昭文社ホールディングス 【東証スタンダード:9475】「情報・通信業」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
近年、情報提供方法のメインストリームは紙媒体から電子媒体へと移行し、多種多様な情報を多くの利用者に大量かつリアルタイムで提供することが可能となってきたために、これまでの事業形態をそのまま維持継続するのはますます困難な事業環境となっております。そこで旧来の体制における課題を打開すべく、事業ごとの最新状況の透明化と意思決定のさらなる迅速化を図りつつ、グループ全体の戦略マネジメント機能を事業経営から分離することを主眼として、当社グループは2020年4月1日より、持株会社が事業会社を子会社とするいわゆるホールディングス体制に移行いたしております。また、これに合わせて当社グループの経営の中核となる経営理念を『安心な暮らしと楽しい旅をサポートする企業』に刷新し、この新たな経営理念に基づき、下記を経営方針として取り決めております。
『当社グループは、地図や実用情報・サービスの提供により、人々の安心な暮らしを支える環境づくりに貢献するとともに、旅やお出かけの特選情報・サービスの提供により、人々の幸せの記憶づくりのお手伝いを行ってまいります。これを実現すべく、協力会社・提携企業との共生を図りながら、情報収集・提供のノウハウ・技術を獲得、蓄積してまいります』
当社グループを取り巻く経営環境及び対処すべき課題等については、以下の通りに認識しております。
まずWEBやスマホアプリの普及により、絶えず情報無料化の波にさらされるようになったことがあげられます。無料情報を通じて大量のユーザーを囲い込み、広告やクーポン配布を通じて物品・サービスの購入に導くタイプのWEBやアプリ媒体が普及したことに加えて、ブログ・SNS・動画配信アプリといったユーザー発信・共有型メディアが一般化し、ユーザー相互間の情報交流が活発になるとともにリポスト等のソーシャル機能を通じて瞬く間に情報が拡散し、ユーザーの消費行動に影響を与えるなど既存媒体のメディアパワーを超え得るレベルまでその存在感を高めております。こうした時代にあって単なる情報はすでに価値が乏しく、情報に合わせてどのような付加価値を提供していくかが重要な課題であると認識し対応してまいりました。例えば、独自の情報源や取捨選択ノウハウにより収集した特選情報を斬新な切り口で提供すること、ユーザー個々の価値観や趣味嗜好に寄り添うブランドを育成し公式SNSの運営等を通じて親しみを感じ信頼していただける情報として提供すること、情報のみならず独自のサービスやソリューション等の付加価値を添えて提供すること、等々であります。また同時に、電子媒体の普及はこれまでの版元、取次、書店といった出版物の流通のあり方にも変革をもたらし、出版物の流通の一部をネット書店が担うようになり、また、紙媒体が不要な電子書籍市場も着実に拡大してまいりました。このため従来のやり方を見直し、出版物の流通在庫を最適化する一方、営業や間接業務における合理化・省力化に積極的に取り組むことでコスト構造改革を進め、併せて事業拠点の統廃合・再配置等も実施してまいりました。
さらに、最新のAI応用技術においては、従来とは桁違いのビッグデータを用いてユーザー個々のよりきめ細かなニーズに対応した情報やサービスの提供が可能になるばかりでなく、企業の生産・営業活動の様々な領域において現在ひとが従事している多くの業務を置き換えていくことさえ期待されております。こうした環境変化に対し、当社グループとしても、従来の市販出版物事業やソリューション事業と並行して、これまで以上にWEBやスマホアプリ、電子書籍等、電子媒体による情報提供に注力し、最新の技術やノウハウを蓄積することで、より使いやすく利便性の高い情報提供やソリューションのあり方に取り組んでいくことが重要な課題であると認識しております。加えて、グループ各社の事業を支える業務全般についてDX(デジタルトランスフォーメーション)を採り入れることでさらなる合理化・効率化への変革も進めております。
こうした課題認識の中、2020年初頭から新型コロナウイルス感染症が世界中で流行しパンデミックとなりました。政府や自治体による緊急事態宣言やそれに準じる措置が繰り返し発出されたことで、飲食・宿泊サービス業、旅客輸送業、旅行関連業界が長期にわたる停滞を余儀なくされたため、当社グループでは市販出版物事業においてさらなる営業及び物流拠点の統廃合、戦略に見合った人員体制の見直しなどの大胆な事業構造改革や、観光事業及びそのバックヤード業務が主体のコールセンター事業において第三者割当増資や持ち株譲渡等の施策を通じて当社グループの事業から除外するなどのグループ事業の再編を、矢継ぎ早に実施することになりました。
世界中がコロナ禍に見舞われて以来四年余りが経過、この間、ワクチン接種や治療薬の普及浸透により同感染症の脅威は次第に収まり、2023年春に感染症法上の位置づけが季節性インフルエンザと同等の5類に移行されたことが契機となり、人々の経済活動における不安がほぼ解消され、長期にわたり停滞した旅行・観光市場や宿泊・飲食サービス関連市場は、現在順調な回復軌道をたどっております。当社グループの業績も着実に改善し、前連結会計年度にコロナ禍を経て3年ぶりとなる連結業績の黒字化に漕ぎつけ、当年度においては対前年で増収増益を実現することができました。
ただその一方で、経済の正常化や2022年のロシアによるウクライナ侵攻で始まった地政学リスクの長期化にともなって世界的なインフレが進行中であり、インフレに立ち向かう海外と、数十年ぶりにようやくデフレの出口を迎えつつあるわが国との金融政策の違いより、歴史的な水準の円安状態が同時に進行しております。円安が継続することは当社グループの主たる顧客である日本人旅行客の旅行先や旅行期間等のニーズ及び現地での消費行動に大きな変化を及ぼす可能性があり、こうした状況が当社グループの事業環境へどのような影響をもたらすかについて慎重に見極め、適切に対応していくことが新たな課題になっているものと認識しております。
なお、当社グループは、DX推進や脱炭素社会に向けた取り組み等について、当社グループの経営理念「安心な暮らしと楽しい旅をサポートする企業」と軌を一にしたサステナビリティ戦略の一環として位置づけ、引き続きDX推進を軸に、既存事業のさらなる変革、新規事業開発、業務提携による商品・サービス開発等に取り組んで参ります。
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