小田急電鉄 【東証プライム:9007】「陸運業」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営の基本方針
当社は、グループ経営の方向性を明確にするために、当社グループが事業を通じて果たすべき役割・責任や社会に存在する意義を示した「グループ経営理念」を掲げ、この理念を実現しグループ価値の最大化を図ることを経営の基本方針としています。
「グループ経営理念」の内容は以下のとおりです。
<グループ経営理念> |
1 経営理念 小田急グループは、お客さまの「かけがえのない時間(とき)」と「ゆたかなくらし」の実現に貢献します。 2 行動指針 私たちは、経営理念の実現のため、3つの精神を忘れることなく、お客さまに「上質と感動」を提供します。 (真摯) 私たちは、安全・安心を基本にすべての事業を誠実に推進します。 (進取) 私たちは、前例や慣習にとらわれず、よりよいサービスの追求に挑戦します。 (融和) 私たちは、グループ内に留まらない外部との連携、社会・環境との共生に取り組みます。 |
当社グループでは、「グループ経営理念」を実現するため、経営ビジョン「UPDATE 小田急~地域価値創造型企業にむけて~」を策定し、グループ価値・沿線価値の向上に努めています。
経営ビジョン「UPDATE 小田急~地域価値創造型企業にむけて~」
① 全体方針
「地域価値創造型企業にむけて」 私たちは、小田急沿線や事業を展開する地域とともに成長するために、 既成概念に捉われず常に挑戦を続けることで、お客さまの体験や環境負荷の低減など 地域に新しい価値を創造していく企業に進化します。 |
グループの経営理念の実現に向けて、経営ビジョン「UPDATE 小田急~地域価値創造型企業にむけて~」のもと、外部環境の変化を捉えた改革を継続しつつ、飛躍的成長を目指します。
加えて、「サステナビリティ経営の推進」を経営計画体系に包含するとともに、6つのマテリアリティ(重要テーマ)について、目標・モニタリング指標を設定し、社会課題の解決を通じた持続可能な成長を実現します。
(参考1)経営計画体系
(参考2)マテリアリティおよび目標・モニタリング指標
マテリアリティ | 目標・モニタリング指標 |
1.安全・安心 | ◆鉄道事業における自社起因の運転事故・インシデント数:ゼロ(毎年度) ◆バス・タクシー事業における死者・重傷者の発生:ゼロ(毎年度) □鉄道サービスの総合満足度 |
2.まちづくり・地域社会 | □沿線エリアの人口 □強化エリア主要駅の乗降客数(1日あたり) □居住地域の総合満足度 □生き方(well-being)の総合満足度 |
3.日々のくらしと観光体験 | □小田急ONE ID数 □フリーパス販売枚数(箱根/江の島・鎌倉) □沿線観光エリアの来訪者数(箱根町/藤沢市) |
4.環境(カーボンニュートラル) | ◆小田急グループCO2排出量: 2013年度比△50%(2030年度)/実質ゼロ(2050年度) |
5.価値創造型人財の育成 | ◆女性従業員(正社員)比率:20%(2030年度)/35%(2050年度) ◆女性管理職比率:15%(2030年度)/30%(2050年度) ◆男性育児休業取得率:100%(2030年度)/100%(2050年度) |
6.ガバナンス | ◆重大な法令違反の発生件数:ゼロ(毎年度) ◆女性役員比率:30%(2030年度) □独立社外取締役比率 |
◆目標 □モニタリング指標
② 変革の取り組み
2021年度から2023年度までを体質変革期、2024年度から2030年度までを飛躍期と定めています。
体質変革期(2021~2023年度) |
3つの経営課題(「利益水準の回復」、「有利子負債のコントロール」、「事業ポートフォリオの再構築」)と3つの発想(「DX(デジタルトランスフォーメーション)」、「共創」、「ローカライズ」)を通じた事業の変革に取り組んだ結果、財務健全性の回復目安を上回りました(2023年度実績:有利子負債残高6,269億円、有利子負債/EBITDA倍率6.5倍)。
飛躍期(2024~2030年度) |
未来の小田急の持続的な成長につながる事業創造や拡大を進め、地域価値創造型企業として次の100年を歩むため、「経営ビジョンを実現する2つの進化」により、新たな価値を生み出します。
<経営ビジョンを実現する2つの進化>
ア 地域経済圏発想での事業展開
新宿や海老名をはじめとする中核都市それぞれを“地域経済圏”単位で捉え、地域・パートナーと連携し、4つの事業領域(「交通」、「不動産」、「デジタル」、「生活サービス」)を連動させた施策を実施します。
イ 事業ポートフォリオの最適化
不動産領域を収益の第一の柱としつつ、デジタル領域を新たな成長領域と位置付けます。また、4つの事業領域において、成長投資を拡大するとともに、適切なKPIの設定および進捗状況のモニタリングの実施により、2030年度営業利益目標の達成を目指します。
③ 連結財務目標
「地域価値創造型企業」を目指し、社会的価値や株主価値の向上を図りつつ、持続的な利益成長を実現します。
重要指標 | 2026年度計画 | 2030年度目標 |
| 長期方針 | |
利益の成長 | 営業利益 | 500億円 前回目標比※1 +40億円 | 700億円 前回目標比※1 +100億円 |
| 持続的な 利益成長 |
資本コストを 意識した経営 | ROE※2 | 6.2% | 7%以上 |
| さらなる向上 |
財務健全性の 確保 | 有利子負債/ EBITDA倍率 | 7.8倍 | 7倍程度 |
| 利益成長に よる改善 |
※1 2023年4月公表目標比
※2 親会社株主に帰属する当期純利益/自己資本(有価証券評価差額除く)
④ 株主還元
基本方針 | 自己資本比率30%の確保を前提に、2023~2026年度の平均で、連結総還元性向40%以上を目標とした安定的な配当および機動的な自己株式取得を実施 |
配当 | 2023年度および2024年度は1株あたり年間30円を予定 ※ 2023年度は年間22円から配当予想を修正 |
自己株式取得 | 経営環境の変化や業績等を総合的に勘案したうえで実施時期を検討 ※ 2023年度実績:123億円 |
(2) 経営環境及び優先的に対処すべき課題
経営ビジョンの実現のため、4つの重点施策に取り組むとともに、3つの戦略およびガバナンスによる経営基盤の強化を推進します。各施策および戦略等の概要は、以下のとおりです。
① 重点施策
ア 交通領域の進化
人手不足への対策と災害への耐性強化に重点的に取り組み、持続可能な運営体制を早期に確立するとともに、移動需要の喚起等による安定的な利益獲得を目指します。
具体的には、少人数での鉄道事業運営体制の構築を目指し、ワンマン運転の詳細な仕様やオペレーション等の検討の深度化を図るとともに、各種業務の効率化を進めます。加えて、鉄道駅バリアフリー料金制度を活用したホームドアの設置や耐震補強工事の推進により、安全・防災対策を強化しつつ、大野総合車両所の移転をはじめとした大規模な設備更新を推進するなど、持続可能な運営体制の強化に努めます。また、子育て世代への応援施策の推進や顧客データ等を活用した新たな増収施策の展開により、収益の最大化を図ります。
イ 不動産領域の強化
収益の第一の柱として集中的に資本を投下し、沿線開発および投資手法・フィールドの拡大を推進することで、2030年度の営業利益300億円の達成と収益力・資産効率の向上を目指します。
具体的には、新宿駅西口地区開発計画において、共同事業者等との共創によるプロジェクト価値の最大化に取り組むとともに、ハイグレードなオフィス機能や新たな顧客体験を実現する商業機能、来街者と企業等の交流を促すビジネス創発機能を提供します。また、引き続き海老名駅間地区の開発計画を推進するなど、沿線中核都市を中心とした多彩なまちづくりを進めます。加えて、回転型投資や国内SPC投資、海外不動産事業にも取り組み、獲得した資金やノウハウを、沿線開発をはじめとした更なる不動産事業の強化に活かします。
ウ デジタルを活用した新規事業の探索・成長
事業創造ノウハウ・多様な人財の活用や研究開発費の投下により、社会課題の解決を起点とした新規事業を創出するとともに、デジタルの強みを活かし、沿線外にも事業展開することで、2030年度の営業利益30億円を目指します。
具体的には、「MaaS Japan」や「EMot」等のMaaSプラットフォームにおいて、顧客接点および取扱額の拡大を図るとともに、資源・廃棄物の収集運搬の最適化に向けたコンサルティングサービス等を提供するウェイストマネジメント事業「WOOMS(ウームス)」や、自治体・町内会の電子回覧板や災害時の情報共有ソリューションを提供する自治会・町内会SNS「いちのいち」等の新規事業の収益・利益規模の拡大に努めます。あわせて、地域のインフラ分野を中心とした新規事業の探索・創出を図ります。
エ 観光需要の取り込み/地域を彩る生活サービス
日本屈指の観光地を持つポテンシャルを活かし、インバウンドを含む旺盛な観光需要を着実に取り込みます。また、日々のくらしに密着したサービスや心躍るコンテンツの展開により、将来にわたって選ばれる沿線を目指します。
具体的には、観光需要の取り込みに向けて、箱根エリアにおける既存ホテルのバリューアップ等を進めるとともに、ダイナミックパッケージの拡充により、利便性や顧客体験価値を高めます。また、生活サービスについては、ストア・小売業において、新規出店の積極的な推進や、㈱セブン&アイ・ホールディングスとの業務提携を通じたMD・オペレーションの継続的な改善等により、営業利益の拡大を図ります。さらに、地域密着型サービスプラットフォーム「小田急ONE(オーネ)」について、顧客とのデジタル接点の中心に据え、鉄道・駅ナカサービス・地域限定のサブスクリプション商品等、コンテンツを充実させることで、2026年度での会員数60万人(2023年度末:32万人)の実現に努めます。
② 経営基盤の強化
| 概要と取り組みの例 |
DX戦略 | リアルな資産・サービス・仕事とデジタル技術の融合により、「Smart(業務のスマート化)」、 「Update(心躍る顧客体験)」、「Create(ゆたかな未来の創造)」の3つの価値を創出します。 ●ローコードツールの活用によるアプリケーション開発・運用を推進 ●当社全社員のデジタル関連基礎知識保有に向けた取り組みを推進 |
環境戦略 | 「小田急グループ カーボンニュートラル2050」の実現に向けた施策を具体化するとともに、資源循環の取り組みやTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)に基づく情報開示を推進します。 ●EVバス(電動バス)を2030年度までに約500台導入予定※ ※ 神奈川中央交通㈱での導入台数を含みます ●当社グループ施設等から排出される食品廃棄物を、パートナー企業とともに飼料およびバイオガス 発電の燃料としてリサイクルし、発電された電力を利用 |
人財戦略 | 従業員のエンゲージメントや労働生産性の向上に資する施策を実行します。 ●「ダイバーシティ&インクルージョン宣言」に基づき、女性活躍推進目標の達成に向けた施策や 健康経営を推進 ●処遇改善等の施策の推進による人財の確保・定着 |
ガバナンス | 各ステークホルダーの利益の最大化や当社グループの持続的な成長、中長期的な企業価値の向上等に 向けて、各種施策を推進します。 ●過半数が独立社外取締役で構成される指名・報酬諮問委員会や、取締役会実効性評価の仕組み等を 活用した取締役会の監督機能の強化 ●「小田急グループ人権方針」および「小田急グループ サステナブル サプライチェーン方針」 「小田急電鉄 マルチステークホルダー方針」に基づく取引先等とのコミュニケーションを実施 |
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