富士通 【東証プライム:6702】「電気機器」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)サステナビリティへの対応
富士通グループでは、サステナビリティに関する国際開示基準や、SDGs、パリ協定などのグローバルな動向を踏まえ、責任ある企業として取り組むべきサステナビリティの7つの重要課題(マテリアリティ)を設定し、重要課題については個々の目標の達成に向け、グローバルレスポンシブルビジネス(Global Responsible Business:GRB)という枠組みの中で、グローバルに活動を推進してまいりました。GRBの制定経緯及び取り組みについての詳細は下記②戦略をご参照ください。
なお、当社グループは、2023年5月の中期経営計画の策定に伴い、マテリアリティの改定を行いました。中長期的な視点で2030年を見据え、「自社」及び「ステークホルダー」の観点から評価を行い、持続的な成長に向けた解決すべき重要課題を新たに設定しました。お客様・社会に貢献する分野として、「地球環境課題の解決」、「デジタル社会の発展」、「人々のウェルビーイングの向上」を掲げ、これらを実現する土台として、「テクノロジー」、「経営基盤」、「人材」を強化していきます。詳細については、以下のウェブサイトをご参照ください。
https://www.fujitsu.com/jp/about/csr/materiality/
①ガバナンス
<取締役会による監督体制>
富士通グループはサステナビリティ経営委員会において、サステナビリティに係るリスクと機会の共有、中長期的な課題の検討及び方針の策定を行っています。これらの結果は、経営会議を通じて取締役会に報告されます。
また、富士通グループは、全社レベルのリスクマネジメント体制において、取締役会の監督の下、代表取締役社長を委員長としたリスク・コンプライアンス委員会が、サステナビリティ課題を含むグループ全体のリスク分析と対応を行っています。同委員会は、グループ全体のリスクマネジメント及びコンプライアンスに関わる意思決定機関であり、抽出・分析・評価された重要リスクについて、定期的に取締役会に報告しています。詳細については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。
<リスクと機会の評価・管理における経営者の役割>
代表取締役社長は、サステナビリティ経営委員会及びリスク・コンプライアンス委員会の委員長を務め、最高位の意思決定の責任と業務執行の責任を担っています。取締役会は、経営会議及びリスク・コンプライアンス委員会を通じた報告をもとに監督する責任を有します。また、CSuO(Chief Sustainability Officer)はサステナビリティの最高責任者として、取締役会、経営幹部への変革提案とサステナビリティ関連業務の執行を推進しています。加えて、業務執行取締役の賞与に、ESGに関する第三者評価を評価指標として追加しています。
②戦略
富士通グループは、2010年にグローバルなCSR規範や社会課題を認識したうえで当社への期待と要請について外部有識者よりヒアリングを行い、CSR基本方針を制定し活動を推進してきました。
持続可能な開発目標(SDGs)の採択やパリ協定の発効など、地球規模の課題解決に向けた取り組みがより一層強く求められるようになったことを踏まえグループ横断でのマテリアリティ分析を実施し、その結果を元に「グローバルレスポンシブルビジネス(Global Responsible Business : GRB)」という名称で、グローバル共通のサステナビリティの重要課題を2019年度に以下の表のとおり設定しました。2020年度には、2022年度を目標年度とする目標・KPIを重要課題毎に定め、当事業年度においても継続的に活動を行ってきました。
重要課題 | 概要 |
人権・多様性 | 全企業活動で人間の尊厳に配慮し、人を中心として価値創造を行う。多様性を尊重し、誰もが自分らしく活躍できる企業文化を醸成する。 |
ウェルビーイング | すべての社員がいきいきと働くことができる環境をつくり、社員が自己の成果を実現させて、力を最大限に発揮できる機会を提供する。 |
環境 | 気候変動対策としてパリ協定の1.5℃目標の達成と、革新的なソリューション提供による環境課題解決に貢献する。 |
コンプライアンス | Fujitsu Wayの「行動規範」を組織全体に周知徹底し、社会的な規範を含むより高いレベルの企業倫理を意識し、誠実に行動する。 |
サプライチェーン | 自社サプライチェーンにおいて、人権や環境、安全衛生に配慮した責任ある、かつ多様性に富む調達を実現する。 |
安全衛生 | 心とからだの健康と安全を守ることを最優先し、各国各地域の事情に合わせた、安全で健康的な職場環境を提供する。 |
コミュニティ | 社会課題への共感を高めて活動し、社会経済に良いインパクトをもたらす。創出したインパクトをさらなる価値につなげる。 |
③リスク管理
富士通グループでは、サステナビリティ経営委員会において、サステナビリティに係るリスクと機会の共有、中長期的な課題の検討及び方針や目標を策定するとともに、進捗を確認しています。
また、リスク・コンプライアンス委員会は、国内外の各部門及び各グループ会社の事業活動と、それに伴う重要リスクの抽出・分析・評価(当社グループにおいて重要と考えられる33項目のリスクを中心に実施)を行い、これらに対する回避・軽減・移転・保有などの対策状況を確認したうえで、対策の策定や見直しを図っています。また、様々な対策の実行にもかかわらずリスクが顕在化した場合に備え、対応プロセスを整備しています。詳細については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」の項をご参照ください。
④指標及び目標
<GRB2022年度目標と2021年度の主な実績>
富士通グループは、重要課題ごとにありたい姿、目標、2022年度末を達成期限とするKPIを定めておりました。この達成に向けて実効力のあるマネジメント体制を構築し、また各国の国内法や労働市場など国・地域ごとの違いを踏まえつつ、グローバルでより高いレベルの活動が実施できるよう、具体的なアクションを定め、目標達成に向けた取り組みを推進してまいりました。なお、2022年度の主な実績については、本有価証券報告書提出日現在においてデータ収集及び一部のデータにおいては、第三者審査機関による審査の過程にあるため、以下では2021年度の主な実績を記載しております。
GRBの目標と2021年度の主な実績
項目 | 2022年度に向けた目標(KPI) | 2021年度の主な実績 |
人権/ 多様性 | ◆人権 「人権尊重」の社内浸透 ・グローバルな人権に関する全従業員向け教育の受講率:80% | ・グループ全社員を対象とした「ビジネスと人権」に関するeラーニングを16か国語でグローバルに実施 実施率:92% |
◆ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I) インクルーシブな企業文化の醸成 ・社員意識調査でのDE&I関連設問の肯定回答率向上: 連結66%(2019年度)→69% 単体59%(2019年度)→63% ・リーダーシップレベルにおける女性比率増: 連結8%(2019年度)→10% 単体6%(2019年度)→9% | ・社員意識調査でのDE&I関連設問の肯定回答率 連結:69% / 単体:65% ・リーダーシップレベルにおける女性比率 連結:10.3% / 単体:8.0% | |
ウェルビーイング | いきいきと働くことができる職場環境の提供 ・社員意識調査「ワークライフバランス」「Well-being」に対するグローバル共通平均スコア:71 成長の実現と力を発揮できる機会の提供 ・社員意識調査「成長の機会」に対するグローバル共通平均スコア:70 | ・社員意識調査「ワークライフバランス」「Well-being」に対するグローバル共通平均スコア:64 ・社員意識調査「成長の機会」に対するグローバル共通平均スコア:68 |
環境 | 社会的責任の遂行と環境課題解決への貢献 ・事業拠点の温室効果ガス(GHG)排出量を基準年比 37.8%以上削減する (2013年度実績の毎年4.2%削減) ・事業活動に伴うリスクの回避と環境負荷の最小化 ・ビジネスを通じたお客様・社会の環境課題解決への貢献 | ・GHG排出量の削減 ・目標:33.6%以上削減 (2013年度比 毎年4.2%削減) 実績:36.7%削減 ・再生可能エネルギー導入率:20.7% ・事業活動に伴うリスクの回避と環境負荷の最小化 <事業所> ・データセンターのPUE(注1)改善:目標1.57に対し実績1.56を達成 ・水の使用量:前年度から5.7万m3削減 ・製品の省資源化・資源循環性向上:新製品の資源効率を10.1%向上(2019年度比) <サプライチェーン> ・製品の使用時消費電力によるCO2排出量を51%削減(2013年度比) ・サプライチェーン上流におけるCO2排出量削減及び水資源保全:主要取引先への取組依頼を100%完了 ・ビジネスを通じたお客様・社会の環境課題解決への貢献 ・カーボンニュートラルに関する知見のビジネス部門、事業部門へのスキルトランスファー ・環境勉強会やOJTを通じた社内教育の実施による社員の専門スキル向上 ・社内レファレンスに基づくソリューション創出 ・環境課題解決に繋がるお客様提案に向けた支援 ・CO2排出量削減貢献量の評価ツール |
コンプライアンス | コンプライアンスに係るFujitsu Way「行動規範」の組織全体への周知徹底をさらに図るために、グループ全体にグローバルコンプライアンスプログラムを展開することで、高いコンプライアンス意識を組織に根付かせるとともに、経営陣が先頭に立って、従業員一人ひとりがいかなる不正も許容しない企業風土(ゼロ・トレランス)を醸成する。 ・社長、部門長またはリージョン長からコンプライアンス遵守の重要性をメッセージとして発信:1回以上/年 | ・国際腐敗防止デーに合わせたFujitsu Compliance Weekにおいて、社長・各リージョン長・各国グループ会社社長等の経営層から従業員に対し、コンプライアンス遵守徹底のメッセージを発信 |
サプライチェーン | ・自社サプライチェーンにおける責任ある調達の実現 当社主要取引先による責任ある調達の国際基準への準拠へ向け、当社主力製品の主要な製造委託先・部品取引先より、下記文書のいずれかを入手する。 (目標KPI=100%) ・RBA (注2) 工場監査プラチナまたはゴールド判定書 ・当社CSR調達指針(=RBA行動指針)への誓約書 ・サプライチェーン多様性の推進 従来の取り組みと並行して、サプライチェーンの多様性確保をResponsible Businessの目標に位置づけ、グローバルに推進。 ・サプライチェーンにおけるGHG 排出削減 GHG 排出削減を取引先とともに推進するため、主要物品取引先に対して、国際基準に沿った数値の目標設定を依頼する。 | ・下記文書いずれかの入手率:100% -RBA工場監査プラチナまたはゴールド判定書 -当社CSR調達指針への誓約書 ・UK・Americas・オセアニアにおいて、中小企業(SME)・女性経営・少数民族企業等、多様な属性を持つ企業からの調達KPIを達成 ・293社あてに目標設定のための説明会への参加を要請 |
安全衛生 | グループ会社を含むすべての職場において、安全で働きやすい環境を実現し、心とからだの健康づくりを推進する。 ・重大な災害発生件数:ゼロ ・安全衛生に関するグローバルレベルでのマネジメントレビュー実施:1回/年 | ・重大な災害発生件数:ゼロ ・グローバル安全衛生管理リーダーが富士通グループのCOVID-19対応についてレビューを実施 |
コミュニティ | 企業文化及び社員のマインドセット変革への貢献 ・社会課題に関連した社会貢献活動に参加した従業員数の増加率 ニューノーマル下において、2019年度比 +10% | ・2021年度より集計開始:2019年度比-2.9%(注3) |
(注)1.PUE:Power Usage Effectiveness
データセンターの電力使用効率を示す指標。データセンター全体の消費電力を、サーバなどのICT機器の消費電力で割った数値。1.0に近いほど効率的とされる。
2.RBA:Responsible Business Alliance
電子機器メーカーや大手サプライヤーなど、約140社が加盟する国際イニシアチブ。行動規範を定め、サプライチェーン上の環境や労働者の人権及び労働条件や、倫理・安全衛生などの改善を進めている。
3.コロナ禍の影響により対面での活動に制約。オンラインイベントの開催など、種々の施策展開により、2021年下期以降参加従業員数増加も、2019年度比減少の状況。
(2)気候変動への対応
気候変動は国・地域を超えて世界に影響を与える問題であり、グローバルに活動する当社にとっても重要な課題であると認識しています。例えば、気候変動によりもたらされる災害は調達・物流・エネルギー供給網を寸断し、各事業所への部品調達やエネルギー調達を困難にします。また、GHG排出量に関する法規制は、製品・サービスの製造、開発等に影響を与え、対応への遅れはビジネスチャンスの損失を招く恐れもあります。
① ガバナンス
富士通グループでは、サステナビリティ経営委員会やリスク・コンプライアンス委員会において、気候変動に関するリスクと機会の共有、方針策定、重要リスクに関する特定等を行い、取締役会へ報告しております。詳細については、上記の「(1)サステナビリティへの対応 ①ガバナンス」の項をご参照ください。
② 戦略
<中長期環境ビジョン>
富士通グループでは、気候変動対策において果たすべき役割や実現すべき未来の姿として、中長期環境ビジョン「Fujitsu Climate and Energy Vision」を策定しております。このビジョンは、(ⅰ)自らのCO2ゼロエミッションの実現、(ⅱ)カーボンニュートラル社会への貢献及び(ⅲ)気候変動による社会の適応策への貢献の3つの柱で構成されています。先進のICTを効果的に活用して富士通グループ自らのカーボンニュートラル化にいち早く取り組むとともに、そこで得られたノウハウを、富士通グループのソリューションとしてお客様・社会に提供します。それにより、ビジネスを通して気候変動の緩和と適応に貢献することを目指しています。
本中長期環境ビジョンの詳細については、「富士通グループ サステナビリティデータブック2022 P.5-3-2-1~5-3-2-3」をご参照ください。
https://www.fujitsu.com/jp/documents/about/resources/reports/sustainabilityreport/2022-report/fujitsudatabook2022.pdf
<TCFDに基づいたシナリオ分析>
また、富士通グループでは、気候変動戦略のレジリエンス性を確保するため、2018年度に「2℃」シナリオ、2021年度に「1.5℃」及び「4℃」の外部シナリオを用いて、気候変動による事業インパクトを分析し、富士通グループの気候関連リスク・機会を特定するとともに対応策を検討しました。自社オペレーション、サプライチェーンにネガティブな影響を及ぼす移行・物理リスクに対応するとともに、お客様の気候関連リスクを理解することで価値創造の提案につなげ、ビジネス機会の獲得を目指します。
・シナリオ分析
当社は、ビジネスを加速し、社会課題に挑むソリューションとして「Fujitsu Uvance」を策定し、クロスインダストリーな重点分野を定めています。これらのうち、特に気候変動の影響が大きいと考えられるSustainable Manufacturing(検討領域:石油化学、自動車、食品、電子機器関連ビジネス)、Trusted Society(検討領域:公共、交通、エネルギー関連ビジネス)、Hybrid IT(検討領域:データセンター関連ビジネス)に対し、1.5℃及び4℃シナリオを用いて2050年までを考慮したシナリオ分析を実施しました。分析は「リスク重要度の評価」、「シナリオ群の定義」、「事業へのインパクト評価」、「対応策の検討」という4つのステップにて行いました。
Sustainable Manufacturing、Trusted Societyはお客様の気候関連リスクへの対応を支援するなど、当社におけるビジネスの「機会」を中心とした分析を行い、Hybrid ITは、自社事業及びお客様の気候関連リスクへの対応など、「リスク」と「機会」の両面で分析しました。分析結果シナリオで分析した機会についてオファリングの検討・開発方向と一致していること、また、リスクについても対応策を整備できていることを確認し、中長期的な観点から当社の事業は戦略のレジリエンスがあると評価しました。また、シナリオ分析の結果も事業検討の1つのインプットとして活用し、事業の注力領域の価値提供テーマとして、Sustainable Manufacturingにおける「Carbon Neutrality(CO2排出量の可視化・削減推進)」、「Resilient Supply Chain(不確実性に対する対応力向上)」、Trusted Societyにおける「Sustainable Energy & Environment(グリーンエネルギーによるカーボンニュートラル社会)」等を策定・発表しました。現在、シナリオ分析で導出した機会の対応策を踏まえ、オファリングの具体化等の検討を推進しています。詳細については、以下の当社ウェブサイトに掲載している「富士通統合レポート2022」の67ページを参照ください。
https://pr.fujitsu.com/jp/ir/integratedrep/2022/pdf/all.pdf
機会
機会分類 | 対象期間 | 内容 | 主要な対応策 |
製品・サービス | 短~長期 | ・高エネルギー効率製品・サービスの開発・提供による売上増加 | ・高性能・低消費電力の5G仮想化基地局、高性能・省電力のスーパーコンピュータ等の開発・提供 |
市場 | 短~長期 | ・ICT活用により創出される気候変動対策に向けた新規市場機会の獲得 | ・サプライチェーンのCO₂排出量算定・可視化、ゼロエミッションに向けた新材料探索の効率化等の開発・提供 |
レジリエンス | 短~長期 | ・レジリエンス強化に関する新製品及びサービスを通じての売上の増加 | ・防災情報システム、洪水時の河川水位を予測するAI水管理予測システム等の開発・提供 |
リスク
リスク分類 | 対象期間 | 内容 | 主要な対応策 | |
移行 | 政策/規制 | 短~長期 | ・温室効果ガス排出やエネルギー使用に関する法規制強化(炭素税、省エネ政策等)に伴い、対応コストが増加 ・上記法規制を違反した場合の企業価値低下のリスク | ・温室効果ガス排出量の継続的な削減(再生エネルギーの積極的な利用拡大、省エネルギーの徹底) ・EMSを通じた法規制遵守の徹底 |
市場 | 中~長期 | ・カーボンニュートラル社会の推進(電動化などの普及)に伴った電力価格が高騰 | ・社内基準の策定、革新的な技術開発などによる電力消費量の削減 | |
技術 | 中~長期 | ・熾烈な技術開発競争(省エネ性能、低炭素サービス等)で劣勢になり、市場ニーズを満たせなかった場合、ビジネス機会を逸失するリスク | ・お客様の気候変動課題解決に対応する製品・サービス開発、イノベーション推進 | |
評判 | 短~長期 | ・投資家・お客様等のステークホルダーからの要請への対応による対応コストが増加 ・外部要請への対応遅れによる評価・売上に対するネガティブ影響が発生 | ・中長期環境ビジョン、環境行動計画の策定・推進 ・気候変動戦略の透明性確保に向けた積極的な情報開示 | |
物理 (自然災害等) | 慢性、急性 | 短~長期 | ・降水・気象パターンの変化、平均気温の上昇、海面上昇、渇水などによる対応コストが増加 ・異常気象の激甚化によるサプライチェーンを含む操業停止、復旧コストが増加 | ・BCP対策強化、お取引先の事業継続体制の調査やマルチソース化などの対策実施 ・潜在的水リスクの評価とモニタリングの実施 |
③ リスク管理
気候変動を含むリスク管理プロセスは、リスクマネジメント・コンプライアンス体制によるプロセスに組み込まれています。詳細については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」を参照ください。
また、気候変動を含む環境課題に関するマネジメントについては、前述の仕組みに加え、ISO14001に基づく環境マネジメントシステムを構築しています。気候変動対策の方針策定及び進捗管理は、サステナビリティ経営委員会が担当しています。
④ 指標及び目標
GHG排出量に関しては基準年に対する排出削減比率<Scope1+2,3排出量>、再生可能エネルギー導入比率を指標として管理しています。なお、2022年度の主な実績については、本有価証券報告書提出日現在においてデータ収集及び一部のデータにおいては、第三者審査機関による審査の過程にあるため、以下では2021年度の主な実績を記載しております。
<Scope1+2,3排出量>
項目 | GHG排出量実績(2021年度) |
Scope 1 | 68千トン-CO₂ |
Scope 2(Location-based) | 524千トン-CO₂ |
Scope 2(Market-based) | 422千トン-CO₂ |
Scope 3(Category 1) | 1,207千トン-CO₂ |
Scope 3(Category 11) | 3,142千トン-CO₂ |
<目標と実績(2021年度)>
項目 | 目標 | 実績 (2021年度) | ||
自らのGHG排出量削減(注1) | 短期 | 2021年までに33.6%削減(注2) | 環境行動計画 | 37.2%削減 |
中期 | 2030年までに71.4%削減(注2) | SBT1.5°認定 | ||
長期 | 2050年までに80%削減(注2)(注3) | SBT認定 | ||
バリューチェーンのGHG排出量削減(注1) | 中期 | 2030年までに30%削減(注4) | SBT認定 | 46.9%削減 |
再生可能エネルギー導入比率 | 中期 | 2030年までに40%導入 | RE100加盟 | 20%導入 |
長期 | 2050年までに100%導入 | RE100加盟 |
(注)1.2013年比
2.Scope1+Scope2
3.クレジット含まず
4.Scope3 Category1+Category11
(3)人的資本及び多様性
サステナブルな企業として、社会に価値を提供していくための最大の経営資源、そして顧客価値の源泉は「人」です。多才な人材が、エンゲージメント高く、一人ひとりのウェルビーイングを実現しながら、社会やお客様の課題を解決するためにパーパスを共有して俊敏に集い、社会のいたるところでイノベーションを創出する、そのような組織風土づくりを推進しています。
①ガバナンス
富士通グループは、事業戦略の実行に連動した最適な人材ポートフォリオを実現するため、当社代表取締役社長及び代表取締役副社長等の経営トップが参加する「人材戦略討議」を年2回開催し、人事・人材育成に関する具体的な課題や施策に関する検討、決定を行っています。また、人的資本や多様性を含めた人事・人材育成に関わる事項のうち重要なものについては経営会議及び取締役会に報告されます。
加えて、トップタレントレビューを年3回開催し、グローバルレベルで重要なポジションにおけるサクセッションプランニングの検討状況の共有や個別アポイントメントの検討、また経営者育成に向けた施策に関する議論を実施しています。
これらの活動は、CHROを責任者として、国内外の人事・人材開発育成責任者と連携して進めています。具体的には、Japanリージョン、Europeリージョン、Americasリージョン、APACリージョンにそれぞれ執行責任者を配置しています。
加えて、グローバルHRカンファレンスを年2回開催し、グローバルレベルでの人事戦略、人事施策の検討、各リージョンにおける人事施策の進捗状況や課題の共有等を実施しています。
②戦略
「多才な人材が、エンゲージメント高く、一人ひとりのウェルビーイングを実現しながら、社会やお客様の課題を解決するためにパーパスを共有して俊敏に集い、社会のいたるところでイノベーションを創出する企業」を実現するため、以下3つの状態を目指しています。
“Empowerment”
多様性を享受しオープンかつエンゲージメントの高い、信頼を基にした強固な文化を醸成します。
“Growth”
常にすべての従業員が魅力ある仕事に挑戦し、学び、成長する機会を提供します。
“Impact”
国境や組織の枠組みを越えてコラボレーションし、ビジネスと社会に強いインパクトをもたらす多様性あふれる集団を形成します。
上記を実現するために、2022年度は主に以下の取り組みを進めました。
(ⅰ)ジョブ型人材マネジメントの拡大と事業戦略にアラインした人材ポートフォリオの策定
当社グループ(日本)においては2020年4月に幹部社員、また2022年4月に全社員にジョブベースの人材マネジメントの考え方を導入し、グローバル統一の人材マネジメントをジョブベースに移行しました。
すべての事業部において策定された中長期ビジョンに合わせた人材ポートフォリオと人材要件が定義され、戦略実現に向けた人材獲得を進めています。従来の高度専門人材制度の改定を実施したことで、重点領域である3S領域(SAP, Salesforce, ServiceNow)の高度専門認定人材の認定数についても、前年度比倍増の57名を輩出し、より直接的なビジネス貢献につながっています。
また、新卒採用においてもジョブベースの採用を加速しており、面接時より配属先を約束する採用形態や、インターンシップの活用により入社後のミスマッチを防ぐ取り組みを展開しています。(2022年度新卒採用実績765名が入社)
加えて中途採用も積極的に実施しており、2022年度は中途入社者が新卒入社者よりも多くなり、ビジネス戦略実現に向けたタイムリーな人材獲得も進めています。(2022年度中途採用実績818名が入社)
さらに、中長期的なグローバルでの企業競争力のさらなる向上を目指して、2023年度より新卒入社者から幹部社員にわたる国内社員の月額賃金を平均で10%、最大で28%引き上げを実施しました。年収ベースでは平均で7%、最大で24%の引き上げとなり、リーダークラスの人材においては年収約1千万円以上、事業部長クラスの人材においては年収約2千万円から3千万円程度となります。
新卒者においても月額賃金を10%引き上げます。これにより、今後の企業価値向上の中核を担う人材の定着・獲得を図るとともに、即戦力人材やデジタルネイティブとして高いポテンシャルを持つ人材の獲得を一層推進します。
(ⅱ)ジョブポスティングの拡大とキャリアオーナーシップの実現
当社グループの人事戦略において、極めて重要な施策に、現有の社内人材の流動化があります。自律的な手上げ方式による社内ジョブポスティング制度を最大限活用し、年間3,419名が自らのキャリアオーナーシップのもと、キャリアチェンジを実現しています。
この取り組みは、2022年よりグローバルポジションにも拡大し、グローバルレベルでの人材流動も活発となり、適所適材が実現されています。
また、自らオーナーシップを持ち、主体的に行動を起こしていくための各種プログラムを多数提供しています。多様な人とキャリアを語る場の「キャリアCafé」は日本の社員の4人に1人が参加しています。また、個人の「今」のキャリアオーナーシップの状況を診断することができるキャリアオーナーシップ診断は2022年度に導入し、既に日本の社員の5人に1人が活用しています。学びの機会としてのUdemy Businessは日本の社員の2人に1人が活用しており、自律的な学びの文化が醸成されつつあります。
加えて、プログラムの提供だけでなく、職場・社員のキャリア形成を支援する専門家を社内に設置することで一人ひとりのチャレンジを後押しする取り組みも進めています。(2022年度相談実績1,128名)
(ⅲ)グローバル共通の評価制度「Connect」の導入
2021年4月より、当社グループ13万人が自律的に考え、行動を起こしていくためにグローバル共通の評価制度「Connect」を導入しました。
「Connect」は従来の単なる目標管理にとどまることなく、当社のパーパス/組織ビジョン実現に向け、Impact(インパクト)、Behaviours(行動)、Learning & Growth(成長)を三つの新たな評価軸として導入することで、行動規範とも一貫した形での体系的な評価の実施を可能としました。
さらに「Connect」は、「パーパスドリブン経営の実現」と「一人ひとりのチャレンジを促すこと」を志向しています。社員一人ひとりを中心に据え、パーパスやFujitsu Way、組織ビジョン、個人の成長ビジョン、そしてすべての人事施策をつなぎ合わせることによって組織や個人の成長/パフォーマンスの最大化を実現するコミュニケーションツールとして活用されています。
(ⅳ) エンゲージメント向上の取り組み
当社グループの持続的な成長を測る1つの指標として、2020年度より社員エンゲージメントを非財務指標に設定し、グローバル企業と同等の数値(75)に引き上げることを目標に掲げ、様々な取り組みを推進しています。
取り組みの一つとして、「Purpose Carving」が挙げられます。「Purpose Carving」は社員一人ひとりが歩んできた道のりや大切にしている価値観を振り返り、未来に向けて想いを馳せながら、個人のパーパスを彫り出していくプログラムです。2022年9月時点で、約7万人の社員が個人のパーパスを言葉にし、当社のパーパスとの重なり合いを変革の原動力としています。
また、社員の主体的なチャレンジや成長支援を促す対話の場として幹部社員と社員による1on1を推進しており、2022年度は社員一人当たりにつき、年間平均9.4回1on1を実施している状況です。
(ⅴ) DE&Iの実現に向けた取り組み
5つの重点領域(注1)の1つであるジェンダーはあらゆる企業にとって経営戦略上必須の課題となっており、当社グループにおいても各リージョンで施策を推進してきた結果、リーダーシップレベルにおける女性比率は2022年度末時点で15.0%を達成、さらなる向上を目指し、2025年20%のKPIを策定し、2023年度から当社グループの非財務指標としての設定も行いました。
新たに設定した上記KPIの達成に加え、多様な人材一人ひとりが異なる価値観や能力を活かし合える環境・カルチャーを実現するため、「マインド改革(注2)」、「ポジティブアクション(注3)」、「Work Life Shiftの推進を通じた働く環境の整備」等、多様な取り組みを推進しています。
(注)1.2022年に「Global DE&I Vision & Inclusion Wheel」を刷新し、その中でジェンダー、世代間、LGBTI+、文化・民族、健康・障がい・アクセシビリティの5つを当社の重点領域として設定
2.マインド改革とは、能力のある人が、適切な場所で自然に活躍できる状態を実現するための各種制度運用、データ活用を意味します(例:アンコンシャスバイアス研修、インクルーシブリーダー研修、エンゲージメントサーベイの活用)。
3.ポジティブアクションとは、ありたい姿に向けた意図的な採用・育成・登用施策を意味します(例:コミュニティの充実、メンター制度、キャリア支援)。
(ⅵ) Well-beingの実現に向けた取り組み
当社グループでは、パーパスの実現に向けて、グローバルで社会的責任を果たしていくため、「グローバル レスポンシブルビジネス(GRB)」という枠組みを確立し、その中でも事業活動の源泉である人に焦点を当てた"Well-being"は最重要課題の1つと位置づけています。(GRBの制定経緯及び取り組みについての詳細は上記(1)サステナビリティへの対応 ②戦略をご参照ください。)
当社では“Well-being”の定義を「仕事もプライベートも、自分自身が大切にしている価値観に向き合い、自身の未来の幸せに日々向かっている状態」と定めました。一人ひとりのWell-being向上に向けて以下4つのカテゴリにまとめ、各カテゴリごとに方針を定めてグローバルで活動を実践しています。
Career & Growth Well-being:社員がキャリア実現のために自ら学び、成長し続けること
Financial Well-being:役割や貢献に応じた、適正で公正な報酬(心理的報酬を含む)が得られること
Social Well-being:職場の仲間、取引先やお客様との信頼関係や、良好な人間関係を構築、維持すること
Health Well-being:社員が自身や家族の心身の健康を維持・増進すること
Well-beingの2025年度目標として、「社員一人ひとりが自分のWell-beingを理解し、語ることができること」を目指しており、その実現に向けて「Well-beingの理解・浸透施策の展開」と「データドリブンな可視化と分析」についての取り組みを重点的に推進しています。
③ リスク管理
人的資本を含むリスク管理プロセスは、リスクマネジメント・コンプライアンス体制によるプロセスに組み込まれています。詳細については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」を参照ください。
また、CHROを人事部門の最高責任者として、全社経営・事業戦略とアラインした人材戦略を策定して事業への貢献を確実なものとするため、”経営トップが参画する『人材戦略討議』”、”中核人材の育成を目指す『トップタレントレビュー』”、”グローバルで一気通貫の人事戦略・施策を促進する『グローバルHR カンファレンス』”において人的資本に関する議論のサイクルを定期的に回すことで、優秀人材の離職や人材獲得競争が激化するリスクにスピーディに対応できる体制を構築しております。
④指標及び目標
組織・人材の流動化、活性化の観点において重要とされる、新卒/中途採用、従業員エンゲージメントスコア、女性管理職比率について、それぞれ中長期的に目標を定めマネジメントしております。
指標 | 目標 | 2022年度実績 |
23年度新卒採用数 | 750名程度 (注1) | 765名 (注1) |
22年度中途採用計画数 | 300名以上 (注1) | 818名 (注1) |
従業員エンゲージメントスコア | 25年度12月までに75 (注2) | 22年度12月時点で69 (注2) |
管理職に占める女性労働者の割合 | 25年度までに20.0% (注3) | 15.0% (注3)(注4) |
(参考)人事戦略に関する指標
人事戦略の重要なテーマに関する参考指標は、以下のとおりです。
指標 | 2022年度実績 |
高度専門人材認定者数 | 全体78名(2021年度比32名増)(注1) |
3S領域 | 57名(2021年度比32名増)(注1) |
社内ポスティング異動人数 | 3,419名 (注2) |
キャリアCafé参加者数 | 8,296名 (注2) |
Udemy Business利用者数 | 36,764名 (注2) |
キャリアオーナーシップ診断 | 15,187名 (注2) |
Connect評価 | 富士通全社員がConnect評価の運用を開始 (注3) |
「Purpose Carving」実施者(22年度9月時点) | 約7万人 (注3) |
1on1平均実施回数 | 一人当たり年間平均9.4回実施 (注2) |
全従業員に占める女性社員比率 | 24.8% (注3) |
(注)1.提出会社のみ
2.日本の連結対象会社のみ
3.富士通グループ全体の数値
4.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)又は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)における算定方法による算出
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