水道機工 【東証スタンダード:6403】「機械」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針及び経営環境について
当連結会計年度におけるわが国経済は、コロナ禍での経済社会活動の停滞から企業収益並びに個人消費持ち直し等により正常化する道筋が見えつつある中、原材料価格高騰等の懸念材料が内在する状況で推移しました。
当社グループの主力である上下水道水処理分野においては、国土強靭化政策のもとでインフラ全般への災害、老朽化対策が進められる方針が示され、国、自治体の財政難やDB(設計、施工一括発注)、DBO(設計、施工、運転管理一括発注)での発注方式増加により上水建設・更新市場の競争環境は厳しさを増しております。また、民間の水処理分野では、企業収益の改善やアフターコロナ需要、工場建設の国内回帰に伴い設備投資に回復傾向が見られるものの、持ち直しの動きは依然緩やかなものとなっております。
当社グループでは、このような事業環境のもとで、企業理念の浸透を通じてガバナンス体制の維持強化に努め、グループ経営の総合力強化のため、営業、技術、生産、管理等の機能における連携強化の実現や、安全・品質部門の拡充等の主要課題並びに次期中期経営計画策定への取り組みを着実に実行いたしました。
<水道機工グループ 企業理念>
「100年先も人と地球をつなぐ情熱で、笑顔あふれる環境を技術と製品で創造し、社会に貢献します。」
<新中期経営計画(2023~2025年)>
当社グループでは企業理念に掲げる「社会への貢献」の実現に向け、水道インフラを担うリーディングカンパニ
ーとしての責任と情熱をもとに引き続き事業活動に取り組んで参ります。当社グループの主力である浄水場におけ
る更新市場減少・発注方式の見直しという大きな事業環境の変化への対応として、上下水道事業において、浄水場
設備メンテナンス分野における事業拡大を重点施策として、グループ全体での最適かつ効率的な事業運営体制の構
築への対応を本中期経営計画期間中に推進いたします。また、既存の浄水場更新・建設分野における収益力維持を
図ることにより将来のメンテナンス基盤の確保を目指します。また、環境事業及び機器事業においては、主に事業
基盤強化を中心とした取り組みを推進いたします。
(2) 今後の事業見通し及び事業方針並びに対処すべき課題
今後の見通しとしましては、国内景気は、堅調に回復を継続しているものの、物価高騰や海外景気の下振れの懸念が国内景気に与える影響が注視され、また、上下水道分野におきましては、水道インフラ更新手法の多様化が市場変化をもたらしており、厳しい市場環境となる見通しです。
このような状況におきまして、当社グループでは、新中期経営計画(2023~2025年)に基づき、事業環境変化への対応を図り、100年先を見据えた持続可能性(サステナビリティ)の追求をグループの柱に据え、事業基盤並びにガバナンス体制の強化に努めるとともに、事業別課題について以下の取り組みを行って参ります。
事業別の課題に関しては以下の通りとなります。
事業区分 | 事業対象分野等 | 中期事業方針 | 当面の課題 |
上下水道事業 | 浄水場等の施設更新・建設 | 官需上水市場での発注形態の緩やかな変化の中で、更新・建設市場における収益確保に加え、DB(*1)市場でのプレゼンス向上により浄水場更新・建設分野での現状収益の維持を図る。 | 受注量の維持・確保 事業基盤・要員体制の維持 新製品開発の推進 |
浄水場等のメンテナンス・保守等 | 浄水場等施設維持のためのメンテナンス対応ニーズが増加している顧客の状況から、潜在的な既設設備に対するメンテナンスニーズ掘り起しを強化し、安定的な収益基盤の確立を目指す。 | 受注量の拡大 事業基盤・要員体制の拡充 | |
環境事業 | 民間向け用廃水施設建設等 | 東レグループとしての強みをベースに工場廃水・有価物回収市場において設備納入を目指し、2030年以降のメンテナンス獲得のための体制整備を行う。 | 受注量の拡大 事業基盤の整備 |
機器事業 | 浄水場向け標準製品製造販売等 | 浄水場向け薬品注入設備、各種バルブ等の更新ニーズ掘り起こしを行うことで現状収益の維持を図る。 | 受注量の維持・確保 製造体制の維持 |
海外事業 | SKME関連事業(*2) | サウジアラビア事業からの撤退方針を維持し、リスク低減を図る施策を実行する。 | リスク低減施策の実行 撤退手法の検討 |
(*1)Design Buildの略で設計、施工一括発注方式での契約形態。
(*2)SKME社(Suido Kiko Middle East Co.,Ltd.)によるサウジアラビアでの水処理プラント建設等の事業
これら事業別方針並びに課題の実行を通じて、中長期における営業利益構造として、2030年までに上下水道事業におけるメンテナンス分野での比率を6割(現状2割弱)とし、浄水場更新・建設 (現状7割強)へ依存する収益構造からの脱却を掲げ、グループ全体の事業拡大を目指して参ります。
当社グループといたしましては、役員及び従業員全員が企業理念並びに新たな中期経営計画を共有することにより、社会との関係の重要性を認識するとともに、事業活動を通じた水インフラへの貢献をもとに全てのステークホルダーから信頼されるグループとなることを目指して参る所存でございます。
(3) その他対処すべき課題
(施工管理技士資格等に係る不正取得への再発防止対応状況について)
①施工管理技士資格等に係る不正取得に関する再発防止の取り組みについて
a) 再発防止のための実行計画策定の背景
2020年9月における第三者委員会からの提言に基づき、実行計画書を策定し、2020年10月に取締役会において承認を受け、実行に着手しました。
当事業年度においては、策定された実行計画の継続実施ならびに実施状況のフォローが行われております。
b) 実行計画の妥当性の確認
取締役会において、社外取締役並びに取締役(監査等委員)が客観的視点から実行計画の妥当性を評価し、出席取締役の全員一致により決定しております。加えて実行計画の実施状況のフォローに関するモニタリングが行われております。
c) 実行計画の推進スケジュール
2020年10月から開始し、緊急的な対応並びに社内組織体制の構築、恒久対策を含めて2021年度までに完了いたしました。2022年度におきましては、構築した管理体制の定着状況を定期的に確認しております。
②実行計画の取り組み状況について
a) 全般状況
概ね実行計画通りに再発防止体制が機能しております。なお、実施施策のフォロー状況は、取締役会へ報告され、社外取締役並びに取締役(監査等委員)によるモニタリングが行われております。
b) 個別実施項目における対応概要
1)適切な資格取得奨励と人材育成プランの検討:資格奨励制度を見直し、関連する給与規定等を2021年4月から改定し、運用を開始しました。また、人材育成プランの検討については、複線型のキャリアプランが選択可能となる新等級・賃金制度へ2022年4月から改定しております。
2)受験資格又は資格要件の有無を確認する社内体制の構築:「管理部」の「資格管理室」において、当社グループの受験資格や資格要件の充足を確認した上で、実務経験証明書を発行し、発行状況に関して定期的に報告が行われております。
3)適切な印章管理:印章管理規定に基づき、社用印章の登録及び保管、押印の申請及び記録の保管等について、運用状況のモニタリングを定期的に実施しております。
4)適切な受験指導の実施:担当部署である「資格管理室」において、受験指導及び計画立案を行い、資格受験に当たっては、社外の講習会の利用を案内しております。
5)受験資格チェック体制の構築:受験者の上長者及び所属部門長による確認を必須とし、「資格管理室」において実務経験証明書の確認を行い、この確認を踏まえ証明書の発行を行っております。また、「内部監査室」において定期的監査を行い、チェック体制が機能していることを確認することとしました。
6)内部監査部門の充実:社長直轄の「内部監査室」に専任の室長を配置し、計画的な内部監査の実施により適切にモニタリング機能が果たされております。
7)コンプライアンス部門の新設並びにリスク情報の速やかな共有と判断の実施:管理・コンプライアンス部門の「管理部」において各事業部のリスク情報を一元的に集約し、定期的に取締役会へ報告が行われております。
8)内部通報制度の見直し及び内部通報制度の周知の徹底:内部通報制度(ヘルプライン)を見直し、内部通報制度の実効性を高めるために、利用しやすい環境を整備し全役職員に周知しております。なお、プライバシーに配慮の上、内部通報の有無についての報告が定期的に取締役会へ行われております。
9)役職員の人事ローテーションと人材育成:グループ並びに部署を超えて、会社全体の問題点や課題等を共有し、コミュニケーションの活性化を図るとともに、事業部・部署間での人事異動も意識的かつ計画的に実施しております。当事業年度において役員に関する後継人事計画をもとに、取締役会の諮問機関であるガバナンス委員会を活用し、役員選任・担当変更が行われております。
10)コンプライアンス教育の徹底:社長直轄の「内部監査室」が取締役(監査等委員)と協力して内部統制並びにコンプライアンス教育を継続して実施しております。
(関連会社に関する持分法による投資損失並びに債務保証損失引当金繰入額の概要等)
①当連結会計年度における現況
持分法適用関連会社である在サウジアラビア国のSuido Kiko Middle East Co.,Ltd.(以下、SKME社、当社出資比率49%)の業績につきましては、当連結会計年度におきまして、引き続き契約工事の完工および引渡しを進める一方で、所要の販売費及び一般管理費並びに金融費用が発生した他、回収の遅延している滞留債権に対する引当により2023年3月期において債務超過額が5億10百万円増加しました。このような状況下で、SKME社の財政状態並びに当社の債務保証差し入れ状況を勘案し当社の債務超過負担額を見積った結果、2023年3月期においてSKME社の債務超過増加額5億10百万円全額を当社負担として、連結決算において持分法による投資損失、個別決算において債務保証損失引当金繰入額としてそれぞれ営業外費用を計上いたしました。
②SKME社向け債務保証について
当社は、SKME社が締結する工事請負契約等に関する現地金融機関の与信枠に対して100%の債務保証を行っておりますが、2023年3月期末時点での未引当の債務保証額は、31百万サウジリアル(11億40百万円)となります。
合弁企業に関して出資者が行う債務保証は、出資比率に応じ負担することが一般的ではありますが、2019年以降、SKME社に51%を出資する現地パートナー(以下、現地パートナー)の財務状況が悪化する中、工事案件の完工上、上記与信枠の維持は、SKME社にとり必須であり、上記与信枠の維持には確実性のある債務保証が条件であることから、株主間で合意のもと、当社は、現地パートナー分も含め100%の債務保証を行って参りました。
③今後の方針並びにリスクについて
今後の方針としましては、SKME社が請け負った建設工事について、顧客への引き渡しまでの契約上の義務を確実に履行させることとし、これによりサウジアラビア国内の関連法令に基づくカントリーリスク等を回避することが可能と認識しております。当連結会計年度末までに、債務保証の継続をもとに、SKME社が抱える工事案件の完工・引き渡しを順次進め、2023年3月期末における主要な施工中工事案件は残り1件となっております。また、本施工中案件の早期完工に向け、現地パートナーとの間で出資比率に基づく資金支援の再開を合意しており、2023年度内の完工、2024年度内の運転管理終了、引き渡しを行って参ります。なお、債務超過であるSKME社への資金支援が実行された場合、融資年度中において貸倒引当金繰入等の営業外費用の発生が予測されますが、SKME社において滞留債権の回収や固定費削減等の損失極小化への施策を実行させながら、工事完了・引き渡しに向けて取り組んで参ります。
これらの対応を通じて、全ての契約済み工事の引き渡し完了に目途がつき次第、サウジアラビア事業からの具体的な撤退手法を検討して参ります。本方針を踏まえ、引き続きSKME社の経営管理を強化し、損失額の圧縮並びに現地パートナーによる保証差入等を通じた債務保証リスクの低減に取り組んで参ります。
(新型コロナウイルス感染症の影響)
新型コロナウイルス感染症拡大による影響について、現時点における当社グループの事業計画進捗状況、並びに
社会経済情勢の最新情報等に鑑み、その影響は限定的であると認識しております。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症拡大による影響は不確定要素が多くあることから、今後の情勢変化次第では、当社グループの財政状態、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
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