東京製鐵 【東証プライム:5423】「鉄鋼」 へ投稿
企業概要
文中における将来に関する事項は、当事業年度末(2023年3月31日現在)において当社が判断したものである。
当社は、顕在化しているサステナビリティ課題に対し、取り組むべき重要課題(マテリアリティ)について、「気候変動」「資源循環」「安全・環境・品質」「コーポレートガバナンス」の4つを特定している。 当社の主力事業である電炉鋼材の生産・販売を拡大させることは、サプライチェーン全体でのCO2排出量の削減や、鉄スクラップの有効利用による再資源化の促進に寄与するため、脱炭素社会の実現や循環型社会の構築など、社会からの要請が高い課題に対し、様々なステークホルダーとの協働を通して取り組んでいく所存である。
当社のマテリアリティマップ
(1)ガバナンス
当社のサステナビリティ課題に関わるリスクおよび機会とその対応策は、経営会議など社内執行会議体で審議され、重要課題については、取締役会へ付議・報告される。当社の取締役会は、取締役(監査等委員であるものを除く。)2名、監査等委員である取締役3名(内、社外取締役2名)で構成され、そのうち2名は「ESG・安全環境」および「人事組織」について深い専門性を有している。
気候変動を含む環境課題に関しては、事業全般において、ガバナンスの役割、環境負荷の低減並びに良好な環境確保をはかることを目的とした環境管理を総合的に推進するために、以下の通り環境管理体制を組織化し、環境基本方針に基づき、継続的な改善を推進している。なお、中央環境委員会・全社カーボンニュートラル推進委員会の委員長は代表取締役社長、各工場の環境委員会・カーボンニュートラル推進委員会の委員長は工場長が務めている。
当社の環境管理体制図
(2)戦略
日本の2050年カーボンニュートラルを実現するためには、鉄鋼業において、わが国全体のCO2排出量の約13%を占める131百万トンを削減する必要がある。また、増加を続けるわが国の鉄スクラップは、2050年には国内の鋼材需要の大部分を満たす数量に達すると期待される。膨大なCO2排出量の削減、貴重な資源である鉄スクラップの国内での資源循環という社会が直面する二つのテーマに向き合い、2050年の「脱炭素社会」「循環型社会」を実現すべく、電炉トップメーカーとして鉄鋼製品の新分野にチャレンジし続けてきた東京製鐵だからこそできる社会への貢献として、長期環境ビジョン「Tokyo Steel EcoVision 2050」を策定している。
当社は長期環境ビジョン「Tokyo Steel EcoVision 2050」のもと、「脱炭素社会」「循環型社会」の実現を柱とし、脱炭素・循環型鋼材である電炉鋼材の供給拡大に取り組むことで、日本のCO2排出量の大幅な削減と、貴重な鉄スクラップの国内での更なる有効利用ををはかっていく。
長期環境ビジョン「Tokyo Steel EcoVision 2050」
・人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略
当社は、多様な価値観を尊重し、円滑なコミュニケーションと協働により個性を活かした人材育成を進めている。また、もの造りを通じて技術と人材を育成して、信頼されるリサ イクル鋼材の提供、高い付加価値創出と継続的な品質向上を追求する自由闊達な社風を醸成し、個人の能力を最大限に生かせる職場づくりと社内環境整備を目指している。世界的にも高いレベルの生産性を実現するため、少数精鋭により入社後早い段階から重要な仕事を経験し、チャレンジできる体制にある。また、一般職制度を廃止、総合職に一本化することで、人材育成を通じて女性管理職の登用も図るとともに、フレックス制度、在宅勤務制度、男性社員の育児休業の積極的な活用をはかり、柔軟な働き方を選択可能にし、出産・育児後も安心して職場復帰できる環境を用意している。
(3)リスク管理
気候変動関連リスクおよび機会の特定・評価については全社の統合リスクマネジメントに組み込まれている。気候変動関連リスクおよび機会の評価にあたっては、当社の直接操業および上下流バリューチェーンに気候変動が及ぼす影響を勘案する必要性が極めて高いことから、これらの短期的、中期的、長期的それぞれのリスクおよび機会の検討を対象として含めている。当社は、気候問題による経営へのインパクトを重要なリスクおよび機会として捉えており、その特定・評価に当たっては、いずれも代表取締役社長を最高責任者とする、取締役会および中央環境委員会・全社カーボンニュートラル推進委員会といった、経営レベルの機関が最終的な判断までのプロセスを担っている。具体的な気候変動関連リスクおよび機会の特定プロセスとしては、まず国内4工場(田原工場・岡山工場・九州工場・宇都宮工場)において、それぞれの環境委員会・カーボンニュートラル推進委員会が開催され、自工場におけるバリューチェーンを俯瞰した短期的、中期的、長期的な気候変動関連リスクおよび機会についての検討が行われ、四半期に1回以上の頻度で開催される中央環境委員会・全社カーボンニュートラル推進委員会に対して報告される。さらに、中央環境委員会・全社カーボンニュートラル推進委員会において検討された気候変動関連リスクおよび機会は、業務執行の最高責任者である代表取締役社長を議長とする取締役会に直接報告され、最終的な全社の気候変動関連リスクおよび機会が特定・評価されるプロセスとなっている。こうして特定・評価されたリスクおよび機会に対しては、それぞれの関連部署にてアクションプランが策定され、中央環境委員会・全社カーボンニュートラル推進委員会にてレビュー・審議され、最終的には取締役会で決議され、各事業部門で実行されている。
・気候変動関連リスクおよび機会
リスクおよび機会タイプ | 当社におけるリスクおよび機会の内容 | 想定タイム スケール | ||
リスク | 移行 リスク | 政策・規制 | パリ協定をふまえた気候変動の抑制のための各種規制・制度等の導入に伴うコスト増加。 | 中期 |
技術 | 生産プロセスの脱炭素化を実現した革新的な新素材の開発による鉄鋼製品の需要減少。 | 中期 | ||
市場 | 市場の素材選択の変化により、鋼材需要の増加が見込みにくい事業環境の継続。 | 中期 | ||
評判 | 気候変動に対する社会的意識の高まりや関連する評価制度の進展等と、それに対する当社の対応の不備によるレピュテーション低下。 | 短期 | ||
物理 リスク | 急性 | 自然災害に伴う生産設備の故障、販売・調達物流網の機能麻痺等に伴う操業の停止。 | 中期 | |
慢性 | 海水面上昇による臨海立地工場や物流拠点等の操業不能。 | 長期 | ||
機会 | 資源効率 | 効率的な生産プロセスによる製造コスト削減・生産力増強。効率的な輸送手段の利用。 | 中期 | |
エネルギー源 | 低炭素エネルギー源の利用による製造段階における環境負荷の低減。 | 中期 | ||
製品およびサービス | パリ協定をふまえた気候変動の抑制のための各種規制・制度等の導入、また、気候変動に対する社会的意識の高まりによる脱炭素・循環型鋼材の需要拡大。 | 短期 | ||
気候変動抑制のために製品別CO2排出量を反映させた公平な税負担が導入された場合にもたらされる脱炭素・循環型鋼材の競争優位の確立。 | 中期 | |||
CO2排出量の小さい当社製品の高炉製品に対する環境面での競争優位の確保。 | 短期 | |||
当社製品の主原料である鉄スクラップは日本国内で潤沢に発生するため、遠隔地より輸送される高炉原料に比し、輸送時のCO2排出量が大幅に少ない。これによる当社製品の高炉製品に対する環境面での競争優位の確保。 | 短期 | |||
市場 | 新規・新興市場へのアクセスの増大、金融資産の多様化の拡大。 | 短期 | ||
レジリエンス | 再生可能エネルギープログラムの導入や省エネ対策の推進。サプライチェーンの多様化による原料調達網の強靭化 | 中期 | ||
レジリエンス(強靭性/対応力)強化を目的とした製品の需要増加。 |
(4)指標及び目標
当社は2021年6月に、長期環境ビジョン「Tokyo Steel EcoVision 2050」の改定を実施し、2030年および2050年の目標を引き上げると共に、2050年のカーボンニュートラル実現を目指している。また、当社は生産量の目標として、2030年粗鋼生産量600万t、2050年粗鋼生産量1,000万tと設定している。中間となる2030 年の予想CO2排出量は約120万tであり、基準年の2013年度比でほぼ横ばいとなっている一方、粗鋼1tあたりのCO2排出は約0.21tCO2と大幅な削減を見込んでいる。さらに、鋼材1tあたりのCO2排出量の多い高炉製品を当社製品が代替することで、2030年に約840万t、2050年に約1,300万tのCO2を社会全体から削減可能と予想している。国内4工場(田原工場・岡山工場・九州工場・宇都宮工場)においては、製造プロセスから排出されるCO2の原単位を毎年1%以上削減するという目標のもと、脱炭素投資の積極的な実施や既存プロセスの見直し、エネルギー効率向上等の取り組みを全社的に推進している。
項目 | 2013年度実績 (基準年) | 2021年度実績 | 2030年目標 | 2050年目標 |
製品1t当たりのCO2排出原単位 (スコープ1・2) | 約0.54t-CO2 | 約0.35t-CO2 (基準年比▲30%) | 約0.21t-CO2 (基準年比▲60%) | 実質排出ゼロ |
粗鋼生産量 | 約222.6万t | 約340.7万t (2022年度) | 600万t | 1,000万t |
社会全体からの CO2削減貢献量 | 約275万t-CO2 | 約445万t-CO2 (2022年度) | 約840万t-CO2 | 約1,300万t-CO2 |
・人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績
人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標については、「第1 企業情報 5 従業員の状況(2)」に掲げるとおりであるが、今後管理職に占める女性労働者の割合の向上を図るため、社内教育制度の充実をはかり優秀な社員を育成することで、女性管理職の比率を高めていく。また、男性労働者の育児休業取得率も引き続き育児休業取得を支援する職場づくりにつとめていく。
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