日本証券金融 【東証プライム:8511】「その他金融業」 へ投稿
企業概要
1.企業集団の主要な事業内容
当社グループは、当社、連結子会社2社(日証金信託銀行株式会社、日本ビルディング株式会社)および持分法適用関連会社2社で構成され、証券・金融市場のインフラを支える公共的役割を強く意識しつつ、貸借取引業務を核とするセキュリティ・ファイナンス業務を中心に、証券界・金融界の多様なニーズに積極的な応え、様々な証券・金融関連サービスを提供しております。また、貸借取引業務が市況変動等の影響を大きく受けることを踏まえ、引続き収益源の多様化に向けて努力し、各事業においてこれまで以上に資本効率の向上を意識しつつ経営目標の達成に取組んでおります。このような考え方の下、当社グループは、貸借取引を核とするセキュリティ・ファイナンス業務、有価証券運用業務、信託銀行業務、不動産管理業務からなる事業ポートフォリオにより、目指す将来像の実現を図っています。
<第7次中期経営計画>
[当社が目指す企業としての将来像]
当社は、当社が掲げる企業理念の下で、証券・金融市場のインフラ機能を支える証券金融会社として、高い財務の健全性維持と、持続的成長と中長期的な企業価値の向上を実現する機動性・柔軟性に富んだ特色あるユニークな企業を目指す。
[経営方針]
①証券金融会社としての社会的責任を常に認識し、堅固なガバナンス体制のもとでコンプライアンス、企業統治および経営リスクの管理を徹底することにより健全な業務運営を実践し、揺るぎない社会的信頼を確立する。
②証券・金融市場のインフラ機能を支える証券金融会社として求められる経営の安定性および財務の健全性を確保するため、強固な自己資本を維持しながら企業価値の向上を図るとともに、株主への利益還元を引き続き充実したものとしていく。
③証券金融会社の根幹である貸借取引業務をより強化し、あわせて当社・グループ会社が提供する金融・証券関連サービスの拡充・強化に務め、ビジネス基盤を一層拡大し堅固なものとする。
④経営環境の変化に機動的かつ柔軟に対応するため、迅速かつ効率的な業務運営体制を構築するとともに、人材力の基盤強化を図り、企業活力と組織変革力を向上させる。
[戦略]
①証券市場のインフラとしての貸借取引業務の強化
株式市場を取り巻く環境変化に適切に対応し貸借取引業務の安定的な運営および利便性向上を図る。また、市場参加者の取引ニーズの的確な把握などにより、貸借取引の利用促進を図るための施策を検討するとともに、制度信用・貸借取引にかかる情報発信を強化し、貸借取引業務の基盤強化に努める。
②セキュリティ・ファイナンス業務の拡充・強化
当社がこれまで培ってきた資金取引や有価証券取引のノウハウを有効に活用し、内外の金融商品取引業者等との多様な取引に積極的に対応するとともに、取引先や対象通貨・有価証券等の拡大により、セキュリティ・ファイナンス業務を強化・拡充し、収益機会の拡大を図る。
③グループ連結経営の強化
グループ会社との間で、営業、リスク管理、業務管理などの各分野で、より連携を推進するなどグループ連結経営の強化を図る。
④有価証券運用による安定的な収益確保・資金調達手段の拡充
外部環境の変化に対し、適切なリスクコントロールの下、機動的にポートフォリオの見直しを実施することで、有価証券運用による安定した収益を確保する。また、取引先の多様なニーズに応えるため、外貨を含め安定的な資金調達手段の拡充を図る。
⑤新規業務開発の推進
証券金融会社としての特長を活かし、内外の関係先やグループ会社との連携の下で、長期的視野に立った新規業務開発に取組み、具体化を図っていく。
⑥業務管理体制の強化
当社に求められている社会的要請に積極的に対応し、企業理念を実現していくため、コンプライアンスを経営の前提と位置付けていることをあらためて確認する。
当社に対する揺るぎない社会的信頼を確立するため、内部監査の実効性を確保し、金融業務に付随するリスクの多様化・複雑化に対応してリスク管理の一層の充実を図る。
⑦効率的な業務運営による競争力の基盤強化
取引量の増加や業務の複雑化が進む中、業務プロセスの見直しやデジタル技術の積極的な活用などにより、効率的な業務運営体制の構築に努め、競争力の基盤強化を図る。
⑧人材育成の強化とエンゲージメントの向上
多様性の確保と専門性、主体性の強化を軸に、人材育成の強化と人材ポートフォリオの再構築に努めるとともに社員エンゲージメントの向上を図ることにより、企業活力と組織変革力を向上させる。
⑨サステナビリティの推進
証券・金融市場のインフラとしての機能を安定的に果たせるよう、業務継続体制の更なる強化に努めるほか、気候変動・環境保全への対応など、サステナビリティに関する重要課題についても、着実に取組む。
2.2023年度(2024年3月期)の当社の取組み
(1)現状分析
・当社は第7次中期経営計画のもと、証券・金融市場のインフラを支えるプライム市場上場企業として、コーポレートガバナンスの強化とともに、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指しております。具体的には、ROEを、2025年度末までに株主資本コストを上回る5%とする経営目標を掲げ、収益性と資本効率の向上に経営努力を傾注してきました。
・こうした取組みの結果、2023年度のROEは5.73%となり、ROE5%目標を想定よりも2年前倒しで達成しました。
・また、株式市場における当社に対する評価も上昇基調であり、PBRは1倍近辺で推移し、株主総利回り(TSR)もTOPIXを有意に上回る水準で推移するなど、着実に向上してきております。
・以上の目標設定や実績評価の基礎となる当社の資本コストについては、客観的な長期時系列データを用いて複数の方式により計測した結果であり、足許の市場環境を踏まえても4%台半ばとの基本認識に変化はありません。当社は、証券金融会社としての免許を受けており、法令上、財務の健全性維持を求められるとともに業務範囲に制約が設けられております。このため、財務上のリスクや事業戦略リスクが相対的に低く、これがリスクプレミアムに反映されると考えられることから、当社の資本コストの水準としては自然なものと考えております。
(2)2023年度の取組み
(「当社が目指す経営の長期的展望」の策定・公表等)
①当社が目指す長期的展望
・当社は、2023年11月に「当社が目指す経営の長期的展望」(以下「長期的展望」と言います。)等を策定・公表いたしました。これは、当社取締役会としては、2023年度においてROE5%目標を想定よりも2年前倒しで達成する見込みとなったことから、これまでの当社の経営努力が一定の成果を挙げ、節目を迎えたと考えられることを踏まえ、今後の当社経営に関する考え方を改めて整理することが適当と考えたことによるものです。取締役会における累次の議論の結果、①まず、当社が目指す経営の長期的な展望を整理し、②その長期的展望を踏まえて、具体的な事業戦略に基づく中期経営計画や株主還元方針を策定するという二層建てで今後の経営を考え、それらを公表することが適切との結論に至りました。なお、2021年11月19日に策定・公表した「中期的な経営方針」については、その役割を果たしたものと評価できることから、今般策定した長期的展望等に発展的に吸収することとしました。
・長期的展望は、長期で見た場合の当社の目指す将来像やありたい姿を展望したものです。まず「当社の目指す将来像」について、証券・金融市場のインフラ機能を支える我が国唯一の証券金融会社として、証券・金融市場の発展に貢献することを通じて、高い財務の健全性維持のもとで持続的な成長・企業価値の向上を実現する、機動性・柔軟性に富んだ特色あるユニークな企業を目指すことを改めて確認しました。
・次に、コーポレート・メッセージ「Be unique. Be a pioneer. 唯一をつくる、開拓者であれ。」を制定いたしました。これは、我が国唯一の証券金融会社として、不断に変化する環境の中で、金融テクノロジーの進化を取り入れながら、証券・金融市場の参加者の取引ニーズに機動的かつ柔軟に対応し、市場ひいては当社の未来を開拓していく、当社の在りたい姿を表したものです。
・「長期的な経営の方向性」は、次のとおりです。
―今後とも、証券・金融市場の参加者の取引ニーズに機動的かつ柔軟に対応し、市場の発展に貢献することを通じて、高い財務の健全性維持のもとで持続的な成長・企業価値向上に向けてグループ企業の総力を結集して取り組む。
―今後も資本コストを意識しながら、着実な収益基盤の強化と資本効率の安定的かつ着実な向上に努め、ROEについては8%の水準を意識しながら、今後も着実な向上に向けて取り組んでいく。
―株主還元については、第7次中期経営計画期間中は総還元性向100%を維持し、その後も株主還元の充実に努めていく。
―こうした経営の取組みを通じて、PBRについても1倍超の市場評価の定着を目指す。
―指名委員会等設置会社の機関設計のもと、取締役会・各委員会審議の実効性の一層の向上や情報開示の更なる充実、厚みのある人的資本の形成に注力しつつサステナビリティ課題にも取組み、コーポレートガバナンスの強化に努めていく。
②第7次中期経営計画の経営目標の修正
・上記の長期的展望および2024年3月期の業績を踏まえ、第7次中期経営計画の経営目標を次のとおり上方修正いたしました。
<ROE>
安定的に5%を上回る水準を維持するとともに、さらなる向上を目指す。
<連結経常利益>
安定的に100億円超を維持するとともに、さらなる向上を目指す。
なお、この修正に伴い、当社役員の業績連動報酬(賞与および株式報酬)の参照指標および反映方法の基本的な構造については変更せず、株式報酬の進捗見込みに基づく基準値について所要の変更を行いました。
(その他の取組み)
①情報開示の充実(統合報告書の改訂)
・株主をはじめとした様々なステークホルダーの皆様に当社についてより深くご理解いただくため、情報開示の充実に積極的に取組んでおります。その一環として、2022年度から統合報告書を作成しております。統合報告書では、当社のビジネスモデル、経営方針、コーポレートガバナンス、サステナビリティ課題への取組みなどについて記載しております。
・2023年度の統合報告書では、上記長期的展望についてのその内容、検討の経緯や考え方、新たに策定したコーポレート・メッセージについて、幅広くご理解・ご認識いただくために記載を充実させております。第7次中期経営計画関連では、重要施策の一つである「人的資本ポリシー」について記載しております。
・また、前年度版の公表以降、ステークホルダーの皆様から頂いたご意見を踏まえて、記載内容の充実を図っております。具体的には、コーポレートガバナンスに関して「当社経営陣の選任とこれを展望した内部人材育成の考え方」を掲載し、経営陣の選任にあたっての手続き面の情報だけではなく、実際の指名プロセスにおいて社外取締役を中心とした取締役会・指名委員会が具体的にどのような働きを果たしているかについても記載しております。また、近年の当社の成長を牽引しておりますセキュリティ・ファイナンス業務について、業務の内容、注力している取組みおよびリスク管理について特集を組んでご説明しております。
②執行役の担当職務の明確化
・当社は指名委員会等設置会社として、社外取締役を中心とした取締役会が策定した経営方針に基づき、取締役会による実効性の高い監督のもと、代表執行役社長の統率、指揮により執行役が業務執行する体制となっております。
・執行役の担当職務について、ステークホルダーの皆様にとってより分かりやすい表現とするため、指名委員会における議論を経て、2024年度の執行役・執行役員の選任にあたり各執行役の担当職務を改めて定義し、公表いたしました。
③従業員向け自社株インセンティブの付与
・2022年度に引き続き、2023年度においても、当社業績に応じて従業員に対して当社株式を付与する従業員向け自社株インセンティブの付与を決定いたしました。具体的な付与は2024年6月に実施いたしました。この取組みの趣旨・目的は、従業員の経営目標達成へのモチベーションや働きがいの向上を図るとともに、従業員が当社株式を所有することで、企業価値向上への関心をより高め、株主の皆様との価値共有を進めることにより、中長期的な企業価値の向上を図ることであります。
④サステナビリティ課題への取組み
・当社はサステナビリティ課題についても積極的に取組んでおります。2023年度は主に次の2つに取組みました。
<分散型台帳技術を用いたセキュリティ・ファイナンス取引に関する実証研究>
―当社と東京大学は、2021年4月以降、レポ取引や証券貸借取引において、分散型台帳技術の活用により、トークン化した有価証券や担保の円滑な取引が可能かについて検証する実証研究を共同で実施し、2023年5月30日にその成果を報告書※として公表しました。(※報告書等は当社ホームページで公表しております。)
―本研究の成果は、証券分野をはじめとして今後の様々な分野への社会実装への活用が期待されます。また、産学連携の推進により、当社が認識するサステナビリティに関する重要課題、とくに学術研究活動の推進、証券・金融市場インフラへの貢献の取組み効果が現れたものと考えています。
<インドネシア証券界との国際協力>
―当社は、持続可能な社会の実現に向けた重要課題の一つとして、海外の証券・金融市場インフラへの貢献・支援活動を進めており、その具体的な取組みとして、インドネシア証券界との国際協力が挙げられます。
―当社は、我が国証券・金融市場のインフラを支える立場から、インドネシアにおける証券金融会社の設立に向け、同国の証券関係団体に対し、貸借取引業務の実務や管理面のノウハウを提供するとともに、市場活性化のための証券金融の重要性について説明を重ね、2016年末のインドネシア証券金融会社(PT Pendanaan Efek Indonesia)の設立に寄与して参りました。同社設立後もリスク管理や資金調達等の実務的なサポートを続け、2020年8月、同社に対する出資を行っており、2022年以降、配当金を受領しています。
―現在は、当社、インドネシア証券取引所グループ等の他の株主およびインドネシア証券金融会社で構成される諮問委員会や株主総会への参加等を通じ、同社の経営方針や業務運営に関する議論に積極的に貢献しています。また、ジャカルタや東京で、インドネシア証券界(監督当局、取引所関係者、証券業界等)を対象とするセミナーを随時開催するなどしています。
―今後も、当社が蓄積してきた証券金融業務に関する知見を一層活用し、同国の経済・金融・証券市場のサステナブルな発展に寄与していきたいと考えています。
3.対処すべき課題
当社は、前記のとおり、2023年11月に「当社が目指す経営の長期的展望」等を策定・公表いたしました。
当社は、今後とも証券・金融市場の参加者の取引ニーズに機動的かつ柔軟に対応し、市場の発展に貢献することを通じて、高い財務の健全性維持のもとで持続的な成長・企業価値向上に向けてグループ企業の総力を結集して取り組みます。
また、今後も資本コストを意識しながら、着実な収益基盤の強化と資本効率の安定的かつ着実な向上に努め、ROEについては8%の水準を意識しながら、今後も着実な向上に向けて取り組んでいきます。株主還元については、第7次中期経営計画期間中は総還元性向100%を維持し、その後も株主還元の充実に努めていきます。
こうした経営の取組みを通じて、PBRについても1倍超の市場評価の定着を目指します。
指名委員会等設置会社の機関設計のもと、取締役会・各委員会審議の実効性の一層の向上や情報開示の更なる充実、厚みのある人的資本の形成に注力しつつサステナビリティ課題にも取組み、コーポレートガバナンスの強化に努めていきます。
第7次中期経営計画については、当社が目指す経営の長期的展望と2023年度の業績を踏まえ、経営目標を次のとおり上方修正しました。まずROEについては、安定的に5%を上回る水準を維持するとともに、さらなる向上を目指します。また、連結経常利益については安定的に100億円超を維持するとともに、さらなる向上を目指します。
こうした経営目標の実現に向け、貸借取引業務を核とするセキュリティ・ファイナンス業務を中心に収益基盤の強化に引き続き注力します。また、これらの業務を支える内部管理体制の強化についても取り組みます。その一つは、企業価値創造の源である人材力の基盤強化であります。当社は2023年3月に策定した「人的資本ポリシー」のもと、人材育成プログラムを着実に実行してまいります。
また、当社の様々な取組みを、株主をはじめとしたステークホルダーの皆様に広くご理解いただくため、情報開示の充実にも取り組んでまいります。
株主還元については、2025年度までの間、配当および自己株式取得の機動的な実施により累計で総還元性向100%を目指す方針を継続いたします。また2024年度から2025年度までの間、配当については配当性向70%を目安に積極的な配当を行うこととします。
2024年度につきましては、第1四半期に実施予定の当社子会社が保有する不動産の売却に伴い、一定の規模の特別利益の計上が見込まれることとなりました。本特別利益は、当社の持続的な成長に向けた努力の過程とは別に発生した一時的な利益であることから、これに対応した株主還元は2024年度中に特別配当金として行うことといたしました。そのため、2024年度の配当予想は普通配当金64円と特別配当金6円をあわせた70円といたしました。また、あわせて株数上限170万株、金額上限26億円とする自己株式取得枠を設定いたしました。これらをあわせた2024年度の総還元性向は99.7%となります。
当社としては、引き続き、証券・金融市場のインフラ機能を支える我が国唯一の証券金融会社として、証券・金融市場の発展に貢献することを通じて、高い財務の健全性維持のもとで持続的な成長・企業価値の向上を実現する、機動性・柔軟性に富んだ特色あるユニークな企業を目指してまいります。
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