日本航空 【東証プライム:9201】「空運業」 へ投稿
企業概要
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般
①ガバナンス
当社グループでは、サステナビリティに関する重要事項を取締役会で審議・決定しています。取締役会への付議にあたり、社長を議長とするサステナビリティ推進会議において、以下の事項を主な議題とし、マネジメントレビューを行っています。
● サステナビリティの実現に向けた取組の重要課題・年度目標の決定、進捗のモニタリング・評価
● 気候変動のリスクと機会に関する対応の決定
● 環境マネジメントシステムのモニタリング・評価
● 人権デューデリジェンスのモニタリング・評価
サステナビリティ推進会議の下部会議体であるサステナビリティ推進委員会(委員長:総務本部長)を月次で開催し、取組の進捗確認と議論を行っています。
②戦略
当社グループは、2021年5月に、「安心・安全」「サステナビリティ」をキーワードとした「JAL Vision 2030」、および、その実現に向けた「2021-2025年度 JALグループ中期経営計画」を策定、発表しました。また、2023年5月2日には「中期経営計画ローリングプラン2023」を策定し、ESG戦略を価値創造ストーリーに基づく最上位の戦略と位置づけ、環境負荷の低減を前提に、サステナブルな人流・商流・物流と関係人口を創出し、コロナ禍を経て見直されつつある「移動」と「つながり」の力で、地域社会の衰退や幸福度の低下といった社会課題の解決を目指します。また、このESG戦略の推進を通じて当社の社会的・経済的価値を高め、企業価値の向上を実現します。
③リスク管理
当社グループでは、リスクを組織の使命・目的・目標の達成を阻害する事象または行為と定義し、半期ごとにリスク調査と評価を行っています。特にインパクトが大きいと評価されたものを優先リスクと位置づけ、社長を議長とするグループリスクマネジメント会議と、その傘下に設置したリスクマネジメント・情報セキュリティ委員会で審議・決定します。
④指標と目標
当社グループが取り組む4つの領域・22の課題それぞれに中期目標を設定し、事業活動を通じて持続可能な社会の実現を目指し、SDGsの達成に向けたESG経営を推進しています。
特に以下の指標については、「2021-2025年度 JALグループ中期経営計画」における、サステナビリティに関する経営目標としております。
●環境 :CO2削減(総排出量 909万トン未満)
使い捨てプラスチック削減(客室・ラウンジ:新規石油由来全廃、空港・貨物:環境配慮素材
100%変更)
●地域社会:国内の旅客・貨物輸送量を2019年度対比+10%
●人 :DEI推進(グループ内女性管理職比率 30%)
上記以外のサステナビリティに関する指標と目標については、当社Webサイトで開示しています。(https://www.jal.com/ja/sustainability/initiatives_sdgs/)
(2)気候変動への対応
①ガバナンス
当社グループでは、気候変動への対応に関する課題全体の方針および重要事項を取締役会で審議・決定しています。重要な目標設定および取組については、社長が議長を務めるサステナビリティ推進会議で審議・決定し、定期的に取締役会に報告しています。また、具体的な目標の達成に向けては、2021年6月にNZE(ネット・ゼロエミッション)プロジェクトを立ち上げ全社横断で取り組むとともに、環境マネジメントシステム(EMS)を通じてPDCAサイクルを回しており、その結果をサステナビリティ推進会議に報告しています。また、外部ESG評価やCO2排出削減目標などを指標として役員報酬に反映しています。
②戦略
気候変動への対応は社会の持続可能性にとって重要な課題であるとの認識のもと、当社グループは、2018年に環境省が主管する「TCFDに沿った気候リスク・機会のシナリオ分析支援事業」へ参画し、国際エネルギー機関(IEA)および気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による今世紀末までの平均気温上昇が「4℃未満」と「2℃未満」の2つのシナリオ(RCP8.5(注1)、RCP2.6(注2))に基づき、2030年の社会を考察しました。 また、航空運送事業者の責務として、CO2排出量の削減をはじめとするさまざまな取組を着実に推進すべく、2050年までにCO2排出量実質ゼロ(ネット・ゼロエミッション)を目指すことを2020年6月に宣言しました。その後、IEA SDSシナリオ(注3)などをふまえてリスクと機会を考慮して具体的なロードマップを作成し、2021年の「2021-2025年度 JALグループ中期経営計画」および2022年の同ローリングプランに反映しました。さらに2023年の同ローリングプランでは、2050年までのカーボンニュートラルに向け、1.5℃シナリオの世界の実現を目指すことを前提に、GX戦略を策定しました。
上記に加え、2021年2月には「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同を表明し、2022年3月にはSBT(Science Based Target=科学と整合した目標)イニシアティブへの賛同を表明するなど、グローバルな枠組みでの情報開示に努めています。
なお、2022年のICAO(国際民間航空機関)の総会にて、国際航空分野における「2050年までのカーボンニュートラル」を目指す長期目標、および、CO2 排出削減の枠組みであるCORSIA(注4)の見直しが採択され、国際航空に課せられるCO2排出規制は今後さらに進む可能性があります。
このような環境下、当社が掲げる削減目標達成に向け、省燃費機材への更新、日々の運航での工夫(JAL Green Operations)、SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)の活用による従来の取組を加速させてまいります。その上で、CORSIAによるオフセット義務の取組として、排出権取引の活用を追加するとともに、中長期的には世界で開発中の合成燃料、ネガティブエミッション(CO2回収等)といった新技術を有するサプライヤー・パートナーとの連携を促進し、新たな技術を活用することも進めてまいります。
(注)1.RCP8.5 シナリオ:IPCC 第五次報告書における高位参照シナリオ(2100 年における温室効果ガス排出量の最大排出量に相当するシナリオ)
2.RCP2.6 シナリオ:IPCC 第五次報告書における低位安定化シナリオ(将来の気温上昇を2℃以下に抑えるという目標のもとに開発された排出量の最も低いシナリオ)
3.IEA SDS シナリオ:IEA(国際エネルギー機関)による持続可能な開発目標を完全に達成するための道筋である、持続可能な開発シナリオ(Sustainable Development Scenario)
4.Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation:航空会社全体の国際線のCO2排出量において、基準値を超える排出分を参加国の航空会社で分担してオフセット義務を課す制度。2024年以降は「2019年の排出量を超えない」から「2019年比85%を超えないこと」に見直され、ベースラインが15%深掘りされました。
③リスク管理
気候変動に関するリスクを重大なリスクと認識し、環境マネジメントシステム(EMS)におけるPDCAサイクルを通じて都度リスクを特定しながら、気候変動に関する国際社会の法・規制や政策動向などをふまえてリスク管理を実施しています。その内容は取締役会に報告され、討議・評価されます。
④指標と目標
当社グループでは、航空運送という事業の特性上、CO2排出量の約99%が航空機からの直接排出であるため、航空機からのCO2排出量削減を最優先課題として対応していきますが、地上施設からの間接排出によるCO2削減についても同様に高い目標を掲げ、真摯に取り組んでいます。国内外のさまざまなステークホルダーとの連携・協働を強化しつつ、CO2削減の国際的な枠組みに則り、日本政府の「クリーンエネルギー戦略」とも整合しながら、最先端の取組で業界をリードしていきます。
当社グループの航空機が排出するCO2の削減については、1.5℃シナリオを前提としてICAOやIATAでの最新の検討資料やATAG(注5)の「Waypoint 2050」などの最新のシナリオを参照しつつ、2050年までのCO2削減のシナリオを検討し、今後の課題と打ち手について議論を進めています。
なお、シナリオ作成にあたっては、総需要に基づくRTK(有償輸送トンキロ)の伸びを国際線・国内線それぞれに設定の上、2050年までのCO2総排出量を算出し、各取組による効果を反映しました。
(注)5.Air Transport Action Group:航空業界のサステナビリティを推進するグローバル連合
当社グループは、2021年5月に本邦航空会社として初めて2030年度の具体的な目標(2019年度対比で総排出量を10%削減)を掲げ、アライアンスでのSAF共同調達や機材更新時のESGファイナンス活用などに率先して取組み、世界の航空業界の脱炭素化を推進してきました。安定した財務基盤に基づく省燃費機材への着実な更新、日々の運航の工夫の着実な実施、またSAFの具体的な搭載目標を定めた上での戦略的な調達といった取組により、目標の達成に向けて果敢に挑戦します。
なお、SAFについては海外における製造・サプライチェーン構築の動きが加速していますが、日本国内でも政府の「経済財政運営と改革の基本方針2022」や「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」の中で、SAFの製造・流通を推進していくことが明記されました。当社グループは、2030年度に全搭載燃料の10%をSAFに置き換えるという目標を実現するため、官民の連携や国内外のステークホルダーとの協働を通じ、SAFの商用化に向けて積極的に取組みます。
(3)人財への取組
①戦略
■人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針
2022年度は需要回復による本格的な反転攻勢に向けて、経営戦略の3本柱のうちESG戦略を軸に据え、事業活動を通じた社会課題の解決と事業構造改革を加速推進していくことを目指しました。こうした持続的な企業価値向上ストーリーを支える最も重要な要素は人財であるとの認識のもと、人財戦略を策定しています。
a.人財育成方針
事業領域の多様化を実現し、企業の持続的な成長・発展につなげていくため、多様な知見を持った人財を獲得するとともに、人財への投資を積極的に行うことで社員の能力を高め、エンゲージメントを強化するという方針の元、以下取組を進めてきました。
具体的には経験者の通期採用やスキル要件を明示したジョブ型採用を実施するとともに、社内インターン、グループ内外への出向などによる実務経験の充実、社内外の研修機会の増加などを通じた社員の知識・経験の多様化を推進しました。
b.社内環境整備方針
人的資本を最大限活用することを目的に、社内環境整備方針として以下3つの方針を定め、取組を進めてきました。
[基盤となる取組 ~DEI(注6)・DX推進~]
人財戦略の全体に関わる基盤となる取組として、DEIとDXを推進してきました。性別、文化、職域の壁を越えて多様な人財が多様な働き方で働くことで画一的な考え方から脱却し、そこにDXを掛け合わせることでイノベーションを起こし、新たな価値の創造や生産性の向上につなげていきます。
[業務プロセス改革]
業務プロセス改革により売上を伸ばしつつ工数を減らし、生産性を向上してきました。コロナ禍からの需要回復に伴う生産量拡大のフェーズにおいて、JALグループ内で重複している間接業務の集約やデジタル技術の活用によるFSCの業務効率化に取組み、インプット(投入)を最小化しています。同時に、従来型の航空券販売から包括的な地域課題の解決に向けたソリューション営業への転換を図るため支社体制の導入を進め、積極的な人財投資を通じた社員個々人の能力底上げによりアウトプット(産出)の最大化を目指してきました。
[成長領域への人財配置]
LCCやマイレージなどの成長領域を伸ばし、収益源の多様化を実現するための人員体制を確立してきました。フルサービスキャリア(FSC)を中心とした既存領域から今後収益を拡大させる成長領域へ人財をシフトし、2025年度には成長領域への人財配置を3,500名増加(2019年度対比)させ、人員体制を整えていきます。成長領域のポストにおける公募制度・登用の拡充や、高い専門性、創造性、自律性が求められるポストで業績に連動した成果型の報酬制度を新たに導入することで、社員の挑戦意欲を促進してきました。
(注)6.DEI=ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン
②指標と目標
| カテゴリー | KPI | 目標(FY25) | 実績(FY22) |
人財育成方針 | 多様な人財の採用と社員の成長機会の付与 | エンゲージメントの高い社員割合(注7) | +10pt (2019年度対比) | △2.7pt (2019年度対比) |
社内環境整備方針 | 基盤となる取組 ~DEI・DX推進~ | 女性管理職比率 | 30% | 22.8% |
業務プロセス改革 | 一人当たり売上高の拡大 | +15% (2019年度対比) | △2% (2019年度対比) | |
成長領域への人財配置 | 成長領域への人財配置 | +3,500名 (2019年度対比) | +2,200名 (2019年度対比) |
(注)7.社員意識調査でポジティブな回答をした社員の割合
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