朝日ネット 【東証プライム:3834】「情報・通信業」 へ投稿
企業概要
当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社の経営の基本方針は、社会基盤として重要な役割を担う先進的で高品質なインターネット接続サービスを適切な価格で安定的に提供することにあります。「接続料金」、「回線の安定性」、「回線の速度」、「サポート」といった基本的な価値の向上を図ることが重要であると考えております。また当社は教育支援サービス「manaba」を自社開発し大学などの教育機関へ提供しております。IT技術の活用によって教育の質を高めるインフラとしての価値の向上に努めてまいります。
(2)経営戦略等
インターネット接続サービスは生活インフラ及び事業インフラとしての役割が益々増大しております。当社は、顧客が求める通信品質を維持しながらオペレーションの更なる向上により顧客の利便性を高めていくことが重要課題であると考えております。また、Wi-Fi、VPN、監視カメラソリューション、教育支援サービスなど、インターネット接続の周辺領域の事業も進めております。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
先進的で高品質なインターネット接続サービスを適切な価格で継続的に提供していくためには、健全な財務基盤の維持が重要であると考えており、ROE及び1株当たり純利益を収益性の指標としております。当社が運営するISP「ASAHIネット」につきましては、会員制ビジネスであることから、インターネット接続契約数の増加を図ることが将来の収益源を確保することにつながっております。こうした観点から「ASAHIネット」のインターネット接続契約数、平均退会率、第三者による顧客満足度調査などを重要な指標としております。他電気通信事業者へIPv6接続サービスをローミング提供する「v6 コネクト」につきましては、提携する電気通信事業者数を重要な指標としております。教育支援サービス「manaba」につきましては、契約ID数に応じた課金体系となっていることから、契約ID数と全学導入校数を重要な指標としております。
(4)経営環境
① 業界動向
当社が事業を展開する通信業界、教育業界においては、デジタル化(DX)への取り組みによる生産性向上や業務効率化の改善に加え、生成AIを活用したビッグデータやIoT(Internet of Things)への先行投資が続くと捉えております。このような状況下において、当社は社会的なインフラであるインターネット接続事業者として安定した通信環境とお客様に満足いただけるサービスの提供を維持し続けるための行動に努めております。
② ISP業界
ISP(インターネット・サービス・プロバイダ)業界においては、2023年12月末のFTTH(光ファイバー)の利用者数は前年同期比94万契約増(2.4%増)の4,017万契約となり増加しております。また、FTTH契約数のうちNTT東西の卸電気通信役務(サービス卸)を利用して提供される契約数は1,702万契約となっており、FTTH全体契約数に占める割合は前年同期比0.3%減の42.4%となりました。
MVNOサービスの利用者は、前年同期比447万契約増(15.5%増)の3,322万契約となりました。そのうち高速モバイル通信やIoT(Internet of Things)およびM2M(Machine to Machine)に利用されるSIMカード型の契約者数は前年同期比88万契約増(5.8%増)の1,610万契約となりました。eSIM(イー・シム)を含む通信モジュールの契約者数は前年同期比188万契約増(18.7%増)の1,191万契約となりました。
1契約あたりのダウンロードトラフィックは、総務省が2024年2月に公開した2023年11月分の集計結果では、固定系ブロードバンド契約者1契約あたりのダウンロードトラフィックが前年同月比84.2kbps増(12.8%増)の741.2kbps、1カ月あたりのダウンロードトラフィックは約232GBとなりました。インターネットトラフィックのピーク時間帯が19時から21時に集中する傾向に変化はありません。トラフィックの伸びは平日と比較して休日は朝から昼にかけてトラフィックの伸び方が大きい傾向にあり、オンラインゲームや動画配信サービスなどがトフィックの伸びを牽引していると捉えております。
トラフィック増加に起因する通信速度および通信品質の低下はISP業界に留まらず通信業界全体での課題となっています。デジタル社会の基盤となる通信インフラの重要性が高まっており、安定したインターネット通信環境が求められています。
③ 教育業界
大学を取り巻く環境は、文部科学省が進める教育のDX化が後押しされたことによりLMSやポートフォリオは新たな価値を求められております。教育支援サービス「manaba」は、教育の質保証や大学IRを実現するために必要なサービスの提供が必要と考えております。
④ 業績の見通し
ISP「ASAHIネット」は、2024年3月期から継続的に取り組みを進めている「光コラボ」やフレッツサービスを軸としたFTTH接続サービスの契約数増加、およびIoT機器での利用用途が拡大しているLTE等のモバイル接続サービスの契約数増加を目指します。
VNE「v6 コネクト」は毎年増加するトラフィックと通信品質の取り組み、教育支援サービス「manaba」は教育の質保証を実現するためのLMS機能開発に取り組みます。
「ASAHIネット」の売上高は、FTTH接続サービス、およびモバイル接続サービスの契約数に比例して増加し、先行指標として四半期単位でインターネット接続の契約数を開示しております。2024年3月期はNTTチャネル、Webチャネル、大口法人の契約数増加に向けて会員獲得チャネルの強化を進めた結果、2024年3月末の契約数は増加傾向にあります。2025年3月期も契約数を増加させるための具体的な活動を進めます。1点目はNTTチャネルの強化です。光コラボレーションモデルの「AsahiNet 光」やNTT東西と協業して販売している「マンション全戸加入プラン」の拡大、NTT東西のフレッツ光に当社プロバイダサービスのみを提供する「フレッツ 光ネクスト/フレッツ 光クロス」などの販売を強化しています。2点目はWebチャネルの強化です。広告宣伝費や販売促進費を投下し当社Webサイト経由での見込顧客の獲得を進めています。3点目は法人会員の強化です。当社は法人会員の契約数が個人会員を超えており、他ISP事業者と比較すると法人の構成率が高いことが特徴です。当社が選定される理由として固定IPアドレスを利用したインターネット接続があり、2024年2月にサービス仕様および提供価格を変更しました。これにより、IPv4の固定IPアドレスをIPoE上で利用できるようになりました。IPアドレスを固定することで、多要素認証やインターネットを経由して遠隔地からアクセスするなどの利用事例が増加しております。
VNE「v6 コネクト」は、引き続き提携事業者との協業関係を維持すること、および新たなVNO事業者(電気通信事業者)との提携を拡大させることに注力して取り組みます。将来的には、インターネット上で中継されるスポーツイベントの視聴やオンラインゲームのアップデートなどによるダウンロードされたコンテンツ利用が増加することが予想され、増加の一途をたどると予測しています。「v6 コネクト」はVNO事業者が利用した通信量に応じて利用料が発生するサービスです。VNO事業者の事業展開においては、「v6 コネクト」を用いた通信品質の維持と事業構造におけるコストコントロールは大きな意味を持ちます。2024年3月期は、NTT東西のNGN網と相互接続しているIPv6ネットワークの構成を一部見直すことにより、従来よりも費用の増加を抑えながら取り扱いトラフィック量を増やす取り組みを進めてきました。2025年3月期以降は、提携するVNO事業者の事業拡大や維持に向けて価格調整やネットワークの維持コストを効率化することで、提携事業者と当社がパートナーとして中期的な関係性を維持することに努めます。
教育支援サービス「manaba」においては、2024年3月期は教育の質保証や大学IRを実現するために3つの取り組みを進めてきました。1点目は変わりつつある学修環境に対応するための各種システムとの連携強化です。具体的には教育業界の標準規格であるLTI(Learning Tools Interoperability)に対応するためのサービス開発を進めており、類似性チェックツールの「Turnitin」やWeb会議の「Zoom」等との連携を進めました。2点目は学修行動を分析するログの抽出です。3点目は学生の能動的な学修を促すための機能提供です。これら3つの取り組みについて、「manaba」を利用する大学と具体的な利用事例や活用方法を見出すことで2025年3月期は、全学導入校数と契約ID数の増加に向けたサービスの改善に取り組みます。大学をはじめとする教育機関は文部科学省が進める教育のDX化に取り組んでおり、「manaba」をはじめとするLMS(ラーニング・マネジメント・システム)やポートフォリオは新たな事業領域へ挑戦します。
この方針のもと2025年3月期の業績予想については、売上高12,800百万円(前年同期比582百万円増、4.8%増)、営業利益は2,200百万円(同234百万円増、12.0%増)、経常利益は2,200百万円(同213百万円増、10.8%増)、当期純利益は1,540百万円(同250百万円増、19.4%増)を見込みます。配当金は、中間配当12円00銭、期末配当12円00銭の年間1株あたり24円00銭(配当性向43.2%)を予定しております。ISP、VNE、manabaの各事業で増収を計画しており、費用面では売上高に連動する回線仕入の増加や基幹システムの更改による減価償却費の増加を見込んでいます。2025年3月期の設備投資は30億円を予定しており、その後複数年で基幹システムの更改を進めます。ネットワーク関連の設備投資、および定期的に更新が必要となるサーバ領域の設備投資は例年どおりの規模を予定しております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① お客様に満足いただける品質のサービス維持と通信費の抑制
インターネットにおけるトラフィックは、総務省が2024年2月に公開した集計結果によると、固定系ブロードバンド契約者1契約当たりのダウンロードトラフィックは前年同月比84.2kbps増(12.8%増)の741.2Kbps、1ヵ月当たり232GBとなり増加傾向にあります。
当社はNTT東西のフレッツ網(NGN)と直接接続し、シンプルにインターネット接続ができるネイティブ方式でのIPv6接続サービスを「ASAHIネット」会員向けに提供することにより、トラフィックが増加する中でも高い品質を維持し続けております。第三者機関による顧客満足度評価においては10年連続第1位の評価をいただいております。売上に対する通信原価においては売上原価率を維持することができております。今後もお客様に対して満足いただけるサービスの提供と利益の増大を図ってまいります。
② ISP「ASAHIネット」会員の獲得
「ASAHIネット」会員数を増加させるためには、当社を利用する新規会員の増加を図ることが課題です。
FTTH接続サービスにおいては、新規回線敷設または他ISPから当社への乗換を希望する会員に対して効率的な販促施策を行ってまいります。引き続き当社への入会チャネルの強化や法人向け施策など顧客満足度の高い「ASAHIネット」の認知度を向上させることで会員数増加を目指します。
特に、NTT東西の光コラボレーションモデルを活用したサービスとしてアクセス回線とISPサービスをセットにした「AsahiNet 光」や「ASAHIネット ドコモ光」、NTT東西と協力して提供している「ASAHIネット マンション全戸加入プラン」、最大通信速度概ね10Gbps(上り・下り)の光アクセスサービス「フレッツ 光クロス」においては、より一層の品質向上が実現できるサービスとして注力をして施策を行います。
モバイル接続サービスにおいては、コンピュータなどの情報・通信機器だけではなく、世の中に存在する様々なモノに通信機能をもたせるIoTやM2Mの市場規模が引き続き増加しており、当社ではこれらの需要に対して先進的なサービスを提供し、お客様の利便性をさらに高めていくことが重要だと考えております。また、在宅勤務等のテレワーク拡大など今後も需要が増加すると考えております。
当社の収益構造は会員からのインターネット接続料収入を基礎としているため会員獲得の増加が収益基盤の向上につながります。
③ 「v6 コネクト」の拡販
当社はNTT東西のフレッツ網(NGN)と直接接続し、シンプルにインターネット接続が出来るネイティブ方式でのIPv6接続サービスを「v6 コネクト」として他電気通信事業者へローミング提供をしております。2024年3月末の累計提携事業者数は11社、売上高は19億7,900万円となりました。「v6 コネクト」を利用する顧客は集合住宅向け事業者やISP事業者など電気通信事業者を想定しており、今後は新たな事業領域を開拓する取り組みを進めております。通信トラフィックが継続的に増加する状況下において、電気通信事業者は自社事業を継続するためのサービス品質維持と必要な費用の均衡を保ちたいという需要や、IPv6接続サービスを活用して自社サービスや顧客サポートを作り上げることでビジネス領域や規模の拡大を目指したいという需要に対して「v6 コネクト」の付加価値を高めたサービス開発を行ってまいります。
「v6 コネクト」の売上高は主として基本料金及び従量料金をそれぞれ算定してサービス利用料を定めております。このうち従量料金は利用帯域において「95%タイル値」(※)として測定された最大通信量と基準通信量とを比較衡量して算定されます。最大通信量の測定及び最大通信量に基づいた従量料金の算定には複雑性が伴うため、「v6 コネクト」のサービス利用料が正しく行われず請求機会の逸失や遅れが発生する場合があります。
(※)「95%タイル値」とは、月初から月末までの通信量を当社が定めた一定時間間隔で分割して測定し、分割した各通信量を昇順で並べ替え上位から95%に位置する一意の値を算定します。
④ 教育支援サービス「 manaba 」の拡販
主に大学などの教育機関に提供している教育支援サービス「manaba」につきましては、今後も教育現場のニーズを取り込み、教育の質を高めるイノベーションに貢献するためのサービス開発を進めてまいります。
大学の授業が対面とオンラインのハイブリット型に変化した事に加え、文部科学省が進める教育のDX化が後押しされたこともあり、教育現場は学習環境や教材が紙媒体から電子データへ移行するデジタイゼーションが浸透しております。このような背景を踏まえ、「manaba」と外部サービスとの間でのデータ連携の要望が増えており将来を見据えたサービス開発が求められております。具体的には教育業界の標準規格であるLTI(Learning Tools Interoperability)に対応するためのサービス開発を進め、類似性チェックツールの「Turnitin」やWeb会議の「Zoom」等との連携による事例を増やすことで拡販に努めます。
⑤ ブランドの構築と顧客満足度の維持、向上
2024年3月期のISP「ASAHIネット」の平均退会率は0.66%となりました。退会率は同業他社と比較し低い水準を維持し続けております。
今後も退会を抑止し、更に競合各社からの乗換を促進していくことが重要であると認識しております。そのためには、質の高い会員サービスと安定した接続環境を提供していくことによって、信頼できるブランドを構築し、顧客満足度の維持・向上に努めることを重要な課題としております。
⑥ 情報セキュリティへの取り組み
当社は、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格であるISO/IEC27000:2013を取得しております。ISMS関連規則等を遵守し、当社が保有する個人情報及び情報資産を適切に管理・運用すると共に、社内での継続的な取り組みを推進してまいります。
また、一般社団法人日本情報経済社会推進協会より、個人情報の適切な取り扱いを行う事業者に付与されるプライバシーマークを取得しているほか、インターネット接続サービス安全・安心マーク推進協議会が発行する「安全・安心マーク」使用許諾を得ております。今後も継続的に情報セキュリティや個人情報保護の認識を徹底させる教育を行い、適切な情報管理を行う管理体制を維持・強化していきます。
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