東京汽船 【東証スタンダード:9193】「倉庫・運輸関連業」 へ投稿
企業概要
(1)経営方針
当社は、グループの中核である曳船事業においては東京湾全域に亘って、船舶の安全航行をサポートし、海難事故へ即応することにより海上交通効率化ならびに海洋環境保全への貢献といった公共的役割を果たして行きます。
すなわち、浦賀水道・中ノ瀬航路における船舶のエスコート業務、東京湾各港における船舶の離着桟補助業務、LNGバース等での警戒船業務、防災業務、緊急出動・海難救助など、顧客のあらゆる曳船サービスニーズに常時迅速に応えて行きます。
また、総合的なマリンサービス提供会社として、東京湾口の水先艇運航業務や東京湾内の交通船業務、今後成長が見込まれる洋上風力発電向けに交通船事業等を展開することにより「海上での人の安全確保」にも資してまいります。
当社グループ会社が行う旅客船事業では、地域貢献型マリン事業を展開しております。すなわち、神奈川県・久里浜港と千葉県・金谷港間を結ぶカーフェリー定期航路事業で地域の水上モビリティを提供して行きます。また、横浜港における観光船事業で市民及び観光客に洋上での利便性と快適性を提供してまいります。
安全で確実な曳船サービスを継続的に遂行するため、ハード面では電気推進化や代替燃料の使用など脱炭素化を進展させた環境負荷が低いタグボート船隊を投入して行きます。ソフト面では高い熟練を誇る乗組員を育成するとともに乗組員管理能力を強化します。また、365日・24時間のオペレーションを可能とする陸上サポート体制ではデジタル化を推進して曳船スケジューリングの最適化を図って行きます。
今後ともこうした事業を基軸として、海事関係者、一般顧客及び社会に貢献する企業グループを目指して行きます。
(2)経営環境
当社の主力である曳船事業においては、東京湾への入出港船舶数は年により変動はあるものの趨勢的に大きく増加する要因はありません。コスト面ではインフレや円安による燃料費増加が収益性の低迷要因となっています。
グループの旅客船事業を取り巻く環境については、観光客数は回復しているとはいえ、短期間に需要が変動することが予想されます。横浜港においては中期的にはインナーハーバーの再開発が新たな機会となります。東京湾口のローカルカーフェリーについては需要が大きく増加する要因はありません。
洋上風力発電関連での船舶や付随業務の分野は、競争は激しいものの当社にとり新たな投資機会となっています。当社が2013年より手掛ける洋上風力発電交通船(CTV)では各地でプロジェクトが展開されています。
(3)会社の対処すべき課題
当社は曳船事業の再構築、グループ会社の再建、当社が従来から手掛けてきた成長分野での事業開発を積極的に進めて行きます。対処すべき課題としては以下のとおりです。
曳船事業
① 曳船事業は、減価償却費や船員費用などの固定費の占める割合が高く設備稼働率に収益性が大きく影響されるという特徴があるため、設備稼働率を向上させる。そのために全体の作業件数の増加を目指すとともに、1隻あたりの売上高の改善を重視し、船隊規模適正化のために減船と船隊の効率的な運用を行う。
② 全日本海員組合(全日海)との曳船運航定員削減交渉を前進させ、定員削減船の隻数を増やすことにより、コスト低減化を実現する。湾口水先艇事業においては全日海との交渉妥結により2024年5月より隻数を削減したが、契約料金の値上げに努める。
③ 船員の労働市場が逼迫するなか、乗組員の高い技能を維持し安全な曳船サービスを安定的に提供するために、教育訓練を充実させ技能の継承・向上に引き続き取り組む。
④ 継続的な研究開発により環境負荷が低減されかつ作業効率と安全性の高い最新鋭曳船を投入する。特に2023年1月に就航した電気推進曳船「大河」の運航データを検証し、将来の新規曳船開発のために活用する。グループ会社の船舶についても電気推進船舶化を進める。
⑤ IT高度化とデジタル化を推進し、陸上および海上の各業務プロセスの一体的な効率化と質的向上を図る。
旅客船事業
⑥ 旅客船事業に携わるグループ連結子会社2社(㈱ポートサービスと東京湾フェリー㈱)を再建する。2023年度に黒字化した㈱ポートサービスについては老朽化により改修工事を進めてきた山下公園発着所が2024年夏から再開するため、内外からの観光需要を取り込み、黒字化を定着させる。
東京湾フェリー㈱については、事業の抜本的な再構築を行う。
⑦ 安全運航システムの施行を徹底化する。
その他
⑧ 洋上風力発電交通船(CTV=Crew Transfer Vessel)運航等の洋上風力発電向け事業については、オフショア船事業と位置づけ、本業のひとつとして成長させて行く。そのための安全で機動的なオペレーション体制構築と提供サービス範囲拡大を行い、各地で計画中の洋上風力発電プロジェクトの案件獲得に向けて事業開発を進める。また、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成金を得て研究開発を行ったSOV(サービス・オペレーション・ヴェッセル)等の事業開発を進めて行く。その他、既存事業のノウハウを活かして国内外における新規事業の開拓に取り組む。
⑨ 自然災害やウイルス感染症拡大などの緊急事態にも対処出来る事業継続体制を強化する。
⑩ 陸上従業員への教育訓練の強化により複数タスクでの専門化を図る。また、成長分野での専門人材を採用・育成する。その戦略的目標に適合するように陸上従業員の人事管理、給与制度を変更する。
(4)社会的責任を意識した経営
当社は、より安全で効率的な曳船サービスを提供して行くために総合的な品質管理システムの運用を強化いたします。また、社会的な責任として環境マネージメントシステムに基づいた企業経営を行ってまいります。これらに加え労働安全や健康に最大限配慮して行くことも含め、高いHSEQ基準を確立し充足して行きます。
当社グループとしての内部統制システムは、財務報告の信頼性確保を目的とするのみならず業務の有効化・効率化、リスクマネージメントを組み込んだ体制とし、同時に公正かつ透明な企業行動のためのコンプライアンス体制と一体となるものとして行きます。
ガバナンス強化への対応として、当社グループ全体としての社員教育プログラムの拡充を図って行く必要性があります。
これらの諸施策を実施し、海事関係者、一般顧客及び社会から信頼される企業グループ経営を行うことにより株主の利益に最大限貢献したいと考えております。
(5)目標とする経営指標等
当社グループは、連結ベースでの経営効率の向上ならびに事業競争力の強化に努め、各社がそれぞれ有する経営資源をグループ全体として共有するなど、グループレベルでの収益力の強化を図って行きます。
当社グループの営む曳船事業の業績は、当社のコントロール外による要因(船舶の寄港数等)に左右される度合いが大きく、また、曳船業務の公共的性格(曳船による船舶の安全運航サポート)から具体的な数値指標を設定することは適切ではないとの考えから、中長期ビジョンに数値目標としてKPIを設定しておりません。
当社グループの事業は、減価償却費や船員費用などの固定費の占める割合が高いため、設備稼働率の向上が課題であります。そのため、総売上高が重要であるとともに、適正な船隊規模を確保する観点から船舶一隻当たりの売上高も重視しています。
また、収益性を確保する見地から売上高営業利益率や売上高当期純利益率などの改善を目標としており、運航コスト削減や作業単価改善(曳船事業の場合)のための諸施策を実施して行きます。
さらに、資本効率面でも、余剰資金を新規のプロジェクトや成長分野の事業へ投資することにより総資産利益率、自己資本利益率の改善を目指します。
曳船作業を左右する本船の市場動向の変化を注視して、合理的で効率的な運航を実現させるため適正な船隊整備に努めてまいります。
旅客船事業においては、船舶の船齢が上昇しているためこれらの代替に向けて、持続的な収益性確保の観点から計画を進めて行きます。
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