日本板硝子 【東証プライム:5202】「ガラス・土石製品」 へ投稿
企業概要
当社グループの製品とサービスの高付加価値化を進め、新たな成長の柱を確立するためには、研究開発の強化が必要不可欠です。
当社グループは、主要な市場である日本、米国、欧州で研究開発を行っています。これにより、各地域の顧客ニーズに対する理解をより深めることができます。また、前連結会計年度に完成した、日本の伊丹事業所の新研究棟は、現在全面的に稼働しており、当社の研究開発を一段と強化することが出来ました。
当社グループは、事業戦略に基づき研究開発活動に注力しています。研究開発部門は当社グループの新中期経営計画の策定にも関与しています。研究開発部門は、NSGグループの将来の成長にとって重要となる多くの取り組みを主導しており、その中には、脱炭素化、製品開発、デジタル化などが含まれます。
各事業部門は、地域レベルやグローバルレベルで、研究開発プロジェクトの優先順位付けや計画策定に積極的に関与しています。さらに経営レビューというプロセスにおいて、経営会議や取締役会でも、当社グループにおける研究開発活動の貢献度をモニターし、方向性を決めています。
当社グループにおける当連結会計年度の研究開発費は、99億円となりました。
セグメント別の研究開発費は下表の通りです。
| (単位:百万円) |
セグメントの名称 | 当連結会計年度 |
建築用ガラス事業 | 3,417 |
自動車用ガラス事業 | 3,077 |
高機能ガラス事業 | 810 |
報告セグメント計 | 7,304 |
その他 | 2,630 |
合計 | 9,934 |
(1)建築用ガラス事業
建築用ガラス事業では、住宅や商業用建物向けのガラス製品の拡充に引き続き努めています。顧客ニーズに応えるべく主要な分野で技術革新を行っており、例えば断熱ガラスやソーラーコントロール(遮熱)ガラス、内装用の装飾ガラスの品揃え強化や真空ガラス「スペーシア®」の改良があげられます。
また液体コーティングにおける長年の経験を活かし、様々な機能を有するコーティングガラス製品の新規開発を行っています。
太陽電池パネル用ガラス事業も建築用ガラス事業に含まれます。太陽光発電に使われるガラスの市場は、エネルギー市場の不確実性、中国産シリコンへの依存の懸念、気候変動や各国政府による奨励策などが後押しとなり、急速に伸びています。研究開発部門は、この薄膜太陽電池市場向けの製造工程や製品の改良において重要な役割を果たしています。
当社グループの製品は、Cd-Te太陽電池や急速に存在感を増しているペロブスカイト太陽電池、プラズモニック太陽電池などの薄膜太陽光発電技術を利用する顧客から高い評価を受けています。NSG独自のオンラインCVD(化学気相成長)コーティング技術は業界でもトップクラスであり、特定の顧客ニーズに合わせて対応することができます。
当社グループ外部への製品紹介、推進活動により、ペロブスカイト太陽電池の開発に取り組んでいる多くの研究チームは、NSGのコーティング製品である透明導電膜付きガラス(NSG TEC™)を基板材料として使用しています。実際に、ガラスを用いたペロブスカイト太陽電池に関する多くの公開文書に、NSG TEC™を基板として採用したと記載されています。
研究開発部門は、マテリアルズ・インフォマティクス(情報科学を用いた材料開発)やその他数値的手法を活用して、透明導電性や半導電性をもつ新しい材料の開発を行っています。これらの開発のいくつかでは、コーティング面積を広げて特性評価する段階に入っています。
以上により、建築用ガラス事業における当連結会計年度の研究開発費は34億円となりました。
(2)自動車用ガラス事業
当社グループは、競争優位の源泉であるコア技術に基づき、新製品の開発や核となる製造工程の継続的改善に重点を置いた研究開発を進めています。自動車産業界が求める、安全やセキュリティ、環境、快適さや利便性、スタイルといった領域で技術革新を進めています。「CASE」(Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化))と呼ばれる新しい潮流により、新たなビジネスの機会が増えています。
当連結会計年度の継続的なテーマの中には以下のものがあります。
・ガラス上に光学センサーを装着した部位における透明性の向上
・PDLC(高分子分散型液晶)を搭載し、調光機能により車内温度の快適さを提供する大型複合ルーフライト
・進化を続けるヘッドアップディスプレイ技術における新モデルの立ち上げ段階での支援
以上により、自動車用ガラス事業における当連結会計年度の研究開発費は31億円となりました。
(3)高機能ガラス事業
高機能ガラス事業では、光学設計、ガラスファイバー、ガラスフレーク等のガラス繊維製品、超薄板ガラスなど、当社のコア技術を活用した多くの成長分野で事業を行っています。
超情報化社会の到来により、データストレージや高速・大容量通信に関連する製品の需要が飛躍的に高まっています。イメージセンシング技術を用いた産業用検査機や物流ロボット、ドローンなどへの応用は小型で高精度の光学部品へのニーズを拡大し、加速します。さらに、高弾性・高耐熱などの特殊ガラス組成で、新たなガラス繊維や超薄板ガラス製品を加工技術含めて開発し、新市場を開拓していきます。
高機能ガラス事業部門では、ICTを中心に、市場ニーズの変化に合わせた独自性の高い製品の開発・商品化を加速することを研究開発の方針としています。
当社グループは、顧客と緊密に連携しながら、新規の顧客基盤の構築のため積極的に活動しています。研究開発部門は、顧客のニーズに合わせた新しいガラス組成および特殊コーティングの開発により、この活動を支えています。
以上により、高機能ガラス事業における当連結会計年度の研究開発費は、8億円となりました。
(4)その他
研究開発部門は、各事業部門に特化した業務テーマに加え、すべての事業部門を横断する技術にも取り組んでいます。
当社グループは基礎研究や新技術の調査を行うため、外部のパートナーとの協業も強化しています。協業の形態は、優れた大学との長期的な連携や、スタートアップ企業への当社グループ施設の提供など多岐にわたります。
研究開発部門では英国、日本、米国及びドイツの大学との関係を構築しています。
脱炭素化研究開発チームは、2030年のCO2削減目標を達成するためのワークプログラムを開始しました。AIの活用や電気溶融、代替燃料などの先駆的な取り組みに続き、当社グループは当連結会計年度において、英国のフロート窯に小型のCO2分離回収実証設備を設置しました。
以上により、その他における当連結会計年度の研究開発費は26億円となりました。
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