昭和産業 【東証プライム:2004】「食品業」 へ投稿
企業概要
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営戦略(長期ビジョン・中期経営計画)
当社グループは「人々の健康で豊かな食生活に貢献する」ことをグループ経営理念とし、1936年の設立以来、小麦、大豆、菜種、トウモロコシなどの穀物を、小麦粉、プレミックス、植物油、糖化製品、配合飼料などに加工し、「食」を通じた社会への貢献を志してまいりました。一層の発展のため、創立90周年にあたる2025年度のありたい姿(長期ビジョン)「SHOWA Next Stage for 2025」を策定し、その実現に向けて3年間の中期経営計画を三次にわたり展開しております。
1st Stageである「中期経営計画17-19」では「ありたい姿の実現に向けた足場固め」を基本方針として、収益基盤の強化に取り組んでまいりました。2nd Stageとなる「中期経営計画20-22」は「確立」のステージとして位置付け、当社グループならではの新しい価値をステークホルダーの皆様にお届けすべく、基本コンセプト「SHOWA New Value Creation」を掲げ、基盤事業の盤石化と成長事業の育成に取り組むと共に、事業活動を通してESG経営を推進するCSV戦略を展開してまいりました。
2023年4月よりスタートした3rd Stage「中期経営計画23-25」は、継続が見込まれる厳しい事業環境やニューノーマルへの変化に適切に対応し、引き続き安全・安心な「食」を安定的に供給するという社会的使命をしっかりと果たしながら、当社グループの「ありたい姿」の実現に向けて成長し続けるため、1st Stage及び2nd Stageの成果を「収穫」すると共に各施策を着実に遂行し、創立100周年を見据えた持続的成長のための基盤作りに取り組んでおります。
■「SHOWA Next Stage for 2025」の内容
ありたい姿 | 全てのステークホルダーに満足を提供する “穀物ソリューション・カンパニー Next Stage” ~幹を太くし、枝葉を広げ、世の中のためになる果実を育てる~ |
方 針 | 昭和産業グループならではの複合系シナジーソリューションを進化させると共に、ESG視点での取り組みも強化し、企業価値の向上に努めてまいります。 |
■「中期経営計画23-25」について
長期ビジョン「SHOWA Next Stage for 2025」の最終ステージである「中期経営計画23-25」は、創立90周年を迎える2025年度に当社グループのありたい姿を実現すべく、基本コンセプト「SHOWAの“SHIN-KA”宣言~90年、そしてその先へ~」を掲げ、穀物のプロ集団として穀物ソリューションを「進化」させ、素材の「真価」を追求することで人々の健康に貢献し、環境負荷の低減に向けた取り組みなどを通じてサステナビリティ経営の「深化」に取り組んでおります。
〔5つの基本戦略〕
基本戦略 | 主な取り組み |
①基盤事業の強化 | ・ワンストップ型営業組織への変革による販売力強化 ・グループ連携による事業拡大と収益力強化 ・商品構成の最適化や差別化戦略による収益力強化 ・原料、資材の安定調達の強化 |
②事業領域の拡大 | ・海外事業、冷凍食品事業の拡大 ・新規事業への挑戦 |
③環境負荷の低減 | ・グループ環境目標達成に向けた継続的取り組み ・容器包装プラスチックの削減 ・カーボンニュートラル実現に向けたロードマップの検討 |
④プラットフォームの再構築 | ・ROIC導入による事業ポートフォリオマネジメントの高度化 ・人的資本経営の推進 ・デジタル戦略の推進 ・RD&E戦略の推進 |
⑤ステークホルダー エンゲージメントの強化 | ・従業員エンゲージメントの向上 ・株主戦略に基づくIRの推進 ・SNS活用による発信力強化と企業認知度の向上 |
〔財務目標〕
| 2022年度 実績 (2nd Stage) | 2025年度 計画 (3rd Stage) | 2022年度実績に対する 2025年度計画の差異 |
連結経常利益(億円) | 65 | 130 | 200% |
ROE(%)(※1) | 7.1 | 7.0以上 | - |
ROIC(%)(※2) | 1.8 | 4.0以上 | 2.2ポイント増加 |
CCC(日)(※3) | 91 | 75 | 16日短縮 |
NET D/Eレシオ | 0.5 | 0.6以下 | - |
(※1):2022年度は、ショーサン上尾ビルの売却により約52億円の固定資産売却益(特別利益)が発生
(※2):ROICの定義
ROIC = 税引後営業利益 ÷ 投下資本(有利子負債(Net)+自己資本)
税引後営業利益は、法人税等を営業利益の30%として計算
(※3):キャッシュ・コンバージョン・サイクル
〔非財務目標〕
| 項目 | 2025年度目標 |
グループ環境目標 | CO2排出量の削減(※1) | 30%以上削減 (2013年度比) |
食品ロスの削減(※2) | 30%以上削減 (2018年度比) | |
水使用量の削減 (原単位)(※3) | 9%以上削減 (2019年度比) | |
プラスチック使用量の削減 (原単位)(※4) | 7%以上削減 (2013年度比) | |
人的資本経営 | 女性管理職比率 | 10%以上 |
リスキル投資額 | 2倍以上 (2021年度比) |
(※1)対 象:当社及び連結子会社
(※2)対 象:当社及び食品ロス発生量が100t/年以上のグループ会社
(※3)対 象:当社及び子会社9社(水質汚濁防止法、下水道法による特定施設を有する事業者)
(※4)化石燃料由来容器包装材に使用するワンウェイプラスチック
(2) 対処すべき課題
当社グループを取り巻く環境は、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い、行動制限が緩和され、インバウンド需要も回復基調となり、日本国内の経済活動及び社会活動の正常化が進む一方で、緊迫した世界情勢に加え、為替相場の円安基調などにより、依然として先行き不透明な状況が続いております。
今後も、国内人口の減少に伴う労働人口の減少、地球温暖化に伴う異常気象、地政学リスクの顕在化、脱炭素化の動きによるバイオ燃料の需要増などから、原料穀物価格の変動や製造コストの上昇が見込まれております。
このような状況の中、当社グループも環境変化に対応した商品の開発や、事業領域の拡大に努め、環境変化に左右されにくい収益構造への変革に取り組むため、新たに「中期経営計画23-25」を策定し、5つの基本戦略に沿って「ありたい姿」の実現に向けて取り組んでおります。
■「中期経営計画23-25」の進捗状況
〔基本戦略① 基盤事業の強化〕
・2023年4月に創業以来初となる抜本的な営業組織改編を実施いたしました。これにより、従来の「プロダクトアウト型」の組織から業態別・顧客別の「ワンストップ型」の組織に変革し、顧客のニーズを的確かつ迅速に把握するとともに、当社グループが取り扱うすべての商品をワンストップで提供できる体制に改編いたしました。初年度となる今年度は、業態別・顧客別営業体制を生かした販路の拡大や、すべてのカテゴリの販売チャネルに対する提案の強化として課題解決型営業に取り組んでまいりました。
今後も、業態別・顧客別営業体制を生かした販路の拡大や高付加価値商品の提案強化により、複数のカテゴリに跨る商品を有する当社グループの強みを最大化してまいります。
・2023年5月に辻製油株式会社と資本業務提携を行いました。本業務提携により、当社グループで製造しコーン油の原料となるコーンジャーム(とうもろこし胚芽:糖質製造の副産物)の有効活用や、両社の製造設備を相互に活用することにより、事業規模の拡大、製造の効率化、コスト削減、糖質・コーン油製品の安定供給を図ります。さらに、原料・資材の共同調達や物流拠点等の共同活用、研究・開発・技術における相互協力を実施してまいります。
・物流業界における労働力不足やドライバーの労働時間に上限規制が適用されることなどによる「物流の2024年問題」や、輸送拠点の集約などによるCO2排出量の削減を目指す「グリーン物流」へ対応するため、神戸工場内の製粉立体自動倉庫を更新し、新設いたします。これにより、現在は人手を要している作業を自動化・省人化し、積込み時間・待機時間を短縮し、物流機能の改善、効率化を図ります。設備投資金額は約35億円、2026年2月の完成、稼働開始を予定しております。
・糖質カテゴリのグループ3社(当社/敷島スターチ株式会社/サンエイ糖化株式会社)が一体となり、生産拠点の最適化や、商品カテゴリの選択と集中を含む事業構造改革を推進することにより収益改善を図りました。今後もグループシナジーの発揮に向けた取り組みを継続してまいります。
〔基本戦略② 事業領域の拡大〕
・2023年4月に実施いたしました組織改編により、従来の組織では複数の部署で担当していた輸出業務を海外営業部に集約いたしました。これにより、輸出事業の基盤を強化するとともに全社的な輸出戦略に基づいて販売国ならびに販売数量の拡大を推進しております。
・プラントベースフード事業の推進の一環として、株式会社フードテックワンに参画いたしました。同社は、サステナブルな食品を開発し、国内外の消費者に競争力のある品質と価格で提供することを目的に設立され、植物由来の代替肉などの共同開発を行い早期の商品化を目指すとともに、フードテックに関する多様な取り組みを実施しています。株式会社フードテックワンに参画することにより、当社グループのプラントベースフード事業の拡大に向けた取り組みを加速いたします。
・当社、ボーソー油脂株式会社、サンエイ糖化株式会社の3社合同で、当社グループが持つ米や高オレイン酸ひまわり油由来の油脂製品、でん粉由来の機能性粉末水あめ及びマルトビオン酸含有水あめを化粧品原料として化粧品産業技術展に出展いたしました。植物由来の機能性素材の開発を強化し、化粧品分野などのファインケミカル事業の拡大を図ってまいります。
〔基本戦略③ 環境負荷の低減〕
当社グループは、環境目標としてCO2排出量を2025年度までに2013年度比で30%以上、2030年度までに46%以上削減する目標を掲げております。目標の達成に向け、省エネの推進、燃料転換など環境負荷の低減のための施策を推進しております。
・当社の主力工場である鹿島工場に、木質チップなどの再生可能エネルギーを活用したバイオマス発電ボイラを新たに導入いたします。バイオマス発電ボイラ導入に伴い、既存の都市ガスを燃料としたコージェネレーション設備の一部役割を置換いたします。これにより、年間約3.7万tのCO2排出量を削減し、グループ全体で累計37%以上(対2013年度比)の削減となる見込みです。設備投資金額は約35億円、2025年度中の完成、2026年度の運転開始を予定しております。
・2024年4月より、当社グループのプレミックス製品の主要な製造拠点である鹿島工場潮来ミックス分工場及び家庭用製品の主要な製造拠点である船橋工場(併設するRD&Eセンターを含む)で使用する電力を実質100%再生可能エネルギーといたしました。両工場では、従前から施設内にPPAモデル(Power Purchase Agreement:電力販売契約)による太陽光発電設備を設置しておりましたが、本太陽光発電で賄っている以外の使用電力について、全てCO2フリー電力(発電時にCO2を排出しない再生可能エネルギーの証書を活用した電力)に切り換えました。これにより、両工場合計で年間約7,600tのCO2排出量の削減となる見込みです。
・2024年4月より、インターナルカーボンプライシング制度を導入いたしました。対象となる設備投資案件のCO2排出量に対し、1t当たり5,000円の社内炭素価格を適用して金額換算したものを投資判断の参考といたします。本制度の導入により、CO2排出量削減に資する投資や施策を推進いたします。
〔基本戦略④ プラットフォームの再構築〕
・経営資源を有効活用し資金効率の改善を図るため、2024年4月に本八幡ビルの譲渡を実施いたしました。また、政策保有株式の保有基準を見直し、保有意義が希薄と認められる株式の売却を進めております。今後も政策保有株式の保有の適否を的確に評価し、保有に妥当性が認められない銘柄については適切に縮減を図り資金効率の改善に努めてまいります。
〔基本戦略⑤ ステークホルダーエンゲージメントの強化〕
・企業経営において、株主にとどまらず、お客様、取引先、投資家、地域社会、従業員をはじめとする多様なステークホルダーとの価値協創が重要となっていることを踏まえ、従業員への還元や取引先への配慮など、様々なステークホルダーとの関係構築の方針として、2024年1月に「マルチステークホルダー方針」を策定し公表いたしました。マルチステークホルダーとの適切な協働により、「穀物ソリューション・カンパニー」として人々の健康で豊かな食生活に貢献し続けてまいります。
・「物流の2024年問題」への対応を加速する必要性を鑑み、物流の適正化・生産性向上に向けた「自主行動計画」を2024年3月に策定し公表いたしました。社内プロジェクトを立ち上げ、自主行動計画に基づき継続的に課題の発掘、改善を推進してまいります。
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