日本発條 【東証プライム:5991】「金属製品」 へ投稿
企業概要
当社グループは、「創造挑戦型」の基礎技術の研究開発から「開発提案型」の新製品開発、さらには生産技術の開発にいたるまで、積極的な研究開発活動を行っております。あわせて活発な特許出願により、製品や技術の差別化を図る取り組みを強化しております。また、昨今の四輪車、二輪車の電動化に伴い、市場動向やお客様のニーズを迅速に研究開発へ反映させるため、マーケティング機能を有する電動化事業推進室にて、新製品及び新規事業開拓を進めてまいりました。さらに、2024年4月より、営業本部内に「EV営業部」を発足し、電動化関連含む開発営業、マーケティング機能を拡充し、加速して推進してまいります。
世界全体の課題となっている気候変動への対策としては、「ニッパツグループ カーボンニュートラル宣言」に基づき、2030年には2013年度比でCO2排出量を50%まで削減、2039年にはCO2排出量を実質ゼロにすべく取り組んでおります。電化・エネルギー置換・省エネといった活動を開始するとともに、各製品の製造及び製品の技術開発を通してCO2排出量実質ゼロに挑戦しております。
現在、研究開発は、本社研究開発本部、技術本部及び電動化事業推進室、各生産本部の開発部門、技術部門、設計部門等、また、各関連会社の開発部門等の、グループ全体の従業員数により鋭意推進されております。研究開発スタッフは全体で1,066名であり、これは全従業員数の6.0%に当たります。
当連結会計年度における当社グループ全体にて支出した研究開発費総額は、19,335百万円であり、これはグループ全体の売上高の2.5%に当たります。
当連結会計年度における事業セグメント別の研究開発活動は、以下のとおりであります。なお、上記の研究開発費には、本社研究開発本部、技術本部及び電動化事業推進室で行われている各事業部門に共通する材料技術、加工技術、接合技術、分析技術、解析技術等の基礎研究開発の費用2,392百万円が含まれております。
(1)懸架ばね事業
懸架ばね事業では、自動車メーカー各社の電動化への対応として、高い品質と付加価値を兼ね備えた製品の開発を推進するとともに、環境問題であるカーボンニュートラルの達成に向けた計画を実行に移し、CO2の削減を進めております。
懸架ばねでは、BEV(Battery Electric Vehicle)化に伴う車両の電費性能の向上に寄与する軽量化や、空力性能の向上にも貢献する部品のコンパクト化、車両重量増といったニーズに対応すべく、主力製品であるコイルばね、スタビライザ、板ばねを中心に新しい技術開発や製品開発を推進しております。
金属ベローズを用いた高耐久・軽量・コンパクトなアキュムレータでは、従来のブレーキ用に加え、サスペンション用として海外客先への対応を進めております。
当事業に関する研究開発費の金額は、4,266百万円であります。
(2)シート事業
シート事業では、競合他社に対し優位性を持つための基盤技術となる「安全性能」「快適性のロジック」「バーチャル技術」などの開発に取組んでおり、これらを土台として、市場ニーズや環境課題に応じた高付加価値製品の開発を行っております。
軽量化の取組みでは、生産台数の伸びが予想される電気自動車の航続距離伸長へ貢献するために、省電力技術の他、更なる軽量化を検討しており、アルミを用いた軽量化フレームや、フレーム部品の一部を金属から樹脂に置き換えた軽量化フレームの開発を進めております。今後は、金属フレームの軽量化、薄型化に加え、ばねやウレタンを含めたシート全体での軽量化・薄型化を狙ったアイテムの開発にも取り組んでまいります。
自動運転に向けたアイテムでは、自動運転でのニーズを考慮し、運転姿勢・休息姿勢両方において快適な姿勢をとることができ、長時間着座時の疲労低減や温熱快適性、動画視聴時に課題となる車酔い低減にも配慮したシートを開発し、一部アイテムは自動車メーカーと量産を想定した開発を進めております。
地球環境に配慮したシートの開発では、部品をバイオマス原料やリサイクル原料を使用したものに代替し、CO2排出量削減に効果の高い技術の開発を進めております。また、シート廃却時のリサイクルにも目を向け、リサイクル率向上を考えた、部材の単一素材化や、分別を考えた解体しやすい構造のシート開発も進めております。
当事業に関する研究開発費の金額は、5,994百万円であります。
(3)精密部品事業
精密ばね分野においては、自動車産業の変革期に対応すべく、電動化関連製品の開発に注力しております。モータ関連では、小型高回転化に移行するにあたって必要となる高効率モータ用のモーターコアの独自工法の開発を進めており、実用化の目処を立てております。インバータ関連では、従来のばね技術を活かしたパワーモジュールを冷却するための押え板ばねを製品化しております。この分野では、今後、熱マネジメント技術が必須となることから、設備導入を進め、評価、解析技術の拡充を図るとともに、次世代ばねの開発に取り組んでおります。従来製品に関するところでは、線ばね、皿ばねなどの製品においては、解析システムを構築し、これら製品の最適設計及び更なる信頼性向上を進め、HDD用メカニカルパーツにおいては、次世代HDDに対応するための材料開発、製品開発を進めております。
HDDサスペンションにおいては、10枚Disk搭載で容量20~24TBのCLA/TSAを全ての客先向けに量産開始、また熱補助型磁気記録(HAMR:Heat Assisted Magnetic Recording)用TSAの量産も開始しており、引き続き生産効率を改善した量産設備の海外展開、歩留まり改善等によるコスト低減、品質向上を進めております。26TB以降用のTSAは現在開発中ですが、HDD記録容量向上にはディスク一枚当たりの更なる記録密度向上や多盤化が必須で、磁気ヘッド位置決め特性改善とサスペンションの薄型化が必要となっております。多盤化では関連部品も同様に薄型化し、データセンターにおける冷却用高速ファン等の外部外乱による磁気ヘッド位置決め特性劣化も生じるため、いずれの場合においても特に共振特性高性能化が求められ、薄型サスペンション用の部材開発と共にデザイン最適化を進めております。
当事業に関する研究開発費の金額は4,738百万円であります。
(4)産業機器ほか事業
半導体プロセス部品事業においては、半導体の多積層化と微細化がさらに進み、その実現のために求められる機能、特性の多様化、高精度化に応えるための開発に取り組んでおります。
半導体製造プロセスの多様化から、耐熱、耐食性に優れた、一般的に難削材料とされる金属材料を用いた製品の試作・開発にも取り組み、中核となる接合技術に加え、それら難削材料の高精度・高効率加工の深耕を図っております。また、耐絶縁性、耐プラズマ性に優れたセラミック溶射を金属基材に施すことにより付加価値の高い製品の開発、生産を継続しております。
固相拡散接合技術を用いた半導体製造装置上部部品では、コンタミの発生リスクを極限まで低減した高清浄度製品の提供を実現しております。
金属基板(IMS:Integrated Metal Substrate)事業については、近年、パワー半導体市場の活況に伴いEV/HEV車載用及び産業用途向けの基板の需要が増加し、高品質、高信頼性に加え高清浄度に対する要求が高まっております。金属基板は高密度・大容量化に伴い、放熱性や耐ノイズ性のニーズが高まっており、それに応えるべく優れた高放熱絶縁材料の開発を継続的に推進しております。開発した絶縁材は高い放熱性を持つとともに優れた耐熱性と耐久性を備え、セラミック代替を目指しております。
その一方で、厚銅エッチングや特殊金属加工、徹底した自動化などの加工技術開発にも注力しており、高品質で生産性の高い生産ラインの構築と将来的な需要の伸びに対応する生産能力の拡充に取り組んでおります。
ゴルフシャフト事業では、肉厚調整・熱処理技術・解析技術を駆使して、あらゆる階層向けに商品を展開しており、前年度より建設を進めていた新開発棟が2023年4月に竣工し、開発体制がより充実したものとなっております。
そこから生み出された新ブランドのドライバー用カーボンシャフトは、当社独自の理論と製法によるシャフト挙動の
制御により、ヘッドスピードに応じた理想の飛距離を獲得することを可能にしております。
また、neoシリーズの集大成と言える最軽量グレード750GHneoの成立にも寄与しております。いずれも新たなラインアップ商品として、2024年初頭に市場リリースを果たしました。また、シャフト用に特化して開発した三価クロムメッキにより、環境へも配慮しつつ、高級感のある色調(ブラック及びシルバー)を実現し、ユーザーの満足度を高めております。
当事業に関する研究開発費の金額は、1,942百万円であります。
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