場の安全性向上を目的に、㈱sMedioと共同でトンネル切羽クラックを検知するAI安全支援システム「みまもりマスタ」を開発しました。従来は作業員が目視で発見していたクラックの発生を、画像解析AIがリアルタイムかつ高精度に検知し、切羽崩落の危険性が高い場合に、近傍作業者へアラートを発報して切羽からの退避を促します。実証試験では、従来よりもクラックの検知時間が短縮され、作業者に十分な退避時間を提供できることを確認しました。今後、本システムを当社施工の山岳トンネル工事現場に広く展開していきます。

⑤車両搭載型AI監視カメラシステム「カワセミ」を商品化

 建設現場における重機接触災害の根絶を目指し、㈱Lightblue、エヌディーリース・システム㈱と共同開発した建設重機用の車両搭載型安全監視カメラシステム「カワセミ」を商品化し、エヌディーリース・システム㈱を通じた外部販売を開始しました。画像解析AIを活用して建設重機オペレータの死角に入っている人や車両を瞬時に検知し、アラートを発報します。画像解析AIに組み込んだ骨格推定アルゴリズムにより、さまざまな作業姿勢の人物を高精度で検知できます。

⑥ブルドーザーの自律施工に向けた要素機能の実効性を確認

 土木工事の無人化施工の実現に向け、ボッシュエンジニアリング㈱、山﨑建設㈱と共同で、盛土工事におけるブルドーザーの自動運転システムを構築しました。操作者が盛土工事の作業内容を設定すると、AIがセンサーやカメラからの情報をもとに状況を分析・判断し、移動やブレードの上下稼働などの運転制御や、物体・人の検知による緊急停止を設定どおりに自動で行います。実証試験を通じて、運転制御や物体検知、緊急停止など要素機能の実効性を確認しました。今後、ブルドーザーの環境認識機能の高度化を図り、自律施工型ブルドーザーの開発につなげていきます。

⑦国内最大・最高性能の陸上風車建設用移動式タワークレーン「S-Movable Towercrane」が完成

 当社が、㈱エスシー・マシーナリ、IHI運搬機械㈱と共同で開発を進めてきた国内最大・最高性能の陸上風車建設用移動式タワークレーン「S-Movable Towercrane」が完成しました。5~6MWクラスの大型陸上風車の建設に対応でき、陸上風力発電施設の施工で不可欠となるクレーンの移設を短期間で行えます。

⑧超高層ビル建設現場の高速通信を実現

 KDDI㈱と共同で、超高層ビル建設現場の高速通信環境を簡易に構築する新手法の実証試験を都内の建設現場で行いました。KDDI㈱が提供する衛星通信サービス「Starlink Business」を通信インフラとして活用するもので、建設現場のタワークレーン上部に専用アンテナを設置し、タワークレーンを現場内の電波塔として活用します。実証試験では、タワークレーンの旋回時や悪天候時にも、高さ100mの施工フロアで高速通信環境を安定的に維持できることを確認しました。今後、本手法を国内の超高層ビルの建設現場に広く展開していきます。

⑨建設現場のDX実現に向けた協業を開始

 エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ㈱、㈱竹中工務店と当社は、建設現場におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の実現に向けた協業を開始しました。建設現場におけるさまざまな施工管理情報をデジタル化する「施工管理業務のDX」を進めます。DXの実現に向けたソリューションの構築と建設現場への実装・定着化を行うとともに、DXにより得られたデータの利活用により、更なる施工管理業務の高度化と業務プロセスの最適化を目指します。

⑩「金属積層造形を用いたロケット液体燃料タンク製造技術」に関する共同研究を本格化

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)と当社は、「金属積層造形を用いたロケット液体燃料タンク製造技術」に関する共同研究を進めております。当社が保有する金属積層造形技術と、JAXAが保有する宇宙輸送システム技術を組み合わせることで、アルミ合金製液体燃料タンク等の大型構造体を低コストかつ短期間で製造する技術の確立を目指します。今後はこれまでの成果を踏まえ、サブスケール供試体の試作に向けた積層造形装置の整備や、造形プロセスの確認を行い、供試体の試作を通して造形精度や品質安定性などを検証していきます。さらに当社では、地上用途として本技術を建設材料の製造にも活用していきます。

(4)設計技術・構工法

①AIによりZEB設計業務を支援するツール「ZEB SEEKER」を開発

 設計業務の効率化・高度化を目的として、AIを活用してZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の設計業務を支援するツール「ZEB SEEKER」を開発しました。設備機器の能力設計や建物の省エネルギー性能の評価を自動化し、顧客ニーズに適した設計案をAIが探索・提案します。従来は1ヶ月以上を要していた設計者による検討を100倍以上効率化でき、顧客が脱炭素の取組方針や事業計画の方向性を決める計画の初期段階から、顧客ニーズに適した提案が可能となります。

②設計初期段階における構造検討業務を支援するシステム「SYMPREST」を開発

 設計業務の高度化と効率化を目的として、設計初期段階における鉄骨造オフィスビルの構造検討業務をAIにより支援する「SYMPREST」を開発し、社内運用を開始しました。検討対象建物の形状・寸法を入力すると、データベースから形状に概ね合致する構造架構が複数抽出され、設計者が選択した案の架構部材3DモデルをAIが作成します。今後は超高層オフィスビルや他の用途・構造形式の架構生成も行い、システムの機能拡充を図ります。

③個室ブースの空調を最適化するパーソナル空調システムを開発

 大阪公立大学健康科学イノベーションセンター、㈱総合医科学研究所と共同で、オフィス内の個室ブースの空調を最適化できる「床吹き出し型パーソナル空調システム」を開発しました。在室者は体調や好みに応じて風量や風向きを任意に選択でき、長時間執務しても疲労しにくい快適な執務環境を実現します。実証試験では、在室者の作業エラーの発生率が、一般的な空調システムと比べて30%低減されることを確認しました。新築建物はもとより、床吹出空調方式の既存建物にも簡易に導入できます。

④鉄骨造建物の梁部材を合理化する「エコウェブ工法」を開発

 鉄骨造建物の梁部材を合理化する補剛工法「エコウェブ工法」を開発し、第三者認定の建築技術性能証明を取得しました。鉄骨造建物の梁ウェブ(側面部分)端部に、鋼製の板材を取り付けることで、梁の変形性能を維持しながらウェブを薄肉化します。従来工法比で、梁単体の鉄骨量を最大30%縮減でき、コストダウンが図れます。

⑤RC造建物の耐震性能を向上させる「シミズハイレジリエントビーム構法」を開発

 RC(鉄筋コンクリート)造建物の耐震性能を向上させる「シミズハイレジリエントビーム構法」を開発し、現在都内で施工中の建設現場に初適用しました。RC造建物の梁端部の主筋を増強し、地震時に損傷が生じやすいヒンジ領域を梁の中央側に移動させることで、柱梁接合部の損傷を防ぎます。震度7相当の負荷をかけても、従来構法と同等の耐力を維持しながら、柱梁接合部の損傷を最小限に抑制できることを確認しました。

⑥地震時の杭への負荷を低減する新構法「スリムパイルヘッド構法」を開発

 基礎躯体の必要数量を縮減できる杭頭半剛接合構法「スリムパイルヘッド構法」を開発し、都内の超高層ビルに初適用しました。超高層ビルの場所打ちコンクリート杭頭部と基礎部の固定度を半剛状態にして地震時の杭への負担を低減することで、杭や地中梁の必要数量を減らし、コストダウンや工期短縮を実現します。震度7相当の負荷をかけても期待された性能を維持することを確認しており、今後、超高層案件に本構法の適用を提案していくことで、案件受注の拡大につなげていきます。

⑦超高層ビルの環境配慮型解体工法「グリーン サイクル デモリッション」を開発・実用化

 内幸町一丁目街区南地区第一種市街地再開発事業解体工事に、環境配慮型超高層解体工法「グリーン サイクル デモリッション」を適用しました。本工法は、ブロック状に切断した躯体を大型クレーンで最上階から吊り降ろし、地上で破砕・分別するブロック解体工法をベースに構築され、他工法と比べて安全性が高く、騒音・粉塵の発生量も少ないため、周辺環境に与える影響を最小化できるメリットがあります。また、鉄骨躯体の切断工程に自社開発した自動プラズマ切断装置「シミズプラズマカッター」を用いることで、CO₂排出削減と作業時間短縮を実現できます。

⑧道路橋プレキャストPC床版接合部の継手工法「アローヘッドジョイント」を開発

 道路橋に使用されるプレキャストPC(プレストレストコンクリート)床版接合部の継手工法「アローヘッドジョイント」を開発しました。床版の接合技術として、端部に矢尻状の定着体を設けた機械式定着鉄筋「アローヘッド鉄筋」を用いることにより、耐久性向上と配筋作業の合理化が図れます。本工法で接合したプレキャストPC床版を用いて輪荷重走行試験を行い、高い疲労耐久性を確認しました。また、従来工法と比べて約50%の生産性向上が見込めます。

(5)デジタルな空間・サービスを提供する技術開発

①淡海医療センターの医療サービスのDXに着手

 淡海医療センター(滋賀県草津市)において、当社が提案する「DX-Coreスマートホスピタル構想」の具現化に向けたDXの取組みに着手しました。当社が開発した、建物設備と各種アプリケーションを連携・制御できる建物OS「DX-Core」を基盤として、受診予約システムや電子カルテなどの医療系システムデータと、ロボットの統合制御システムや各種設備の制御システム、各種センサー類などのファシリティ系システムデータの連携を進めます。これにより、医療サービスの質と生産性の向上を図り、医療施設利用者の満足度の向上、医療施設の収益改善に寄与していきます。

②複数ロボットのエレベータ同乗技術を確立・実装

 施設内で稼働する複数サービスロボットのエレベータ同乗技術を確立し、メブクス豊洲に実装しました。共通のインターフェースを介して複数ロボットを統合制御する「Mobility-Core」と「DX-Core」を連携させ、ロボットとエレベータの運用・運行を統合制御することで、ロボット同士が互いを障害物と認識することなくエレベータに同乗し、ロボットとエレベータの運行効率を合理化できます。今後、メブクス豊洲での実証運用を通じて、本技術の実効性をさらに高めていきます。

③まちづくり計画支援サービス「マチミル」を提供

 付加価値の高い、ウォーカブルな人中心のまちづくりを目的に、まちづくり計画支援サービス「マチミル」を提供しました。建物、道路、人流や災害状況などの都市データに基づく分析やさまざまな仮説の迅速な検証をもとに、地域の課題やまちづくり計画の効果を分かりやすく可視化して関係者間の合意形成を促し、地域の防災・省エネルギーや効果的なエリアマネジメントの計画を支援していきます。今後、デジタルを活用して地域の課題解決を目指す自治体やまちづくり組織に対して、本サービスを提供していきます。

④バーチャルエコノミーの拡大に向け、産学官協働の研究開発が始動

 産業技術総合研究所、早稲田大学、東京大学、㈱バンダイナムコピクチャーズと共同で、内閣府が運営する「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期課題/バーチャルエコノミー拡大に向けた基盤技術・ルールの整備」に係る公募に対し、「コミュニケーションを拡張するインターバース技術の研究開発」プロジェクトを提案し、採択されました。本課題では、サイバー空間とフィジカル空間をつなぐインターバースを注力領域として、技術開発やルール・制度の整備により、新たなバーチャルエコノミー圏の創出・拡大を図ります。

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