応用地質 【東証プライム:9755】「サービス業」 へ投稿
企業概要
当社グループは、事業基盤となる三次元化技術やIoT技術および地盤情報データベース等の基盤技術の研究開発を推進するとともにビジネスモデルの変革や業務効率化が図れる分野に対して積極的にDXを推進しています。これらの研究開発成果をインフラ・メンテナンス事業、防災・減災事業、環境事業、資源・エネルギー事業の4つのセグメントにおいて活用し、顧客ニーズを第一優先としたソリューション創出に取り組んでいます。当社グループの核となるべき基盤技術の開発およびその開発成果をソリューションにするための開発を技術本部が主導、業務の効率化やDX技術を利用した新規事業の開発をDX推進本部が主導し、さらに両本部と事業主体部門が連携して開発を遂行しています。これにより,新規ビジネスの創出および既存ビジネスの高付加価値ソリューションの創出をスピーディーに実現でき、市場価値・環境価値・顧客価値(ESG)の向上を図ることができます。
社会課題解決に寄与する組織として、2022年に大学等の研究機関と密接に連携した共創ラボを開設いたしましたが、引き続き最新の学術的情報を吸収しながら、自然災害、気候変動、人口減少といった社会問題の解決を行っています。研究成果については、学会やメディアを通じて社会に広く発信しており、2023年は豪雨・台風などの自然災害とそれによる経済被害の推定に関する研究成果を発表いたしました。
海外グループ社を取り巻く状況は、2023年度においてさらに複雑化の様相を呈しています。新型コロナウィルスの蔓延をきっかけに発生したサプライチェーンの混乱による影響、ロシアによるウクライナ侵攻、ガザ地区によるイスラエルとハマスとの紛争、および、これに呼応した武装組織が紅海における海上輸送ルートへの攻撃は、国際物流の混乱、製造に必要なエネルギー、素材、輸送費の高騰を世界規模でもたらしており、これによるグループ社への影響も長期化の様相を呈する状況になっています。
また、中国における景気減速と中国政府による国産化政策は、中国市場の構図を大幅に変化させており、中国市場に依存をしてきた海外グループ社は大きな影響を受けています。
しかし、いかなる状況においても、気候温暖化にともなう風水害や地震災害による脅威の増加、生活環境の悪化は、地球上の全ての人にとって解決するべき共通の課題です。当社グループはこれらの課題解決に向けて必要な研究開発を推進していきます。
当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費の総額は2,251百万円でありました。
(1) インフラ・メンテナンス事業
国内のインフラ・メンテナンス事業セグメントにおいては、道路、トンネル、堤防、建築基礎などのインフラの建設と維持管理に関するソリューション開発を行っております。
老朽化するトンネルの維持管理分野では、走行型の高感度カメラで撮影した8K画像に対してAI技術を活用し、ひび割れの発生状況およびその進行性を把握する技術を開発しています。この技術は、トンネル全体ではなくどの地点で点検を行えば良いのかスクリーニングする技術であり、トンネル点検での人手不足・トンネルの老朽化進行といった社会課題に対して、点検の効率化、コスト縮減などで貢献することができます。
地盤振動を3次元かつリアルタイムで計測・解析し、地盤状況の変化(S波速度構造など)を可視化する技術「OYO Tracker 4D(仮称)」を開発しました。この技術は当社が開発した3次元常時微動トモグラフィ技術をリアルタイムでモニタリングができるように改良したものです。シールドトンネルなどの地下工事や地盤改良工事において発生する地盤の変化をモニタリングし、工事や周辺環境に与える重大な影響を未然に防ぐことで社会に貢献します。
海外グループ社のGEOPHYSICAL SURVEY SYSTEMS,INC.(米国)は、インフラ・メンテナンス用途向けの地中レーダの次世代機の開発、および、それに付随するサービス提供に関わる開発が終了し、FLEX NXシリーズとして販売を開始しました。
前期につづいてアスファルト舗装道路のアスファルト材料の材質管理、舗装工事の品質管理などに有効な装置としてPaveScanシリーズの適用拡大を図っており、米国以外の複数の国におけるアスファルト舗装道路での適用検証を行っています。
当連結会計年度における研究開発費の金額は912百万円であります。
(2) 防災・減災事業
近年の気候変動による局所的大雨の増加により、地下鉄などの地下空間への浸水をどのように防止するかが社会課題となっており、施設および地下空間への浸水を正確に予測する技術が重要とされています。そこで建物内部と外部の点群データから精密な3次元モデルを構築し、サイバー空間上で浸水の状況をシミュレーションする技術を開発しました。モデルには止水版などの浸水対策も付与することができ、浸水対策の効果を検証することができます。当社が開発済みのIoTセンサ(冠すいっち、水位計)との連動により、センサドリブンな浸水対策および避難計画支援が可能になると考え、ソリューション開発を継続推進しています。
海外グループ社のKINEMETRICS,INC.(米国)は、地震観測機器の専門メーカーとして地震防災に必要な地震計の開発、販売、観測システムの構築およびソリューション提供を行っています。サプライチェーン問題の克服、データ収録機の小型化、低消費電力化に向けた製品開発に取り組んでいます。
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、国内では再生可能エネルギーの主力電源化などの様々な取り組みが行われています。その実現のためには、地域レベルでの脱炭素の取り組み『地域脱炭素』が必要不可欠とされています。日本は自然災害リスクが高く、また地方では少子高齢化・過疎といった課題もあり、地域脱炭素を実行していくためには、地域ごとに多面的な考察が必要となります。再生エネルギーのポテンシャルのポジティブ要因、自然災害などのハザード情報などのネガティブ要因、そこに都市の基本情報や人口の将来予測を組みあわせて評価する手法「ポジティブゾーニング」を開発しました。対象となる地域の最適な「脱炭素」を実現するための戦略策定を応用地質は支援していきます。
当連結会計年度における研究開発費の金額は605百万円であります。
(3) 環境事業
低コスト・低環境負荷型の自然由来重金属等の新たな対策方法が望まれますが、特に岩石を掘削した岩砕(ずり)の対策では、盛土内部における重金属等の溶出や吸脱着といった物質挙動は十分に解明されておらず、万が一の事態をおそれて封じ込めや吸着層工法などの安全側の過大な対策が講じられているのが現状です。そこで重金属を含む盛土中に様々なIoTセンサを配置し、盛土中の間隙水のPHと酸化還元電位をリアルタイムでモニタリングする技術「MNAD(Monitored Natural Adsorption and Desorption)工法」を開発しました。
当社つくばオフィスに作成した実験盛土に様々な最新の IoT センサを設置し、盛土の内部環境の測定と間隙水・浸出水の定期水質分析を行い、重金属等の挙動やシステムの安定性を確認しています。今後は、本工法の低コストおよび低環境負荷という利点を発信するとともに、さらなる本工法の改良開発と普及を目指していきます。
当連結会計年度における研究開発費の金額は54百万円であります。
(4) 資源・エネルギー事業
洋上風力発電事業で重要な建設海域の海底地盤調査においては、当社の強みである物理探査および機器開発技術を活用し、これまでに海底微動アレイ探査や3次元音波探査方法などを開発してきました。今後の洋上浮力開発の浮体式への移行やEEZ海域への展開に対応するために、継続的に手法の開発を行っております。
海外グループ社のGEOMETRICS,INC.(米国)は、地震探査、磁気探査装置などの専門メーカーとして、鉱物資源探査や土木地質調査向けの製品の開発を行っております。
再生エネルギー開発に向けて世界的に洋上風力発電所建設が世界各国でおこなわれています。これらの海域には先の大戦やその後の紛争で投下された不発弾が多くあり、これらの探索のために磁気探査装置が用いられています。この販売が好調ですが、さらに超小型磁気センサを組み込んだ製品を開発し、既存の磁気探査装置の小型化、軽量化を図ることに取り組んでいます。
ROBERTSON GEOLOGGING LTD.(英国)は、ボーリング孔を利用した調査(検層)機器の開発・製造・販売を行っています。同社も洋上風力発電所建設やインフラ整備に関わる土木地質調査への適用が増えてきたことを受けて、関連する検層機器が深い水深でも稼働するように機能の向上や専用の解析ソフト(GeoCAD)とのパッケージ化などの開発を行っています。
当連結会計年度における研究開発費の金額は678百万円であります。
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