山口フィナンシャルグループ 【東証プライム:8418】「銀行業」 へ投稿
企業概要
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループでは、使命・存在意義(パーパス)を基軸とした事業活動に取組み、持続可能な社会の実現に貢献していくための基本的な方針として「グループサステナビリティ方針」を制定するとともに、特に重点的に取組む12項目のESG課題「マテリアリティ」を特定しております。
また、グループサステナビリティ方針及びマテリアリティに基づき、グループ一体となってサステナビリティ経営を推進していくため、グループの推進機関として「サステナビリティ推進委員会」を設置するとともに、特に重要な課題として気候変動対策とダイバーシティ&インクルージョンに取組んでおります。
《グループサステナビリティ方針》
私たちは、地域の皆さまと共に歩み、共に成長するため、様々な事業活動を通じて、多様な課題の解決に取り組み、地域の価値向上を実践していくことにより、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
《マテリアリティ》
(地域社会・経済活性化への取り組み)
①人口減少・少子高齢化への対応
②地域におけるイノベーション創出、地域産業の成長サポート
③地域コミュニティとの連携強化
④商品・サービスの安全性と品質向上
(環境保全への取り組み)
⑤省資源・省/創エネルギーへの対応
⑥大気汚染・気候変動への対応
⑦環境に配慮した商品・サービス開発
(役職員全員の働きがいへの取り組み)
⑧人材育成・研修機会の創出
⑨安心・安全な労働環境作り
⑩多様な人材の活躍(ダイバーシティ&インクルージョン)
(強固な経営基盤づくりへの取り組み)
⑪ガバナンス体制・内部統制の強化
⑫経営の透明性向上と説明責任
《サステナビリティ推進体制》
(1) 気候変動対策
当社グループは2021年12月に気候関連財務情報開示タスクフォース(以下TCFD)提言に賛同、TCFDコンソーシアムに参画しており、同提言に沿った情報開示を実施しております。
① ガバナンス
当社グループでは、代表取締役社長CEOを委員長とするサステナビリティ推進委員会を定期的に開催(2022年度開催実績:10回)し、気候変動を含むサステナビリティ関連事項について、審議及び進捗管理を一元的に行っております。委員会の下に、分野別のワーキンググループを設置し、組織横断的な推進体制を構築しております。
また、サステナビリティ推進委員会における審議内容は、適宜グループ経営執行会議での議論を経て取締役会へ付議しており、気候変動を含めたサステナビリティに関する取組みを取締役会が監督する体制としております。
なお、報告・決議結果に基づく気候変動関連のリスクや機会等は経営計画に反映しております。
2022年度における、取締役会へ付議した主な内容は以下のとおりであります。
項目 | 内容 |
カーボンニュートラルに向けた取組み | ・当社グループにおけるCO2排出量(Scope1、2)の実績・目標設定について |
・地域のお客さまのカーボンニュートラルに向けたソリューション開発について | |
・GXリーグ基本構想への賛同について | |
サステナビリティの取組み状況 | ・TCFD提言への対応状況について |
・移行リスク、物理的リスクに関する分析結果について | |
サステナビリティ推進の加速化 | ・今後のサステナビリティ推進の方向性について |
② 戦略
イ.リスク
当社グループの主要エリアである山口県、広島県、福岡県におけるCO2排出量は全国上位であることからも、気候変動対策への取組みを地域の重要課題の一つと考え、気候変動リスクを以下のように認識しております。
| 移行リスク | 物理的リスク | |
主な評価項目 | 政策/法律 | 市場/技術 | ・異常気象の激甚化 |
・炭素税、炭素価格 ・GHG排出量規制への対応 等 | ・消費者など顧客の行動変化 ・エネルギー価格 ・エネルギーミックス 等 | ||
・操業コストの増加、稼働率の低下及び多額の設備投資等により、財務内容が悪化するリスク | ・カーボンニュートラル実現に向けた対応が不十分で、ブランド価値が毀損するリスク | ・物損被害の発生や事業の中断により、事業継続性や財務内容が悪化するリスク | |
当社グループに与える主なリスク (時間軸(注)) | ・操業コスト・製造/建造コストの増加、資産価値低下及びブランド価値の毀損等により、取引先の財務内容が悪化し、与信コストが増加するリスク(中期~長期) ・気候変動に対する不適切な対応や不十分な情報開示により、当社グループの評判が悪化するリスク(短期~長期) | ・風水災等の発生による事業活動の停滞、物損被害により、取引先の事業や財務内容に影響を与え、与信コストが増加するリスク(短期~長期) ・風水災等の発生により、当社グループの本支店が被災し事業継続が困難となるリスク |
(注) 短期を3年未満、中期を3年以上10年未満、長期を10年超としております。
当社グループでは、TCFD提言に基づき複数のシナリオを用いて、移行リスク、物理的リスクにかかるシナリオ分析を実施しました。移行リスクについては、GHG排出量が大きく気候変動の影響を受けやすいことや融資ポートフォリオを勘案し、電力セクター及び自動車セクターを分析対象としております。物理的リスクについては、台風や豪雨等の影響を受けやすい地域であることを勘案し、洪水被害を分析対象としております。
| 移行リスク | 物理的リスク |
分析対象としたリスク事象 | ・炭素税導入に伴う費用増加による与信先の財務悪化 ・脱炭素社会への移行に伴う設備投資等の増加による与信先の財務悪化 | ・洪水被害による担保物件の毀損 ・洪水被害による与信先の事業停止に伴う財務悪化 |
対象ポートフォリオ | ・電力セクター ・自動車セクター | ・国内の事業性貸出先 |
期間 | ・2050年まで | ・2050年まで |
シナリオ | ・IEA1.5℃(NZE) ・IEA2.0℃(STEPS) | ・IPCC RCP2.6(2℃シナリオ) ・IPCC RCP8.5(4℃シナリオ) |
分析手法 | ・IEAシナリオや公開情報等をもとに、サンプル企業の2050年までの財務諸表を作成し、サンプル企業の財務への影響を把握 ・サンプル企業の影響度を分析対象セクター全体に展開し、与信関係費用の増加額を算出 | ・ハザードマップのデータから洪水発生時の担保物件への影響、取引先の財務への影響を算出した上で、与信関係費用の増加額を算出 |
分析結果 | ・与信関係費用の増加額 15億円~270億円程度 | ・与信関係費用の増加額 最大70億円程度 |
移行リスクの影響は長期にわたり顕在化することを踏まえると、シナリオ分析結果としては、移行リスク、物理的リスクともに、与信ポートフォリオへの影響は限定的と評価しております。ただし、現状のシナリオ分析は、不確実性の高い部分も多く、一定の前提条件に基づく分析であり、引続き対象セクターの拡大やシナリオ分析の高度化等に取組んでまいります。
ロ.機会
当社グループでは、社会的な気候変動への対応を機会と捉え、お客さまのカーボンニュートラルへの取組みを支援するため、サステナブルファイナンス(注1)だけでなくGHG削減に向けた様々な非金融ソリューションを提供しております。
サステナブルファイナンスでは、新たにグリーンローンとサステナビリティ・リンク・ローンのパッケージ商品(注2)を展開することで、大企業だけでなく中小企業のお客さまにも利用しやすいファイナンス手法を取り揃えるほか、お客さまのカーボンニュートラルに向けた施策の選択や投資の意思決定に寄与する「CO2削減ロードマップ策定支援」の取扱いを開始しました。そして、地域のカーボンニュートラルをさらに加速させるため、「第2回脱炭素先行地域」への山口市との共同提案及び選定など、自治体等との取組みをさらに強化してまいります。
(注)1 環境課題や社会課題の解決に資する投融資やお客さまのサステナビリティ向上に向けた取組みを支援する投融資をサステナブルファイナンスと定義しております。
2 各種ローン原則やガイドラインとの整合性に関する外部評価の認証を内包したパッケージ型の商品
(地域のカーボンニュートラルに向けた金融・非金融ソリューション)
③ リスク管理
気候変動に伴うリスクは、信用リスク、市場リスク、流動性リスク、オペレーショナル・リスクといった各リスク・カテゴリーに波及し、そのリスク・カテゴリーのリスクとして顕在化するという特徴を踏まえ、当社グループでは、統合的リスク管理の枠組みの中に気候関連リスクを組み入れたうえで、顕在化するリスクに応じて各リスク・カテゴリーにおいて管理する体制の構築を進めております。
リスク・ カテゴリー | 移行リスクの内容 | 時間軸 (注) | 物理的リスクの内容 | 時間軸 (注) |
信用リスク | ・脱炭素社会への移行に伴う事業環境の変化により、取引先の業績が悪化し、与信費用が増加するリスク | 中期~長期 | ・風水災等の発生により、担保価値の毀損や取引先の業績が悪化し、与信費用が増加するリスク | 短期~長期 |
市場リスク | ・脱炭素社会への移行に伴う事業環境の変化により、取引先等の業績が悪化し、当社グループが保有する有価証券の市場価値が下落するリスク | 短期~長期 | ・風水災等の発生により、取引先等の業績が悪化し、当社グループが保有する有価証券の市場価値が下落するリスク | 短期~長期 |
流動性リスク | ・脱炭素社会への移行に伴う事業環境の変化により、当社の業績や評判が悪化し、資金調達環境が悪化するリスク、預金が流出するリスク | 短期~長期 | ・風水災等の発生により、取引先の資金需要が高まり、預金が流出するリスク ・風水災等の発生により、金融市場が混乱し、資金調達環境が悪化するリスク | 短期~長期 |
オペレーショナル・リスク | ・脱炭素社会への移行に伴う規制変更により、対応コストが増加するリスク、罰金・訴訟等により損失を被るリスク | 短期~長期 | ・風水災等の発生により、本支店が被災し、事業継続が困難となるリスク、復旧コストが発生するリスク | 短期~長期 |
風評リスク | ・気候変動に対する不適切な対応や不十分な情報開示により、評判が悪化するリスク | 短期~長期 | ・風水災等からの復旧対応や影響を受けた取引先への支援が不十分なことにより、評判が悪化するリスク | 短期~長期 |
(注) 短期を3年未満、中期を3年以上10年未満、長期を10年超としております。
また、当社グループでは、環境・社会に負の影響を与える可能性のある特定セクターへの投融資に関しては、「環境・社会に配慮した投融資方針」を定め、環境・社会への影響の低減・回避に努めております。なお、投融資方針を制定した2022年5月以降、方針に抵触する投融資は行っておりません。
④ 指標と目標
イ.地域のカーボンニュートラル実現に向けて
当社グループでは、2022年度から2031年度におけるサステナブルファイナンス累計実行額(※)1兆5,000億円(うち、環境分野・気候変動対応に資するものは5,000億円)の長期目標を設定し、2022年度の実行額は2,328億円(うち、環境分野・気候変動対応に資するものは1,514億円)となっております。
(※)当社グループ内銀行(山口銀行、もみじ銀行及び北九州銀行)の合算額であります。
(サステナブルファイナンス実績/目標)
また、地域のカーボンニュートラル実現に向けて、サステナブルファイナンス及びGHG排出量削減に資する非金融ソリューションに関する指標・目標を新たに設定し、取組みを強化してまいります。
当社グループが非金融ソリューションを提供し、カーボンニュートラルへの取組みを進められたお客さまは、2023年3月末で累計105先となっており、2025年3月末までに累計315先を目標としております。
《ご参考:当社グループの貸出金等に占める炭素関連資産の割合(注1)》
セクター | 債権残高 | 割合 |
エネルギー(注2) | 4,960億円 | 5.9% |
運輸 | 10,590億円 | 12.5% |
素材・建築物 | 17,801億円 | 21.0% |
農業・食料・林産物 | 1,677億円 | 2.0% |
炭素関連資産合計 | 35,027億円 | 41.4% |
全セクター合計 | 84,605億円 | 100.0% |
(注)1 炭素関連資産は、TCFD提言が開示を推奨する定義を踏まえたものであり、債権残高は貸出金、支払承諾、外国為替、私募債等の合計であります。
2 「エネルギー」に含まれる「電力」は、太陽光発電、バイオマス発電、風力発電等の再生可能エネルギー業者を除いております。(再生可能エネルギー事業者向け債権残高:1,553億円)
ロ.当社グループのカーボンニュートラル実現に向けて
当社グループでは、当社グループ自身のカーボンニュートラル達成に向けて、「2030年度までにCO2排出量(Scope1、2)ネットゼロ」という中長期目標を新たに設定いたしました。今後、営業車両の環境配慮型車両(EV、PHEVなど)への切替え、再生エネルギー由来電力の活用、照明器具のLED化などにより、目標達成に向けた取組みを強化してまいります。
(CO2排出量実績/目標)
(注) 「環境省 温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度」における2023年5月31日時点の排出係数に基づき算出
(2) ダイバーシティ&インクルージョン
① 基本的な考え方
当社グループでは、全ての事業活動の基軸となる「使命・存在意義(パーパス)」を定め、社員が活き活きと活躍できる環境・機会を共に創り、一人ひとりが働きがいをもって成長することで組織文化を変容させ、グループ一体となって「地域・お客さまへの価値提供最大化」及び「新たな価値創造」に取組んでいくことを目指しております。
具体的には、サステナビリティ推進委員会下にダイバーシティ&インクルージョン推進ワーキンググループを設置し、「多様な人財の活躍推進」「地域共創を体現する人財の活躍」「社員一人ひとりが正しく報われる仕組み」の3つの観点を重視した取組みを推進しております。
② 人財の育成及び社内環境整備に関する方針ならびに取組み状況
当社グループにおける、人財の育成及び社内環境整備に関する方針は以下のとおりであります。
イ.多様な人財の活躍推進
積極的な多様な人財の採用・登用、あらゆる社員の主体的なキャリア育成などによるダイバーシティ&インクルージョンの加速
ロ.地域共創を体現する人財の活躍
地域との共創を実現することができる人財を育成するとともに、社員一人ひとりのありたい姿の実現に向けた人材開発・各種育成プログラムの展開
ハ.社員一人ひとりが正しく報われる仕組み
社員のモチベーションを高め、多様なキャリアパスや働き方を実現するための社内環境整備
また、具体的な取組み状況は以下のとおりであります。
a.ダイバーシティ&インクルージョン
当社グループでは、常にスピードを持って事業創造できる組織となるための、多様な人財の採用・登用を積極的かつ継続的に行い、同時に育成を進めていくことで、2031年12月までに多様性人財(注)管理職比率を25%以上とすることを目指しており、2023年3月末では9.0%となっております。
また、多様性確保のためには組織風土の醸成も必要であることから、無意識の思い込みや偏見の解消に繋げるアンコンシャスバイアス研修をマネジメント層中心に実施し、社員が高いモチベーションを持ち、多様なキャリアパスや働き方を実現するための取組みも進めております。
(注) 多様性人財は当社社員における女性、外国人、経験者採用者、アルムナイ、副業従事者、外部出向経験者の総称
b.女性活躍推進
当社では社員の40%以上が女性であり、既に多くの事業領域で活躍しておりますが、更なる女性の活躍フィールドの拡大が必要であると考えております。そのため、女性法人外交ジョブトライアルなどの取組みに加え、2031年12月までに女性管理職比率を15%以上とする中長期目標を設定し、女性リーダー研修やフェムテックイベントなどによる女性のキャリア形成に係る施策に注力しております。なお、2023年3月末における女性管理職比率は4.5%となっております。
c.パーパス実現に向けた人財育成
当社グループでは、社員が活き活きと活躍できる機会を共に創り、一人ひとりが働きがいをもって成長するための支援を行っていくことは、パーパス「地域の豊かな未来を共創する」を基軸とした事業活動に不可欠と考えております。
そのため、2022年度は教育投資額前年度比約2倍となる143百万円を人財育成へ投資することで、従来のバンクビジネスの専門性強化や非金融領域のノウハウを学ぶリスキリング研修などを実施し、加えて社内公募を拡大する等、社員一人ひとりのありたい姿の実現に向けた取組みを強化しております。
また、新しい組織文化を構築するべく、他社のノウハウや知見を当社グループへ還元することを目的に、異業種企業や団体への出向制度を2016年度より実施し、2023年3月末時点における出向者は累計81名となっております。
d.多様なキャリアパスや働き方の実現に向けた社内環境整備
当社グループでは、中長期的な企業価値の向上と社員がそれぞれの個性を活かして輝くことのできる社内環境の整備に継続的に取組んでおります。
具体的には、復職制度、短時間勤務制度、事業所内保育所の開設、副業制度、フレックスタイム制度の導入、テレワークの実施などを行っております。また、男性社員の育児休業取得の推進については、社員へのヒアリング等を中心に現状や課題の分析を行い、男性の育児休業取得促進に向けた特別休暇を新設し、2023年4月より施行しております。2022年度の男性社員の育児休業等、育児目的休暇の取得率は16.3%となっておりますが、今後、様々な制度設計や啓発活動により育児休業取得率100%を目指します。
e.社員エンゲージメントの測定
当社グループの持続可能性及び社会の持続可能性向上において、人的資本は重要な構成要素の一つと位置付けており、社員の意識や組織文化の状態を把握することを目的に社員意識調査を実施しております。同調査では、「今のYMFGの組織風土をどのように感じているのか、今の仕事や職場環境をどのように感じているのか」について調査・分析し、当社の目指す姿と現状のギャップを把握することで、人事制度などの一体的かつ継続的な見直しに活用しております。
2022年度はグループ全体で約4,700名の社員(嘱託、臨時雇等を含む。)が回答し、総合満足度を構成する主要カテゴリ(注1)である「会社へのロイヤルティ」については、3.32ポイント(前年比+0.10ポイント)(注2)とポジティブな変化がみられ、同カテゴリ内における特徴としては、経営層への「信頼度」や「現場感覚」、「ビジョンの発信」等の要素の満足度向上が確認されております。
(注)1 総合満足度は、主に「仕事への充実感・適応感」「職場への満足感」「上司への満足感」「会社へのロイヤルティ」で構成されております。
2 同調査は、±0.10ポイント以上の変化で満足度の変化が認められるものであります。
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