戸田建設 【東証プライム:1860】「建設業」 へ投稿
企業概要
(基本方針)
当社グループでは、経営方針において「社会の発展への貢献」「社業の持続的成長」「ステークホルダー価値の向上」を掲げております。従前より、事業活動がお客様、社員、協力会社、地域社会、株主・投資家や地球環境に与える影響に十分に配慮して行動するとともに、対話を通じた信頼関係構築に努めるなど、常にステークホルダーを意識して、サステナビリティの考え方に沿った経営を行ってまいりました。また、気候変動から地球環境を守る取り組みの一環として、TCFDへの賛同を表明し、その提言に則した分析・開示を行っております。
当社グループは、2015年に策定したグローバルビジョンのもと、全てのステークホルダーにとって「”喜び”を実現する」存在であり続けたいと考えて事業を営んでおります。持続可能な社会の実現のため、マテリアリティ(重要課題)を改めて特定し、2050年に向けて目指す経営の姿を「サステナビリティビジョン2050」として定めました。
(サステナビリティ推進体制の構築と運用)
サステナビリティ推進の監督・指導を行う「サステナビリティ委員会」を取締役会の諮問機関として設置しております。また、執行側に「サステナビリティ戦略委員会」を設置し、「ESG+B」の4つの観点から取り組むテーマを定め、経営資源の適切な配分のもと事業戦略に反映させるべく議論を深めてまいります(E:環境エネルギー、S:社会活動、G:ガバナンス、B:ベネフィット)。サステナビリティ戦略委員会が特定した課題の解決へ向けた取り組みは、本部・事業部など執行部門が優先順位を決めて実行しております。
(1) 気候変動への取り組み
当社グループでは、マテリアリティ(重要課題)のひとつとして「脱炭素社会の実現」を特定しております。
気候変動に関連するリスクを適切に把握、対処して企業としてのレジリエンスを高めていくとともに、事業機会を特定し、それに戦略的に取り組み、脱炭素社会の実現に向けた社会変化が、当社の事業運営に統合されるよう努めております。
(ガバナンス/リスク)
当社は気候変動に関連するリスクと機会を「戦略的影響度(影響度と発生可能性)」及び「財務的影響度」から評価しております。当社グループの重要リスクは、これらのリスクと機会の中から、環境エネルギー委員会での議論を経て特定され、サステナビリティ戦略委員会に報告されます。
取締役会はサステナビリティ戦略委員会から気候変動関連の事項について報告を受け、必要に応じてサステナビリティ委員会にて議論を行い、気候変動関連の課題への取り組み状況の監督を行っております。
気候変動に関連する課題への取り組み体制
(戦略)
当社では、気候変動関連のリスクと機会を短期(3年以下)、中期(3~10年)、長期(10年以上)の時間軸で評価し、特定された重要リスクへの対応策の実施を推進しております。
気候変動関連の重要リスクと対応策
リスクと機会の分類 | 重要項目 | 時間軸 | リスク・機会の考察 | リスク・機会に対する対応策 | ||
リスク | 物理 | 慢性 | 気温上昇 | 中/長 | ・気温上昇による労働生産性の低下及び作業者の健康リスク | ・施工の省力化・無人化の推進 ・作業者の健康管理デバイスの導入 |
水害等リスク | 短/中/長 | ・保有不動産の水害等による被災 | ・保有不動産及び不動産取得時の水害等のリスク評価 ・水害対策と適切な保険加入 | |||
移行 | 新たな 規制 | 発注者ニーズの変化 | 短/中/長 | ・低炭素設計・施工の技術提案力不足に伴う受注機会逸失リスク | ・低炭素製品の特定と調達の推進 ・低炭素建材の研究開発と適用拡大 ・TO-MINICAによる低炭素施工の推進 | |
炭素価格 | 中/長 | ・炭素価格増による建設コスト増加及び建設投資の縮小 | ||||
機会 | 製品/サービス | 省エネ建築 | 短/中/長 | ・ZEBの普及に伴う売上高の増加 | ・技術開発の推進と施工実績の蓄積 ・カーボンマイナス建築実現に向けた研究開発 | |
市場 | エネルギー ミックス変化 | 短/中/長 | ・太陽光・陸上風力発電所等への建設投資の増加 | ・再エネ発電所建設及び再エネ事業への資源集中 | ||
中/長 | ・洋上風力発電所の拡大 | ・浮体式洋上風力による発電実績の蓄積 ・洋上風力発電への資源集中と施工技術開発 | ||||
水害対策工事 | 中/長 | ・水害対策に関連したインフラ投資の増加 | ・防災・減災工事への資源集中 |
また、当社では「カーボンニュートラル実現に向けた行動計画」を策定し、事業活動における脱炭素への取り組みを推進しております。
※ 動力源を抜本的に見直した建設機械(電動・水素・バイオ等)
(指標と目標)
当社は温室効果ガスの削減目標を設定し、SBT(Science Based Targets:科学的根拠に基づく目標)認定を取得しております。また、「中期経営計画2024ローリングプラン」、環境大臣との「エコ・ファーストの約束」においてもSBTに整合した目標を設定しております。
2024年度を目標年とした「中期経営計画2024ローリングプラン」におけるスコープ1+2(総量)の削減目標は、2022年度実績において前倒しで達成する結果となりました。建設工事は工期が複数年に亘るプロジェクトも多く、工期の中で該当年度に施工している工種が温室効果ガス排出量に影響を及ぼします。2022年度に目標を達成した背景には、当年度に大量のエネルギーを使用する掘削等の土工事が少なかったことも影響しました。そのため、目標年である2024年度に向けては、今後も更なる温室効果ガス削減に取り組んでいく必要があると考えております。また、2019年1月にRE100イニシアチブに加盟し、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーとする取り組みも推進しております。
温室効果ガスの削減目標と実績
| 対象 | 単位 | 基準年 (2020年度) | 実績 (2022年度) | 目標 (2024年度) | ||
排出量 | 進捗率 | 排出量 | |||||
中期経営計画2024 ローリングプラン | スコープ1+2 | 総量 | t-CO2 | 93.6千 | ▲14.5% | 80.0千 | ▲16.8% |
スコープ1+2 (建設工事のみ対象) | 原単位 | t-CO2/億円 ※1 | 16.5 | - | 13.6 | 11.2以下 | |
スコープ3 | 総量 | t-CO2e | 6.24百万 | ▲0.8% | 6.20百万 | ▲10.0% | |
カテゴリ1 | 原単位 | t-CO2e/億円 ※2 | 702.8 | - | 700.4 | 540.7以下 | |
カテゴリ11 | t-CO2e/m2 ※3 | 4.9 | - | 2.9 | 3.5以下 |
| 対象 | 単位 | 基準年 (2020年度) | 実績 (2022年度) | 目標 (2030年度) | ||
排出量 | 進捗率 | 排出量 | |||||
SBT エコ・ファーストの約束 | スコープ1+2 | 総量 | t-CO2 | 93.6千 | ▲14.5% | 80.0千 | ▲42% |
スコープ3 | t-CO2e | 6.24百万 | ▲0.8% | 6.20百万 | ▲25% |
再生可能エネルギー利用率の目標と実績
| 対象 | 単位 | 2022年度実績 | 目標 | |
2040年度 | 2050年度 | ||||
RE100 | 再エネ電力利用率 | % | 61.7 | 50 | 100 |
(注) 温室効果ガス排出量及び再生可能エネルギー利用率の算定は、全連結子会社(39社(2023年3月期時点))を対象としたグループ連結で行っております。
M&A等による連結対象範囲の変更については、基準年(2020年度)以降の数値を毎年見直しております。
※1 完工高1億円当たりの排出量
※2 建材資材の取引金額当たりの排出量
※3 竣工延床面積1㎡当たりの排出量
(2) 人材の育成及び社内環境整備に関する方針
経営戦略を実現させる主体は「人財(従業員)」に他なりません。ゆえに人財戦略=投資と位置付け、対象領域として人財開発・人事制度刷新・働き甲斐改革・ダイバーシティ・グローバリゼーションの5つの領域を定めました。今後、各領域が連動して施策を展開することにより、経営ビジョンを実現できる価値の高い人財(次世代経営人財)を継続的により多く輩出することを目指しております。また、健康と安全に配慮した働きやすい環境を確保するとともに、多様性と人格・個性を尊重し、資質・能力を最大限発揮できる職場環境の実現に向け以下の5つの重点領域に取り組んでおります。
※ 関連する指標のデータ管理が、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、「人材の育成及び社内環境整備に関する方針」に記載の指標は提出会社単体の数値を記載しております。今後、連結グループ会社全体のデータを分析し、目標を設定した上で連結会社ベースでの開示を行ってまいります。
(人財開発)
① 研修体系(Off-JT)の刷新
人財開発・育成の基本方針を、「多様多彩な人財を育成・確保し、事業基盤を強化する」と定めており、一人ひとりの能力向上促進に向け、OJT(On The Job Training)による育成を主体としております。
Off-JTでの人財育成では、現行職務のスキルアップを主目的とする研修プログラムと、自身のキャリアアップに合わせて選択できる開発プログラムを整備し、中長期的な個人の成長を促しております。
② 次世代経営人財
次世代経営人財候補者が常時50名程度選抜されている状態を3~5年で実現するために、全社横断的な取り組みを実施しております。具体的には毎年度、各事業本部においてポテンシャル人財50名を抜擢し、伴走型コーチングを中心に効果的な育成施策を展開することにより、経営人財への育成を目指しております。育成に当たり社内のキャリアコーチによる1on1の定期的・継続的なコーチングを実施しております。
(働き甲斐改革)
① 働きやすさ・やりがい
従業員一人ひとりが日々の仕事に働き甲斐を感じ、チャレンジ精神を持って臨むことで新しい価値が生み出されます。また、従業員一人ひとりが思い描く理想の「ライフ(人生)」を実現する手段のひとつとして「ワーク(仕事)」を考え、家族や趣味、学びなども手段として捉え、これらが連鎖しながら充実した働き方を選択するWork in Lifeの推進に注力しております。従業員が当社で働きやすさを追求でき、それにより、仕事のモチベーションが高まり、生産性が向上します。Work in Lifeと生産性向上を両立させることを「働き甲斐改革」として追求してまいります。
② 健康経営の推進
当社の最大の財産は「人」であります。社員が心身ともに健康でなければ、新しい価値の創出や会社の持続的成長はありません。当社グループは、「健康経営の推進」を重要施策として掲げ、経営トップにより「健康経営宣言」を発信しております。また各種施策を通して抽出された健康課題達成に向けた重要指標(KPI)を設定し、健康経営推進ワーキングによる活動を中心に各種取り組みを実施しております。
(ダイバーシティ&インクルージョン(D&I))
持続可能な社会と企業の長期的な成長の実現のため、多様な価値観を持つ従業員の集合体こそ当社が目指すべき姿と考えております。経営戦略上の位置付けとして、2031年の創業150周年に向けて「未来ビジョンCX150」を策定し、当社グループは「多様性を力に」価値のゲートキーパーとして、協創社会を実現することを目指して歩みを進めております。
① ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の浸透
D&Iの浸透に向け、全ての従業員が能力を発揮できるしくみと企業風土の醸成を目指すとともに、心理的安全性の確保のために、次長職以上にアンコンシャス・バイアス研修を実施して、ダイバーシティ尊重意識の醸成をしております(2022年度までに約500名受講)。
② 女性活躍
女性の「キャリア形成」のため、女性経営者育成研修、大学講座等への派遣を行っております。当社の女性管理職比率は2022年度には3.7%を超える水準まで上昇しました。また、次代の課長代理級を担う主任級の比率も年々上昇して2022年度に17.9%となり、女性活躍推進の基盤に厚みが増しつつあります。
女性従業員の登用状況 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 |
女性従業員比率(%) | 14.8 | 15.4 | 16.1 |
女性管理職比率(%) | 2.6 | 3.1 | 3.7 |
女性役員比率(%) | 11.8 | 11.8 | 16.7 |
③ LGBTQに関する取り組み
LGBTQ(性的マイノリティ)が働きやすい制度・環境の整備として、「同性パートナーシップ制度」の導入やLGBTQガイドブック発行、研修の実施など取り組みを推進しております。またALLY(理解者)の輪を広げ、誰もが安心して働くことができる職場風土づくりのため、オリジナルALLYシールを希望者(2022年度は1,134名)に配布しております。
④ 両立支援制度の充実
育児休業を取得する女性の復職を支援するため、企業主導型保育園の契約や「ならし保育休暇制度」などを導入し、復職後も柔軟な働き方を推進し、長期的なキャリア形成をサポートする環境を整備しております。また、当社は2020年度より男性育児休業取得率100%を達成しており、男性の積極的な育児への参加を可能とする社内風土を醸成してまいりました。更に2022年の法改正に伴い10月には男性社員の「産後パパ育休制度」を導入し、28日間を特別休暇(有給)とするなど、より利用しやすい育児休業制度の改定を行っております。
介護休業制度においては、定年延長によりシニア職の活躍もますます見込まれることから、制度の充実や介護のハンドブックの活用により利用しやすい環境を整備しております。
(等級・報酬制度の刷新)
若手からシニア層に至る従業員一人ひとりが、働き甲斐を実感でき、前向きに自己実現を図り、エンゲージメントが向上することにより経営戦略の実現や企業価値の向上に資するよう、等級・報酬制度の刷新を進めています。
① コンセプト
a.役割・貢献度による評価・処遇 b.社内外環境・就労観変化への対応 c.優秀人財への適切な処遇
d.処遇の市場競争力 e.賃金体系のオープン化
② その他の取り組み
納得性、公平性の高い評価制度への見直しや定年延長(選択定年)制度、役職定年制度の導入など、将来に向けて持続的な企業価値向上の基盤となる制度の整備を進めております。
(グローバリゼーション)
① グローバル人材の育成
海外事業のさらなる拡大の担い手となる外国人従業員について、当社は2024年度末までに従業員比率1.5%以上に高めることを「中期経営計画2024ローリングプラン」での目標としております。そのために、当社グループとしては、外国人留学生のほか、海外事業の知見の高い優秀な人財を日本以外からも積極的に採用しております。また、国内人財に対する英語教育や海外法人へのローテーション異動と戦略的配置により、グローバル人財の育成・確保に取り組むほか、多様な人財・文化を通じた知と経験の組み合わせによる個と組織の活性化を目指しております。
| 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 |
外国人従業員比率(%) | 0.6 | 0.6 | 0.9 |
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