明治ホールディングス 【東証プライム:2269】「食品業」 へ投稿
企業概要
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理
当社グループは、サステナビリティ戦略を推進するために、責任者であるチーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSO)が議長を務める、グループサステナビリティ事務局会議を毎月開催し、社会課題解決に向けた取り組みを強化しています。また、当社代表取締役社長 CEOが委員長を務めるグループサステナビリティ委員会では、半期毎にサステナビリティ活動全般の進捗状況などを審議しています。重要なサステナビリティ課題は、経営会議にて審議し、取締役会が監督し、経営に反映しています。
リスク管理に関しては、企業活動が環境や社会から影響を受ける、もしくは環境や社会に影響を与える可能性のあるサステナビリティ課題について、グループサステナビリティ委員会にて、審議しています。同委員会には、リスクマネジメント部も参画し、グループ全体のリスク管理とも連携しています。また、2019年より、3名の社外有識者を交えたESGアドバイザリーボードを開催しています。社外有識者より、当社グループのサステナビリティ課題への取り組みに関して、幅広い見地から忌憚のないご意見を頂いております。
(2)重要なサステナビリティ課題
上記、ガバナンス及びリスク管理を通じて識別された当社グループにおける重要なサステナビリティ課題に対する取り組みは以下のとおりであります。
① 戦略
サステナビリティ2026ビジョンの実現に向け、「こころとからだの健康に貢献」「環境との調和」「豊かな社会づくり」の3つのテーマと、共通テーマである「持続可能な調達活動」を掲げており、それぞれのサステナビリティ課題に対するリスクと機会、主な取り組みは下表のとおりであります。
明治グループ サステナビリティ課題に関する戦略 | |||
活動 | サステナビリティ課題 | リスクと機会(●リスク、〇機会) | 明治グループの主な取り組み |
こころとからだの健康に貢献 | 健康な食生活への貢献
| ●健康・栄養関連の法制化・ルール強化によるコスト上昇(栄養表示等) ●健康・栄養分野における競争激化と対応の劣後によるビジネス機会損失リスク ●栄養、食、健康に関する投資家やESG評価の事業への影響、対応の遅れによるレピュテーションリスク 〇過剰栄養・不足栄養に関する健康ニーズに対応した商品開発による新たなビジネス機会の創出 〇食・薬の知見を生かしたオープンイノベーション活用によるソリューション提供に伴う新たなビジネス機会の創出 〇超高齢社会に対応した商品開発によるビジネス機会の増加 〇食育活動や子どもの成長サポート活動などの明治らしい健康情報の普及啓発による明治ブランドのプレゼンス向上 | ・乳酸菌やカカオ等素材の持つ健康機能などを活かした健康志向商品の提供 ・明治の栄養研究と栄養設計技術を活かした付加価値型栄養商品の提供による、食を通じた栄養改善ニーズへの対応 ・おいしさと使いやすさを兼ね備えた栄養食品・流動食・介護食の開発による超高齢社会への貢献 ・「抗老化」「免疫増強」「マイクロバイオーム」を主要テーマとして研究開発の推進 ・食や栄養に関する正しい知識の提供により、お客様のこころとからだの健康に貢献する食育活動の推進 ・低栄養の課題を抱える開発途上国における栄養情報の発信・普及活動の展開 |
活動 | サステナビリティ課題 | リスクと機会(●リスク、〇機会) | 明治グループの主な取り組み |
こころとからだの健康に貢献 | 新興・再興 | ●グローバル先進企業の新規技術導入による競争激化、劣後リスク ●海外原料への依存による抗菌薬の供給不安定化、供給停止リスク 〇抗菌薬、ワクチン開発の知見・技術を活かした新興・再興感染症への対応によるビジネス機会の増加 〇抗菌薬の安定供給化等によるシェアの拡大 〇抗菌薬の適正使用に向けた情報提供による明治ブランドのプレゼンス向上 | ・COVID-19、デング熱および痘そう等に対する新規ワクチン開発による新興・再興感染症への対応 ・経産省のデュアルユース事業への参画による生産体制整備の確実な遂行 ・ワクチンの技術導出、製品輸出による開発途上国・新興国への医薬品アクセス向上への取り組み強化による海外での公衆衛生レベル向上への貢献 ・オープンイノベーション強化により新規モダリティ技術の獲得および実用化のための研究開発強化 ・ペニシリン原薬の国内内製化による抗菌薬の安定供給に資する体制強化 ・抗菌薬の適正使用、ワクチン接種の重要性の普及・啓発活動の推進 ・薬剤耐性菌に有効な抗菌薬の研究開発の推進 |
環境との調和 | CO₂排出量の削減 | ●カーボンプライシング導入に伴う製造や原材料調達におけるコスト増による利益への影響 ●脱炭素への取り組み遅延による投資家やESG評価の事業への影響およびレピュテーションリスク ●気候変動による原材料調達リスクおよび生産停止リスクの増大 〇再生可能エネルギー導入によるコスト競争力の確保 〇脱炭素に向けた商品開発による新たなビジネス機会の創出 〇脱炭素ビジネス(カーボンクレジット創出・販売)など新たなビジネス機会の創出 | ・バリューチェーン全体におけるCO₂排出削減の取り組み推進およびSBT認定(1.5℃目標)の取得に向けた取り組み ・インターナル・カーボン・プライシング制度の積極的な活用によるカーボンプライシング導入後の対策推進 ・再生可能エネルギー設備の積極的な導入 ・カーボン・フット・プリントの算定推進 ・酪農現場におけるGHG排出削減に向けた新たな施策の導入推進 ・TCFDシナリオ分析の実施と情報開示 ・森林減少に関与していない認証原材料の調達推進やカカオ生産地における森林減少課題解決の推進 |
環境負荷の低減 | ●グローバルで加速するプラスチック削減への要求に対する対応遅延によるビジネス機会の損失 ●食品ロス削減等の廃棄物削減への取り組み遅延による企業イメージの低下、レピュテーションリスクの増加 〇プラスチック使用量減による包材コストの削減 〇食品ロス削減に貢献する社会貢献活動の強化による企業イメージの向上 〇新規包装形態、商品設計の開発による新たなビジネス機会の拡大 | ・商品パッケージにおけるプラスチック使用量の削減とサステナブル素材の使用拡大 ・食品ロス削減に向けた業界全体での取り組みへの積極的な参加、自社製品の廃棄ロス削減への取り組み推進 ・食品ロス削減につながる社会貢献活動への自社製品の積極的な活用 ・新たな技術を導入した生産設備や包装資材の開発 | |
水資源の 確保 | ●水資源確保に向けた対応の遅延による生産活動への負のインパクトの拡大 ●安全安心な水資源確保のための対応不足による製品の安全性、供給停止リスクの拡大 〇水使用量削減による生産時のコスト削減 〇水リスク対策の推進によるBCPの強化 〇水使用量削減に対応する設備や商品開発によるあらたなビジネス機会の拡大 | ・全生産拠点における水リスク分析およびリスクに対する対応策の実施 ・生産時における水使用量削減に向けた各種取り組みの推進 ・水使用量削減に対応する設備や新たな製造技術の開発 ・取水および排水の水質確保に対する新規技術の導入 ・水田湛水や森林保全など様々な取り組みを通じた水源涵養の推進 ・生産地における水リスク分析 |
活動 | サステナビリティ課題 | リスクと機会(●リスク、〇機会) | 明治グループの主な取り組み |
豊かな社会づくり | 多様性の尊重と人財育成 | ※(4)明治グループにおける人的資本への取組 ② 戦略 にて記載しております。 | |
人権の尊重 | ●グローバルで強化される法制化への対応の遅延によるビジネスリスクの増大 ●人権尊重への取り組み不足によるレピュテーションリスクおよびビジネス機会の損失 ●人権尊重への取り組み不足による生産性低下のリスク拡大および企業イメージの低下に伴う人財獲得力の低下 〇人権尊重への積極的な取り組みによる企業イメージ向上 〇人権尊重に向けた風土づくりに繋がる商品やサービスの提供による新たなビジネス機会の創出 | ・グループ人権ポリシーによる企業としての姿勢・考え方の開示 ・バリューチェーン全体を視野に入れた人権デュー・ディリジェンスの推進 ・顕著な人権課題の洗い出しおよび選定された優先課題への対応強化 ・人権尊重への意識・知識の啓発につながる商品の開発 | |
持続可能な調達活動 | 人権・環境に配慮した | ●グローバルで高まる原材料調達に関する法制化への対応の遅延によるビジネス機会の損失 ●原材料調達における人権・環境への配慮の不足によるレピュテーションリスクの増加 ●人権・環境への配慮の不足した原材料の調達停止に伴う事業継続への影響 〇トレーサビリティの強化による原材料の透明性の確保とそれに伴う企業イメージの向上 〇人権・環境に配慮した原材料を活用した商品開発にともなう新たなビジネス機会の創出 〇パンデミック等発生時のグローバルサプライチェーン断絶に備えたサプライチェーンの強化 | ・グループ調達ポリシー、サプライヤー行動規範等の呈示および取引先と協働した責任あるサプライチェーンの構築の推進 ・サプライチェーン上における人権・環境課題の把握に向けたサステナブル調達アンケートの実施 ・重要原材料における生産者支援の取り組み強化 ・人権・環境に配慮した原材料の調達比率拡大に向けた取り組み推進 ・人権・環境に配慮した原材料を使用した新たな商品開発の強化 |
② 指標と目標(実績含む)
各サステナビリティ課題について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、下表のとおりであります。なお、目標に関しては、2023中期経営計画の最終年度をターゲットに設定しています。
サステナビリティ課題 | 指標(KPI) | 基準年度 | 2022年度実績 | 2023年度目標 |
健康な食生活への貢献 | 健康志向商品、付加価値型栄養商品、超高齢社会に貢献する商品の売上伸長 (食品セグメント(海外子会社除く)) | 2020年度 | -3.1% | 10%以上増加 |
2021年度から2023年度までの3カ年で食育を延べ70万人に実施 (㈱明治) | - | 延べ44.3万人 (2022年度:25.5万人) | 延べ70万人 | |
新興・再興感染症対策 | 新型コロナウイルス・ワクチンの上市を目指す (Meiji Seika ファルマ㈱、KMバイオロジクス㈱) | - | 2023年度中の上市を目指して対応中 | 上市 |
CO₂排出量の削減 | 自社拠点でのCO₂総排出量(Scope1,2)削減 | 2019年度 | 14.7% ※1 | 19%以上 |
CO₂総排出量(Scope3 調達・物流・廃棄_カテゴリ1,4,9,12)削減 | 2019年度 | 7.0% ※1 | 11%以上 | |
自社拠点における総使用電力量に占める再生可能エネルギー比率拡大 | - | 9.5% ※1 | 15%以上 | |
環境負荷の低減 | 国内連結での再資源化率の拡大 (明治グループ (海外子会社除く)) | - | 86.2% ※1 | 85%以上 |
国内の食品事業における製品廃棄量の削減 (食品セグメント(海外子会社除く)) | 2016年度 | 31.5% ※1 | 42%以上 | |
国内の容器包装などのプラスチック使用量の削減 (明治グループ(海外子会社除く)) | 2017年度 | 16.0% ※2 | 15%以上 | |
物流部門で使用するパレット、クレート、ストレッチフィルムなどをリユース・リサイクルによる有効利用 (明治グループ(海外子会社除く)) | - | 100% | - | |
バイオマスプラスチックや再生プラスチックの使用拡大 (明治グループ(海外子会社除く)) | - | 新たにおいしい牛乳の包材に使用 | - | |
水資源の確保 | 自社拠点での売上高原単位あたりの水使用量の削減を目指す | 2020年度 ※3 | 13.3% ※1 | - |
製品原料として使用する水の涵養率拡大 | - | 41.2% ※1 | 27%以上 | |
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サステナビリティ課題 | 指標(KPI) | 基準年度 | 2022年度実績 | 2023年度目標 |
多様性の尊重と | 女性管理職比率の拡大 (明治ホールディングス㈱、㈱明治、Meiji Seika ファルマ㈱、KMバイオロジクス㈱) | 2017年度 | 5.6% | - |
女性リーダー(管理職および係長職相当)の人数拡大を目指す (明治ホールディングス㈱、㈱明治、Meiji Seika ファルマ㈱、KMバイオロジクス㈱) | 2017年度 | 256人 | - | |
障がい者法定雇用率(2023年6月現在2.3%)以上の雇用 (明治ホールディングス㈱、㈱明治、Meiji Seika ファルマ㈱、KMバイオロジクス㈱) | - | 2.53% | 2.3%以上 | |
人権の尊重 | 国内グループ全従業員に対する人権教育(e-learningを含む)の実施 (明治グループ(海外子会社除く)) | - | 1回実施(対象人数:約13,000人/受講率:92.3%) | 1回/年以上 |
海外グループ全従業員に対する人権教育(e-learningを含む)の実施 (明治グループ(海外子会社)) | - | 対象人数:約2,200人/ 受講率:84.2% | 1回以上 | |
人権・環境に配慮した | 2021年度までに国内グループ会社のサプライヤーを対象にしたサステナブル調達アンケートの開始 (明治グループ(海外子会社除く)) | - | 未実施 (2023年度4月から実施予定) | 2021年度までに開始 |
2022年度までに主要海外グループ会社のサプライヤーを対象にしたサステナブル調達アンケートの開始 (明治グループ(海外子会社)) | - | 17社を対象に実施 | 2022年度までに開始 | |
明治サステナブルカカオ豆の調達比率拡大 (食品セグメント) | - | 62.6% | 65%以上 | |
RSPO認証パーム油への代替 (食品セグメント) | - | 90.4% | 100% | |
環境配慮紙への代替 | - | 98.2% | 100% | |
酪農家の経営に関する支援活動 Meiji Dairy Advisory(MDA)の実施 (食品セグメント(海外子会社除く)) | - | 477回/年 | 400回/年以上 |
※1 算出値については第三者保証取得前の数値であるため、変更の可能性があります。
※2 プラスチック使用量削減値については、2021年度実績を記載しています。
※3 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等適用後の売上高を原単位分母に
したことに伴い、基準年度と目標を変更しました。
(3)気候変動(TCFD)に関する考え方及び取組
当社グループの事業は、豊かな自然の恵みの上に成り立っており、地球環境と共に生き「自然と共生」することが責務であると考えております。しかし、近年、地球環境の持続可能性が危ぶまれており、気候変動が中長期的に事業活動に与える影響も大きく、重要な経営課題であると認識しております。また、「パリ協定」や「持続可能な開発目標(SDGs)」でも、気候変動への対応強化が求められており、当社グループはこうした国際的な枠組みに貢献すべく、脱炭素社会の実現に向けて気候変動への対応を推進しております。
なお、気候変動に関しては、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の枠組みに基づいて記載しています。
① ガバナンス及びリスク管理
当社グループは、サステナビリティ戦略を推進するために、責任者であるチーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSO)が議長を務める、グループサステナビリティ事務局会議を毎月開催し、気候変動をはじめとする、
社会課題解決に向けた取り組みを強化しています。また、当社代表取締役 社長 CEOが委員長を務めるグループサステナビリティ委員会では、半期ごとにサステナビリティ活動全般の進捗状況を報告し、新たな取り組みについて審議しています。特に、気候変動は、重要な課題と位置づけています。
ガバナンスに関して、当社グループは、気候変動によるリスク・機会の分析と対応策について、グループTCFD会議(2022年度 6回実施)において議論した後、その結果を経営会議で審議し、取締役会が監督し、経営に反映しております。
リスク管理に関して、当社グループは、企業活動に重大な影響を及ぼすリスクに的確に対処するため、グループ全体でリスクマネジメントを推進しております。この中で、「気候変動」は、主要な経営リスクと位置づけております。気候変動によるリスクや機会は、時代とともに変化する事と認識し、グループTCFD会議では、TCFD提言に沿ったシナリオ分析を活用し、定量的な分析と評価を行い、優先度の高い主要インパクトを特定しています。これに基づいて、リスク管理フローに沿って対応策を検討しております。グループTCFD会議は、当社リスクマネジメント部も参画し、気候変動の影響をグループ全体の重大なリスクとして認識し、それに対応できる体制を構築しております。
② 戦略
当社グループは、気候変動によるリスクと機会を、重要な経営課題の一つであると認識しており、短期的には、2023中期経営計画、中期的には「明治グループサステナビリティ2026ビジョン」、長期的には、明治グループ長期環境ビジョン「Meiji Green Engagement for 2050」を基に「CO₂排出量の削減」、「水資源の確保」などのマテリアリティとKPIを設定し、将来にわたって自然と共生していくための取り組みを推進しております。
<2022年度の取り組みのポイント>
・当社グループにおけるサプライチェーン全体での分析と財務インパクトの算出
・3つのシナリオ(1.5℃・2℃・4℃シナリオ)を設定し、現状、2030年(中期)、2050年(長期)を基準年として中長期の気候変動によるリスク・機会の分析と対応策の検討
・主要原材料における気候変動の影響分析の強化(原材料の範囲拡大、水リスクによる影響分析の追加)
・「Meiji Green Engagement for 2050」の達成に向けて、インターナルカーボンプライシングの導入や移行計画(トランジションプラン)の策定など対応策の強化
・昨年度策定した対応策への具体的な取り組みの推進
・気候変動における機会の抽出と時間軸での優先順位付け
当社グループはIEMAのGHG管理ヒエラルキーに基づき、GHG排出量削減への取り組みを推進しています。
ⅰ Eliminate(回避) :ビジネスモデルや事業ポートフォリオの変更等を通じライフサイクルを通じて温室効果ガスを排出しない事業構造へ転換
ⅱ Reduce(削減) :製造工程や輸送の効率化等を通じ、エネルギー使用量やGHG排出量を削減
ⅲ Substitute(代替) :再生可能エネルギーの活用、低炭素素材の調達等を通じ、よりGHG排出量の少ないエネルギー・調達物品への変更
ⅳ Compensate(補償・相殺):削減しきれなかったGHG排出量に対し、カーボンクレジット購入等のオフセットによって相殺
3つのシナリオ(1.5℃・2℃・4℃シナリオ)での分析結果の内、1.5℃シナリオと4℃シナリオにおける影響の大きい主要インパクトの分析結果は以下のとおりです。
<分析対象範囲>
事業セグメント | 食品 | 医薬品 |
財務インパクト算出範囲 | 当社グループ全体 | |
対象原材料 | 主要原材料[乳、カカオ豆、パーム油、砂糖、木材(紙)、鶏卵] | |
分析基準年 | 現状、2030年(中期)、2050年(長期) |
<1.5℃シナリオ(移行リスク)における当社グループへの影響>
気候変動に関わる変化 | 主要インパクトと具体的な影響 | 当社グループへの影響 | ||
関係するサプライチェーン | 影響額(億円) | |||
2030年 | 2050年 | |||
政府の環境規制の強化 | カーボンプライシング負担額の増加 | 製造 | 37 | 80 |
調達 物流 | 201 | 277 | ||
再生可能エネルギー普及に向けた電力設備投資の拡大 | 電力購入金額の増加 | 製造 | 20 | 28 |
<4℃シナリオ(物理的リスク)における当社グループへの影響>
気候変動に関わる変化 | 主要インパクトと具体的な影響 | 当社グループへの影響 | ||
関係するサプライチェーン | 影響額 | |||
2030年 | 2050年 | |||
台風・豪雨などの激甚化や発生頻度増加 | 洪水被害による機会損失 | 製造 物流 | 1拠点あたり約3億円 | |
気温上昇や水リスクなどによる原材料の生育環境変化 | 原材料調達コストの増加 | 調達 | - | - |
□ 主要インパクトと具体的影響
<1.5℃シナリオ>
・カーボンプライシング導入による影響額(自社)
2030年は、省エネ活動、創エネ活動、再エネ由来電力の購入などで14億円の削減を図り、37億円のコスト増加を想定しています。2050年は、新たな技術や次世代エネルギーの積極的導入など移行計画(トランジションプラン)に沿った対応策の強化により19億円を削減するものの、現在の技術では2050年にCO₂排出量ゼロが見込めないため、排出量実質ゼロに向けて40億円の排出権購入が必要となり、80億円のコスト増加を想定しています。
単位:億円
取り組み内容 | 2030年 | 2050年 |
対応策未実施のカーボンプライシング負担額 | 51 | 59 |
対応策によるカーボンプライシング削減額 | ▲14 | ▲19 |
CO₂排出量ゼロに向けた排出権購入金額 | - | 40 |
合 計 | 37 | 80 |
※1.5℃シナリオにおけるカーボンプライシング導入による影響額については、国際エネルギー機関(IEA)のWorld Energy Outlook (WEO) 2021で公表されているNZEシナリオのカーボンプライス(2030年、2050年)を基に算出しています。
・電力購入金額による影響額(自社)
2030年は、省エネ活動、創エネ活動などで17億円の削減を図りますが、再エネ由来電力のプレミアム価格によるコスト増加があり、20億円のコスト増加を想定しています。2050年は、同様に28億円のコスト増加を想定しています。
単位:億円
取り組み内容 | 2030年 | 2050年 |
電力単価上昇に伴う増加額 | 30 | 88 |
省エネ活動、創エネ活動等による削減額 | ▲17 | ▲71 |
再エネ由来電力購入に伴う増加額 | 7 | 11 |
合 計 | 20 | 28 |
なお、現在実施している省エネ活動、創エネ活動、再エネ由来電力の購入などに加え、新たな技術や次世代エネルギーの積極的な導入などを織り込んだ移行計画(トランジションプラン)を策定しました。また、2021年度よりインターナルカーボンプライシング制度(1t-CO₂当たり5,000円)を導入することで、カーボンプライシング本格導入後の円滑な対応に向けた準備も進めております。
※1.5℃シナリオにおける電力購入金額による影響額は、公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)とIEA WEO2018のSDSシナリオの情報を基に算出しています。
自社における移行計画(トランジションプラン)の概要は以下のとおりです。
※Scope1 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
対応策については、当社工場等に太陽光発電設備や省エネ設備の導入をはじめ、RE100対応の再生可能エネルギー由来電力の購入等、様々な取り組みを行っています。移行計画を基に各取り組みを推進し、その結果、2022年度において、総使用電力に占める再生可能エネルギー比率が9.5%となりました。
引き続き、2050年の100%達成を目指して取り組みを推進していきます。
・カーボンプライシング導入による影響額(主要原材料)
主要原材料を調達する各国のカーボンプライスを基にした2030年の影響額は、以下の対応策の実施により201億円の増加を想定しています。2050年は同様に277億円の増加を想定しています。
※1.5℃シナリオにおけるカーボンプライシング導入による影響額については、IEAのWEO2021で公表されているNZEシナリオのカーボンプライス(2030年、2050年)を基に算出しています。
なお、主要原材料におけるCO₂排出量については、CO₂だけでなく酪農業由来のメタンなど温室効果ガス(GHG)全般での排出量削減が重要な課題と捉えています。
GHG排出量削減に向けて、酪農を中心としたScope3における移行計画を策定しました。
GHG排出量削減を効果的に行うために、ライフサイクルにおけるGHG排出量の多いプロセスを特定すべく、はじめに、牛乳のカーボンフットプリント(CFP)を算定し、次にそのプロセスでの排出量削減策を策定し取り組みを開始しました。さらに、その他の原材料における対応策も検討すると同時に、GHG排出量削減に向けたサプライヤーとのエンゲージメントを実施することで、サプライヤーの排出量削減、ひいてはサプライチェーン全体の排出量削減を促進していきます。
サプライチェーン(Scope3)における移行計画(トランジションプラン)の概要は以下のとおりです。
図中の1~4については、以下に対応策詳細を記載しております。
※Scope3 Scope1,2以外のCO₂間接排出(購入した原料・包材等の生産・製造・輸送から、それらを加工した製品の販売・輸送・使用・廃棄に至るまでの企業活動におけるサプライチェーン上で発生するCO₂排出)のこと。
対応策1 牛乳のカーボンフットプリント(CFP)の算定
はじめに、牛乳の算定式を確立する為、数軒の酪農家から収集した実データなどに基づき、「明治オーガニック牛乳」のライフサイクル全体(原料調達~製造~消費・廃棄)におけるGHG排出量を算定しました。その結果、上流部分が90%以上を占めることが分かりましたので、生産者やサプライヤーとともに排出量削減に取り組みます。
対応策2 糞尿由来のN₂O削減のビジネスモデル構築
酪農家、味の素株式会社、当社グループの3者が中心となり、ビジネスモデルを構築しました。
味の素株式会社製品の「AjiPro®-L」を使用し、飼料中のアミノ酸バランスを改善することで乳量を維持しつつ、飼料中の余剰な窒素を抑え、糞尿由来のN₂O排出量を削減することができます。削減されたN₂Oは、酪農家と味の素株式会社がJ-クレジット制度を活用してクレジット化し、そのクレジットを当社が購入することで酪農家を経済的に支援するモデルとなります。
対応策3 容器包装材料の使用量削減
容器包装材料の主たる原料である石油由来のプラスチックを削減することはGHG排出量の削減にもつながります。包装容器は「3R+Renewable」による、より環境に配慮した取り組みを推進します。
具体的な取り組みは以下の通りとなります。
商品名 | 容器 | 対応策 |
明治ブルガリアヨーグルトLB81低糖 | カップ | 軽量化(Reduce) |
明治ザバスシリーズ | カップ | 軽量化(Reduce)・バイオマスプラスチック配合(Renewable) |
キャップ・スプーン | バイオマスプラスチック配合(Renewable) | |
明治おいしい牛乳 | キャップ他 | バイオマスプラスチック使用(Renewable) |
明治5つ星習慣 | ボトル | 再生PET使用(Renewable) |
※3R:Reduce(発生抑制)、Reuse(再使用)、Recycle(再生利用)
プラスチック使用量推移、目標
年度 | 2017年度 (基準) | 2019年度 (実績) | 2020年度 (実績) | 2021年度 (実績) | 2030年度 (目標) |
実績(t) | 30,807 | 27,777 | 27,265 | 25,878 | 23,107 |
削減(t) | - | 3,030 | 3,542 | 4,929 | 7,700 |
削減量(%) | - | 9.8 | 11.5 | 16.0 | 25.0 |
対応策4 サプライヤーエンゲージメントの実施
サプライヤーにおけるCO₂排出量削減は、当社のScope3の削減でもあります。
したがって、CO₂排出量の多いサプライヤーとエンゲージメントを行い、目標値や取り組み事例を共有していくことで排出量削減の推進を図っていきます。
<4℃シナリオ>
・洪水被害による操業停止などの機会損失
洪水による被害額は、過去の事例を基に1災害あたり3億円規模を想定しております。この金額は、当社グループにおける過去の洪水を伴う大雨によって発生した被害(物流網遮断などによる廃棄ロスなど)実績より
算出しております。また、洪水により機会損失が想定される拠点は、世界資源研究所(WRI:World Resources Institute)が公開している世界の水リスク評価ツールである「Aqueduct」の結果や代替生産拠点の有無を考慮し、12拠点と想定しております。
※洪水リスクについては、Aqueduct Floodsの悲観(pessimistic)シナリオ(RCP8.5, SSP3)の情報を基に分析しています。
洪水リスクへの対応策
・リスクの高い拠点において、現地と連携しリスク評価結果のGAP分析による実態の把握
・特に優先度の高い事業所への詳細調査及び浸水エリアや浸水深を想定したハード面での対策の検討、実施
対策例:ボックスウォール(仮設止水版)や防水壁の設置
・主要原材料調達への影響
原材料の生産地においても、気候変動による気温上昇や水リスクによって農作物の収量減少に伴う原材料単価の変化が起こることが想定されます。主要原材料の生産地における収量変化や水リスク(水の需給バランスの悪化を意味する水ストレス、渇水リスク、洪水リスク)の分析を実施し、その結果の概要は以下のとおりです。
~想定される収量変化~
・カカオ豆や砂糖の調達国では、将来的に収量が減少すると予測しています。
・一方で、当社グループのカカオ豆の主要調達地域では、2030年での影響が比較的小さく、2050年においても同様です。
・乳への影響は、2030年、2050年においても数%の減少に留まり、飼料の配合変更などによる生産性向上での対応が可能であり、リスクはそれほど大きくないと想定しております。
~想定される水リスク~
・水ストレスと渇水リスクは、一部の地域を除いてほとんどの地域でリスクが低いと想定しております。
・洪水リスクは、将来的にほとんどの地域でリスクが高くなると想定されるため、夫々の生産地の洪水リスクを確認した上で、改善策の検討が必要であると考えております。
※4℃シナリオにおける主要原材料調達への影響について、FAOの公表しているGAEZv4データベース(RCP8.5)や文献調査の将来収量予測情報を基に算出しています。
なお、原材料として調達する農作物は気候変動のみならず、自然資本・生物多様性の保全と密接に関係しています。自然関連財務情報の開示フレームワーク(TNFD)のLEAPアプローチを活用し、当社グループの重要原材料であるカカオ豆の自然への依存度を分析しました。
~カカオ豆生産地での自然関連リスク分析~
・カカオ豆の生産活動は、自然への依存度が高いため、主要なカカオ豆生産拠点(13ヵ所)における依存状況を把握するための調査を行いました。その結果、「自然災害の影響緩和」「土壌侵食の抑制」という項目について、特に依存度が高いということが分かり、加えてその2つの重要項目についてリスクとなる生産拠点を洗い出しました。今後は生産地でのGAP分析等を行う中で収量減少の回避に向けた取り組みを推進してまいります。
・自然災害の影響緩和へのリスクが非常に高い拠点数:2ヵ所
・土壌浸食の抑制へのリスクが非常に高い拠点数 :2ヵ所
このような影響によって、主要原材料の調達コストは増加することを想定しており、以下の取り組みによりコストの抑制と増収によるコストの吸収を図っていきます。
・商品面での対応
◇健康価値・栄養価値の強化、サステナビリティによる社会価値創出などによる商品の高付加価値化の推進
◇商品戦略見直しによるポートフォリオの最適化
◇価格改定による単価アップ
・原材料面での対応
◇配合変更や代替原料の使用
◇調達国/地域/サプライヤーの最適化
・生産・物流面での対応
◇効率的生産による生産性向上、購買物流の効率化
・サプライヤーとの連携
◇エンゲージメント強化による調達コストダウンとリスク低減
□ 機会への対応
気候変動における機会は、気候変動の直接的影響が社会や生活に変化をもたらし、その結果新たなニーズや機会創出につながると考えております。当社グループでは、現在の事業基盤を活かし、新たな資源を取り入れることで以下のような機会獲得の可能性を想定しております。
なお、機会を抽出するまでのプロセスは次の通りです。
・グループTCFD会議の事務局メンバーが、機会検討に関係する組織に個別にヒアリングを実施。
・グループTCFD会議にて、「機会の方向性」を審議。
・既存事業との関係(距離感)や、現状の自社アセットでの対応の可否、実現可能性等の観点から定性的に
整理。
・機会獲得のポイントを実現可能性の高いものに絞り込み、事業機会を抽出。
今後、当社グループ全体で夫々の実現可能性を探り、実現に向けて具体的な取り組みを推進してまいります。
気候変動の直接的影響 | 気候変動の社会や生活への影響 |
・平均気温の上昇 ・災害の激甚化 ・降水パターンの変化 ・生物多様性毀損 ・農産物の収量減少 ・海面の上昇 ・永久凍土の溶解 など | ・気温上昇での生活様式変化(外出・移動自粛、巣ごもり、止渇・熱中症など) ・食品・エネルギー価格の上昇、生産者の支出の変化 ・GHG排出規制の強化や水リスク(渇水、水質悪化)顕在化 ・環境負荷を低減させる生活の推進(ロスや廃棄削減、省エネ、エシカル消費など) ・医療ひっ迫の恒久化や感染症予防意識の高まり ・災害対策の意識の高まり ・開発途上国の栄養不足深刻化 |
機会獲得のポイント | 高まることが想定されるニーズ | 当社グループにおける事業機会 |
生活様式の変化による巣ごもりなどへの対応 | ・気温上昇による止渇、熱中症対策 ・家庭内で生活を完結できる商品や仕組み ・栄養バランスの改善による健康維持 | ・暑さ対策商品の拡大 ・宅配ビジネスの拡大 ・カスタマイズ型栄養支援ビジネス |
環境意識の高まりへの対応 | ・環境負荷の小さい商品 (植物由来、細胞培養、循環型農業など) ・廃棄ロスやエネルギー使用を低減した商 品や生活様式 ・原材料の持続可能な調達 | ・環境負荷低減型商品の拡大 ・環境配慮、支援型ビジネス ・持続可能な原料活用商品の拡大 |
新興・再興感染症への対応 | ・感染症予防のための行動の習慣化 (うがい、手洗いの励行、マスク着用、免 疫力強化など) ・感染症に対するセルフメディケーション ・開発途上国における感染症対策 | ・グローバルでの感染症薬、免疫力 強化商品の拡大 ・自然免疫、獲得免疫、治療薬など 感染症トータルケアビジネス ・開発途上国、原料生産国への感染症 対策商品の提供や支援 |
さらにこの9つの事業機会を、現在、既に手掛けているものから、中長期的に仕掛けていくものへと時間軸で優先順位付けを行いました。
③ 指標と目標(進捗状況含む)
当社グループでは、「明治グループサステナビリティ2026ビジョン」や明治グループ長期環境ビジョン「Meiji Green Engagement for 2050」を策定し、マテリアリティとKPIを設定しています。気候変動に関わるリスク・機会への対応は、環境負荷低減活動の他、原材料調達など多岐にわたるため、以下KPIを設定し、進捗管理をしております。各KPIの進捗状況を定期的にチェックし、達成に向けて計画的に取り組むとともに、その結果は、明治ROESG®指標の一部として評価され役員報酬に反映されます。
<気候変動によるリスクと機会に関係するKPI>
主要 インパクト | 項目 | KPI | ||
サステナビリティ 2026ビジョン | 長期環境ビジョン | 2022年度進捗 | ||
カーボンプライシングの導入 | CO₂排出量 | 2030年度までに自社拠点での CO₂総排出量(Scope1、2)を50%以上削減、Scope3を30%以上削減(2019年度比) | 2050年までにサプライチェーン全体でCO₂などの温室効果ガス排出量を実質ゼロに | Scope1、2: 14.7% Scope3:7.0% ※1、2 |
再生可能エネルギー使用量 | 2030年度までに自社拠点における総使用電力量に占める再生可能エネルギー比率を50%以上へ拡大 | 2050年までに自社拠点における総使用電力量に占める再生可能エネルギー比率100%を達成 | 9.5% | |
プラスチック 使用量 | 2030年度までに国内の容器包装などのプラスチック使用量を25%以上削減(2017年度比) | 再生資材などを活用し容器包装に使用する新たな自然資本を最小化 | 16.0% ※1、3 | |
水調達リスク | 水使用量 | 2030年度までに自社拠点での水使用量の売上高原単位を15%以上削減(2020年度比) | 2050年までに自社拠点での水使用量の売上高原単位を2020年度比で半減 | 13.3% ※1 |
主要原材料の持続可能な調達 | カカオ豆 | 2026年度までにサステナブルカカオ豆の調達比率を100%へ | - | 62.6% |
パーム油 | 2023年度までにRSPO認証パーム油への100%代替 | - | 90.4% | |
木材(紙) | 2023年度までに環境配慮紙への100%代替 | - | 98.2% | |
生乳 | 酪農家の経営に関する支援活動Meiji Dairy Advisory(MDA)を年間400回以上実施、及び2023年度までに累計2,150回以上実施 | - | 477回/年 累計1,900回 |
※1 進捗については、基準年度からの削減率(%)を記載しています。なお、算出値については第三者保証取得前の数値であるため、変更の可能性があります。
※2 Scope3はScope1、Scope2以外の間接排出で、バリューチェーンからのCO₂排出量です。
※3 プラスチック使用量削減値については、2021年度実績を記載しています。
(4)明治グループにおける人的資本への取組
人財は、明治グループの価値創造を支えるきわめて重要な資本です。従業員の多様性を尊重し、一人一人の能力を最大限に発揮させることが明治グループの持続的な成長につながるという考えのもと、経営戦略に則し、戦略的な投資を行っています。これまでの「内部公平性」を重視した社内競争環境での均質・同質化を脱却し、「多様性」を強く意識した人財の活躍推進により、外部競争力の獲得・向上に努めてまいります。
① ガバナンス及びリスク管理
1) ガバナンス
グループ全体の人財戦略の推進にあたっては、経営会議の諮問機関として、当社代表取締役 社長 CEOが委員長を務める「グループ人財委員会」を年に2回開催し、その内容については取締役会に報告しています。2022年度は、「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)」「健康経営」「人財開発」をテーマに掲げ、それぞれ分科会を設置し、グループ横断での取り組みを推進しました。2023年4月にはグループ全体の人財戦略の推進責任者としてCHRO(Chief Human Resource Officer)を設置するとともに、グループ人財委員会の重要テーマに「労働安全」を加え、分科会を設置しました。
2) リスク管理
経営戦略に則した人財戦略の推進にあたって、人財・組織風土の課題は企業活動に重大な影響を及ぼす経営リスクの一つであると認識しています。外部環境の変化を見据えた人財・組織風土の課題について、グループ人財委員会にて議論を重ね、グループ全体の経営リスクを所管するリスクマネジメント部とも連携し、以下の3点をリスクとして特定・管理しております。
ⅰ 企業成長に必要な人財獲得および能力開発
・経営人財・事業マネジメント人財・高度人財等の獲得・育成ができないリスク
・D&Iが推進されないことによる採用力低下、お客さま目線での事業推進力低下のリスク
ⅱ 業務環境による生産性への影響
・労働環境・安全衛生の対応不足による生産性低下、離職者増加のリスク
・従業員の適切な健康課題の把握・改善に向けたアプローチ不足による休職者増加のリスク
・時代に合わせた働く環境(職場・IT等)整備の遅延によるクリエイティビティ停滞のリスク
ⅲ 従業員エンゲージメント
・経営計画や組織目標の理解・浸透不足や階層・部署を跨いだコミュニケーション不足による組織力低下のリスク
・会社への共感度低下による離職者増加のリスク
上記リスクについては、顕在化している事例を検証するとともに対応策を検討し、人事部門を中心に関連部署と連携して、リスク低減に努めています。
② 戦略
1) 人財育成方針
明治グループの持続的な成長に向け、戦略を立案・遂行する高い能力を有する人財への投資を強化しています。一人一人の持つ知識・スキル・能力を強化し、その力を職務で最大限発揮できるよう取り組んでいます。
<明治グループ能力開発方針>
明治グループ2026ビジョンの「目指す企業グループ像」を実現するために、明治グループが求める資質や能力を持つ人財を育成するべく、「明治グループ能力開発方針」を定めています。
<能力開発体系>
「明治グループ能力開発方針」に基づき、従業員一人一人の成長とキャリア開発を図る能力開発体系を整えています。
2022年度研修受講実績 ※㈱明治・Meiji Seika ファルマ㈱・KMバイオロジクス㈱
研修 | 目的 | 対象 | 受講人数 | 平均受講時間 | 平均受講費用 |
階層別研修 | それぞれのステージごとに必要なスキルの習得 ・部下/後進を育成する力の強化 ・チーム/組織の活力を引き出すマネジメント能力の向上 ・次世代/経営リーダーを目指す自己革新意識の醸成 | 管理職 | 806 | 10.1 | 23.9 |
一般社員 | 1,259 | 25.3 | 49.1 | ||
グローバル研修 | ・世界をフィールドに成果を出せるグローバル人財育成 ・多様な人財が活躍できる風土の醸成 | 管理職 | 704 | 6.6 | 21.5 |
一般社員 | 705 | 2.7 | 25.5 | ||
次世代リーダー育成 | ・広い視野と高い視座をもった人財の育成 ・戦略的思考、判断力、決断力、発信力の習得 | 管理職 | 43 | 39.4 | 691.6 |
一般社員 | 38 | 40.5 | 244.3 | ||
部門別・グループ会社研修 | ・業務上必要となるビジネススキルの習得 ・従業員の「学びの自律」の促進、自律型人財の育成 | 全階層 | 23,501 | 11.8 | 6.3 |
<グループ経営人財の育成>
明治グループ2026ビジョンの実現とその先の成長を見据えて、特にグループ横断的な経営人財の育成に注力しています。各事業における戦略遂行のための知識・スキル・能力だけでなく、グループ経営戦略の策定・推進に欠かせない視座・視野・視点を備える「変革・戦略人財」を中心とした人財を計画的に発掘・育成するべく、2021年度よりグループ経営人財育成プログラムを始動しました。執行役員および上級部長の選抜メンバーを対象に、CEOを座長に据えた開発プログラムを通して、ビジョン実現を強力にリードする明治グループ経営陣に求める人財像(リーダーシップバリュー)に沿ったコンピテンシー・能力の開発を行っています。
2) 社内環境整備方針
ⅰ D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)
明治グループ2026ビジョンの実現に向けてD&I推進を加速する考え方として、「明治グループ ダイバーシティ&インクルージョンポリシー」を制定しています。性別、性的指向・性自認、キャリア、年齢、国籍、障がい、雇用形態、育児・介護中など多様な背景を持つ従業員が、一人一人の能力を最大限に発揮し、さまざま職場で活躍するとともに、多様な価値観を活かし合い、イノベーションや新たな価値を創出することで、持続的な企業成長を実現します。
また2022年度に開催したグループ人財委員会では、目指すべき「D&Iが実現した姿」と「中長期数値目標」を定め、目標に掲げる重点属性(女性・キャリア採用者・グローバル人財)への取り組みを強化しています。
<女性>
D&Iの第一歩としての女性活躍推進については、トップのコミットメントのもと、以下の3本柱で取り組みを行っています。リーダーシップパイプラインの構築においては、2023年3月の国際女性デーに合わせて第1回グループ合同女性管理職ネットワーク交流会を開催し、女性役員や部長によるパネルディスカッションや座談会を行い、上級管理職への視座醸成・管理職パイプラインの構築につながる取り組みとなりました。また、育児期社員の活躍支援と上司マネジメントにおいては、育児期社員とその上司に対して研修を実施し、育児期社員については「周囲を巻き込む伝え方」、上司については「個別マネジメントと活躍支援の重要性」を学んだ上で、育児期社員と上司合同の他者理解ワークを実施しました。今後も性別や制約の有無に関わらず、従業員一人一人があらゆる職務・階層で能力を発揮し、活躍できる環境づくりを行います。
<キャリア採用者>
幅広い知見や新たな視点を取り入れ、一歩先を行く価値を創造するために、新卒採用に加え、他社でキャリアを積んだ人財のキャリア採用にも積極的に取り組んでいます。また、一度退職した従業員の再就職を可能とする「カムバック制度」を導入しています。明治グループで得たノウハウや知見を有し、退職後に多様な経験や知識を培った退職者の再雇用を通じて、社内のさらなる活性化や、新たな価値創出を図ります。
<グローバル人財>
グローバルな視点を意思決定に反映させ、世界で成長し続ける明治グループとなるために、グローバル人財の採用と育成を強化しています。採用については、中核人財におけるグローバル人財の採用比率目標を設定し、取り組みを進めています。また、グローバル人財の育成においては、現在、語学研修・eラーニング・海外派遣などの研修プログラムを実施しており、今後更なる拡充の検討を進めています。
<柔軟な働き方の促進>
多様な背景を持つ従業員が、ワークライフバランスを実現して能力を最大限発揮できるよう、在宅勤務制度やフレックスタイム制度等を導入し、柔軟な働き方を促進しています。また、乳幼児向けミルク・ワクチンを扱う会社としての自覚の下、企業価値向上を見据え、男性従業員の育児休業取得を支援しています。
ⅱ 健康経営
グループスローガン「健康にアイデアを」を体現する企業グループとして、成長し続ける原動力は、従業員の“こころとからだの健康”であるとの考えのもと、従業員の健康の維持・増進に戦略的に投資をし、生産性の最大化・組織活性化を図っています。「明治グループ健康経営宣言」のもと、健康経営投資から施策の効果までのつながりを明らかにした「健康経営戦略マップ」を策定し、運用しています。
これからの取り組みが評価され、当社は2023年に初めて、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「健康経営銘柄」に選ばれました。なお、「健康経営優良法人」には7年連続で認定されています。
<健康経営戦略マップ>
2022年度に実施した具体的な取り組み
・個人やチームで健康目標を宣言し、継続的に活動に取り組む「Kenko My Boom宣言」
・朝食習慣の重要さを学ぶ「朝食改革セミナー」の全国事業所での実施
・(株)明治の契約するスポーツ選手とトレーニングをする「トレーニングチャレンジ」
・ウォーキングキャンペーン
・卒煙を呼び掛けるトップメッセージポスターの掲示
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