企業兼大株主東海旅客鉄道東証プライム:9022】「陸運業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

(1) 会社の経営の基本方針

 当社は、「日本の大動脈と社会基盤の発展に貢献する」という経営理念の下、鉄道事業において、安全の確保を最優先に、お客様に選択されるサービスの提供、業務効率化等について不断の取組みを行うことにより、日本の大動脈輸送を担う東海道新幹線と東海地域の在来線網を一体的に維持・発展させることに加え、大動脈輸送を二重系化する中央新幹線の建設により、「三世代の鉄道」を運営するということを使命としており、これを長期にわたり安定的に果たし続けていくことを基本方針としています。

 当社グループとしても、名古屋駅におけるJRセントラルタワーズ・JRゲートタワーの各事業展開に代表されるような鉄道事業と相乗効果を期待できる事業分野に加えて、沿線にお住まいのお客様の暮らしを豊かにするための様々なサービスを提供することで、グループ全体の収益力強化を図ります。

(2) 中長期的な会社の経営戦略

 当社グループの中核をなす鉄道事業については、長期的展望を持って事業運営を行うことが極めて重要であり、生活様式や働き方の変化によりニーズが多様化していることや、労働力人口の減少に伴い業務のあり方の変革が求められていることなど、当社を取り巻く環境の大きな変化を踏まえ、ICT等の最新の技術を活用して効率的な業務執行体制を構築する「業務改革」と新しい発想による「収益の拡大」の2つを柱とした経営体力の再強化に取り組みながら、主要プロジェクトを計画的に推進しています。

 東海道新幹線については、これまで安全で正確な輸送を提供するとともに、不断に輸送サービスの充実に向けた取組みを進めてきました。今後についても、安全の確保を最優先に、全線を対象とした脱線・逸脱防止対策をはじめとする地震対策を進めるとともに、土木構造物の健全性の維持・向上を図るため、大規模改修工事を着実に進めます。また、「のぞみ12本ダイヤ」を活用した弾力的な列車設定を行うとともに、N700Sの投入やN700Aタイプに対しN700Sの一部機能を追加する改造工事を進めるなど、さらなる輸送サービスの充実に向けて取り組みます。

 在来線についても、安全の確保を最優先に、地震対策、落石対策、踏切保安設備改良等を進めるとともに、特急列車の弾力的な増結や増発、通勤型電車315系の投入、新型特急車両385系量産先行車の新製を行うなど、さらなる輸送サービスの充実に向けて取り組みます。

 超電導磁気浮上式鉄道(以下「超電導リニア」という。)による中央新幹線については、当社の使命であり経営の生命線である首都圏~中京圏~近畿圏を結ぶ高速鉄道の運営を持続するとともに、企業としての存立基盤を将来にわたり確保していくため計画しているものです。現在この役割を担う東海道新幹線は開業から半世紀以上が経過しており、早期に大動脈輸送を二重系化し、将来の経年劣化や大規模災害に対して抜本的に備える必要があります。このため、その役割を代替する中央新幹線について、自己負担を前提として、当社が開発してきた超電導リニアにより可及的速やかに実現し、東海道新幹線と一元的に経営していくこととしています。このプロジェクトの完遂に向けて、鉄道事業における安全・安定輸送の確保と競争力強化に必要な投資を行うとともに、健全経営と安定配当を堅持し、コストを十分に精査しつつ、柔軟性を発揮しながら着実に取り組みます。その上で、中央新幹線の建設の推進を図るため、財政投融資を活用した長期借入を行ったことを踏まえ、まずは品川・名古屋間の工事を進め、その開業後連続して、名古屋・大阪間の工事に速やかに着手し、早期の全線開業を目指して、取組みを進めます。

 また、このプロジェクトは自己負担により進めるものであり、建設・運営・保守等全ての場面におけるコストについて、社内に設置した「中央新幹線工事費削減委員会」で検証し、安全を確保した上で徹底的に圧縮して進めるとともに、経営状況に応じた資源配分の最適化を図るなど柔軟に対応していく考えです。

 鉄道以外の事業についても、「会社の経営の基本方針」に則り、諸施策を着実に推進することにより、グループ全体の収益力の強化に取り組みます。

(3) 会社の対処すべき課題

 日本経済の先行きは、緩やかな回復が続くことが見込まれています。こうした状況の下、当社グループは、「会社の経営の基本方針」に基づき諸施策を推進します。重点的に取り組む施策は、以下のとおりです。

 鉄道事業については、地震対策をはじめとした構造物のさらなる強化として、東海道新幹線の脱線・逸脱防止対策について脱線防止ガードの全線への敷設を進めるとともに、プラットホーム上家の耐震補強、駅の吊り天井の脱落防止対策、名古屋車両区検修庫の建替、在来線の高架橋柱の耐震化等を進めます。また、東海道新幹線の大規模改修工事について、技術開発成果を導入し、施工方法を改善するなどコストダウンを重ねながら着実に進めます。さらに、半田駅及び沼津駅付近の連続立体交差化に向けた工事を進めます。自然災害等への対策としては、ハザードマップ等を踏まえ、鉄道設備の浸水対策を進めるとともに、台風や豪雨等により列車運行に大きな影響が予想される場合に、安全を最優先に適切な運行計画の決定、適時かつ的確な案内情報の提供を行います。また、自然災害や不測の事態等の異常時に想定される様々な状況に適切に対応するため、実践的な訓練を繰り返し実施するとともに、車内防犯カメラについて、全ての車両に整備している東海道新幹線に続いて、在来線についても、近年中に更新する予定の一部車両を除き、名古屋駅を発着する全ての当社車両への整備を進めるなど、ハード・ソフトの両面から車内のセキュリティ対策に取り組みます。

 東海道新幹線については、「のぞみ12本ダイヤ」を活用して、需要にあわせた弾力的な列車設定を行います。また、N700Sの投入を進めるとともに、既存のN700Aタイプに対し、N700Sの一部機能を追加する改造工事を進めます。

 在来線については、「しなの」、「ひだ」等の特急列車について、需要にあわせた弾力的な増結や増発を行います。また、通勤型電車315系の投入を進めるとともに、新型特急車両385系量産先行車の新製に向けた詳細設計を進めます。

 旅客関連設備については、東海道新幹線について、全駅への可動柵整備に向けた調査設計を進めるとともに、自動運転システム(GOA2)の導入に向けた開発を進めます。また、車椅子スペースを6席設置したN700Sの投入を進めるとともに、新大阪駅で車両とプラットホームの段差・隙間対策を進めます。在来線については、名古屋駅で東海道本線下りホーム及び中央本線ホームへの可動柵設置工事を進めるとともに、刈谷駅でホームの拡幅、可動柵設置等に向けた工事を進めます。また、車椅子スペースを拡充した315系の投入を進めるとともに、駅におけるバリアフリー設備の整備について、国・関係自治体と連携しつつ取り組みます。さらに、3両以上の編成におけるワンマン運転導入に向けて、車側カメラを設置した車両を用いて、お客様の接近等を検知する画像認識技術活用の検討を進めます。加えて、TOICAについて、令和7年のエリア拡大に向けた準備を進めます。

 営業施策については、東海道新幹線のネット予約を多くのお客様にご利用いただくための取組みとして、「EXサービス」について、昨年開始した「EX旅パック」、「EX旅先予約」、1年前予約等のサービスも通じて、ご利用の拡大を図ります。需要喚起策としては、「推し旅」キャンペーンや「貸切車両パッケージ」をはじめ、新たな営業施策を積極的に展開するとともに、京都、奈良、東京、飛騨等、魅力ある観光素材の開発に継続的に取り組み、鉄道のご利用の拡大を図ります。また、東海道新幹線開業60周年にあたり、イベントの実施等によりこれまでのご愛顧への感謝を示すとともに、中央新幹線を含む将来の高速鉄道の進化に対する期待感の醸成に取り組み、他社と連携した企画の実施や記念商品の発売等により、グループ会社とも連携しながら収益の拡大を目指します。さらに、訪日外国人に対して、国や地域ごとの旅客動向や商品のご利用の分析を進めるとともに、より効果的な宣伝の展開等、営業施策を強化することにより、鉄道のご利用の拡大を図ります。加えて、東海道新幹線車内における個室タイプの「ビジネスブース」の本格的な導入を進めるなど、ビジネス環境整備をさらに推進するとともに、ビジネスユーザーの出張利用を促す取組みを続けます。このほか、「さわやかウォーキング」等を通じて地域との連携を強化し、「しなの」や「ひだ」等の特急列車をはじめとした鉄道のご利用の拡大を図ります。

 超電導リニアによる中央新幹線計画については、コストを十分に精査し、柔軟性を発揮しながら、健全経営と安定配当を堅持し、プロジェクトの完遂に向けて、着実に推進します。また、工事の安全、環境の保全、地域との連携を重視し、早期開業に取り組みます。具体的には、用地取得等、並びに山岳トンネル、都市部トンネル、駅等の土木を中心とした各種工事を精力的に進めます。このうち、都市部トンネルについては、シールドマシンによる調査掘進を終えて準備が整った工区から、本格的な掘進を進めます。また、関東車両基地(仮称)の造成工事や中部総合車両基地(仮称)の建築工事に着手します。機械及び電気設備等については、契約及び発注時期も考慮の上、低コスト化及び品質向上を図ります。南アルプストンネル静岡工区については、国土交通省の有識者会議の水資源及び環境保全に関する報告を踏まえ、引き続き、トンネル掘削工事の早期着手に向けて、地域の理解と協力を得られるよう、双方向のコミュニケーションを大切にしながら、真摯に取り組みます。

 一方、超電導リニア技術については、技術開発によるコストダウンとブラッシュアップに取り組みます。このうち、高温超電導磁石について、営業車両への投入を前提に一層のコストダウンを進めるとともに、安定運用に向けたさらなる検証を進めます。また、ICT等の最新の技術を活用した効率的な運営体制の実現に向けた開発において、AI等による画像やビッグデータの分析システムの改良・実証等を進めます。さらに、営業車両の仕様策定を進め、設計を深度化します。加えて、走行試験を着実に行う中で、高付加価値なサービスの追求を行うとともに、様々な形で超電導リニアの体験乗車を実施し、中央新幹線の開業に向けた期待感の醸成に取り組みます。

 高速鉄道システムの海外展開については、米国における高速鉄道プロジェクトについて、着実に取り組みます。また、台湾における高速鉄道について、継続的な技術コンサルティングとともに、N700Sをベースとした新型車両導入に伴う技術支援を進めます。さらに、日本型高速鉄道システムを国際的な標準とする取組みを進めます。

 技術開発については、地震や近年激甚化傾向にある豪雨等の各種自然災害に対して、安全性を最優先に安定性も高めるための技術開発を推進するとともに、車内通信環境の整備等、サービスの充実に資する技術開発を推進します。また、状態監視技術等を活用した検査や保守の高度化・省力化、設備の維持更新におけるコストダウン等による「業務改革」の推進に向けて、社内横断的に課題解決に取り組み、特に、AIやデータ・画像分析技術等について、当社の業務に最適な形で導入するための準備を進めます。さらに、グループ会社を含めて、労働力人口の減少等に対応するため、ロボット制御等の先端技術の活用を進めます。

 鉄道以外の事業については、当社グループの共通ポイントサービス「TOKAI STATION POINT」について、駅売店等を対象施設に追加するなど利便性の向上を図るとともに、駅売店等について、土産品、弁当等をワンストップで購入できるように集約・大型化するなど、便利で魅力ある店舗づくりを進めます。また、JRセントラルタワーズとJRゲートタワー等の駅ビル事業について、店舗の品揃え強化やサービス向上を図るとともに、名古屋駅・岐阜駅等の駅商業施設の拡張・リニューアルを実施します。さらに、中央新幹線神奈川県駅(仮称)付近で、イノベーション創出促進拠点「FUN+TECH LABO」を運営し、神奈川県、相模原市、有識者、企業等と連携して、まちづくりに参画しながら将来のさらなる事業開発を検討します。加えて、令和8年度開業予定のホテル「コートヤード・バイ・マリオット京都駅」等の沿線不動産の開発を進めるとともに、新たな取組みとして、不動産ファンド事業のノウハウ獲得を目的に、不動産ファンドへの出資を行います。このほか、東海道新幹線「こだま」号の業務用室を活用した法人向け荷物輸送サービスを開始し、JR各社とも連携しながら、新たな需要創出に取り組みます。

 持続可能な社会の実現に向けた取組みについては、政府による「2050年カーボンニュートラル」政策を前提に2050年のCO排出量実質ゼロを目指すとともに、2030年度のCO排出量についても、同政策を前提として、2013年度比で46%削減することを目指すなど、地球環境保全に資する諸施策を推進します。具体的には、当社のCO排出量の約5%を占める「燃料の使用に伴う直接排出」について、模擬走行試験を通じて、水素動力車両(燃料電池車、水素エンジン車)に関する開発を進めるとともに、蓄電池車及びカーボンニュートラル燃料について、調査研究を継続します。残りの約95%を占める「電力使用に伴う間接排出」については、N700S及び315系といった省エネルギー車両の投入を進めるなど、さらなる省エネルギー化に取り組むとともに、東海道新幹線の「のり面」を活用した太陽光発電システムの施工を開始するなど、再生可能エネルギーの活用にも取り組みます。また、鉄道各社と連携しながらPRを強化するなど、鉄道の環境優位性への社会的な理解を広め、鉄道のご利用を促進することで、脱炭素社会への移行に貢献します。さらに、東海道・山陽新幹線におけるCO排出量実質ゼロ化のサービスについて、「エクスプレス予約」法人会員向けに開始します。加えて、TCFD提言を踏まえた気候変動に関するリスク分析等を深度化し、長期にわたる安定的な事業運営に活かします。このほか、「東海道新幹線再生アルミ」の活用等、廃棄物の削減や資源の再利用等を通じて、地球環境への負荷を低減します。

 以上のように、引き続き、安全の確保を最優先に輸送機関としての使命を果たしつつ、「業務改革」と「収益の拡大」の2つを柱とした経営体力の再強化を図っていきます。

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