平田機工 【東証プライム:6258】「機械」 へ投稿
企業概要
文中における将来に関する事項の記載は、本書提出日(2024年6月26日)現在において当社グループが判断したものです。
① 経営方針
当社グループは、「我々は勇敢に技術革新を追求し 人格を養い能力を高め社会の発展に寄与する」という創業の精神(綱領)に基づきながら、時代時代で生まれてくるお客さまの商品と同様に、当社グループも常に、新しい技術への挑戦と革新を続けることで、時代の変化に対応してきました。また、新しい市場、お客さま、商品技術に関わることで、当社グループの成長につなげるとともに、世界中での仕事を通じて個人の見聞を広げ、個人の能力を高め、世界で競争できる能力を高めてまいりました。
さらに、2022年には中期経営計画(2022年度~2024年度)の公表と同時に、70年を超える歴史の中で積み重ねてきた当社の経営哲学を集約した「人技幸献」というスローガンを公表しました。これは「Hirataに関わるすべての人を幸福にするとともに、社会に技術で貢献する」という意味であり、 Hirataは技術があってこそ、技術は人(社員)があってこそ、Hirataは働く社員の幸せがあってこそ存在するということを表現したものでもあります。
このような経営方針のもと、今後もあらゆるステークホルダーの皆さまとのコミュニケーションを深めながら、企業の持続的な成長に向けて取組んでまいります。
② 外部環境認識
当社が成長市場と位置付けている市場への設備投資は、足元の変動はありながらも拡大傾向にあります。自動車市場は各メーカーのEVに対する投資に一服感があるものの継続した設備投資があり、半導体市場は在庫調整期間を経て底を打ったとの認識で市場が拡大すると見込んでおります。また、米国においては、インフレ抑制法(IRA)と、経済安全保障政策により、設備投資が促進されております。それ以外の世界諸国においても投資促進策が施行されております。
そのような市場拡大の一方で、エネルギー価格の高騰や物価上昇、為替の円安進行の影響は、当社事業における調達品価格と人件費の上昇、人材確保に大きな影響を及ぼしており、収益性の向上に向けた重要な課題と認識しております。このような社会的要請への対応策として、調達品価格の上昇に対してはサプライヤーさまとの共存共栄を目指し価格転嫁を受け入れるとともに、付加価値向上への取組みにより、当社がお客さまから受注する価格を引き上げることに取組んでおります。また、人件費の上昇、人材確保に対しては、物価高騰を上回る賃金上昇を実施し、事業戦略の実現に必要な人的資本への積極的な投資の機会と認識しております。さらに、円安進行に対しては、海外向け設備における価格競争力につながっており、競争状況に応じて戦略的なシェア拡大に取組んでおります。
③ 中期経営計画の取組み状況
中期経営計画(2022年度~2024年度)においては、当社グループとしての経営基盤を固め、既存事業で利益を出しながら、成長市場でのビジネス拡大を図る3年間と位置付け、2025年3月期の売上高1,000億円、営業利益100億円、営業利益率10%、ROE11%を数値目標に掲げております。本中期経営計画の数値目標に対して、当期は売上高828億39百万円、営業利益60億47百万円、営業利益率7.3%、ROE7.0%となりました。なお、資本コスト(WACC)6.1%に対して、売上債権増加と工場設備投資による固定資産増加により、投下資本が増加したことに加え、物価上昇による利益押し下げの影響により、投下資本利益率(ROIC)は6.3%となりました。セグメント別の実績は、次のとおりです。
2022~2024年度セグメント別の売上高・営業利益の目標と実績 (単位:億円)
| セグメント | 中計最終年度目標 (2024年度) | 1年目実績 (2022年度) | 2年目実績 (2023年度) |
売上高 | 自動車関連 | 400 | 302 | 369 |
半導体関連 | 400 | 289 | 273 | |
その他自動省力機器 | 200
| 169 | 160 | |
その他(消去含む) | 22 | 23 | ||
合計 | 1,000 | 784 | 828 | |
営業利益 (営業利益率) | 自動車関連 | 20 (5%) | 15.5 (5.1%) | 16.5 (4.5%) |
半導体関連 | 60 (15%) | 34.4 (11.9%) | 44.5 (16.2%) | |
その他自動省力機器 | 20 (10%)
| 9.3 (5.5%) | 1.1 (0.7%) | |
その他(消去含む) | △0.1 (△0.7%) | △1.7 (△7.3%) | ||
合計 | 100 (10%) | 59.2 (7.5%) | 60.4 (7.3%) |
(注)「2023年度 決算説明資料」にて、2024年度の通期業績予想の営業利益と、中期経営計画で定めた営業利益の差異要因について、ご説明しております。詳細につきましては、以下をご参照ください。
https://www.hirata.co.jp/files/optionallink/ns_20240510_02.pdf
中期経営計画の基本方針と施策に対する実績と課題への対応策は、次のとおりです。
(1)成長市場でのビジネス拡大
自動車関連については、
・2023年後半より北米市場におけるEV販売台数の伸びが踊り場に入りましたが、当社は高性能なICE(内燃機関)にも柔軟に対応できる設計思想により、ICE、EV双方において変動する需要を取込んでおります。
・物価上昇に対応して2023年度の新規受注案件から本格的に価格転嫁の取組みを推進しております。
・持続的な収益拡大のため、人材・生産能力への先行投資として、人員採用数増、適切な人員配置、関西工場建替、七城工場増築等を実施し、量産効果が見込める設備の開発・改良に優先的に取組んでおります。
・注力分野であるEVバッテリーについては、充放電関連の大型案件を受注しております。また、中長期的な収益拡大に向けて、次世代バッテリー・燃料電池関連の量産効果を向上させるべく、標準モジュールを確立することに取組んでおります。さらに、新たに専門部署を設置し、お客さまの製品開発段階から参画することで、期待されるスペックを低コストで効率よく実現できる体制作りに取組んでおります。
・中期経営計画で目標に定めたキーデバイスの開発・改良における自動倉庫の改良、Dual Head Wire Bonding Machine、AGVの改良、Plant Simulationについては、2022年度に目標を達成しました。その開発成果から、Plant simulationについては、バッテリー組立・検査ライン、充放電ライン、EDU組立ライン、AGV・AMR(注)搬送システム等の成長市場における営業段階において、当社生産ラインだけでなく工場全体のモノの搬送の流れを解析し生産最適化する「物流解析ツール(搬送シミュレーション)」を積極的に導入し、お客さまに完成した動的イメージをご提案することで、大型で複雑な案件の受注につながっております。なお、開発未完了の充放電機については、専業メーカーとのパートナーシップにより、内製化から外部調達に切り替え、市場シェア拡大を優先しております。さらに、新たな開発品として、従来の無人搬送レベルから自律搬送レベルに機能を高度化したAMRを開発しております。
(注)AGV:Automatic Guided Vehicle(無人搬送車)
AMR:Autonomous Mobile Robot(自律走行搬送ロボット)
半導体関連については、
・生成AI向けの後工程装置や、EV車載向けパワー半導体をはじめとするレガシー半導体の投資が活性化したことにより、受注が増加傾向となっております。生産能力の拡大に向けては、海外関係会社と協力体制を構築しており、既存の中国・台湾に加え、東南アジア(マレーシア)においても連携を強化しております。
・中国においては当社と中国関係会社の間で、ロードポートの技術ライセンス契約を締結し、現地生産を拡大しております。地産地消により、輸送コスト削減、リードタイム短縮、貿易リスク回避を図っております。
・半導体需要が変動する中で、納品までのリードタイム短縮は継続的な課題と認識しており、サプライヤーさまによる協力に加え、DXの推進等による生産能力の向上と部材の入手性向上に取組んでおります。
・半導体関連生産設備の新規開発を加速させ受注拡大を目指すため、SEMI規格に準拠した標準ソフトウェアを開発・内製化しております。なお、このソフトウェア開発は、つながる工場化の脅威である、制御システムへのサイバー攻撃リスクを低減するOperation Technologyセキュリティへも対応しております。
その他自動省力機器・その他については、
・事業ポートフォリオの見直しという観点において、家電メーカー向け組立設備、医療・理化学機器等、高付加価値が見込まれる分野を見極めながら開発および生産を実施しております。
・医療・理化学機器においては、新分野への参入に注力しております。集束超音波技術および業界知見を持つソニア・セラピューティクス社と業務提携し、切除不能の膵がんを対象に、当社ロボットを組み込んだ治験用の集束超音波がん治療装置を共同開発し、国内病院に納入しております。今後は、国内向けの量産装置の開発、量産体制の構築、海外向けの臨床試験装置の開発を進めてまいります。
・新規事業創出や事業領域拡充を目指した取組みとして、かねてより取組んできた植物遺伝資源研究が事業化の体制構築段階へ移行しており、「ぷらんつプロ」という当社独自のサービスを開始しました。本サービスを通じて、植物遺伝資源提供国における社会的課題の解決に貢献するとともに、当社は遺伝資源の提供国と利用者との橋渡し役を目指すことで、事業と社会課題解決の両立を図ってまいります。
(2)グローバル企業としての競争力強化
・お客さまの地産地消のニーズに加え、物価上昇、人件費上昇等の経営環境変化に対しても、海外関係会社と連携強化し、定期的な教育・指導の実施や、連携案件を拡大させております。
・関係会社の事業ポートフォリオについて、高付加価値が見込め、量産が見込める分野へのシフトを図っております。中国の関係会社においては、これまで自動車関連設備を中心としてきましたが、半導体関連にも注力し、事業領域の拡大を図っております。
・当社グループの相乗的な企業価値向上に向けては、関係会社の経営体制およびレジリエンスを強化することが喫緊の課題であると認識しており、2023年度はその課題解決の前提となるグループガバナンス基本方針を社内向けに策定して活動開始しました。2024年度は、グループ経営体制のあり方を見直し、関係会社を統括するグループ本社としての機能を高度化する活動に注力してまいります。
(3)ESG経営の取組み強化
・中長期的な経営戦略と連動させながら全社的な取組みとして推進していくため、サステナビリティ推進委員会を設置しております。代表取締役社長が委員長を務め、適宜社外取締役や外部有識者の意見も取り入れながら、当社グループのサステナビリティ活動の推進を図っております。取組み状況については積極的に開示し、ステークホルダーの皆さまとの対話強化に取組んでまいります。
詳細については、「2.サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
(4)ニューノーマル時代に即した経営の実現
・基幹業務をカバーする情報システム(PLM・ERP)については、2025年本稼働に向けたシステムの検証を進めております。製品の設計情報をライフサイクルに合わせて管理するPLMを導入することで、さらなる業務効率の向上、生産手法の最適化、品質の向上、保守ビジネスの拡大等が実現されることを目指しております。
・物流解析の推進、エミュレータの積極的な活用とリモートによる事前検証・出荷前検収により、生産効率の向上を図るとともに、お客さまへの提供価値の拡大につなげております。エミュレータは活用する事業分野の拡大と機能向上を進めており、検証や検収等での活用だけでなく、新たなサービスとして位置づけ、収益を生み出しております。
・VR・ARなどXRは導入が進み、さらなる活用拡大を検討しております。ARの具体的な取組みとして、組立・メンテナンスにおいてARを用いた作業マニュアルを導入することにより、メンテナンス作業の生産性向上、作業者の効果的な設備技術習得・トレーニングを実現することを目指しております。
・「デジタル化の進展への対応」はマテリアリティの一つとしても掲げており、サステナビリティ推進委員会においてもワーキンググループを立ち上げ、取組みを強化してまいります。
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