東武住販 【東証スタンダード:3297】「不動産業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営の基本方針及び経営環境
①経営の基本方針
当社は、「株式会社東武住販は、エコモデルの創造を通して人と環境に優しい暮らしづくりに貢献します」を経営理念として掲げ、「あるものを活かす」をキーワードに中古住宅の買取再生、あるいは売買仲介、賃貸仲介等を営んでおります。
当社の創業者であり、代表取締役社長である荻野利浩氏は、幼少時代を貸家で過ごした経験から持ち家に対する憧憬の念を抱き、不動産業、特に住宅販売を志向しました。また、常務取締役の細江直樹氏と取締役の三浦直樹氏は、当社で長く不動産売買事業に携わり、持ち家を諦めていた顧客層に中古住宅という選択肢を提供してきた実績を数多く有しています。
当社は、顧客に近く地域に密着した不動産事業を展開するため、小規模な店舗を中心に組織を構成しております。主力の不動産事業については、業務執行取締役(営業担当)の管掌の下に地域ごとの不動産営業部が存在し、各店舗が日々の営業活動を行っております。また、セグメントのその他事業に属する事業開発部の中で介護福祉事業が営業活動を行っております。総務部、経理部及び経営企画室は、各営業を支援する事務部門であります。
②経営環境
ア)不動産売買市場の概況
当社の主力事業である不動産売買事業は、大きく分けて2事業になります。一つ目は、当社が築年数20~40年の中古住宅を買取って、外壁の塗装や水回り品の交換、あるいは駐車場増設等のリフォーム工事を工事会社に委託して、年収300万円前後の一次取得者を中心にリーズナブルな価格で提供する自社不動産売買事業です。二つ目は売主と買主の間に立って不動産の売買契約の締結を支援する不動産売買仲介事業です。
両事業は市場が分かれているわけではなく、需要側も供給側も重複しております。
当社の売上高のうち8割を占める、リフォーム済の中古戸建及び中古マンションの販売は、リフォーム産業新聞によると、「買取再販」に属します。2023年の買取再販の市場規模(同紙「中古住宅・買取再販&リノベ市場データブック2024-2025」)の推計値は、取引額1兆3,300億円(前年比6.4%増)、戸数47,000戸(同6.8%増)と前年を上回りました。同紙の分析によると、在宅時間の増加によって住宅需要が回復したもようです。長期的には空き家問題や環境問題への対応という観点からも中古住宅の活用を目指して、政府が中古住宅の流通市場の整備を図っていることから、買取再販の市場拡大が予想されます。
当該事業における当社の位置づけをみますと20位になります。このランキングの上位には中古マンションを主とする買取再販の事業者が多く、当社の主な取り扱いとなっている戸建住宅に限って言えば、当社は全国で3位になります。
また、不動産売買仲介手数料については、同紙「中古住宅・買取再販&リノベ市場データブック2024-2025」によると、2018年に全体で3,127億円(前年比15.4%増)となっております。
政府は空き家対策の一環として、2024年7月から低廉な中古住宅の売買仲介手数料の規制を緩和しており、今後、中古住宅の流通量が増加するものと思われます。当社は、中古住宅が空き家となるリスクを回避して政府の施策を支援するとともに、建て替え等による廃材の増加を抑えて、環境に優しく、また一次取得者の方にリーズナブルな価格で住宅を提供して、人に優しい事業を展開しております。
イ)競合他社との競争優位性及び主要製品・サービスの内容
不動産売買事業の自社不動産売買事業では、非価格競争力という点において、当社の財務体質を活かして多くの商品在庫を抱えることができるため、豊富な品ぞろえを顧客に提供できます。また、当社は長らく戸建住宅を中心に売買仲介を取り扱った実績を持ち、買主の方が購入後に実施したリフォーム工事の実例を多く見ているため、必要なリフォーム工事を把握しております。
価格競争力という点においても、当社は自社不動産売買事業に加えて不動産売買仲介事業で新築住宅をも含めた豊富な取引実績を持ち、妥当な価格設定を実現しています。
不動産売買仲介事業では、自社不動産売買事業の取引で培った地元不動産事業者との繋がりが売買の情報を得るのに役立っています。
ウ)顧客基盤
主な取り扱いが住宅であることから、不動産売買事業の顧客基盤は、最終消費者である個人となります。直接の取引相手が住宅建設業者あるいは不動産事業者である場合においても最終的には個人が購入者となります。
中古住宅等の売主も不動産事業者が介在する事例も少なからずありますが、個人が非常に大きなウェートを占めます。
また、不動産賃貸事業で賃貸住宅を探していた顧客が1ヶ月の家賃と住宅ローンの月額払いとを比較して、中古住宅へ切り替える事例もあります。
エ)営業網
不動産売買事業の営業網について、提出日現在で、当社は山口県、福岡県、広島県、大分県、佐賀県及び熊本県の17市町村で20店舗を営業しております。営業エリアは17市町村とその周辺市町村までカバーしております。
なお、いずれの店舗も自社不動産売買事業及び不動産売買仲介事業を営んでおり、出店候補地を調査するため、進出していない地域(ただし、九州地方及び中国地方に限定されます。)で先行して中古住宅等を買い取りし、販売する事例もあります。
オ)金利の動向
物価上昇等によって金利が上昇した場合、ローン金利の負担増加により買主の買控えが懸念されます。
日本銀行は、物価の上昇や賃上げ動向を背景に2024年3月にイールドカーブコントロールを解除し、金融緩和策に一区切りを付けました。さらに日本銀行は2024年7月末に政策金利を0.25%へ引き上げ、徐々に金融政策を転換しております。今後、追加の引締め策により金利が上昇すれば、当社の資金調達に影響を与える可能性があります。当社は、中古住宅の仕入れの多くを借入金によって賄っているため、貸し渋りや金利の負担増加による業績への影響を考慮し、資金調達方法の多様化を検討しております。また、中古住宅の仕入候補を選別する能力を一層高めるとともに販売用不動産の長期滞留を抑制することが重要であると考えております。
カ)法令等
当社の主たる事業の前提となる宅地建物取引業免許の有効期間は、2023年11月9日から5年間であり、以降も継続できるものと考えております。
なお、宅地建物取引業法は2016年度の改正により、建物状況調査(インスペクション)に関する説明について重要事項説明書に記載することが義務化されることになりました。この規制を当社は逆手にとって、中古住宅の信頼性を高める機会と捉え、買主への引渡し時に建物状況調査を実施し、その結果を買主に報告しております。
また、2020年4月には改正民法の施行により、瑕疵担保責任が契約不適合責任に変わりました。それを契機に不動産業界が大きく変貌するということにはならないと思われますが、当社は、前述の建物状況調査を実施などにより、契約不適合責任による業績への影響を減らしていく所存です。
キ)営業力の強化
当社は、営業体制を支えるのは人材であると考えております。
2026年5月期を最終年度とする第3次中期経営計画においても、営業力の強化を掲げており、中途入社者はじめ採用の強化及び研修の充実を推進しておりますが、住宅販売の際に必要な資格等の問題もあり、十分な人員を確保するに至らず、組織や営業力の向上も発展途上にあると言えます。今後は人材の確保と従業員の離職防止を実現すべく、研修とともに給与及び勤務時間等の雇用条件の改善及び福利厚生の充実を実施してまいります。
また、営業員の営業スキルや不動産情報の収集能力の向上はもちろんのこと、宅地建物取引士はじめ不動産の資格取得やコンプライアンスの意識向上や部下の指導に関するスキルアップも図ってまいります。あわせて営業員向けの様々な研修ツールを整備して、営業力の強化を図ります。
あわせて、現場に立つ管理職がOJTを通して、営業員の育成を担っていることから、管理職の能力向上とともに次世代の管理職候補を育成し、営業網の拡大につなげてまいります。
③経営戦略
国内においては、新型コロナウイルス感染症による経済活動の停滞という直接的な影響は減少しましたが、いまだ、高齢者や基礎疾患を持つ方のリスクが高いことから、様々なところで爪痕が残っています。また、国内経済は緩やかな回復基調にはあるものの人手不足、欧米の金利上昇と円安など、ロシアによるウクライナ侵攻や中東地域での軍事衝突などから、依然、不透明な状況が続いております。住宅市場においても物価・資材の高騰等から住宅価格が上昇しており、それにより安価な中古住宅市場は拡大すると予想されますが、一方、国内外の金利情勢、海外金融が不安要素となっております。
このような外部環境のもと、当社は引き続き不動産売買事業に注力いたします。当社の自社不動産売買事業における中古住宅の平均価格は、1,500万円程度と、年収が300万円~400万円の世帯にとって、現状の支払家賃と毎月の住宅ローン(35年間)の返済額が同程度であることから、非常に負担感が小さく、新築戸建てや、新築マンションの購入を検討している所得層の方々にも将来の所得に対する不安から、住宅ローンを組みやすい中古住宅へシフトする転換点でもあると考えております。また、中古住宅の再生は、建替や新築と比べ、廃棄物削減や持続可能な開発という点において、あるいは、木造住宅が二酸化炭素の貯蔵能力に優れている点において、ESG、SDGsの目標に沿っていることから、今後も十分なニーズがあると見込んでおります。
さらに、政府は空き家対策の一環として、低廉な中古住宅の売買仲介手数料の上限規制を緩和して、不動産事業者による空き家の取り扱いを促進しようとしております。当社にとって不動産売買仲介事業は自社不動産売買事業に次ぐ、大きな収益源ですので、大きな追い風になるものと考えております。これからも地域やその周辺の物件情報をくまなく集め、より多くの不動産を提供してまいります。
経費の面では、引続き効率的な活用に努めてまいります。
具体的な施策については、次のとおりです。
ア)営業地域の拡大
当社は、当社を取り巻く事業環境について、国内で少子高齢化、地方から都市部への人口集中及び空き家の増加といった課題がみられる中で、中古住宅に対する需要が拡大し、中古住宅の取引市場も整備されると考えております。たとえば、空き家等の再生促進、中古住宅の取引の際における建物状況調査(インスペクション)等が挙げられ、一般消費者にとって住宅取得の選択肢として中古住宅の魅力が一層高まると考えられます。
当社の営業エリアは山口県、福岡県、広島県、大分県、佐賀県及び熊本県であり、首都圏等の三大都市圏に比べると人口が少なく、人口密度も低い地域ですが、一部の市街地を除いて、戸建住宅が多いという特徴があります。そうした中で、当社の自社不動産売買事業は8割以上が中古の戸建住宅であります。中古の戸建住宅は、使用状況や周辺環境により劣化の進行あるいは程度が物件ごとに大きく異なることから、中古マンションに比べてチェックポイントが多くなり、査定も難しくなります。当社は、社内で中古の戸建住宅の仕入れ、リフォーム、販売及び在庫管理に関する独自のノウハウを蓄積しておりますので、それらのノウハウを個々の営業員に浸透させることにより、競争力を維持できるものと考えております。また、リフォームの難しい中古住宅が増えていることから、更地もしくは新築住宅への転換も選択肢といたします。
また、当社の営業エリアにおける人口動態は一部の地域を除いて、いずれも減少傾向にあります。そこで、当社は、中国地方と九州地方の中古住宅再生No.1企業を目指すことを掲げて、長期的視点に立って営業エリアを広げることにより、そうしたマイナス要因をカバーしてまいります。具体的には、既存店舗の周辺地域に新規出店(いわゆるドミナント出店)を検討してまいります。今後も出店候補地域に対するマーケットリサーチを綿密に実施して、出店の可否を判断してまいります。
なお、店舗拡大のためには、新たな店長やスタッフが必要となるため、店長候補はじめ人材の育成及び採用に最優先で取り組むとともに人事制度を運用して、公正な評価と報酬への正当な反映を実現することにより、離職率を低下させ、営業体制の強化に努めてまいります。
イ)仕入れの強化及び販売価格の方針
当社の自社不動産売買事業においては、顧客ニーズに合った立地の中古住宅を多く仕入れることが重要であります。しかしながら、中古住宅を売却する理由は、家族構成の変化や資金事情等、様々な事情があって、秘匿性の高い場合も少なくありません。そうした情報をいち早く得ることが仕入れのポイントでもあります。そこで、各営業地域において、同業他社、金融機関、取引先等の情報ネットワークを強化するとともに直接、中古住宅の保有者からの情報を得るため、WEB広告やテレビコマーシャルを活用する方針であります。
また、当社は、中古住宅を仕入れる際に、地域の取引相場等をもとに販売価格を想定したうえで仕入れているため、仕入価格の見極めが当社にとって業績を大きく左右する重要な要因となります。当社では、仕入れに際して、担当者だけでなく様々な視点から意見を集めるとともに、参考資料として近隣の相場情報、取引実績及び環境等も考慮しております。今後も、地域の特性、取引実績等に関する情報をさらに蓄積して、データベースの構築と情報の共有を一層進めてまいります。
ウ)財務基盤の強化
当社は、既存の営業エリアに加えて周辺地域でも積極的に中古住宅を仕入れて、品ぞろえを強化していることから、獲得した利益だけでは仕入資金を賄えないことがあります。そこで、中古住宅の仕入資金については、借入金も大いに活用しております。
一方で、リーマンショック等の不測の事態は予見することが難しく、その影響も測定が困難であります。したがって、そうした不測の事態にも耐えられるだけの財務体質を構築することが必要であり、自己資本比率について60%以上を維持することを目指します。さらに取引金融機関からの信用力向上、直接金融を含めた資金調達の多様化も検討してまいります。
(2) 目標とする経営指標
当社は、2024年7月11日に開示いたしました第3次中期経営計画において、経営指標の明確な目標値を掲げておりません。
これは、第3次中期経営計画が同計画後の成長軌道であるNext Stageに向けた組織強化を優先する必要があると考えているためです。
一方で、当社は安定的な株主還元が必要であると考えており、その指標としてDOE(自己資本配当率)2.5%維持を掲げております。DOEを一定水準維持するために、目標値こそ掲げませんが、ROEの推移を注視してまいります。当社のROEの要因分析は以下のとおりです。
ROEの実績と3指標分解
| 2020年5月期 | 2021年5月期 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 |
ROE(株主資本利益率) | 9.1% | 11.9% | 10.7% | 9.6% | 5.2% |
売上高当期純利益率 | 4.0% | 5.0% | 5.2% | 4.9% | 2.9% |
総資本回転率 | 1.38回 | 1.46回 | 1.42回 | 1.39回 | 1.21回 |
財務レバレッジ (自己資本比率の逆数) | 1.63倍 | 1.61倍 | 1.46倍 | 1.41倍 | 1.45倍 |
2024年5月期のROEの実績値は、売上高当期純利益率の低下、総資本回転率の低下が大きく響き、5.2%となりました。
売上高当期純利益率が低下した要因としては、自社不動産売買事業において仕入価格が上昇したことに加え、工事事業者の賃上げ等によるリフォーム工事の費用の増加による影響が大きいと見られます。
総資本回転率が低下した要因は、新築建売事業者による低価格施策によって、低廉な新築住宅の販売価格が当社の商品である中古住宅の価格帯と競合することになり、一時的に当社の所有の中古住宅の売れ行きに影響したものと考えられます。
財務レバレッジが上昇した要因は、純資産の増加幅よりも借入金が大幅に増えたことによるものと思われます。
当社は、主力事業である自社不動産売買事業において、1件当たりの仕入価格及びリフォーム工事の費用が主要な原価であり、これらの売上原価の低減に取り組むとともに、販売費及び一般管理費について、人件費、販売及び仕入れのための広告宣伝費や不動産取得税等の租税公課が主要な費用であり、それぞれの費用について、効果や販売と仕入れのバランスを考慮して節減に努めてまいります。さらに、滞留在庫の防止という観点からも自社在庫の維持費用の抑制にも努めてまいります。
(3) 対処すべき課題
今後の当社を取り巻く経営環境を展望すると、人口の減少や少子高齢化の影響から空き家が増加することが予想されます。政府は、「いいものを作って、きちんと手入れして、長く使う」社会に移行することが重要であるとして、中古住宅市場の環境整備を進めており、2021年3月に「住生活基本計画」が作成されました。こうした政府の後押しもあり、今後も中古住宅の流通市場及びリフォーム市場は拡大することが期待されます。
このような経営環境にあって、当社が対処すべき課題として、次の項目があると認識しております。
①営業地域の拡大
当社は、現在の営業地域である中国地方及び九州地方においても、顧客ニーズに十分に応えられていないことが課題であると認識しております。
この課題を克服するために、当社は、これまで既存店舗の延長地域へ新規出店するドミナント方式により、営業地域の拡大を図ってまいりました。
また、当社は、新規出店に限らず、既存店舗の周辺地域の物件情報を取りそろえることにも努め、顧客ニーズに応えてまいりました。
今後については、第3次中期経営計画の期間中、新規出店を控えて、次の成長段階における営業地域拡大の基盤づくりとすべく、出店に必要な人材の確保及び教育に努めます。
②販売用不動産の仕入れの強化
他の買取再販事業者の増加による競争の激化、あるいは買取りの対象となる中古住宅の老朽化の進行という厳しい環境の中で、当社は、顧客ニーズに適合する中古住宅の在庫を一層拡充することが課題であると認識しております。
この課題を克服するために、当社は、地元を中心に金融機関との良好な関係を維持し、中古住宅の仕入資金を確保いたします。
また、中古住宅の仕入情報を網羅的かつ早期に入手するため、WEBによる情報収集を一層強化するほか、地域に根ざした事業活動や広告を通して知名度を高め、物件の所有者から直接情報を入手できるよう努めてまいります。同様に、同業者、取引先、各金融機関等の保有する情報も非常に重要であり、これらとの関係を引続き強化いたします。あわせて、既存店舗の周辺地域に所在する物件の仕入情報についても、積極的に収集してまいります。
一方で、老朽化の進行等により再生困難な中古住宅については、中古住宅を解体して更地として販売する、あるいは新築住宅を建設することにより、土地の有効活用を進めるとともに空き家対策の選択肢としてまいります。
③在庫回転率の維持向上及び有利子負債の抑制
当社の主力である自社不動産売買事業においては、中古住宅を仕入れて、リフォーム工事を施した後に商品化し、販売後に代金の支払いを受けるため、費用を先行的に負担しており、仕入れの資金及びリフォーム等の費用の一部を金融機関からの有利子負債で賄っております。そのため、滞留在庫が増加した場合には、有利子負債も増加し、財務体質が悪化することとなります。
この課題を克服するために、当社は、業務基幹システムを通して自社不動産の在庫管理機能を強化し、保有期間の基準を定めて、その基準に抵触しないよう長期化しつつある中古住宅の早期売却を各店舗に促し、有利子負債の抑制に努めております。
これらの施策により、当社は、自己資本比率60%以上を維持することを目指します。
④政府の施策への対応
当社は、政府が中古住宅の流通促進に向けて市場の整備を目指していることを踏まえ、中古住宅に関する情報の透明性の向上、中古住宅の評価方法の改善及び中古住宅の耐久性に関する信頼の向上に向けた取り組みをなお一層強化する必要があると考えております。
そのため、当社は、中古住宅の流通市場において、ホームインスペクション(住宅診断)の結果等、顧客が求める情報の提供に努めるとともに、顧客の満足度のさらなる向上に繋がるよう、顧客へのアンケートの実施や、顧客からのクレームの報告体制の整備等を通じて、顧客の要望の把握に努めております。
また、政府が掲げた「2050年カーボンニュートラルの実現」は、当社の経営理念と繋がるところがあると考えております。特に当社の自社不動産のなかで大きな割合を占める木造戸建住宅は、鉄骨プレハブ住宅や鉄筋コンクリート住宅に比べて二酸化炭素の貯蔵量が多く、二酸化炭素の放出を抑制できる働きがあります。さらにカーボンニュートラルの観点から、リフォーム工事の際に高品質を維持できている住宅部材を交換せず、顧客に説明の上、販売するなど、販売手法を多様化させております。
今後なお一層、中古住宅の流通促進に取り組むことにより、カーボンニュートラルの実現に寄与するとともに、住まいへの新エネルギーの普及についても検討し、可能性のある商品や仕組みを試行してまいります。
⑤その他事業の充実
当社は、その他事業(介護福祉事業)において、営業面では顧客の多様なニーズに応えようとしておりますが、依然として事業基盤がぜい弱であると認識しております。
この課題を克服するために、当社は、介護福祉事業について、利便性や安全性の高い商品の品ぞろえを強化し、当社の得意分野である介護用品のレンタルを利用されている顧客層の拡大を図るとともに、シルバー・リフォームの提案力の強化、新たな取引先の開拓等に引き続き努めるほか、経費の一層の見直しをいたします。また、不動産売買事業及び不動産賃貸事業との連携により互いにシナジー効果を図ってまいります。
⑥人材の確保と育成
当社は、人材の獲得競争が激しさを増している採用市場において、今後の事業拡大に合わせ、優秀な人材を継続的に確保し、育成することが最も重要であると認識しております。
この課題を克服するために、従来型の採用手法に加え、新たな求人方法を取り入れたほか、採用専用のWEBサイトを一新し、ターゲットを意識した効果的な情報発信を実施しております。
また、社内研修の内容の充実を図り、業界未経験者を含めた業務レベルの向上に取り組むとともに、将来の幹部候補の育成の仕組みを適宜改善すること等により、当社の事業拡大に合わせた組織体制を構築できるよう努めているほか、取引金融機関と協力して、従業員向けに金融リテラシーセミナーを実施するなど、従業員の長期的な生活設計を支援する取組みも実施しております。
なお、当社は一般事業主行動計画(女性活躍推進法及び次世代育成支援対策推進法)を提出しており、「男女共に長く勤められる職場環境を作る」という方針の下、従業員が長く勤められるよう、様々な施策を実施しております。
⑦コーポレート・ガバナンスの充実
当社の継続的な事業の発展及び信頼性の向上のためには、コーポレート・ガバナンスの充実に取り組むことが重要であると認識しております。
この課題を克服するために、当社は、強固な内部管理体制の構築とコンプライアンスの強化に取り組んでまいりました。
まず、強固な内部管理体制の構築については、自浄能力の向上と組織内における内部牽制機能のさらなる強化が課題であるとの認識のもと、部署内でのチェックの精度を高めて自浄能力を向上させることに加え、内部監査室、総務部及び経理部による内部牽制機能を強化することに引き続き努めております。また、社外取締役による助言及び監督や監査役による監査も当社の内部管理体制において重要な機能を果たしており、社外取締役及び監査役は、業務執行取締役らと面談する等して情報を収集し、実効的な監督、監査に引き続き努めております。さらに、高度化された業務基幹システムを通じて事業の状況の正確な把握にも努めております。
次に、コンプライアンスの強化については、当社は、社内規程の適宜見直し、定期的な倫理・コンプライアンス研修や集合研修におけるコンプライアンスプログラムの実施、情報共有、ニュースを素材にしたコンプライアンスの意識付け、業務上の過誤や問題に対する再発防止策の実施等により、各事業の取引の健全性の確保に引き続き努めております。また、内部通報制度を整備しているほか、社内啓蒙活動及び内部監査を通して社内規程の周知徹底に努めるとともに、社外取締役、監査役及び顧問弁護士等からの指摘を基に社内規程を適宜見直して、内容の陳腐化を防いでおります。
当社は、最善の経営体制を目指し、今後もさらなるコーポレート・ガバナンスの充実を図るべく、強固な内部管理体制の構築とコンプライアンスの強化に引き続き取り組んでまいります。
なお、コーポレートガバナンス・コードは、上場企業に対し、攻めのガバナンスを通して、より一層の株主重視の経営及び体制強化を促すとともに、企業の進化を目指しているものであります。当社は、その趣旨に沿ってコーポレート・ガバナンスの充実とともに企業価値の向上及び株主還元の拡充に向けて取り組み、実効性の高いコーポレート・ガバナンス体制の構築に引き続き努めてまいります。
これらの課題に対して長期的に、かつ包括的に取り組むため、当社は、長期的な目標の達成に向けて2021年4月に第2次中期経営計画を策定し、主力事業を中心とした成長を目指しました。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響により、郊外の中古住宅、特に戸建住宅へのニーズが高まったことに対して、当社としても郊外の拠点を中心に営業力を強化すべく、営業員の採用増加を図りましたが、人員の採用数が想定を下回ったことに加え、物流コストの上昇などによる資材価格の上昇や取引先の工事業者の工賃引き上げにより、リフォーム費用が増加したことなどから、緩やかな成長にとどまり、成長目標値を達成できませんでした。
そこで、当社は、2024年7月に第3次中期経営計画(以下、「本計画」といいます。)を策定し、以下のとおり4つの経営戦略を設定した上で、次の成長段階である「Next Stage」を目指して本計画の期間中、組織の強化を図ります。
4つの経営戦略 |
|
1.人材育成強化に向けた仕組みづくり (人的資本経営に向けて) | ・報酬制度の見直し ・目標管理制度の改善 ・研修制度の再構築 |
2.ビジネスモデルの再構成 | ・不動産売買モデルのリファイン →買取再販の利益率向上×在庫回転率向上 →仲介強化による利益率向上 ・新たなビジネスモデルの構築 |
3.業務プロセス改革プロジェクト推進 | ・営業支援システム導入と活用 ・営業バックオフィスの整備 ・営業ミドルマネジメント機能の強化 |
4.組織整備とガバナンス強化 | ・組織体制:部門新設・機能強化 ・コーポレートガバナンス体制の強化 |
上記4つの経営戦略の下、当社は本計画の最終年度となる2026年5月期の目標値を以下のとおり、設定いたしました。
第3次中期経営計画の数値目標
| 最終年度(2026年5月期)の目標値 |
売上高 | 7,500百万円 |
経常利益 | 320百万円 |
税引後当期純利益 | 220百万円 |
自社不動産の販売件数 | 450件 |
当社は、さらなる高みを目指して第3次中期経営計画を着実に実行し、次の成長段階に備えてまいります。
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