企業兼大株主東急建設東証プライム:1720】「建設業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 セグメントごとの研究開発は次のとおりであります。なお、「建設事業(建築)」及び「建設事業(土木)」の研究開発費は、建設事業共通でかかる費用のため、「建設事業」として記載しております。

 [建設事業]

 研究開発活動については、「VISION2030」の達成に向け策定した「長期経営計画“To zero, from zero.”」の中で示した、3つの提供価値「①脱炭素、②廃棄物ゼロ、③防災・減災」に関連する技術ならびに、技術革新による「④まちづくり、⑤品質向上、⑥生産性向上、⑦安全性向上」につながる技術の開発と実用化を、技術戦略基本方針に基づき推進しております。当連結会計年度においては、以下の技術分野に関して、研究開発を進めました。

1.脱炭素      ・コンクリート材料・木造建築・IoTセンサ活用の空調制御・建築資材のCO2排出量算定

  2.廃棄物ゼロ    ・先送り材料・廃棄物選別ロボット・BIMを活用した部材制作

3.防災・減災    ・構造ヘルスモニタリング・耐震・グリーンインフラ・インフラ点検・維持管理

  4.まちづくり    ・Building OS・生物多様性評価

  5.品質向上    ・検査支援システム・騒音対策・コンクリート材料・室内快適性

  6.生産性向上   ・混合構造・トンネル施工省力化・PCa化・杭/基礎

  7.安全性向上   ・トンネル安全管理・VOC汚染対策

 更に、大学、公共研究機関及び関連企業との共同研究をはじめとする社外連携を進め、競争的資金の活用等により研究開発の効率を高めております。また、複数の大学と産学連携に関する包括契約を締結しております。

 当連結会計年度における研究開発費は、1,109百万円であります。

 主な研究開発成果は次のとおりであります。 

(1)建物デジタルプラットフォーム「Building OS」を大阪大学と共同開発し、技術研究所で実証

 当社は、建物運用段階における環境価値や建物利用者の生産性向上に貢献する「Building OS(以下「当システム」)」を大阪大学大学院工学研究科と共同で開発し、当社技術研究所の管理研究棟でWebブラウザ上でのデジタルプラットフォーム構築を実証しました。

 当システムは、照明や空調などといった建物全体の設備を統合的に一元管理する建物OS(Operating System)と呼ばれる技術の一つです。

 今回の実証により、BIMをプラットフォームとした環境負荷低減の取り組みを加速させるとともに、建物環境の改善を通じた建物利用者の快適な生活環境づくりに貢献してまいります。さらに、当システムを起点とした建物管理に係る新たなサービスの事業化を目指します。

     (2)BIMモデルと熱流体解析シミュレーターの連携手法を共同開発

 当社は、中立でオープンなBIMモデルの仕様であるIndustry Foundation Classes(以下「IFC」)※1と熱流体解析などを行う数値流体力学(computational fluid dynamics(以下「CFD」)※2)シミュレーターを連携させる手法を大阪大学大学院工学研究科と共同で開発しました。

 今回開発したのは、IFCファイルからCFDに必要な情報を抽出する仕組みです。ISOで標準化されている国際規格のIFCを活用することで、特定のBIMモデル作成ソフトウエアに依存せずにCFDと連携することが可能となります。

 今後、この手法を「Building OS※3」に組み込むことで、例えば30分後の室内環境の状態を予測して先読み的に空調を制御するなど、これまで困難であった室内環境制御と解決な生活環境づくりを目指してまいります。

※1 「IFC」は、BIMソフトウエア間における建物情報のデータ共有を容易にする中立でオープンなデータモデルのファイル形式です。

※2 「CFD」は、コンピューターを用いて流体の運動方程式を解き、熱流体解析などを行う数値流体力学です。

※3 「Building OS」は、当社と大阪大学大学院工学研究科が2023年4月に共同開発した建物OSです。

     (3)ドローンの屋内飛行時における安定化技術を開発

当社と東京都市大学は、ドローンが上壁(橋桁や天井などの構造物)近傍での飛行時に制御不能となることを予防し飛行を安定化させる新技術を開発しました。

近年、ドローンの更なる普及を妨げる原因の一つとして、上壁近傍を飛行する際に、急激な推力上昇が生じドローンが上壁に衝突、損傷・墜落するという問題があります。今回、この問題を解消するため、新たに圧力回復孔を設けたプロペラを開発し、これにより上壁近傍の推力上昇を従来に比べ約20%抑制することを可能としました。また、プロペラは比較的単純な構造でできており、既存ドローンへの適用が容易なことから、小型のドローンだけでなく、さまざまな大きさのドローンへの応用も可能です。

今後は、屋内や構造物に近接する場所でのドローンによる点検・軽作業へのドローン活用促進に寄与してまいります。

     (4)天井裏などの狭所空間で安定かつ長時間飛行が可能な「天井吸着移動型ドローン」を開発

当社は東京都市大学と共同で、天井効果を利用することで、建築物の天井裏やピットなどの狭所空間で従来型のドローンよりも安定かつ長時間飛行が可能な「天井吸着移動型ドローン」を開発しました。

これまで、建築物の天井裏やピットなどの狭所空間では、ドローン近傍の上下に存在する壁面とプロペラ気流の干渉によって安定した飛行が難しいことから、需要に反してドローンの利用が活発ではありませんでした。限定的ながら狭所空間向けに手のひらサイズの「マイクロドローン」が実用化されていますが、飛行時の最大積載量が小さくバッテリー容量が不足しているため、作業員の代替として十分な調査・検査時間を確保できない問題を抱えています。

今回この問題を解決するために、ドローンが天井に吸着して強く作用する天井効果による気流反転を利用することで、機体下部に壁面が存在する場合に吹き降ろし気流で上昇力が増大する効果(地面効果)をキャンセルし、これにより、上下壁に囲まれ狭所空間での安定飛行と気流乱れの抑制、および飛行時間の長時間化を実現しました。

今後、本研究成果を屋内外の構造物近傍で飛行するドローンに活用してまいります。

     (5)スマートフォンで「配筋自動検査システム」を実現

当社は、建設会社3社(北野建設㈱、佐藤工業㈱、㈱ピーエス三菱)と共同で、スマートフォンまたはタブレット端末などの汎用品とマーカーのみで配筋検査が可能な、土木現場用の「配筋自動検査システム」を開発しました。

本システムは、検査箇所に設置した十字マーカーをスマートフォンやタブレット端末で撮影するだけで配筋検査が可能です。そのため、作業足場上等の狭隘な作業スペースで配筋写真を撮影することが多く、検査の資機材を必要最小限にとどめたいといった土木現場の要望に応えるものとなっています。

また本システムでは配筋写真がサーバに送信されるため、撮影後のデータ処理と同時に結果帳票を遠隔立ち合いしている監督職員とも事前準備せずに共有することが可能になり、業務効率の改善と品質確保の両立に貢献します。

今後、共同開発企業各社の現場で試行導入し、計測精度や業務効率の改善効果を確認しつつ、人とシステムの二重チェックによってヒューマンエラーの防止に貢献してまいります。

     (6)コンクリートの締固めを補助する「締固め管理センサ」を開発

当社と㈱小川優機製作所は、コンクリート打設工事における締固め作業を補助する締固め管理センサを共同開発し、深礎杭コンクリート工事で初適用しました。

コンクリート打設工事では、バイブレータを挿入し、振動させることによりコンクリートの強度や耐久性を損ねる空洞を除去する締固めを行いますが、締固めの時間や加振位置などについて、個人差のある打設工の感覚や経験値に依るといった課題がありました。

本技術は、専用の距離計によってコンクリート表面から「締固め管理センサ」までの距離を測定し、目標とする挿入深さに到達した時点から締固めに必要な時間を正確にカウントすることで、コンクリートの締固めに必要な適正な深さと時間を"見える化"し、個人差のある感覚や経験値によらず、コンクリート打設工事の品質向上と生産性向上に貢献できます。

今後も独自技術である「締固め管理センサ」をコンクリート工事のDXにつなげ、さらなる品質確保および合理化・省力化に活用してまいります。

     (7)雨庭・バイオスウェルによる雨水流出抑制量の設計手法の確立

当社は、国土交通省が推進する「グリーンインフラ創出促進事業」に2023年3月に採択された、「大型商業施設における雨庭・バイオスウェルの雨水流出抑制効果のモニタリング」技術について、雨庭・バイオスウェルによる雨水流出抑制技術の効果を検証しました。

雨庭・バイオスウェルは敷地内に降った雨を集め一時的に貯留し、地中にゆっくりと浸透させる機能を持つ施設の1つです。

本検証の結果、設計段階において雨水浸透量制御の精度が向上し、高品質なグリーンインフラ施設を提案することが可能となりました。

近年、地球温暖化の緩和、防災・減災、生物多様性の保全、SDGsに沿った環境と経済の好循環等に資するまちづくりにおいてもグリーンインフラの重要性が増しており、当社は2024年2月27日に生物多様性指針を策定・公開しています。また、グリーンインフラは当社が掲げる3つの提供価値「脱炭素」「廃棄物ゼロ」「防災・減災」のいずれにも寄与する技術であり、本技術を用いることで気候変動やそれらを含むSDGsなどの社会課題解決に取り組んでまいります。

     (8)BIMプラットフォームの開発

当社は、長期経営計画の中で競争優位の源泉としてデジタル技術(DX戦略)を推進することを戦略の1つに掲げております。その取り組みの1つとしてBIMをデジタルデータベースと捉え積算システムに連携させることによる「BIM積算連携」、もう1つにCO2算出システムに連携させることによる「BIM-CO2連携」を推進してまいりました。

2022年にリリースした「建築BIM積算連携」に続き、「設備BIM積算連携」開発にも着手し、試行・改善を行っております。これにより積算業務の省力化はもちろん、設計変更時のコスト算出が容易になり、精度の高い建設コストの見積を圧倒的なスピードでお客様へご提案することができるようになります。2024年度内には試行~改善が終了し、2025年度からは実務での利用が可能となります。

東急建設が掲げる3つの提供価値に向けた取り組みの1つとして、設計BIMデータを活用したCO2排出量算定も行っています。設計BIMデータが持つ資材数量をBIMデジタルデータベースから算出し、2022年にリリースした『積み上げ式CO2排出量算定シート』に連携させることでCO2排出量の算定が可能となります。

今後も東急建設は設計BIMデータの利活用を限定された範囲に留めず、様々なデータ活用へ展開させていきます。

     (9)TQ-ComeWall東急建設式合成地下RC壁工法を開発

当社は、山留め壁のH形鋼を鉄筋コンクリート造の地下外壁とシヤコネクタ(頭付きスタッド・鉄筋スタッド)で一体化して土圧・水圧といった側圧に抵抗する合成壁工法「TQ-ComeWall-東急建設式合成地下RC壁工法-」※4(以下、本工法)を開発し、2023年11月に(一財)日本建築総合試験所の建築技術性能証明(GBRC性能証明 第23-20号)を取得しました。

本工法は、従来は仮設構造物として使用されてきた山留め壁のH形鋼を本体構造物として有効活用することで、RC壁の壁厚や鉄筋量の削減による現場での省力化と生産性向上、建設時のCO2排出量の削減・コストの低減・さらに地下空間の有効面積の拡大などを意図して開発された工法です。合成壁の施工状況を考慮した頭付きスタッドの実験を独自に行い、そのデータをもとに設計時に使用する各種構造性能を評価し、より合理的・経済的な設計を可能としています。

本工法は、建物規模に関わらず地下外壁がRC造で、山留め壁がソイルセメント壁または親杭横矢板壁であれば採用することができます。都市部の掘削深度の深い建物の地下外壁や、ドライエリアや免震ピットの擁壁など、地下外壁の壁厚や鉄筋量が側圧によって決定する場合に採用すると効果的です。

今後、当社では省力化と生産性向上・CO2排出量の削減・コストの低減を達成するために、本工法を積極的に採用していきます。

※4 「TQ-ComeWall-」は東急建設㈱の登録商標です。(登録商標第6789667号)

     (10)SB-Joint(鉄骨柱梁接合部省力化工法)の建築技術性能証明を取得

当社は、鉄骨造建築物の柱梁接合部の省力化技術「SB-Joint※5」を開発し、(一財)日本建築総合試験所の建築技術性能証明(GBRC性能証明 第23-07号)を取得しました(特許出願中)。

本技術は、鉄骨造建築物の柱梁接合部において通しダイアフラムとブラケットのフランジを1枚の鋼板で構成することで、在来工法で必要であった両者の完全溶込み溶接の撤廃を実現しました。SB-Jointでは、在来工法と比較して鉄骨加工・検査工程の低減によって製作工程の省力化が図れるとともに、ショートブラケット化によって製作工場から現場への輸送効率の向上も期待できます。また、柱と通しダイアフラムの完全溶込み溶接はロボットによる自動化が普及していることから、「SB-Joint」を採用することでさらなる省力化が期待できます。

今後当社は、「SB-Joint」を設計・施工案件を主とした物流施設・大型物販施設・生産施設などの鉄骨造建築物に適用を図り、建築工事における更なる生産性向上に取り組んでまいります。

※5「SB-Joint」は、東急建設㈱の登録商標です。(登録商標第6682912号)

なお、子会社においては、研究開発活動は特段行われておりません。

[不動産事業等]

 研究開発活動は、特段行われておりません。

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