東邦システムサイエンス 【東証プライム:4333】「情報・通信業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において、当社が判断したものであります。
(1) 「長期経営ビジョン2030」
当社は「長期経営ビジョン2030」を定め、「お客様と共に未来を創る」をスローガンに10年後のあるべき姿に向けた経営を進めております。
① Vision
お客様が求める価値を共に創造し実現すると共に、その先にある社会課題の解決を図り、持続可能な未来社会を創造します。
② 経営方針
確かな業務力とIT技術力で、お客様の求めるニーズを創り出すと共に、そのニーズを満たすシステムを構築する技術者集団を目指します。
③ 行動指針
変化を恐れず、挑戦を厭わず、対話を重ね、協調・共創する。全てを楽しみながら。
④ 基本理念
・誠意を尽くしてお客様の要望に応え、信頼され満足していただくことを最上の喜びとします。
・豊富な知識と技術を以て、持続可能な未来社会の創造に貢献します。
・仕事に対して常に誇りと生きがいを持ち、会社の繁栄と豊かな生活を目指します。
(2) 中長期的な会社の経営戦略
当社は、「長期経営ビジョン2030」達成に向けて、「中期経営計画(2022-2027)」を策定し、具体的な戦略と施策を定めております。
① トラディショナル・デジタル・クリエイトITビジネス共通
戦略 | 施策 |
他分野への進出でポートフォリオを変革 | DX進展が早い非金融分野の比率向上(25%→40%) |
持ち帰り開発の積極推進 | DX開発推進センターを設置 |
プラットフォーマーを基軸に営業拡大強化 | 通信プラットフォーマーを基軸に全業種・全方位型営業展開で業容拡大 |
業務力・技術力の徹底強化 | スキルマップ活用で人財育成を強化(業務力向上、社内認定制度を策定) |
② トラディショナルITビジネス
戦略 | 施策 |
事業戦略を共有するパートナーシップ戦略 | エンドユーザや大手SIerと事業戦略を共有し、事業拡大 |
業務知識&技術のコラボレーション展開 | 保守領域において、ソリューション等を活用したDX提案の実施 |
品質生産性の向上 | エンハンス活動を継続し、品質、生産性への意識向上 |
マネジメント力の強化 | TSS-WAY(社内マネジメント基準)を活用し、部門活動や研修を通じた強化 |
パートナー調達力の強化 | 友好なパートナー関係を構築し、要員と案件情報をマッチングできるプラットフォームを作り、調達力の強化 |
③ デジタルITビジネス
戦略 | 施策 |
業種非依存の非対面ビジネスの強化 | モバイルビジネス、ネットサービスビジネスへの拡販 |
テクニカルベンダー等との技術・業務提携 | 大手SIer、テクニカルベンダー等との共創 他社製品利活用のサービスプロダクト提案 |
デジタル案件獲得のための営業強化 | 営業によるDX提案でビジネス連携 研修制度活用でDX提案力の向上 |
デジタル技術の習得拡大 | 研修・資格制度活用で(アジャイル、クラウド等)技術者育成 |
④ クリエイトITビジネス
戦略 | 施策 |
国内外の先進プロダクトの活用 | 国内外を問わず、様々なサービスプロダクトの活用研究から積極的なPoC、ビジネス展開 |
自社プロダクト活用のソリューション展開 | USINGサービスを使用したビジネス展開 新規サービスプロダクトを開発し、新たなビジネス展開 |
金融以外の製造、物流、流通業界へのアプローチ | 金融以外の高い提案実績をベースに更なるアプローチで実現化 |
⑤ 経営基盤の強化
戦略 | 施策 |
社員の成長とレジリエンスの高い人財を確保・育成する仕組みの整備 | 人財育成基本方針の策定 成長を支える人づくり(能力、マインド) 生産性の高い組織づくり |
経営戦略に則った人事諸制度策定と、多様な人財が育ち、活きる仕組みの構築 | 人事制度の再構築(評価基準、報酬制度の見直し) 挑戦し成長する職場づくり |
企業価値向上と持続的成長の実現 | サステナビリティ基本方針の策定(株式施策、IR施策の見直し) |
組織変革と生産性向上で企業風土醸成 | 更なる働き方の変革推進と多様性の追求 従業員エンゲージメント向上、健康施策 |
サステナビリティ経営の推進 | ガバナンス・コンプライアンス体制の強化 事業活動を通じた課題解決で社会貢献 |
成長投資と適正水準での還元策 | 安定的な財務基盤の確保 安定成長・事業強化への重点投資 |
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、売上高、営業利益額、売上高営業利益率、ROE(自己資本利益率)、配当性向を用いております。「長期経営ビジョン2030」では、売上高250億円、営業利益25億円以上、売上高営業利益率10%以上、ROE15%以上、配当性向40%以上としております。
(4) 経営環境
今後の日本経済は、コロナの規制緩和や円安によるインバウンド需要等から景気は回復基調にあります。一方で、継続するインフレに伴い、個人の実質賃金は2年近くマイナスが継続しており、これが個人消費に与える影響に加え、世界的な地政学リスクの高まりによる海外経済の下振れ懸念等により、先行きは、一層、不透明感が増しております。一方、喫緊のマイグレーション対応に加え、生成AIを活用した企業変革・ビジネスモデル変革の推進により、今後もDX投資は益々加速していくものと思われ、情報サービス産業を取り巻くマーケットは引続き堅調であると予想されます。
このような環境のもと、当社は「お客様と共に未来を創る」をスローガンに、「長期経営ビジョン2030」並びに「中期経営計画」に基づき、社会のDX化を加速させるとともに、既存事業の成長と収益性の向上、新規事業の創出による新たな成長分野の確立を図ることで、確かなる事業成長を目指してまいります。
(5) 対処すべき課題
① 営業力の強化
企業のIT投資が活性化しているなか、顧客から要望を聞き取り、システム開発を行う従来の案件探索型営業に加え、顧客の課題解決や付加価値創出といった新たなビジネス価値提供を目的とした提案型営業が、昨今のDX時代には不可欠となっております。そこで、営業プロセスの更なる効率化により引き合い案件量の飛躍的な向上を図るとともに、コンサルティング力やDX開発知見を活かした提案型営業に注力し、収益性や事業価値の高い案件の獲得を目指してまいります。加えて、全社最適での人的リソースマネジメントを適切に行うことで受注力を高め、飛躍的な売上・利益の確保を図ってまいります。
② 開発力の強化
高付加価値技術者の獲得及び育成を推進し、加えてパートナー会社との関係強化によるビジネスパートナーの増強により、開発力を強化してまいりました。特に新入社員についてはJava言語の資格取得を義務付け、また若年層を中心にDXの要素技術である「クラウド構築」、「データ分析」、「アジャイル開発」を行うことができる技術者の育成に注力しました。さらにDXを中心とした開発を社内で担う内製化組織(DX開発推進センター)にて、市場の変化を捉えたDX人財のOJT育成を行うとともに、一定規模の請負開発を受託することでリソースの有効活用を図り、安定的かつ継続的な企業競争力の向上に努めてまいりました。今後は、さらに人的資本経営を加速させるべく、人財の資質、志向、経験、スキル等を正確に見える化し、それぞれの人財が最高のパフォーマンスを発揮できるようマネジメントすることで、最適な組織、チームを構築してまいります。
③ デジタルビジネスへの注力
DX基盤の要となる「クラウド構築」やDX開発における標準プロセスとも言える「アジャイル開発」、データドリブン経営を支える「データの取得・蓄積・分析」、様々なデジタルコンテンツを自動生成する「生成AI」、これらをキーワードに案件を受注し、売上・利益の確保を図ってまいりました。今後も市場の変化を捉え、DX開発推進センターの徹底的な活用とともに、データの利活用に関わるビジネスやネットサービスビジネス等、顧客にとって付加価値の高い開発エリアに注力してまいります。
④ 事業ポートフォリオの変革
当社が強みとする金融ソリューションについては維持拡大しつつ、更なる収益基盤の強化を図るために、通信や公共、製造、流通、放送、運輸領域等、非金融ソリューション案件の獲得に注力してまいりました。今期は、年金機構システム更改プロジェクトやマイナポータル連携サービスシステム等、行政手続きのオンライン化を推進するプロジェクトへ積極的な参画を図りました。今後も、安定成長基盤を維持、拡大させるとともに、資本業務提携契約を締結した日鉄ソリューションズ株式会社との連携強化を含め、DX対応が活況な非金融ソリューションを積極的に推し進めながら事業ポートフォリオの変革を図り、更なる事業拡大に努めてまいります。
⑤ サービスビジネスの構築
人月ビジネスからの脱却を図るべく、ボラティリティの高い労働集約型の受託開発だけでなく、安定的な収益確保が見込めるサービス提供型ビジネスの創出を図ってまいりました。具体的には、スマートフォンを活用した証券業務の運用ビジネスのサービス化や自社プロダクト(様々な用途に使用できる汎用的なコミュニケーションサービス基盤)の活用、海外を含めた他社プロダクトとの融合ソリューション、生成AI、メタバースによる研究開発等を行ってまいりました。今後も、顧客に対しビジネス価値を提供するため、自社だけでなく新たなパートナーと戦略的な互恵関係を築き、サブスクリプション型ビジネスのような新たなビジネスモデルを創出し売上・利益の確保を実現してまいります。
⑥ 資本コストと株価を意識した経営の推進とコーポレートガバナンスの高度化対応
プライム市場の上場維持基準を達成すべく、事業拡大に向けた各種施策とともに、広報・IRの強化(株主通信や決算説明会による対話機会の創出、開示資料の英訳化等)や株主還元施策(株式分割に伴う資産価値の上昇、中間・期末配当の増配、株主優待制度の拡充)を実施してまいりました。その結果、2023年12月末においてプライム市場の上場維持基準に適合しました。
今後も、プライム市場における上場維持基準の継続的な適合に努めながら、資本コストと株価を意識した経営の推進に向け、取締役会の機能向上を図るとともに実効性の高い経営体制を構築してまいります。
⑦ サステナビリティ経営の推進
「お客様と共に未来を創る」をスローガンに事業を推進するなか、持続可能な未来社会の構築に向け、4つのマテリアリティ「豊かな未来社会」「安心安全な未来社会」「生きがいのある未来社会」「透明性の高いガバナンス」を定義し、その実現に向け、様々な取り組みを行いました。具体的には、新たな価値創造と社会貢献に向けたESG活動を推進するガバナンス組織として設置した「サステナビリティ委員会」にてKPI(重要業績評価指標)を設定し、その達成に向けた活動を行うとともに、新設したサステナビリティサイトにて投資家と対話の促進を図ってまいりました。その中でも、気候変動への対応として、今般トラッキング付FIT非化石証書を購入したことで、『2030年CO234%削減目標』を前倒しで達成することができました。当社は、地球環境問題に関する国際的な非営利団体であるCDP(Carbon Disclosure Project)を活用することで気候変動への対応を推進することとしており、今後も、CDPの対応の促進(解析及びスコアアップ)に向け、バリューチェーンエンゲージメント活動の検討や2050年までのカーボンニュートラル実現に向けた省エネ活動等を実施し、企業価値の更なる向上に努めてまいります。
⑧ M&Aによる事業規模拡大の検討
今後、飛躍的に事業を拡大させるためには、DX人財の確保・育成に加え、新たな事業領域や技術領域を獲得することが必須と考えております。これまで培ってきた資産・ケイパビリティを活かしながら、引き続きIT投資、研究開発等を推進するとともに、アライアンスの強化を目的とした資本業務提携に続く、M&A投資も積極的に推進し、売上規模500億円を視野に、収益基盤の更なる拡大に努めてまいります。
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