日本M&Aセンターホールディングス 【東証プライム:2127】「サービス業」 へ投稿
企業概要
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針及び経営環境
当社グループは、「M&A業務を通じて企業の存続と発展に貢献する」ことを企業理念として掲げております。企業は社会の公器であります。その公器たる企業の深刻な後継者問題・先行き不安問題を解決し事業を存続させること、そしてさらに相乗効果の発揮によりその事業を発展させ譲渡側・譲受側の両当事者はもとより、従業員、取引先等のステークホルダー全員が幸福になる友好的M&Aを実践すること、このことが当社グループの社会的ミッションであり、当社は構築した全国的情報ネットワークを基盤にM&Aのプラットフォームの役割を担うべきものと考えております。
以上の企業理念に基づき、企業の存続と発展のためのM&A仲介業務を通じて顧客に対して常に付加価値の高い役務を提供することにより積極的な成長カーブでの業績アップを図り、配当も確実に実行していくことを通じて株主の皆様方をはじめとするステークホルダーの方々に報いることを経営方針としております。
国内M&Aマーケットの中でも当社グループがメインターゲットとしている後継者問題解決のための中堅中小企業のM&Aマーケットは、少子高齢化や中堅中小企業をとりまく厳しい経済環境等を背景に今後も安定的に拡大を続け、短期的にそのトレンドが大きく変化することは現時点では考えにくいものと当社グループでは考えております。
(2)優先的に対処すべき課題
当社グループでは、企業理念の実現を通じて企業価値の向上を図るため、以下のテーマを自らに課して業務を推進しております。
①コンプライアンス重視の経営の継続
当社グループは、2022年3月期において売上の期間帰属等に関して不適切な報告が発見されたことから、コンプライアンス重視の経営に舵を切りました。今後も以下のとおり弛まずコンプライアンス重視の経営を継続することで再発防止を徹底し、ステークホルダーの皆様からの信頼回復に努めてまいります。
・当社グループのパーパス(存在意義)とフィロソフィー(行動規範)の更なる浸透
当社グループは、前連結会計年度において、当社グループのパーパス(存在意義)とフィロソフィー(行動規範)を定義しました。当社グループは何のために存在しているのか、そのために当社グループの役職員は、どのような規範、判断基準のもと行動しなければならないのかを明確に定義し、当連結会計年度においても全社員に対しフィロソフィー研修やeラーニングで啓蒙する等、継続的にコンプライアンス意識の醸成と組織文化への定着を図っております。
・通報窓口の充実強化、営業部門のキーパーソンとの定期的な面談の実施
当社グループの内部の相談・通報窓口を社内ポータルサイトのトップページに設置し、全社員に周知しております。今後とも社員が日常の中で疑問に感じたこと、気づいたことを気軽に相談・通報できる風通しの良い会社であり続けるよう注力しております。
また、当連結会計年度においても株式会社日本M&Aセンターの営業部門のグループリーダー職以上のキーパーソンとチーフ・コンプライアンス・オフィサー(CCO)又は当社の社外取締役との定期的な面談を実施し、営業部門とコンプライアンス部門等との間に定期的にコミュニケーションの機会を設けることで、信頼関係を涵養し、不正の未然防止・早期発見に役立てております。
・コンプライアンス所管部署及びCCOによるコンプライアンス体制とリスクマネジメントの強化
前連結会計年度より当社及び株式会社日本M&Aセンターにおいてコンプライアンス統括部の責任者であるCCOが就任し、コンプライアンス関連のルールの見直しやグループコンプライアンス体制の構築準備を行う等、コンプライアンス体制の充実を図りました。また、CCOがリスクマネジメント委員会委員長を兼任することでリスクマネジメントの強化を図っております。
・監査・監督部門の体制強化
当社では内部監査経験の豊富な「内部監査部門の専担者」を配置し、監査・監督体制の強化に努めております。
・実効性のあるコンプライアンス研修・教育の実施
当連結会計年度においても株式会社日本M&Aセンターの管理職向けのコンプライアンス研修を実施する等、役員・全社員を対象として定期的にコンプライアンス研修を実施いたしました。
また、当社グループ役員・全社員が遵守すべき「グループコンプライアンス基本指針」を定め、周知徹底を行うことで継続的にコンプライアンス意識の醸成を図っております。
・総合的な人事評価の採用及び四半期業績達成に関する経営管理手法の見直し
株式会社日本M&Aセンターの人事評価につきましては、昇級・昇格要件に「倫理観」の項目を盛り込み、多面的かつ定性的な評価を実現する新人事制度を策定し、前連結会計年度の評価から新制度での運用を開始しております。
・営業組織の見直し
株式会社日本M&Aセンターの営業組織は、全部員にマネジメントが行き届く、1部署15名程度の適正な人員配置とし、不正の再発防止に努めております。
・売上報告及び売上計上に関する業務フローの再構築
現在は売り手と買い手それぞれから株式譲渡契約書・基本合意書のコピーを入手し、かつ双方から当該契約が締結されたこと等を明記した確認書の原本を入手することにより、各契約を締結した事実を確認するフローを構築し、四半期毎に全社員通知を行うことで継続的に周知しております。
・契約文書等ドキュメント管理の徹底
株式会社日本M&Aセンターのドキュメント管理部において文書管理ルールの策定、システム改修を適宜行っております。
・業務管理部、プロセス管理部による業務の健全化と品質向上
業務や業務プロセスを正確に正しく行うことが不正防止と顧客満足に繋がり、結果として生産性の向上に直結するとの考えから、業務管理部はドキュメント管理部と、プロセス管理部は品質本部とそれぞれ連携して業務の健全化と品質向上を図っております。特に業務プロセスにおいては、中小企業庁が定める「中小M&Aガイドライン」及びM&A仲介協会が定める「倫理規程」や「業界自主規制ルール」の遵守を徹底しています。
②コンサルタント数純増のための施策
優秀なコンサルタントとなり得る候補者をより多く採用し、併せて、それらの方々の成長・活躍を支援し、もって離職率を下げることは当社グループの重要課題であります。
具体的な採用の施策としては、採用はトップマターとの認識のもと、休日を活用した当社役員による会社説明会の開催及び役員との即決採用面接を実施しております。また、リファラル採用(社員からの紹介による採用)の強化をして優秀なコンサルタントの確保に注力しております。
採用したコンサルタントは、入社後、各種社内研修と現場でのOJTを充実することにより、着実に育成し、早期戦力化を図ってまいります。
同時に、優秀な人材の離職の防止も重要なテーマと考えており、とりわけ中堅人材の離職、3年未満の人材の離職、それぞれに対して適切な対応を行っています。
具体的には当社役員等が、部長陣等の管理者層、中核コンサルタント層、社歴の浅い若年層と各層に対しそれぞれ定期的な面談プログラムを設定し、それらを実行することで離職率の低減に努めております。
③生産性の向上(「成約単価」及び「コンサルタント1人当たり売上高」の改善)
当連結会計年度は、過去最多の成約件数(1,146件、譲渡・譲受は別カウント)を記録し、また成約単価を維持したことにより前年比で増収増益となりました。
当社グループは次連結会計年度以降も引き続き下記の対策を実行してまいります。
・マネジメント体制の適正化
営業本部において1部署がマネジメントする人数は合計15名程度が最適であると判断しております。これは当社グループの人材は社歴の浅い者が多く、彼らに対する個別の指導と同時に各案件にも関与して指導をしていくための最適な人数が15名程度であると考えているからであります。前連結会計年度においては中堅層の退職により適切なチーム編成によるマネジメントができなかった面がありましたが、当連結会計年度は成長した中堅層を部長、グループリーダーに登用し、1部署のマネジメント人数を合計15名程度とすることで、継続的に組織の最適化を図っております。次連結会計年度以降も引き続き適正な人員配置を継続してまいります。
・人材育成制度の強化、充実
前連結会計年度以降、下記の施策により人材育成制度の強化、充実を図っております。
(1)社歴1年未満のコンサルタントに対しては、先輩社員とペアを組んで、案件成約まで一体となり案件遂行するOJT制度(2in1制度)を実施しています。
(2)社歴3年以下の新人層、社歴4年目からの中堅層、グループリーダーたるベテラン層と階層別の育成制度を更に充実させ、当社グループで成功しているコンサルタントのノウハウを共有し、当社グループのコンサルタントとしての基本理念・基本行動を伝承する研修を継続して実施しています。
(3)上記の各施策を着実に行うことで生産性が向上し、ひいてはコンサルタントの定着率の改善に寄与すると期待しています。
・リードタイムの短縮と成約率の向上
当社グループにおいては、譲渡企業を受託した後、丁寧に企業評価書、企業概要書の作成等の案件化作業を行い、幅広く譲受企業へのマッチング活動を行い、その後、譲渡企業と譲受企業との各種交渉ステージに入るプロセスを実践しております。この結果として、当社グループは高い成約率を誇っています。一方で、当社グループがさらに生産性を上げるためには「リードタイムの短縮」と「成約率の向上」が必須条件と考えております。これを実現するために、各プロセスを検証し、更に見直すことによりリードタイムの短縮を図っております。
また、マッチング活動の質と量をともに見直すこと等により成約率の更なる向上を図ります。
・ミッドキャップ案件への取組の強化
成約単価の維持向上は収益改善の重要なテーマです。前連結会計年度においては、報酬単価が高いミッドキャップ企業(売上高10億円以上又は利益5千万円以上の企業)向けの企業開拓の推進に特化したチームである成長戦略開発センターを新設しました。同センターは、ミッドキャップ企業開拓の推進に特化し、1件当たりのM&A売上単価を継続的に維持することを目指しており、今後も注力してまいります。
・新規の譲渡受託件数の増加のための取組
当社の案件開拓の基盤は金融機関や会計事務所などの情報ネットワークにあります。一方、M&Aが一般化してきた現在、ダイレクトマーケティングによるソーシング(案件開拓)は非常に重要です。
また、ダイレクト案件は粗利率が高いため、ネットワークのソーシングとともにダイレクトの案件も増加させることが利益の改善にとって極めて重要になります。
当連結会計年度から大規模セミナーを本格再開するとともに、地域特化戦略を新潟県や宮城県において実施する等、ダイレクト戦略を見直し、強化いたしました。次連結会計年度も引き続きダイレクトマーケティング戦略を強化してまいります。
④顧客・提携先・株主・社員とのエンゲージメントの強化
M&Aは安全安心な手段であるとお客さまに実感していただけるよう、当社グループではM&Aプロセスの品質向上だけでなく、M&A成約後も含めた顧客満足度の追求に取り組んでいます。
顧客満足度向上のために「M&Aセレモニスト」を配置し、M&A成約式の演出構想、準備、会場設営等の企画から運営までを執り行っています。当連結会計年度においては当社グループ成約案件のうち85.6%の案件で成約式を実施しました。
顧客満足度を向上させるため、買手企業に対してPMIコンサルティングの実行、表明保証保険の付保などを行い、譲渡オーナーに対しては「ザ・ウエイ」という伝記の作成や第二の人生設計、財産承継のコンサルティングなどのサービスを行っています。
また、当社グループは全国の会計事務所、地域金融機関(地方銀行・信用金庫)や大手金融機関(メガバンク、証券会社)等と提携し、M&A案件の約6割の紹介を受けております。提携先に当社グループのナレッジやシステムを共有することで更に連携を強化し、安心安全なM&Aを広めてまいります。
株主向けには2022年度より統合報告書を発行し、当社グループの企業価値が持続的に向上するための施策や社会課題の解決に寄与する取り組みを紹介していることに加え、機関投資家や個人投資家向け決算説明会を全世界同時通訳配信で定期的に開催する等、当社業容の更なる理解の発信に努めております。
また、IRにも力を入れ、代表取締役がアメリカ、ヨーロッパの投資家を回ってダイレクトに成長戦略などを説明するIRを行っています。
加えて当社グループでは、定期的に従業員サーベイを実施し、社員の声を吸い上げ、改善・実現することに積極的に取り組んでおります。また、各種部活動も活発に行っており、社員間のコミュニケーションの活性化を促し、社員の更なるモチベーション向上につなげております。
⑤DX・AIの活用への取組
生産性アップのためには、DXやAIの活用は不可欠であります。当社グループでは以前から過去の膨大な成約事例に基づいたデータベースを構築しており、DXやAIの活用に積極的に取り組んでおります。
(3)目標とする経営指標と達成状況
目標とする経営指標と達成状況につきましては、「4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載しております。
- 検索
- 業種別業績ランキング