日東紡績 【東証プライム:3110】「ガラス・土石製品」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、『日東紡グループは「健康・快適な生活文化を創造する」企業集団として社会的存在価値を高め、豊かな社会の実現に貢献し続けます。』との経営理念に基づいて、時代の要請に即応し、社会の役に立つ新しい価値を創造し提供し続けることで、株主・投資家・行政・地域社会等すべてのステークホルダーと共に喜びを分かち合い、企業価値を高めていくことを目指しております。
(2) 経営環境
当連結会計年度における世界経済は、欧米でのインフレ長期化や中国での景気減速、地政学的リスクの高まりなどにより、不安定な状態が継続しました。わが国経済は、社会経済活動正常化などにより緩やかに回復した一方、原材料価格の高騰による物価上昇などにより、先行き不透明な状況は継続しました。
このような環境の下、当社グループは2030年にありたい姿『Big VISION 2030』を長期ビジョンとして再定義し、その実現に向けて2021年4月から3年間の中期経営計画(2021~2023年度)を実行しました。
2024年3月期は、グラスファイバー事業において汎用品は低迷したものの、高付加価値品であるスペシャルガラスの販売は回復基調が継続しました。
セグメントごとの事業環境は以下のとおりです。
グラスファイバー事業 [原繊材事業、機能材事業、設備材事業]
当社は、1938年に日本で初めてグラスファイバーの工業化に成功して以来、業界のリーディングカンパニーとして、グラスファイバーの可能性を追求してまいりました。グラスファイバーを製造する原繊工程と、グラスファイバー加工工程の双方を備え、組成開発、原繊製造、クロス加工、複合材料開発に至る一貫した生産・開発体制を保有しております。当社独自の技術を活用した商品群を展開し、高付加価値品分野でのリーダーとして地位を築いております。
原繊材事業
原繊材事業においては、電子材料用途で、世界で最も細い水準にある極細ヤーンや、低誘電特性あるいは低熱膨張特性を備えた特殊な機能を持つスペシャルガラス・ヤーンを製造できる独自技術を保有しております。また、複合材用途においては、独自技術によりグラスファイバーの断面を通常の円形でなく長円形にすることで成型品の反り・ねじれを抑えるフラット・ファイバーを展開しています。
当社はこれらの独自技術により高い競争力を有しておりますが、今後、国内外の企業の技術的キャッチアップも想定されるため、研究開発体制の一層の強化と高付加価値製品の製造能力向上を行ってまいります。
当連結会計年度においては、電子材料向けスペシャルガラス・ヤーンの販売が好調に推移したものの、強化プラスチック用途の複合材及び、電子材料向け汎用ヤーンの販売が低調であったことなどが利益の押し下げ要因となりました。
機能材事業
機能材事業では電子材料用途のガラスクロスを展開しています。ガラスクロスは絶縁性・耐熱性・寸法安定性に優れ、電子基板の基材として利用されており、当社の極薄ガラスクロスはその薄さと均一な繊維分布により、電子機器の小型・高機能化に寄与しています。また、当社独自の組成によるスペシャルガラス・クロスは、高速大容量通信に求められる低誘電率、低誘電正接、低熱膨張等の特性を持ち、データセンターや携帯基地局の高周波部材、サーバーやスマートフォンなどの半導体パッケージ基板に使用されています。
当連結会計年度においては、AIサーバー向けの旺盛な需要の継続により、低誘電特性を持つスペシャルガラスの販売が伸長するとともに、半導体パッケージ基板向けのスペシャルガラスの販売が回復傾向となり、収益に貢献しました。
設備材事業
設備材事業では産業資材用途グラスファイバー製品とグラスウール製品を展開しています。産業資材用途グラスファイバーは、当社の技術力が評価され大型建造物用の膜材から自動車用の制振材まで幅広い用途で採用されております。取引先が多岐にわたるため個別業界の市況変動が分散され安定的な収益計上が見込める一方で、他素材との競合もあり競争環境は厳しい状況にあります。
グラスウールは、その高い断熱性能により住宅・ビルなどの断熱材として使用されて省エネルギーに貢献するとともに、空き瓶や使用済みの窓ガラス等のリサイクルガラスを原料としているため資源の再利用にも貢献しています。当社グループはグラスウールを1949年に日本で初めて製造を開始し、現在も断熱材のパイオニアとして独自技術を保有しております。グラスウールの細繊維化を進めて断熱性能を向上させることで、環境負荷の低減に貢献しています。また、ノンホルムアルデヒドのグラスウールを開発し、安全・快適な生活の実現に寄与しています。
当連結会計年度においては、断熱材及び設備・建設資材向けガラスクロスの堅調な販売が収益に貢献しました。
ライフサイエンス事業
ライフサイエンス事業では体外診断用医薬品及びスペシャリティケミカルス製品の製造販売を行っています。
体外診断用医薬品事業は、原料から最終製品をグループ内で一貫製造することにより高品質と安定供給を両立させ、特に免疫系の診断薬に強みを保有しています。国内市場では、高齢化の進展や医療費抑制に向けた治療から予防へのシフト等により診断薬の高機能化が求められています。また、海外市場において、先進国では高付加価値医療(高感度の免疫系試薬や感染症、遺伝子検査等)の需要増加、新興国では社会保険制度の整備に伴う診断機会の増加があり体外診断用医薬品の需要が拡大しております。当社グループは、国内において100種類以上の検査項目に対応した診断薬を販売しており、炎症マーカーや骨粗鬆症マーカー等で大きな販売シェアを確保しております。
スペシャリティケミカルス事業では、機能性ポリマーの製造販売を行っております。販売先の業種・分野はトイレタリー、製紙、金属、電子材料、ジェネリック医薬品と多岐にわたっており、競合の参入が難しい独自性の高い製品の研究開発・製造販売に取り組んでおります。
当連結会計年度においては、メディカル事業の販売は順調に推移しました。一方、飲料事業を営むニットービバレッジ株式会社が2023年1月に当社連結対象子会社から除外された影響を受けました。
繊維事業
繊維事業では、接着芯地、薄手裏地等の衣料用副資材やふきんの製造販売を行っています。接着芯地は、高級レディース向け市場で大きなシェアを持ち、薄物芯地の接着加工技術に独自性を有しています。
当連結会計年度においては、芯地の販売は堅調に推移したものの、コストアップなどの影響を受けました。
(3) 対処すべき課題
日東紡グループ 『前中期経営計画の振り返り』及び『新中期経営計画(2024~2027年度)』
○前中期経営計画の振り返り
『前中期経営計画(2021~2023年度)』の3年間では、将来の成長に向けた戦略的投資やグループ全体の経営基盤の強化など、4つの重点施策を着実に実行いたしました。最終年度に向けてスペシャルガラスや体外診断薬などの高付加価値品の販売が増加いたしましたが、人件費の増加や2021年度以降の電燃費の大幅な上昇により、収益目標は未達となりました。一方で、財務体質は健全性を維持いたしました。
<4つの重点施策と実績>
<財務目標と実績>
○『新中期経営計画(2024~2027年度)』
<新中期経営計画の2つのポイント>
<本部戦略の基本方針>
『Big VISION 2030』を超えて安定成長を持続するため、打ち出しの4年間として各事業本部は以下の方針に基づき新中期経営計画に取り組みます。
[電子材料][メディカル]
・市場拡大が期待できる分野に向けた供給体制の整備、積極的な設備投資を継続します。
・『Big VISION 2030』を実現する2030年度目標に向け、投資の刈り取り、新規開発製品の結実による着実な収益貢献を目指します。
[複合材][資材・ケミカル][断熱材]
・既存事業領域の深掘りをしつつ、2030年度以降を見据え、グラスファイバー、繊維など、従来の括りに捉われない新たな発想で事業の探索を進めます。市場拡大が期待できる分野に向けた供給体制の整備、積極的な設備投資を継続します。
<全社定量目標(2024年度~2027年度)>
<日東紡グループの経営理念と基本方針>
○環境目標
当社グループでは、「環境に関する全社方針」を定め、環境目標の達成に向けて取り組んでおります。
また、一元的に環境課題を把握し、課題解決への取組みを推進するため、代表執行役社長を委員長とする
「サステナビリティ推進委員会」を設けております。
2023年度は委員会を4回開催し、CO2削減推進、環境配慮商品開発、サステナビリティ経営推進等のテーマ別タスクフォースを通じて、持続可能な事業のための具体的な施策の検討と推進に取り組みました。
近年における主な取組みは以下のとおりです。
・2022年5月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)による提言への賛同を表明しました。
・2023年4月には、当社ウェブサイトをリニューアルし、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する情報を充実させました。
・2024年2月より、当社富久山事業センター構内において第三者所有モデルによる太陽光発電システム(いわゆるオンサイトPPA)の運用を開始いたしました。また、燃焼時にCO2を排出しない燃料への転換に向けた実証実験を開始いたしました。
今後も持続可能な豊かな社会の実現に向けて取り組んでまいります。
<CO2排出量削減> 2050年度 目標:カーボンニュートラル実現 2030年度 目標:CO2排出量削減 ▲30%(2013年度比、Scope1+Scope2) |
<廃棄ガラス削減> 2030年度 目標:廃棄ガラス量の実質ゼロ達成 |
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