富士紡ホールディングス 【東証プライム:3104】「繊維製品」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当フジボウグループは、一世紀を超える歴史の中で培った技術と経験を生かし、つねに時代が求める新しい技術・製品を提供することで先端産業を支え、人・社会・地球環境にとってより豊かで持続可能な未来の創造に貢献し続けることを企業理念としております。IT関連の超精密加工用研磨材を主とした研磨材事業、医薬および機能化学合成製品等の中間体の受託生産を柱とした化学工業品事業、インナーウエアを中心とする製品に重点を置いた生活衣料事業などに積極的に経営資源を投入し、安定した収益体質の構築を目指しております。
また、健全な企業経営・会計慣行を維持し、透明性の高いキャッシュ・フロー経営を実践しております。
(2)目標とする経営指標
当フジボウグループは、持続的成長と中長期的な企業価値向上を目的として、利益目標(営業利益、当期純利益)およびROEを、また財務体質の強化を図るため自己資本比率を、それぞれ経営指標としております。
(3)経営環境
フジボウグループは、持株会社である富士紡ホールディングス株式会社と事業子会社から構成され、超精密加工用研磨材・機能性不織布を扱う研磨材事業、ファインケミカル中間体の受託製造を行う化学工業品事業、紡績・テキスタイル・アパレルを中心とする生活衣料事業、車両・自動車部品等の輸出やプラスチック成形の技術開発などのその他の事業を展開しています。
研磨材事業は、半導体デバイス用途(CMP)、シリコンウエハー用途、ハードディスク用途、液晶ガラス用途など、様々なITデバイスをその製造工程でポリシングする超精密加工用研磨材を主要製品としており、世界中のITデバイス関連企業に販売しております。最先端プロセス、次世代プロセスのITデバイス製造に対応可能な研磨材の開発を、最新の研究機器・検査機器・製造設備を用いて、ユーザーと共同で進めております。当連結会計年度は、主力の超精密加工用研磨材は、半導体デバイス用途(CMP)は期前半では半導体市場の調整局面の影響を受け受注が減少しましたが、期後半に入り主要半導体メーカー各社の在庫調整が進み、徐々に需要回復の兆しがみられました。シリコンウエハー用途は全体的な半導体デバイスの需要減により受注減、ハードディスク用途はデータセンター向け需要の低迷が継続、液晶ガラス用途においても世界的なインフレにより、テレビ、パソコン、スマートフォンなどで使われる液晶パネルの需要の鈍化もあり受注が減少しました。一方、電気自動車(EV)をはじめとする車載向けやデータセンター向けに利用されるパワー半導体などの分野では、好調な需要が続きました。
化学工業品事業は、長年培った有機合成のノウハウを活かし、大手化学メーカーからの医薬原料、農薬、電材、機能性化学品など有機合成品の中間体の受託製造を行っております。国内有数の化学工業品受託工場を保有し、多種多様な反応に対応できる生産設備で、優れた品質管理と確実な納期対応、高レベルの環境対応、徹底した安全管理のもと、高品質と多品種・小ロットのスピード生産体制で顧客のニーズに応えております。当連結会計年度は、機能性材料、医薬中間体および農薬中間体などの受託製造は、昨年度から続く原材料・エネルギーコスト等の上昇を年度初めから販売価格に転嫁し、利益の確保を図りました。しかし、中国経済の低調を背景として化学業界全般的に需要が低迷するなか、とりわけ電子材料市況の悪化が継続し厳しい事業環境となりました。そのため、工場の一部製造ラインにおいては稼働低下を余儀なくされ、利益は圧迫されました。
生活衣料事業は、インナーウエアを中心とする繊維製品および原糸や染色加工など高機能繊維素材の製造・加工・販売を行っております。繊維製品では、原糸紡績から製品縫製までグループ内で一貫して携わる体制で産み出す高品質を武器に、「B.V.D.」、「アサメリー」、「エアメリー」など浸透度の高いブランドで、メンズ・レディース、ハイエンドからローエンドまで幅広く展開する製品を、様々な販売チャネルで消費者に提供しております。繊維素材では、長年培ってきた紡績・加工技術を駆使して開発した高機能素材を、ファッション衣料用途から産業資材用途まで、ユーザーニーズに合わせて提供しております。当連結会計年度は、繊維素材は、物流費や原材料費の高騰によるコストアップに加えて、円安が影響し、厳しい環境が続きました。繊維製品は、高収益の年間定番商品は堅調に推移しましたが、残暑や暖冬の影響により秋冬商品が苦戦、委託販売の撤退等も影響し減収となりました。ネット販売では、継続的なSNS、検索広告に加えネット専用製品など商品力向上施策が奏功し伸長しました。一方、高品質な日本製が評価され、海外向け販売は大幅に増加しました。
その他の事業は、デジタルカメラ・医療機器・自動車用部品の射出成形を行う化成品事業、プラスチック用射出成形金型の設計・制作を行う金型事業、中米カリブ海地域へ向けて自動車の輸出を行う自動車事業などで構成されています。化成品部門では、デジタルカメラや医療機器、自動車に欠かせない高精度のプラスチック射出成形技術で、金型部門では、自動車用部品を中心に幅広いサイズの成形機に対応できる金型の設計・制作・メンテナンスで、激しいユーザーニーズの変化に対応しております。当連結会計年度は、化成品部門は、医療機器用部品の受注が堅調に推移し増収となりました。金型部門は、自動車向け金型ではEV化シフトを含めた開発案件の端境期のため受注が減少しましたが、事務用機器や医療機器用金型では比較的堅調に推移しました。貿易部門は、昨年のコロナ特需の反動と主力車種のモデルチェンジによる生産中止の影響で受注減となりましたが、更なる拡販と収益確保に取り組みました。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社は、2021年度から2025年度を計画期間とする中期経営計画『増強21-25』を実行しています。本中期経営計画では、未来のありたい姿から導出した2025年像と現状の延長線上の2025年像とのギャップを特定し、中期的に取り組む施策を着実に実施します。加えて事業ポートフォリオの積極的な見直しと持続可能で儲かるビジネスへの転換を段階的に図ることにより、“圧倒的なニッチナンバーワン企業”をめざします。計画期間5年間の前半3年を「高収益体質への転換と種まき」ステージ、後半2年を「非連続的成長の実現」ステージと位置づけ、収益機会の増加と提供価値の強化を施策の両輪として、『稼ぐ力』を強化いたします。同時にDX(デジタルトランスフォーメーション)の継続・深化にも取り組み、各事業の成長基盤を連続的・非連続的に「増強」していきます。さらに、社会の要請であるサステナブルな社会を創るための施策を提案し、実行してまいります。また、当社においても様々な社会経済環境の変化に直面しており、人材確保や新たな価値創造などの対応が急務となっています。働き方改革への取組みもこれまで以上に進めてまいります。
主力の研磨材事業では、半導体市場が底打ちし、緩やかな回復基調にあります。また、回復が遅れているレガシー半導体についても、順次回復に向かうものとみています。今後の拡大に向けた対応を段階的に図るため、生産能力増強設備の導入や技術開発棟の建設を進めています。加えて、台湾に研究開発施設を設置し、ユーザーからの要望に対応することで、将来の売上拡大につなげていきます。化学工業品事業では、化学品市況が、世界的な需要の減退に加え、半導体を中心とした電子材料市況の悪化により厳しい事業環境が続いています。柳井・武生両工場の連携強化をさらに進めるとともに、新規の顧客開拓や受注獲得への取組みを行い、設備稼働の安定化を進めます。また、需要が堅調な一部の機能性材料については、顧客の需要動向に合わせた設備能力拡大に向けて、新プラントの建設を進めていきます。生活衣料事業では、アパレル業界は外出機会やインバウンド需要の増加もあり緩やかな回復傾向にあります。引き続き高収益定番商品への販売集中と、海外顧客向け製品の販売拡大に注力します。また、好調なネット販売をさらに拡大させるため、SNSなどを活用したダイレクトマーケティングにより、Eコマース型ビジネスモデルへの転換を順次進めています。その他の事業では、化成品事業は、医療機器用途向け需要の更なる拡大が見込まれるため、大分・本庄両工場が一体となった生産体制の構築と増強した生産設備の安定稼働を実現し、重点3事業に続く第4の柱事業として育成すべく基盤整備を進めています。
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