日本紙パルプ商事 【東証プライム:8032】「卸売業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティに関する基本的な考え方
当社は、サステナビリティをめぐる社会的要請への対応はリスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要なグループの経営課題であると認識しております。2022年度には当社グループにおけるサステナビリティを「社会価値と経済価値を同時に生み出す持続可能な事業活動」と定義し、「環境」「社会」「人材」「ガバナンス」の4つのテーマ、12項目のマテリアリティ(※)を特定することで、社会課題に対する当社グループの考え方を明確化いたしました。現在、各マテリアリティにおける目標・KPI(重要業績評価指標)を策定中であり、策定後は各指標の達成に取り組むことによりサステナブル経営をより積極的に進め、社会課題の解決と共にグループの持続的成長と中長期的な企業価値の向上を図るとともに、グループ企業理念に掲げるグループの使命「社会と地球環境のよりよい未来を拓くこと」を果たしてまいります。
なお、本有価証券報告書においては、「気候変動」及び「人材(労働環境・ダイバーシティ&インクルージョン)」の2点をサステナビリティに関する重要な情報として、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の枠組みである「ガバナンス」「リスク管理」「戦略」「指標及び目標」 に基づき記載いたします。
※12項目のマテリアリティの詳細については「日本紙パルプ商事グループ 統合報告書 2022」をご参照ください。
(2) ガバナンス
サステナビリティ推進体制
サステナブル経営の積極的な推進に向けて、2022年4月1日付にて体制を刷新しました。まず、グループ全体のサステナビリティへの取り組みの司令塔として、持続可能性に関する方針策定や戦略立案、ESG課題(※)の解決、目標達成に向けた全体マネジメントを所管する「サステナビリティ戦略会議」を設置しました。同会議は、社長を議長とし、常勤取締役、統括で構成され、常勤監査役がオブザーバーとして出席しています。あわせて、グループ全体のサステナビリティ推進の実務遂行組織として「サステナビリティ推進本部」を新設しました。同組織は、グループ全体の環境・労働安全の強化及び脱炭素に向けた取り組み、取引先などからのESG・CSR対応の窓口、社会貢献への取り組みなど、サステナビリティ推進に向けた全般的な対応に加え、IR・広報業務を担います。さらにグループ内横断組織として、グループ全体の環境・安全コンプライアンス対応を目的とする「OVOL環境・安全委員会」、及び、「OVOLサステナビリティ推進委員会」を設置し、グループ全体にて、環境・安全コンプライアンスの向上、及びサステナビリティ推進に取り組んでおります。
※ESG課題とは、環境・社会・ガバナンスに関する幅広い課題を意味し、以下のような課題が含まれております。
環境(E) : 気候変動、資源枯渇、廃棄、汚染、森林破壊、等
社会(S) : 人権、強制労働・児童労働、労働条件、雇用関係、等
ガバナンス(G) :贈収賄・汚職、役員報酬、役員構成・多様性、ロビー活動・政治献金、税務戦略、等
<推進体制図>
<サステナビリティ戦略会議及び各委員会の詳細>
会議体名 | 委員長/議長 | 構成メンバー | 目的/役割 |
サステナビリティ戦略会議 | 代表取締役社長 | 常勤取締役及び統括・副統括 (オブザーバー:常勤監査役) | グループ全体のCSR、及びサステナビリティへの取り組みの司令塔として、持続可能性に関する方針策定や戦略立案、ESG課題の解決、目標達成に向けた全体マネジメントを所管 |
リスク管理委員会 | 管理本部本部長 | 副委員長:企画本部本部長 委員:内部監査室、サステナビリティ推進本部、管理本部、企画本部及び関連部門から選任 (オブザーバー:管理全般管掌、 常勤監査役及び管理企画・サステナビリティ統括) | 「リスク管理基本規程」に基づき、リスクの洗い出し、分析、評価、 対応の優先順位付け、個別リスクの取り組み施策の策定を行い、当社グループにおけるリスクを低減 |
OVOL サステナビリティ 推進委員会 | サステナビリティ 推進本部本部長 | 副委員長:管理本部本部長及び企画本部本部長 委員:各本部、支社、国内外グループ会社から選任 (オブザーバー:管理企画・サステナビリティ統括) | グループ全体でのサステナビリティへの取り組みの強化 委員は各組織におけるサステナビリティ、コンプライアンス推進の役割を果たすとともに、災害等緊急事態発生時には全社部門との連絡役を担う |
OVOL 環境・安全委員会 | サステナビリティ 推進本部本部長 | 副委員長:管理本部本部長及び企画本部本部長 委員:各本部、支社、国内外グループ会社から選任 (オブザーバー:管理企画・サステナビリティ統括) | グループ全体における環境・労働安全への取り組みの強化 委員は各組織において環境・労働安全コンプライアンス及び、温室効果ガス削減を中心とした環境対策の推進役を担う |
(3) リスク管理
「サステナビリティ戦略会議」は、グループ全体でのサステナビリティに関するリスクと機会の特定、対応組織への指示、対応計画の策定、進捗の管理を行い、取締役会に報告します。取締役会は報告内容について承認もしくは改善指示を出し、適切なリスク管理が行われていることを監督します。また、サステナビリティ戦略会議にて審議されたサステナビリティ関連のリスク事項については、その下部組織である「リスク管理委員会」「OVOLサステナビリティ推進委員会」「OVOL環境・安全委員会」に指示され、グループ全体におけるリスク管理に反映されます。
(4) 戦略
① 気候変動への取り組み
当社グループは、気候変動が紙の主要な原料である森林資源の減少や、地球温暖化による物理的リスク等の様々なリスクを引き起こす可能性があると認識しています。当社グループを含めたサプライチェーン全体で排出する温暖化ガスの削減により、気候変動への影響を最小化していくことが企業としての責務であると捉えており、将来に向けた取り組みを推進してまいります。
<TCFD提言に基づく情報開示> 当社グループは、気候変動への対応、温室効果ガスの排出削減への取り組みをより一層推進するとともに、TCFD提言に基づく情報開示を今後も積極的に進めていきます。 分析にあたっては業態の観点から、国内卸売及び海外卸売を一つとし、紙・板紙卸売として表示しています。 (※2) 気候変動に関する「ガバナンス」及び「リスク管理」についてはサステナビリティ推進体制に組み込まれております。 詳細については(2)ガバナンス及び(3)リスク管理をご参照ください。 |
当社グループは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)や IEA(国際エネルギー機関)などの専門機関が作成した2つのシナリオ(気温上昇が1.5℃に抑制されるケースと4℃以上になるケース)を用いて、紙・板紙卸売、製紙加工、環境原材料、不動産賃貸の4つの事業分野について、気候変動に伴うリスクと機会の抽出を行いました。気候変動がもたらすリスクと機会は、低炭素社会への移行に伴うリスク(移行リスク)と物理的な影響(物理的リスク)に分類され、これらのリスクと機会を事業戦略に織り込むため、財務影響を短期(2025年)・中期(2030年)・長期(2050年)の観点で定性的に評価しました。
各セグメントに影響が及ぶ事象を集約したのち、短期・中期・長期にわたり中程度以上の影響を受ける項目を一覧として下記に示します。
分類 | 当社への影響 | 対応策 | 影響度 | ||
リスク | 移行 | 政策・法規制 | 製紙事業における、炭素税の引き上げに伴う操業コストの著しい増加 | • GHG排出量削減の中長期目標設定 • 省エネルギーのさらなる推進 • 再生可能エネルギーへの切り替え及びグリーン証書※1購入、コーポレートPPA※2、インターナルカーボンプライシング制度※3の導入などの検討 • 荷役車両などの電化の推進 | 大 |
評判 | 気候変動対策の遅れに伴う企業価値の下落、ステークホルダーの信頼失墜などによる、売上収益の減少、資金調達への影響、ブランド力の低下 | • GHG排出量削減の中長期目標設定 • 省エネルギーのさらなる推進 • 適切な情報開示の推進 | 中 | ||
物理的 | 急性※4 | 風水害による拠点、設備、在庫、不動産物件等の甚大な被害 | • ハザード調査の実施、浸水防止対策への取り組み • 災害発生に備えた防災訓練の実施、BCM(事業継続マネジメント)の構築 | 中 | |
風水害によるサプライチェーンの途絶に伴う事業停止、及び売上収益の減少 | • サプライヤーに対する風水害発生時のBCMの構築とBCP(事業継続計画)整備の依頼 • 原料サプライヤー、輸送手段の多様化による調達の安定化 | 中 | |||
慢性※5 | 海面上昇による、臨海拠点の高潮等浸水被害の影響 | • ハザード調査の実施、浸水防止対策への取り組み • 災害発生に備えた防災訓練の実施、BCMの構築 | 中 |
分類 | 当社への影響 | 対応策 | 影響度 | |
機会 | 市 場 | 電化の進展に伴う電子部品関連機能材の需要増による業績への寄与 | • 電子部品関連機能材の需要動向のモニタリング、及び商品の開発、状況に応じた供給量の確保 | 中 |
森林認証紙・再生紙など環境配慮型商品の需要増による業績への寄与 | • 環境配慮型商品の需要動向のモニタリング、及び商品の開発、状況に応じた供給量の確保 | 中 | ||
脱プラスチック化の進展に伴う紙製品の需要増による業績への寄与 | • 法規制及び需要動向のモニタリング、及び商品の開発、状況に応じた供給量の確保 | 中 |
・移行リスクと機会は1.5℃シナリオをベースに作成。物理的リスクは4℃シナリオを想定し作成
・影響度は、事業の存続に大きな影響があるレベルを“大”、事業の戦略を大きく変更する必要があるレベルを“中”と表示
・影響度(大・中)の定義は、Applying Enterprise Risk Management to Environmental, Social and
Governance-related Risks,COSO & WBCSD をもとに作成
(※1)グリーン証書:再生可能エネルギーにより発電された電気の環境価値を取引可能な証書にしたもの
(※2)コーポレートPPA:企業が発電事業者や、電力小売業者と直接契約し、再生可能エネルギーの電力を調達する仕組み
(※3)インターナルカーボンプライシング:低炭素への取り組みを進めるために企業内部で設定する炭素価格
(※4)急性:異常気象による気象災害などの事象(突発的な急性リスク)
(※5)慢性:長期的な気候パターンや降雨パターンの変化による事象(緩行的な慢性リスク)
② 人的資本・多様性に対する取組み
イ 当社グループにおける人材戦略
当社グループは、人材こそがグループの経済価値の創造を左右すると認識しています。今後さらなる持続的成長を遂げるため、「労働環境」と「ダイバーシティ&インクルージョン」を人材面のマテリアリティとして特定し、取り組みを進めております。
ロ 当社における人材育成方針
当社は人材育成を「持続的な成長のための投資」と考え、積極的に投資するとともに、人事データを元に戦略的な採用、教育などを実行する透明度の高いプロセスの確立を重要視して取り組みを進めています。
人材の採用については、質的にも量的にも高水準の人材を確保することを目指し、新卒採用に加え、キャリア採用にも力を入れています。人材育成については、「役割と責任を果たす人材の育成」「変革期に対応する自立型人材の育成」をコンセプトにプログラムを推進しており、各世代に応じた様々な研修を実施するとともに、社員の成長を促し、能力開発を目的とした育成型異動や、経営人材育成に向けたグループ会社への出向などを推進しています。これらの取組みを反映した人事データを、タレントマネジメントシステムを通じて人材ポートフォリオとして活用し、人材の戦略的配置を実施しております。
ハ 当社における社内環境整備方針
当社は魅力ある人材の採用・維持に注力するとともに、能力開発機会の提供、公正な評価・処遇や働きやすい労働環境の整備など、すべての従業員の活躍を促す仕組みを拡充していくことで、さらなる組織能力の向上に取り組んでいます。その中で、役職員一人ひとりが自らの健康に責任を持ち、心身の健康維持・増進に主体的に取り組み、意欲をもって働くことが、個々の生活の質や仕事の質を高め、当社の生産性や企業価値向上につながると考え、健康経営への取り組みを強化しております。また今後、人的資本を強化していくために従業員エンゲージメントの向上が必要不可欠と考えており、2023年度からエンゲージメントサーベイを実施いたします。この他、多様な人材が活躍する基盤を整備するため、子育てサポートの環境整備や定年延長の実施など性別・年齢などに関係なく多様性を受け入れられる職場風土の醸成と制度の構築にも注力しています。
(5) 指標及び目標
① 気候変動への取り組み
当社グループは「社会と地球環境のよりよい未来を拓くこと」を使命としており、気候変動をはじめとする地球環境問題への取り組みを事業活動における重要課題の一つとして認識しています。
気候変動への対応の第一歩として、2022年2月に当社及び国内子会社におけるGHG排出量(Scope1、2)を開示しました。2022年度は、在外子会社におけるScope1、2、及び当社単体のScope3の把握に努めるとともに、当社グループ全体における排出量削減に取り組んでいます。
また、シナリオ分析に基づくリスクと機会が及ぼす財務的インパクトの算出を進めるとともに、リスク対応と機会獲得のための新たな対応策を検討し、気候変動へのより一層の対応を進めてまいります。
■GHG(温室効果ガス)排出量推移
単位:t-CO2
| 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 |
Scope1 | 86,016 | 82,332 | 73,984 |
Scope2 | 155,572 | 138,590 | 129,848 |
合計 | 241,588 | 220,922 | 203,832 |
(対象:当社及び国内連結子会社)
※Scope2は、マーケット基準での算定値です。
※在外連結子会社も含めたグループ全体における2022年度の排出量は、当社ウェブサイト等にて、
2023年7月頃にお知らせする予定としています。
※削減目標は現在策定中であり、決定次第お知らせします。(ウェブサイト等での公表を予定)
② 人的資本・多様性に対する取り組み
イ 人材育成・社内環境整備に関する指標
当社では、上記「(4)戦略」において記載した人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について次の指標を用いており、当該指標に関する目標及び実績は次のとおりです。これらの指標項目については、今後も人的資本・多様性に対する取り組みを深化させる中で必要に応じて見直しを行ってまいります。
なお、連結グループにおいて主要な事業を営む当社においては指標のデータ管理とともに具体的な取組みを進めている一方、全ての連結グループでは行われておらず連結グループにおける記載が困難であることから、提出会社である当社単体の目標及び実績を記載しております。
人材育成 テーマ①人材の採用
指標 | 2022年度 | 目標(年度) | |
新卒採用者数 | 男性:10名、女性:3名 | 15名以上 | (2023年度) |
人材育成 テーマ②人材の戦略的配置
指標 | 2022年度 | 目標(年度) | |
海外派遣研修への派遣人数 | 2名 | 2名以上 | (2023年度) |
内部監査室キャリアパス人数 | 4名 | 4名以上 | (2023年度) |
人材育成 テーマ③多様な人材を活かす企業風土の醸成
指標 | 2022年度 | 目標(年度) | |
女性管理職比率(3月末) | 0.36% | 10%以上 | (2030年度) |
採用者に占める女性の割合 | 41% | 20%以上 | (2023年度) |
社内環境整備 テーマ①健康経営
指標 | 2022年度 | 目標(年度) | |
有給休暇取得率 | 74.9% | 80%以上 | (2023年度) |
社内環境整備 テーマ②エンゲージメント
指標 | 2022年度 | 目標(年度) | |
離職率(自己退職) | 1.6% | 1.0%以下 | (2023年度) |
社内環境整備 テーマ③多様な人材の活躍基盤構築
指標 | 2022年度 | 目標(年度) | |
男性育休取得率 | 29.4% | 50%以上 | (2023年度) |
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