日華化学 【東証スタンダード:4463】「化学」 へ投稿
企業概要
当社グループは、持続的な成長と技術革新の実現をめざし、研究開発活動に注力しております。
当連結会計年度は、中長期重点領域である「EHD(E/環境、H/健康・衛生、D/先端材料)」領域における研究開発活動に注力し、全世界の共通課題であるSDGsの達成に向け、引き続きデジタルツールの積極的な導入・活用によるデータ駆動型研究開発活動の推進と、当社グループの研究開発中核拠点である「NICCA イノベーションセンター」(以下「NIC」)における当社の技術力を活かした各分野でのオープンイノベーションを推進することで、ビジネスパートナーとの距離を縮め、社内外の情報やアイデアを組み合わせることで、新しい製品と事業の創出に取り組んでまいりました。
さらに、化学品事業の界面科学研究所と化粧品事業の毛髪科学研究所が一体となり、日華化学(中国)有限公司の研究開発部門、台湾日華化学工業股份有限公司の先端研発センター、NICCA KOREA CO.,LTD. の付設研究所、PT. INDONESIA NIKKA CHEMICALSの研究開発部門など、海外子会社の研究開発部門と連携しながら相乗効果を発揮することで、既存事業の強化と新展開、新規事業の創生を進めております。
当連結会計年度における新規の特許登録件数は、国内で24件、海外で12件となりました。特許の期間満了及び不要特許の整理を実施したため、当連結会計年度末において当社の特許保有件数は、国内で8件減少により211件となり、海外で6件増加により111件となりました。
当連結会計年度の各セグメント別研究開発活動の状況は、次のとおりです。
研究開発費については、当社グループの研究開発費を各セグメントに配分したもので、当連結会計年度の総額は2,296百万円であります。
(1)化学品事業
当連結会計年度における研究開発費は、1,980百万円となっております。
①Eの領域
当連結会計年度では、EHD領域の中でも特に、これまでも先駆的な環境対応型製品開発を行ってきたE領域での開発に傾注した結果、主力の繊維加工用薬剤では染色工場での使用水量を激減させるなどの環境対応処方を提案するSDP(Smart Dyeing Process)や、自然乾燥でも撥水性が回復するこれまでの常識を覆すフッ素フリー系撥水剤、自然由来原料やバイオ系原料、再生原料を積極活用した低カーボンフットプリントの分散均染剤等を開発致しました。また、有機溶剤を含まず環境と健康により優しい水系ウレタン樹脂については、高機能化と軽量化の実現が必要な次世代モビリティ用途に加え、意匠性を付与する機能性塗料・コーティング用バインダーとしての応用開発を継続して行っており、自動車内装材への採用が始まりました。循環経済実現に向けて要望が高まっている素材のリサイクル性向上においては、素材のモノマテリアル化検討や使用済みフイルムをリサイクルするための剥離剤について顧客での評価が進展致しました。
また、オープンイノベーションの取組みをBtoB企業からBtoC企業に広げ、抗ピリング・抗スナッグ・防汚加工を施したニトリ社・帝人フロンティア社との3社共同開発家具「Nシールドファブリック」シリーズへの採用、ポリエステル繊維から分散染料を脱色するネオクロマト加工の技術をアートネイチャー社の人工毛髪「レクアファントム」に応用展開するなど、新たなビジネスモデル展開に先鞭をつけました。今後も益々要望が高まる環境対応に向け、カーボンフットプリントやウォーターフットプリント低減を意識した、非石油ベース・天然由来原料等を活用した製品そのものの環境対応を継続して推進すると共に、CO₂排出量削減に貢献する製品ならびにソリューション開発に注力し、持続可能な社会と循環型経済の実現に寄与してまいります。
②Hの領域
新領域開拓において、医科用洗浄機向け薬剤や医療現場向け環境除菌剤の開発が進展し、AHP(加速化過酸化水素)系環境除菌剤「リフレシアSH-01」及び医薬品製造ライン用洗浄剤の新製品を上市致しました。核酸医薬用途での検討が進む人工核酸については、既存品の安定供給に加え、新グレードの開発を実施し、体外診断薬キット開発では、複数の医工系大学との連携強化による開発を継続しております。引き続き世界中の人々の健康と豊かな暮らしの実現に貢献してまいります。
③Dの領域
半導体、次世代通信端末、ディスプレイに関する新規デバイスおよび材料を中心に研究開発を実施しております。子会社の大智化学産業との連携強化により、環境にやさしい水系でリサイクル可能なセラミックス加工用薬剤のグローバル開発が進みました。DX・5G通信分野では、フィルムコンデンサー向けマスキングオイル、精密潤滑用途を中心に製品の工程改善を進め、品質向上と安定供給を実現しました。また、高周波領域での低誘電損失が特徴のフッ素化学品の開発につきましても、多様な開発品をお客様に提供することにより、多用途での取り組みが進展致しました。引き続き、高度化する機能要求に対応できる特殊樹脂原料、特殊ポリマー、接着剤並びにコーディング剤の開発を実施し、IoTやAIなど最新技術の活用がますます進行するスマート社会の進展に寄与してまいります。
研究開発体制は、日本、中国・台湾、韓国、インドネシアの5つの拠点を中心に約250名の研究人員を擁しており、研究基幹システムの整備によりグループにおける研究開発の効率化を進めています。研究開発効率化と技術継承の点から電子実験ノートを国内で先行導入し、国内留学とe-learningを活用した社内教育プログラムの実施により、データ駆動型研究開発推進に不可欠なデジタル人材の育成を推進しております。また、技術継承の点においては、過去から現在までに実施してきた技術開発の棚卸しを行い、当社技術の整理による新規事業創出の基盤整備を行いました。
今後もDXロードマップに基づくデータサイエンス関連強化と教育拡充による効率的な研究開発を担う人材開発を進めると共に、更なる研究・実験作業のスピードアップと省力化を目的としたロボティクス導入と積極的なデジタル活用を推進、北欧・アジア等の研究機関や大学とのオープンイノベーションによる開発品投入と新規事業創出の早期化を進め、社会課題の解決に寄与してまいります。
(2)化粧品事業
当連結会計年度における研究開発費は316百万円となっております。
美容業界は、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類へ移行したことを受け、経済の回復や外出機会の増加が進み、個人消費やインバウンド消費に緩やかな回復が見える一方で、物価上昇に伴う節約志向の高まりなど先行き不透明な状況が続いています。このような市場環境のもと業界が一体となって、美容室における来店頻度の向上、スタッフの生産性アップのための高付加価値メニュー創出と店頭販売商品の推進にデジタルを取り入れながら取り組んでおります。
国内においては、デザインカラーの人気が継続している一方で、繰り返しによる髪のダメージが増加し、ケアニーズが高まっています。また、大人世代の髪が細くなる、薄くなる、白髪が増えるなどの悩みは変わらず増加しており、安全、安心に対する意識の高まりも相まって、高付加価値の店頭販売商品の市場は伸び続けております。
このような状況に対応すべく、当社の毛髪科学研究所は、ヘアケア、スカルプケアの店頭販売商品開発及び美容室におけるヘアカラーの高付加価値商品開発にさらに注力しております。
スカルプケア分野において、国内有数の研究機関との共同研究で発見した毛根活性成分を配合したスカルプケアブランド「DEMI DO」及びメンズニーズに対応した「DEMI DO MEN」を発売致しました。お客様ひとりひとりの地肌と髪のパフォーマンスを最大限に引き出し、付加価値をさらに高めるスカルプケア商品の開発に引き続き取り組んでおります。
また、ヘアカラー分野においては、ハイトーンカラーやデザインカラーなどヘアカラーニーズが多様化しており、そのニーズに対応するべく主力ブランド「アソート アリアC」をフルリニューアルし、「トイロクション」を発売致しました。彩度の高い力強い色味から透明感のある色味まで幅広く色を表現することが可能で、水鳥ケラチンを配合することで、髪のダメージホールを整えながらカラーリングをすることが可能となり、ダメージに左右されない発色を実現しています。また、従来よりも生産時間を8.4%短縮し、CO₂の削減にも寄与しております。お客様のニーズに対応すべく付加価値の高いヘアカラー開発に引き続き取り組んでおります。
基礎研究においては、「すべての人に10代の髪を生やす」という長期ビジョンを掲げ、研究機関や大学との共同研究による毛髪と皮膚・頭皮の微細構造の解析、毛髪と皮膚のダメージの解析並びに植物抽出成分、天然成分による新たな機能性探究を進めるとともに、新規市場創造のための素材開発、用途開発に取り組んでおります。また、サステナブルな社会を実現するために、さらに環境にやさしい製品開発に取り組んでおります。
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