水道機工 【東証スタンダード:6403】「機械」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針及び経営環境について
当連結会計年度におけるわが国経済は、コロナ禍を乗り越え、緩やかな回復基調を取り戻しました。企業部門は好調である一方、賃金や投資に十分に結び付かず、内需は依然として力強さを欠いた状況で推移いたしました。
当社グループの主力である上下水道水処理分野においては、災害、老朽化対策として水道施設更新における長期的かつ包括的な発注へ向けた定量目標が掲げられる中で、建設・更新市場における発注機会増加の兆しが見え始め、市場環境に変化が起きております。また民間の水処理分野においては、企業収益の改善による国内設備投資の回復基調を背景にして、産業用装置への投資波及への動きが見られるものの、当社ターゲットとなる廃水市場分野の拡大は限定的な状況となっています。
当社グループでは、このような事業環境を踏まえ「2030年近傍における目指す会社の姿」として、浄水場設備におけるメンテナンス事業で営業利益6割を稼ぎ出す事業構造の転換を打ち出し、2023年から2025年の中経期間をその構造転換のための準備期間と位置づけ、初年度である本連結会計年度において、グループ経営・総合力強化を柱に据え、グループ会社や事業の垣根を超えて、次の諸課題・施策を実行してまいりました。
(1)グループ経営・総合力強化:グループ全体での諸課題の共有・実行、機能別組織移行へ着手
(2)メンテナンス事業の収益拡大:2030年目標達成に向けサービスステーション(*)の拡充による基盤作り
(3)製造・開発機能の強化:機器事業の生産能力基盤整備及び開発部門との融合による機能強化
(4)グループ内人材交流推進:交流・融合推進のための役員、幹部派遣
(5)M&A・アライアンスの推進:事業全般におけるM&A機会の探索
*.既存納入顧客へのメンテナンスに即対応可能な技術サービス要員を配置した拠点。
(2) 今後の事業見通し及び事業方針並びに対処すべき課題
今後の見通しとしましては、国内景気は、回復基調を維持し、物価上昇や賃金改善が進行する中で、上下水道分野におきましては、水道行政の移管による上下水道一体でのインフラ更新がウォーターPPP(*1)の推進により加速されると予想され、大きな市場変化の入り口に差し掛かっている状況です。
当社グループでは、中期経営計画に基づき、次の課題をグループの柱に据えて引き続き事業基盤強化に努めてまいります。
1)グループ経営・総合力強化:グループ全体の機能別組織移行による効率化・リソース共有化
2)官需メンテナンス事業の収益拡大:サービスステーション網拡大、民需メンテナンスの統合実行
3)製造開発センター機能強化:製造と開発拠点融合による生産能力・製品開発機能強化
4)人材交流推進:主要グループ会社における機能別組織移行後の機能部門単位での情報共有ならびに交流の促進
5)M&A・アライアンスの推進:事業全般におけるM&A機会の探索
また、事業別課題について以下の取り組みを行ってまいります。
事業区分 | 事業対象分野等 | 中期事業方針 | 当面の課題 |
上下水道事業 | 浄水場等の施設更新・建設 | 官需上水市場での発注形態の変化の中で、更新・建設市場における収益確保に加え、DB(*2)市場でのプレゼンス向上により浄水場更新・建設分野での現状収益の維持を図る。 | 受注量の維持・確保 事業基盤・要員体制の維持 新製品開発の推進 |
浄水場等のメンテナンス・保守等 | 浄水場等施設維持のためのメンテナンス対応ニーズが増加している顧客の状況から、潜在的な既設設備に対するメンテナンスニーズの掘り起しを強化し、安定的な収益基盤の確立を目指す。 | 受注量の拡大 事業基盤・要員体制の拡充 | |
環境事業 | 民間向け用廃水施設建設等 | 東レの水処理素材・システムを活用した設備納入により、メンテナンス獲得の顧客基盤拡大を図る。 | 受注量の拡大 将来のメンテナンス拡大 |
機器事業 | 浄水場向け標準製品製造販売等 | 浄水場向け製品の製造、開発拠点としての機能強化、整備を図る。 | 製造・開発体制の整備拡充 |
海外事業 | SKME関連事業(*3) | サウジアラビア事業からの撤退方針を維持し、リスク低減を図る施策を実行する。 | リスク低減施策の実行 撤退手法の検討 |
(注)
*1.上下水道等の施設更新・整備に関する令和13年までの官民連携方式等を活用した国土交通省のアクションプラン。
*2. Design Buildの略で設計、施工一括発注方式での契約形態。
*3. SKME社(Suido Kiko Middle East Co.,Ltd)によるサウジアラビアでの水処理プラント建設等の事業
これら事業別方針並びに課題の実行を通じて、中長期における営業利益構造として、2030年までに上下水道事業におけるメンテナンス分野での比率を6割(現状2割弱)とし、浄水場更新・建設 (現状7割強)へ依存する収益構造からの脱却を掲げ、グループ全体の事業拡大を目指して参ります。
当社グループといたしましては、役員及び従業員全員が企業理念並びに中期経営計画を共有し、事業活動を通じた水インフラへの貢献をもとに全てのステークホルダーから信頼されることを目指してまいる所存でございます。
(3) その他対処すべき課題
(関連会社に関する持分法による投資損失並びに債務保証損失引当金戻入額の概要等)
① 当連結会計年度における現況
持分法適用関連会社である在サウジアラビア国のSuido Kiko Middle East Co.,Ltd.(以下、SKME社、当社出資比率49%)の業績につきましては、当社は前連結会計年度末(2023年3月期)までに同社への債務保証の状況からSKME社の債務超過額に対して債務保証損失引当金を100%当社負担として計上しております。当社と現地パートナーは、契約済み工事の完成を目的として、出資比率に見合った資金支援を行うことを合意し、2023年度から段階的にSKME社への貸付を実行しております。
この実行に基づき、当連結会計年度(2024年3月期)において実行された現地パートナーの出資比率51%相当の資金支援を考慮した上で、個別決算におきまして、当事業年度末(2024年3月期末)時点におけるSKME社の債務超過額に対する債務保証損失引当金を見積もった結果、営業外収益として債務保証損失引当金戻入額6億12百万円を計上することとなりました。また、当社は、当事業年度(2024年3月期)において出資比率である49%分の貸付を実行しており、営業外費用として貸倒引当金繰入額6億45百万円を計上することとなりました。なお、連結決算におきましては、個別決算で計上された債務保証損失引当金戻入額と貸倒引当金繰入額を相殺の上、営業外費用として持分法による投資損失33百万円を計上することとなりました。
② SKME社向け債務保証について
当社は、SKME社が締結する工事請負契約等に関する現地金融機関の与信枠に対して100%の債務保証を行っておりますが、2024年3月期末時点での未引当の債務保証額は、34百万サウジリヤル(13億91百万円)となります。
合弁企業に関して出資者が行う債務保証は、出資比率に応じ負担することが一般的ではありますが、2019年以降、SKME社に51%を出資する現地パートナーの財務状況が悪化する中、工事案件の完工上、上記与信枠の維持は、SKME社にとり必須であり、与信枠の維持には確実性のある債務保証が条件であることから、株主間で合意のもと、当社は、現地パートナー分も含め100%の債務保証を行ってまいりました。
③ 今後の方針並びにリスクについて
今後の方針としましては、SKME社が請け負った建設工事について、顧客への引き渡しまでの契約上の義務を確実に履行させることとし、これによりサウジアラビア国内の関連法令に基づくカントリーリスク等を回避することが可能と認識しております。当連結会計年度末までに、株主による資金支援並びに債務保証の継続をもとに、SKME社が抱える工事案件の完工・引き渡しを順次進め、主要な施工中工事案件は残り1件となっております。本施工中工事案件については、正式な契約工期延長に基づき2024年度内の完工、2025年度内の運転管理終了、引き渡しを行う予定です。
これらの対応を通じて、全ての契約済み工事の引き渡し完了に目途がつき次第、サウジアラビア事業からの具体的な撤退手法を検討してまいります。本方針を踏まえ、引き続きSKME社の経営管理を強化し、損失額の圧縮並びに現地パートナーによる保証差入等を通じた債務保証リスクの低減に取り組んでまいります。
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