池田泉州ホールディングス 【東証プライム:8714】「銀行業」 へ投稿
企業概要
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社は2021年5月、経営理念の実践および経営ビジョン『Vision’25』の具体化に向けて、『サステナビリティ宣言』を採択しました。当社グループでは『サステナビリティ宣言』に従い、本業を通じて、地域の課題解決に資する取組みを強化しております。
また、2021年11月には、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の趣旨に賛同しており、推奨された情報開示の高度化に取組んでおります。
(1) ガバナンス
① サステナビリティ推進体制
サステナビリティへの取組みは、経営の重要課題として位置付けており、取締役会の監督のもと、具体的な取組みを推進しております。
2022年4月には、代表取締役社長兼CEOを委員長とするサステナビリティ委員会を設置しております。当委員会では、代表取締役社長兼CEO以下、各担当役員等を構成員としており、原則四半期毎に開催し、持続可能な地域社会の実現に貢献する中長期的な成長戦略として、気候変動問題を含むSDGs・ESGを経営に取込み、「ビジネスモデルの変革」を行うことを目的としております。当委員会で議論された内容については取締役会へ報告を行っており、適切な監督が図られる体制を構築しております。サステナビリティに関する重要な取組事項については、経営会議での議論を経て取締役会に付議、報告を行っております。
また、当社グループ全体のSDGs・ESGに関する施策をより一層推進すべく、2022年4月にSX戦略室を設置しております。
(グループ体制図(推進、監督体制の強化))
(サステナビリティ委員会/SX戦略室の役割)
(2) 戦略
当社グループは、幅広いパートナーシップを活用し地域の課題解決に取組むことで、地域のSDGs達成に貢献します。
また、持続可能な地域社会の実現が当社グループの成長の礎になるものだと考えております。
(当社のマテリアリティと関連するSDGsのゴール)
① 気候変動にかかるリスクと機会
気候変動の影響は不確実性が高く、また、分析対象となる期間も長期まで考慮したものとすべきとされています。当社では、気候変動の分析において、産業革命以前と比較して平均気温の上昇が「1.5℃以下」の上昇に留まるシナリオ及び「4℃」上昇するシナリオの2つのシナリオを用いて、気候変動が当社のビジネスに及ぼすリスクと機会について把握を行いました。また、評価の時間軸については、「短期(5年未満)」「中期(15年程度)」「長期(30年程度)」の期間で影響の分析を行いました。
a.リスクと機会
| 主なリスクと当社への影響 | 時間軸 | |
リスク | 移行リスク | ● 低炭素商品・サービスなどへの消費者志向のシフトに伴う取引先企業の事業環境悪化と当該企業向け貸出資産毀損 ● 気候変動対応が不十分なことによる当社レピュテーションの悪化 | 短期~長期 |
● 政策変更・規制強化に伴う取引先企業の事業環境悪化と当該企業向け貸出資産毀損 | 中期~長期 | ||
物理的リスク | ● 災害による担保不動産の毀損 ● 災害、生産性低下に伴う取引先の事業、就業への影響 ● 当社拠点の毀損による影響 | 中期~長期 | |
機会 | ● 低炭素社会に対応する企業の設備資金需要の増加 ● 脱炭素化を支援する商品・サービス関連事業者、再生エネルギー事業者の事業機会と資金需要の増加 ● エネルギー消費削減に伴う事業コスト減少 | 短期~長期 |
b.炭素関連資産
2021年のTCFD提言改定付属書にもとづく炭素関連資産(※1)が当社貸出金等に占める割合は、「24.3%」(※2)となっております。
※1 炭素関連資産は、改定以前の「電力」「石油・ガス・消耗燃料」セクターに、「運輸」「素材・建築物」「農業・食糧・林業製品」セクターを加えたものと再定義されております。
※2 子会社の池田泉州銀行にて管理している業種分類をTCFD提言が推奨しているGICS(世界標準分類)に当てはめて集計しているため、差異が生じる場合があります。
c.シナリオ分析
ⅰ.移行リスク
「TCFD」「SASB(サステナビリティ会計基準審議会)」など各種専門機関等の分析をもとに、セクター別の潜在的なリスクの大きさを調査するとともに、当社のエクスポージャーも加味したうえで、影響が大きなセクターを検討しました。検討の結果、「電力」及び「石油・ガス・消耗燃料(石油小売・卸売含む)」を重点セクターに選定しております。なお、重点セクターについては、今後の専門的分析や市場動向等を踏まえて追加・変更の可能性があります。
選定した2セクターについては、「1.5℃シナリオ」「4℃シナリオ」の2つのシナリオを前提として、当該セクターの事業者にどのようなリスクと機会があるかを洗い出した上、将来の事業に対する影響を分析しました。
移行リスクの分析に際しては、国際エネルギー機関(IEA)World Energy OutlookレポートのNet-Zero Emissions by 2050シナリオ(NZEシナリオ)等における資源需要や発電における電源別構成に関する将来予測データおよび炭素税の予測データ等を使用し、2050年までの融資先に対する財政状態や経営成績に関する変化についての予想を行い、与信関連費用の変化を分析しました。
移行リスクに関する分析結果は以下の通りです。
シナリオ | IEAのNZEシナリオ等 |
分析対象 | 「電力」および「石油・ガス・消耗燃料(石油小売・卸売含む)」 |
分析期間 | 2050年まで |
リスク量 | 与信関連費用の増加額:最大で35億円程度 |
ⅱ.物理的リスク
物理的リスクについては、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のRCP8.5シナリオ(4℃シナリオ)等を参考にし、ハザードマップを用いて事業性融資取引先の不動産担保の損壊による担保価値毀損額、および事業の停滞等による業績悪化の影響が、与信関連費用の増加に及ぼす影響を分析しました。
物理的リスクに関する分析結果は以下の通りです。
データおよびシナリオ | 4℃シナリオ等を参考に融資先の本店所在地及び担保物件所在地のハザードマップを使用 |
分析対象 | 気候変動に起因する大規模水害が発生した場合の業績悪化および担保等の毀損の影響を分析 |
分析期間 | 2050年まで |
リスク量 | 与信関連費用の増加額:最大で45億円程度 |
上記分析により試算した与信関連費用の増加については、中長期的な取り組みにより低減することが可能であることから、気候変動リスクが当社戦略へ与える影響は限定的であることを確認しております。なお、一定の前提を置いた試算であることから引き続きシナリオ分析等の向上及び精緻化に取り組みます。
d.戦略への反映
子会社である池田泉州銀行では、サステナブル投融資方針を制定し、ESG(環境・社会・ガバナンス)に対して負の影響を与えるおそれがある投融資については、十分に注意しながら取組み可否を検討し、その影響を低減・回避することに努めることとしているほか、以下のとおり、特定セクターに対する投融資方針も設定しています。
(特定セクターに対する投融資方針)
セクター | 方針 |
兵器 | クラスター弾など非人道的な兵器の開発・製造等に関与している企業への投融資は行わない。 |
石炭火力発電 | 新設の石炭火力発電所建設を資金使途とする投融資については、原則として取組まない。ただし、国際的なガイドライン等を参考に、高効率化・次世代化に資する発電所新設の場合は、個別案件ごとに十分に注意しながら取組み可否を検討する。 |
森林伐採 | 森林伐採を伴う開発等を資金使途とする投融資は、違法伐採や違法労働に関与していないか、また環境への影響を勘案し、十分に注意しながら取組み可否を検討する。 |
② 本業の金融サービスを通じた環境問題への対応、環境を重視した事業活動
池田泉州ホールディングス傘下の池田泉州銀行と池田泉州リースは、「持続可能な社会の形成に向けた金融行動原則(21世紀金融行動原則)」に署名しております。池田泉州ホールディングスグループとして、以下のような、本業の金融サービスを通じた環境問題への対応、環境を重視した事業活動を行っております。
・SDGs私募債「絆ふかまる」
・SDGsアクション(脱クリアファイル)
・フードロス削減を実現する「Kuradashi商談会」
・自家消費型太陽光投資パッケージ(リースモデル)
③ 人材への取組み
当社は人的資本経営の実現に向け、『人材育成』や『社内環境整備』に関する方針を定め、重点的に取り組んでおります。
a.人材育成の方針
当社では、「人材育成基本方針」に則り、人材育成の推進を図ります。当該基本方針の骨子は以下の通りであります。
ⅰ.人材育成の目的
人材育成は、当社グループの事業に貢献し得る人材を継続的に育成し、もって長期的な企業価値の向上と健全な企業文化の醸成に資することを目的として行います。
ⅱ.目指すべき人材像
経営理念を踏まえ、次に掲げる6つの属性を高い次元で備えた人材の育成を目指します。
・広い視野
・旺盛なチャレンジ精神
・高い規律意識
・弛まぬ向上心
・高度な専門性
・豊かな感受性
ⅲ.人材育成の手段
OJT(各職場における教育)とOff-JT(集合型研修や自己啓発支援等)の双方をその特徴と目的に応じて使い分け、人材育成を効果的に行います。
ⅳ.人材育成計画の策定
人材育成責任者に任命された各部店長が、自部店の人材育成計画を立案し、人材育成統括責任者である人事部長が各部店の計画を踏まえ、当社の人材育成計画を策定します。
当社では、中長期的な企業価値向上のためには、人材の多様性が必要であると考え、中核人材の多様性確保を進めます。
ⅴ.中核人材の多様性確保の手段について
中核人材の多様性確保を図るため、女性も含めた多様な中核人材を登用するための基盤づくりを計画的に進めます。中長期的な人材育成計画を策定し、計画的な人事異動等により、必要なスキル・経験を獲得させることで、候補者の育成・登用を進めるとともに、キャリア採用の推進により多様なスキル・経験を持つ人材を確保することで、中核人材の多様性を確保します。
b.社内環境整備の方針
当社ではすべての職員が最大限の力を発揮できるよう、職員が当社グループの事業に誇りを持ち、自らの仕事に対してやりがいを感じ、安心して新たな課題に挑戦できる職場・風土を構築します。
ⅰ.挑戦する職員の支援
自らの仕事に誇りとやりがいを持って、新たな課題に挑戦し続ける職員を支援するため、意欲のある職員に対し、成長する機会と働きやすい環境を提供します。
そのため、公募により希望職種にチャレンジできる制度やトレーニー制度を設けています。
ⅱ.多様な働き方の実現
多様な人材が活躍できる環境をつくるため、時間や場所の制約を軽減しワークライフバランスを確保するとともに、ライフイベントに応じてキャリアの継続・向上を支援します。
そのため、テレワークやフレックスタイムの活用推進、女性活躍を支援するための様々な取組みを実施しています。
ⅲ.職員の心身の健康増進
当社では職員の心身の健康が将来的な成長と地域への貢献に重要であると考え、職員一人ひとりの心身の健康増進に向けた様々な取組みを行います。
そのため、産業保健スタッフによる健康指導や休暇取得奨励等、健康増進に向けた取組みを実施しています。
④ 雇用者の資産形成を支援する取組み(ファイナンシャル・ウェルネス)
当社では職員の将来的な財産形成の一助となるべく、従業員持株会を設定しております。積立口数に応じて奨励金を拠出しており、職員の加入を推奨しております。
(3) リスク管理
① リスク管理の基本的な考え方
金融業務の自由化・高度化・国際化の進展や情報通信技術の著しい進捗などにより、金融機関のビジネスチャンスが拡大する一方で、金融機関の抱えるリスクは、ますます複雑化・多様化しています。
また、金融機関が様々な顧客ニーズに応えながら収益を安定的かつ継続的に確保するためには、多様なリスク管理を適切に把握・評価・管理し、環境の変化に適時・適切に対応することが重要となっています。このような状況の下、当社グループは、リスク管理体制の充実・強化を経営の重要課題として位置づけ、健全性の維持・向上に努めています。
② 気候変動へのリスク管理体制
当社グループは、統合的リスク管理の枠組みの下、信用リスクなどにかかる各種リスクの総量を自己資本の一定範囲内にコントロールするため、リスク資本管理制度に基づいて、業務運営を実施しています。
気候変動に起因する移行リスクや物理的リスクが、お取引先の業績を通じて事業運営、戦略、財務計画に大きな影響を与えうることを認識しております。シナリオ分析結果を踏まえ、当社グループお取引先の事業活動に及ぼす影響については、信用リスク管理の枠組みの中で対応しており、リスク管理委員会において気候変動リスクに関する報告を実施しております。
気候変動のリスクは時間軸やその不確実性に配慮する必要がありますが、気候変動をドライバーとした当社グループのリスクについて、既存のリスク管理の枠組みも活用しながら、状況をモニタリングし、適切な対応を検討してまいります。
前述のとおり、サステナブル投融資方針・特定セクターに対する投融資方針を設定し、気候変動による負の影響について、投融資の取組可否判断の際には十分に注意しつつ検討を行っております。また、シナリオ分析を活用した重要セクターのリスク把握に基づき、お取引先と意見交換をさせていただくことで、サステナブルファイナンスやCO₂削減に向けての取組みなど気候変動対応の支援も進めていく予定です。こうした対応は当社グループのリスクの低減にもつながると考えております。
(4) 指標及び目標
① 気候変動にかかる指標および目標
当社グループでは、気候変動問題に関する中長期目標として次のように定めております。
サステナブルファイナンス ※実行額累計 | 目標額 | 2023年3月末 |
2022年度~2030年度 | 1兆円 | 997億円 |
※資金使途が環境、社会分野の課題解決につながる投融資、SDGsへの取組みを支援・促進する投融資
なお、日銀気候変動対応オペの対象投融資の残高は213億円です。(2023年3月末時点)
CO₂排出量削減(2013年度比) | 目標 | 2023年3月末 |
中期目標(2022年度~2030年度) | 60%削減 | 44%削減(速報値) |
長期目標(~2050年度) | カーボンニュートラル | - |
(単位:t-CO2)
計測項目 | 2021年度 | 2022年度 | ||
Scope1 | 直接的エネルギー消費 | ガソリン、都市ガス等 | 1,297 | 1,084 |
Scope2 | 間接的エネルギー消費 | 電気 | 5,477 | 5,354 |
(CO₂排出量ネット・ゼロに向けたロードマップ)
当社グループでは、2050年CO₂排出量ネット・ゼロに向けて、ロードマップを作成しております。
② 人材育成方針と社内環境整備方針に関する指標及び目標
分類 | 設定指標 (池田泉州銀行単体) | 2020年度 実績 | 2021年度 実績 | 2022年度 実績 | (達成年度) 目標 |
人材育成 (専門人材育成) | ソリューション 人材 | 70名 | 104名 | 150名 | (2025年度) 290名 |
FP1級 | 40名 | 84名 | 130名 | (2023年度) 200名 | |
エンゲージメント | エンゲージメント スコア | - | - | 67 (同規模金融68) | 今後検討 |
従業員持株会 加入率 (Financial Wellness) | 98.0% | 97.3% | 97.2% | - | |
ダイバーシティ | 女性管理職比率(注1) | 20.7% | 21.6% | 23.5% | (2026年度) 30% |
男女間 賃金格差 | 正規 | 67.0% | 64.2% | 64.5% | - |
非正規(注2) | 84.0% | 85.0% | 79.8% | - | |
合計 | 59.4% | 56.1% | 55.9% | - | |
男性育休取得率 | 46.4% | 44.9% | 92.3% | (2026年度) 100% | |
経験者採用比率 | 13.8% | 5.3% | 13.8% | 今後検討 | |
障害者雇用比率 | 2.39% | 2.32% | 2.36% | 法定(現状) 2.3% | |
健康 | 有給休暇取得率 | 42.8% | 47.1% | 52.9% | - |
月平均 時間外勤務 | 12.9時間 | 11.3時間 | 12.1時間 | - | |
ストレスチェック 受検率 | 95.2% | 96.9% | 96.5% | - | |
特定保健指導 実施率 | - | 35.3% | 45.6% | - | |
喫煙率 | 16.1% | 15.5% | 14.9% | - |
(注)1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。また、管理職とは、担当業務の責任者として、組織マネジメントの職責を担う者としております。具体的には、部下を持つ職務にある『課長代理』『調査役』以上の職位にある者としております。
2 男女間賃金格差における非正規雇用労働者については正規雇用労働者の所定労働時間で換算した人員数を基に平均年間賃金を算出しております。
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