富士紡ホールディングス 【東証プライム:3104】「繊維製品」 へ投稿
企業概要
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(サステナビリティに関する基本方針)
当社グループは、サステナビリティを事業戦略の中核に組み入れた「サステナビリティ経営」を実践しております。当社グループのサステナビリティ経営は、「儲ける」こと、成長性・収益性と社会貢献、誠実さに立脚した公正で透明性のあるSDGs経営をバランス良く実行していくことでサステナビリティを実現していくところに特徴があります。
企業は、財務面で収益を上げなければ株主への配当を実施することができず持続的成長は達成されません。また、社会の公器という点に焦点を当て、適正な企業統治のもと、社会からより信頼される企業としてステークホルダーと強固な信頼関係を構築することが重要となります。当社グループは、企業理念に掲げる「人・社会・地球環境にとってより豊かで持続可能な未来の創造に貢献し続ける」ことを実現するため、サステナビリティ経営を実践し、持続的な企業価値向上を目指してまいります。
(サステナビリティ推進体制)
現在、世界は気候変動問題をはじめとする多くの深刻な社会課題に直面しており、その解決の担い手として、企業に対する社会の期待も高まっています。こうしたなか、当社は中期経営計画「増強21-25」の始動にあわせ、SDGsに関連する重要課題への対応を通じたサステナビリティ経営を富士紡グループ全体で横断的に推進するため、2021年4月1日に「ESG推進委員会」を設置しました。
「ESG推進委員会」は、社長を委員長として、環境(Environment)分科会、社会(Social)分科会、ガバナンス(Governance)分科会の3つの分科会で構成されています。当社グループがサステナビリティの課題に適切に対応するとともに、サステナビリティへの対応が中長期的な企業価値の向上につながるよう提言を行うこととしています。サステナビリティ推進に関わる各種検討課題に各分科会で取り組み、重要度に応じてESG推進委員会、経営会議、取締役会に諮る体制となっています。したがって、取締役会は経営全般にわたる重要な方針・施策を最終決定するとともに、経営会議、ESG推進委員会等の管理監督を行っています。
研磨材事業、化学工業品事業、生活衣料事業、その他の事業でそれぞれ求められるサステナビリティに関する課題は異なりますが、リスクと機会の観点から積極的に対応してまいります。
■富士紡グループのサステナビリティ推進体制
当社グループが認識している重要なサステナビリティ課題である、(1)気候変動への対応および(2)人的資本についての考え方及び取組は、以下のとおりであります。
(1)気候変動への対応
当社グループは、低炭素化社会実現に向けた気候変動対応を経営上の重要課題と認識し、2021年11月に気候変動に関する情報開示の指針となるTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース・Task Force on Climate-related Financial Disclosures)提言に賛同を表明しました。気候変動に関連するリスクと機会への対応について、TCFD提言に沿った情報開示を進め、将来の事業における財務的な影響を想定し、管理しています。以下のとおり、TCFD提言に沿って、気候変動に関連する重要情報を開示します。
① ガバナンス
当社グループは、重要な環境関連目標や取り組みは社長が委員長を務める「ESG 推進委員会」で決定しております。年2回開催される「ESG推進委員会」において、気候変動に関するリスクや機会を特定し、気候変動課題をESG推進委員会の分科会の1つである「環境分科会」で取り組み、重要度に応じてESG推進委員会、経営会議、取締役会に諮る体制でマネジメントを行っております。
取締役会は、ESG推進委員会等から気候変動課題に関わる経営全般にわたる重要な方針・施策の報告を受け、最終決定するとともにその進捗を管理監督しております。
② リスク管理
当社グループは、気候変動関連リスクを含む全社的なリスク情報を把握し、管理する体制を構築し、整備することに取り組んでおります。リスクマネジメント体制においては、リスク管理委員会を設置し、リスク情報を収集・分析して、リスクが顕在化した場合の対策を講じています。
また、ESG推進委員会においても、気候変動関連リスクおよび機会を発生可能性および金額的重要性の観点から特定し、その対策を講じておりますが、リスクに対する具体的な取り組みにおいては、「環境分科会」が各事業会社と協働して、対策を検討・実行しております。
重要度に応じて、リスク管理委員会とESG推進委員会が、取締役会や経営会議に報告する等して、気候変動に係るリスクマネジメントに取り組んでおります。
■富士紡グループ気候変動対応に関する体制図(ガバナンスおよびリスク管理)
③ 戦略
気候変動関連のリスクと機会
当社グループでは、気候変動関連のリスクと機会は、中長期にわたり事業活動に影響を与える可能性があると認識しております。外部環境の変化や様々な状況下におけるリスクや機会を考慮するため、1.5℃~2℃未満シナリオ、4℃シナリオの複数の将来シナリオを想定し、2050年時点における当社グループの主要3事業(研磨材事業、化学工業品事業、生活衣料事業)において、重要な財務への影響を与える可能性のあるリスクと機会の洗い出しを行いました。
1.5℃~2℃未満の世界では、温室効果ガス削減のための規制が強化され、低・脱炭素化が進むことに伴う事業への影響、移行リスクが高まることが考えられるのに対し、4℃の世界では、規制などの移行リスクの影響は小さいものの異常気象などの物理的リスクが高まることが考えられます。
当社グループにおける気候変動に関連する主要なリスク・機会を、1.5℃~2℃未満シナリオ、4℃シナリオを前提として分析し、リスク低減および機会活用にむけた対策を整理しました。発現時期については、短期・中期・長期と時間軸を設け、影響度については、利益に対する影響の大きさにより大中小の3段階で表現しております。
発現時期 | 「短期」1年以内、「中期」1年~5年、「長期」5年超 |
影響度 | 「大」5億円超、「中」1億円~5億円、「小」1億円以下 |
<リスク>
リスク の種類 | リスク カテゴリー | リスクの概要 | 発現 時期 | 影響度 2050年 | リスク低減に向けた対策 | |
移行 リスク | 政策・法的 | 炭素税の導入 | 中期 | 大 | ・徹底した省エネ活動 ・省エネ対応の効率的な設備への投資 ・再生可能エネルギーへの転換 ・太陽光発電の導入 ・使用燃料の見直し ・プロセス改善等によるエネルギー効率向上 | |
市場・評判 | 取引先企業からの低炭素化の要請 | 短期 ~中期 | 中 | |||
投資家による評価の低下、 レピュテーションリスク | 中期 | 中 | ||||
物理的 リスク | 急性 | 異常気象 | 台風、豪雨、落雷等の異常気象の激甚化 | 中期 | 中 | ・リスク分散のための新工場建設 ・変電設備等の設置場所のかさ上げ ・防水壁の建設 |
慢性 | 気温上昇 | 干ばつによる水不足 | 長期 | 中 | ・節水設備への更新 ・水の再利用(循環対応) | |
サプライチェーン移行リスク増大(綿花栽培量減少による原材料価格上昇) | 長期 | 中 | 原材料調達先の多様化検討 |
<機会>
機会 カテゴリー | 気候変動による 機会の概要 | 発現 時期 | 影響度 2050年 | 機会活用に向けた対策 |
市場 | ・EVの急速的な普及 ・省電力半導体の需要増加 (シリコンからSiC/GaNシフト) | 中期 ~長期 | 大 | パワー半導体等向け研磨材の販売増加 |
仮想空間社会の広がり (あらゆるものを繋げる半導体需要増) | 中期 ~長期 | 大 | ・ポスト5G通信やセンサー等の半導体向けの 研磨材の販売増加 ・スマホ・HPC向けロジックIC向け研磨材の 販売増加 | |
世界人口増・農地面積減少による 食料供給不足 | 中期 ~長期 | 大 | ・農業生産の安定化ニーズ増加にともなう農薬 中間体の販売増加 | |
製品と サービス | 低炭素社会対応製品 のニーズの高まり | 短期 ~中期 | 中 | ・環境に優しいパッケージ資材使用 (B.V.D.ブランドインナー等) ・環境認証商品(蓄光繊維「ルミフィーロ」等) ・廃材レス化成品(ホットランナー) |
資源の 効率性 | 循環型社会への対応 | 短期 ~中期 | 小 | ・廃液を燃料への再利用 ・排水の再利用 ・節水設備への更新 ・衣料・繊維素材等のリユース、リサイクル |
業務プロセスの革新(DX等) | 中期 ~長期 | 中 | ・RPAの導入、IoTを活用した製品評価導入の検討 ・データ管理基盤の整備による廃棄在庫の低減、 適切な生産管理 | |
エネル | 低炭素エネルギー社会移行 | 短期 ~中期 | 中 | ・再生可能エネルギーの導入、私用拡大 ・工場建物のZEB(ネットゼロ・エネルギー・ ビル)対応 ・共同配送、顧客直送、船舶輸送推進などの 省エネ・低コスト活動 |
レジリ | 災害に強い会社づくり | 中期 | 中 | ・リスク分散のための新工場建設 ・変電設備等の設置場所かさ上げ ・防水壁の建設 |
当社グループを取り巻く外部環境の変化に応じて、重要なリスクと機会の見直しを適宜行い、戦略に反映させてまいります。
④ 指標と目標
2022年度の温室効果ガス排出量は、62千t-CO₂(前年度比+4.5%)となりました。(Scope1:27千t-CO₂、Scope2:35千t-CO₂)今後も生産拡大によるエネルギー使用量の増加が見込まれますが、再生可能エネルギーへの転換を積極的に推進し、さらなる温室効果ガスの排出削減に取り組みます。今後はScope3の算定や温室効果ガス削減目標を設定し、一層の環境に配慮した事業活動を継続することにより脱・低炭素型社会実現への貢献と企業価値向上を図ってまいります。
(2)人的資本
当社グループは、「個を尊ぶ、和を育む~労働環境の指針~」をビジョンとして掲げ、「社員一人ひとりに公平な機会と公正な評価を与え、切磋琢磨して共に向上し合える環境を創造するとともに、個を尊重することで、競争力とチームワークが育つ職場を創ること」を、人的資本にかかる基本方針として取り組んでおります。当社グループにおける、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。
① 戦略
a. 多様性の確保
当社グループは、持続可能な社会を実現するため、事業活動を通じて進める重要な取り組みの一つとして、「多様性を受容し、個々の能力を最大限発揮できる環境づくり」を掲げ、性別・年齢・国籍・障がいなどの有無にとらわれない多様性を尊重し、安心して能力を発揮できるよう、職場環境の整備を進めております。
事業構造の高度化を進めていくなかで、多様性を尊重し、能力発揮機会の提供と労働環境の整備を推進することが、持続的な成長と企業価値の向上に資すると考えております。
多様性確保に向けた、具体的な社内環境整備として、以下に取り組んでおります。
ア. 柔軟な働き方の推進とワークライフバランスの向上
・男女を問わない育児・介護の両立支援
・フレックスタイム制度
・在宅勤務
・定年後再雇用制度
・障がい者雇用
・休暇取得の積極的推進
イ. 女性活躍推進
雇用、昇進、報酬等について公平で平等な機会を確保しており、教育訓練や次世代育成の機会は男女の区別なく与えられています。また、育児・介護両立支援のための休職制度などの充実によって、女性のスキルアップやキャリアを中断させない取り組みなど、さらなる女性活躍推進の取り組みを進めております。
b. 人財の育成
当社グループは、長期の目指すべき姿として「圧倒的なニッチナンバーワン企業」を掲げております。この実現に向け、従業員こそが企業の財産という認識のもと、その育成に取り組んでおります。
具体的な人財の育成方針として、「1.課題解決型人財を育成する」「2.グローバル人財を育成する」「3.次世代リーダーを育成する」ことを掲げております。
人的資本は企業価値の中核として考えており、人財への投資は会社の持続的成長を高めるうえで基盤となるものであることから、当社グループでは個人の知識やスキル、能力を引き出したり高めたりするための教育や研修機会を積極的に設けています。社員一人ひとりの能力を高め、「持続可能な働き方」を実現していきます。
教育研修制度の拡充にも努めており、当社グループでは様々な研修制度によって従業員の成長を支援しています。研修制度には教育訓練や次世代育成が含まれ、職場の安全教育、環境教育、自己啓発などメンタルヘルス教育も実施しております。人財育成や業務に関わる研修だけでなく、職場環境や従業員の健康にも配慮し教育の機会を増やしております。
c. 従業員の健康および安全
従業員の健康保持・増進に取り組むことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、ひいては業績向上や企業価値向上へ繋がることが期待されます。健康経営を経営的視点から考え、戦略的に実践するため、健康経営の目的となる「健康経営宣言」と、健康経営を推進するための体制を策定しました。本宣言および推進体制のもと、従業員の健康保持・増進に資する施策を進めることで、一人ひとりが健全な状態で安心していきいきと働ける社内環境の整備を進めております。
当社グループは、従業員の安全衛生の徹底に取り組んでおります。2010年に安全対策プロジェクトを発足し、2011年4月に安全衛生管理規程を制定しました。全社的な安全衛生管理体制の整備や強化と全事業場を対象とした安全に関する定期的査察・指導を行い、労災ゼロ活動を推進しております。
② 指標と目標
当社グループは、人的資本にかかる戦略を実践するにあたり、人的資本にかかる指標を管理・モニタリングしております。「第1 企業の概況 5 従業員の状況」に記載した指標に加え、当社グループでモニタリングしている人的資本指標は、次のとおりであります。
項目 | 対象 | 当連結会計年度 (2023年3月31日) | 目標 | 達成時期 |
女性管理職比率(注1) | 当社及び 国内外連結子会社 | 8.6% (13人/151人中) | 10%以上 | 2026年3月末 |
女性総合職比率 | 15.2% (20人/132人) | 8%以上 | 2026年3月末 | |
外国人管理職比率 | 10.6% (16人/151人中) | 13%以上 | 2026年3月末 | |
キャリア採用者管理職比率 | 20.5% (31人/151人中) | 17%以上 | 2026年3月末 |
(注) 1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。
2 目標及びその達成時期は、中期経営計画「増強21-25」策定時(2021年3月末時点)に設定したものであり、2023年3月末時点で既に目標を達成している項目もあります。
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