帝人 【東証プライム:3401】「繊維製品」 へ投稿
企業概要
(1) 帝人グループが目指す姿
帝人グループは、企業理念に基づき、持続可能な社会の実現に向けて、長期ビジョンである「未来の社会を支える会社」になることを目指しています。世界的な社会課題とSDGsが掲げるゴールを踏まえ、優先的に取り組む5つのマテリアリティ(重要課題)を特定し、持続可能な社会の実現と企業価値のさらなる向上を目指します。
帝人グループは、創業からの約100年、社会のニーズを先取りし、新たなビジネスへの変革と挑戦により事業基盤を構築してきました。その中で、顧客や患者さんの困りごとに真摯に向き合い培ってきた、信頼の品質と顧客リレーション、患者さんや地域社会のサポート力といった強みを活かし、ポストパンデミック社会において、重要社会課題を解決する企業への変革を加速させていきます。また、長期ビジョンである「未来の社会を支える会社」をより具体化し、「地球環境を守る会社」「より支えを必要とする患者、家族、地域社会の課題を解決する会社」として、環境貢献に資する自動車・航空機、エネルギー領域や、希少疾患・難病などの疾病領域を中心に社会に貢献していきます。
(2) 対処すべき課題
① 経営方針
マテリアル事業の大幅な収益性悪化を主要因として、中期経営計画2020-2022で掲げた財務目標値はいずれも未達となりました。具体的にはROE10%以上、営業利益ROIC8%以上の資本コストを意識した目標値を設定しましたが、いずれも未達となり、市場評価の一つであるPBR(Price Book-value Ratio:株価純資産倍率)が1倍割れの状況にあります。そのような状況に鑑み、中期経営計画2020-2022から、目指す姿に大きな変更はないものの、将来の収益源育成分野(Strategic Focus)と利益ある成長分野(Profitable Growth)に区分した投資戦略は一旦廃止した上で、2023年度は、将来の成長回帰に向けた、以下の収益性改善の改革を最優先します。
1) 複合成形材料事業、アラミド事業、ヘルスケア事業の3つの事業の収益性改善
2) 経営判断・実行の迅速化を促す経営体制への見直し
これらの成果として、2023年度までに300億円以上の収益改善を目指します。並行して事業ポートフォリオの再構築の検討を進め、2024年度に帝人グループ新中期経営計画を開示する予定です。
② 対処すべき課題
事業別の経営環境及び対処すべき課題は以下のとおりです。
| 経営環境 | 対処すべき課題 |
複合成形材料 | ・半導体不足、急激な原材料価格高騰、労働力不足に対し、価格転嫁、コストダウン、内製化、自動化の対応策を実施したが、カバーできず大幅赤字が継続 | ・北米事業の収益性改善余地を徹底的に再検討し、立案した約130個の改善策を実行 ・北米の改善策の成果が認められない場合は、事業売却等の可能性も含め、事業継続是非を判断 |
アラミド | ・生産能力増強を実施も、天然ガス価格高騰によるコストアップ、労働力確保難や生産不調、停電や火災の発生による生産量未達により、収益性が大幅悪化 | ・生産性改善、天然ガス価格高騰対策、増産/増販の重要施策に資源配分し、2023年度で将来の収益性回復に目途を付ける(営業利益改善目標+70億円) ・サステナビリティでの差別化、販売数量増によりトップシェアの地位を強化 |
ヘルスケア | ・医薬品は、将来の収益に資する製品パイプラインが不足 ・在宅医療は、HOT・CPAPの国内トップシェアを維持する一方、新規製品・サービスの創出は未達 | ・国内トップシェアの在宅医療機器事業で培ってきた事業基盤を希少疾患・難病領域等の医薬品に活用 ・必要な機能別リソースをゼロベースで見直し、2023年度に抜本的な固定費削減の実行に目途を付ける |
樹脂 | ・主に中国市場における需要減退により販売量減 | ・高付加価値シフト、環境戦略推進により収益力向上を進める |
炭素繊維 | ・COVID-19に起因し、採用に向け進捗していた次世代航空機用途開発が遅延 | ・航空機中間材料プログラム認定活動や環境戦略を推進するとともに、収益性改善を進める |
繊維・製品 | ・原燃料価格高騰等の環境下でも安定的に収益計上する事業へ変革 | ・環境戦略推進とともに、成長分野(モビリティ、インフラ、グローバルアパレル)の成長を加速化 |
IT | ・ネットビジネスの顧客獲得が伸長 | ・ITサービスはヘルスケア事業への重点化を推進、ネットビジネスでの更なる成長機会を探索 |
経営体制としては、外部環境変化にレジリエントに対応する為に、2023年度より以下の対応を行い、経営判断・実行を迅速化します。
項目 | 対応策 |
本社・事業の役割明確化 | ・執行役員体制の再編による責任・役割明確化(執行役員15名体制に半減) ・事業本部をCEO直轄に集約し、組織階層をフラット化 |
事業運営機能の強化 | ・本社による事業戦略・計画の立案やモニタリング力を強化 ・事業本部長に決定権限の更なる委譲、実行の迅速化とリスク管理を両立 |
本社機能の
| ・新事業組織をコーポレートが管轄する新事業本部へ再編・集約 ・将来に向けた協創によるイノベーション創出はコーポレートにて横断的に実施 ・本社スタッフの配置・規模の最適化(2025年度固定費削減目標40億円) |
以上により、成長ドライバーとなるべき事業を中心とし、収益性改善のための諸施策を着実に実行し、経営体制の変革を進めることで、投資家をはじめとするステークホルダーの期待に応えられる持続的な成長と中長期的な企業価値向上の実現に向けて取り組んでいきます。
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