安川電機 【東証プライム:6506】「電気機器」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、創業以来「事業の遂行を通じて広く社会の発展、人類の福祉に貢献すること」を使命とし、この使命達成のため「品質重視の考えに立ち、常に世界に誇る技術を開発、向上させる」「経営効率の向上に努め、企業の存続と発展に必要な利益を確保する」「市場志向の精神に従い、そのニーズにこたえるとともに、需要家への奉仕に徹する」の3項目を掲げ、その実現に努めることを経営理念といたしております。
また、グループ経営理念の実践に加え、環境問題や格差拡大など深刻化する社会問題への対応と社会全体の持続性への配慮を当社グループの経営方針として明確化するため、「サステナビリティ方針」を策定しております。このサステナビリティ方針では、「1. 最先端のメカトロニクス技術によるイノベーション創出で、お客さまをはじめ社会への価値創造に貢献」「2. 世界中のステークホルダーとの対話と連携を通じ、公正かつ透明性の高い信頼ある経営の実現」「3. 世界共通の目標であるSDGsの達成を目指し、グローバルでの社会的課題の解決」の3つを方針として掲げています。
このような方針のもと、社会および顧客ニーズに高い次元でこたえる製品・サービスの提供や、従業員にとって働きがいのある会社づくりに取り組んでいます。これらにより、継続的な利益の創出を実現し、ステークホルダーのみなさまへの一層の還元を図るとともに、社会課題の解決を通じた持続可能な社会の実現と企業価値の向上に努めてまいります。
(2) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、長期経営計画「2025年ビジョン」(2016年度~2025年度)においてメカトロニクスを軸とした「工場自動化・最適化」と「メカトロニクスの応用領域」を事業領域と定め、経営目標については営業利益を最も重要な経営指標とし、「質」の向上にこだわることで経営体質の強化を目指しています。
この「2025年ビジョン」の期間における最後の中期経営計画「Realize 25」(2023年度~2025年度)を2023年度より始動いたしました。「Realize 25」では、安川グループ経営理念を基本にソリューションコンセプト「i3-Mechatronics」(※1)を中心とした事業活動を強化し、「2025年ビジョン」の達成を目指すとともに、お客さまの経営課題の解決とサステナブルな社会の実現に寄与してまいります。
なお、「2025年ビジョン」および「Realize 25」の詳細は、以下のURLからご覧いただくことができます。
2025年ビジョン:https://www.yaskawa.co.jp/wp-content/uploads/2019/06/Vision2025_Revision.pdf
Realize 25 :https://www.yaskawa.co.jp/wp-content/uploads/2023/05/realize25.pdf
(※1)i3-Mechatronics(アイキューブ メカトロニクス):当社が1969年に提唱した「メカトロニクス(メカニズムとエレクトロニクスを融合した造語)」に3つの“i”(integrated:統合的、intelligent:知能的、innovative:革新的)を重ね合わせ、お客さまの経営課題の解決に寄与するソリューションコンセプト。
(3) 中期経営計画「Realize 25」の概要
① 財務目標
当社グループは「2025年ビジョン」において、営業利益を最も重要な経営指標に据え、過去最高となる1,000億円の営業利益を目指しております。「Realize 25」においては、i3-Mechatronicsの展開とロボティクスの進化により新たな価値を創出し、収益および生産性を高めることで、「2025年ビジョン」の達成を目指します。
[参考]
2022年度実績為替レート 134.12円/米ドル、139.84円/ユーロ、19.68円/元、0.103円/ウォン
2025年度想定為替レート 130.00円/米ドル、140.00円/ユーロ、19.00円/元、0.100円/ウォン
② 基本方針
方針1 i3-Mechatronicsソリューションによる価値創出
「i3-Mechatronics」のコンセプトを軸に、お客さまが求める「コト」、すなわち「改善や進化」へのソリューションの価値を最大化することで、お客さまへの貢献性を高めます。この「お客さまへのソリューション」を実現するために、技術・生産・販売・品質機能の強化を図ってまいります。
(a) お客さまの価値創出につながる技術開発力の強化
安川テクノロジーセンタで業界をリードする製品・技術を創出し、お客さまの価値向上を実現します。
(b) i3-Mechatronicsによる自社の「ものづくり」進化
i3-Mechatronicsソリューションを自社の生産現場で実践し、生産性向上・生産管理高度化を追求することで、当社製品の競争力向上を図ります。
(c) お客さまのサプライチェーンへの戦略的なアプローチの強化
エンドユーザや装置メーカ等のお客さまと連携強化を図り、最適なソリューションを提供するとともにビジネスの領域拡大を目指します。
(d) 製品ライフサイクルにおける製品・サービス品質の革新
YDX(※2)を通じて蓄積される膨大なデータを活用して「お客さまの設備を止めない」サービスをグローバルで展開します。
(※2)YDX:YASKAWA Digital Transformationの略。第1フェーズである「YDX-I」では、経営資源の可視化・一元化とその最適配置を目指した活動を実施。「YDX-Ⅱ」では、製品・サービス視点でのお客さまへの価値創出を実施。
方針2 世界一/世界初の自動化コンポーネントを軸としたグローバル成長市場攻略
自動化コンポーネントを中心としたグローバルでの市場別戦略を展開し、最適な生産体制を構築することで、成長市場の需要を確実に捉えます。
(a) グローバル最適生産体制の構築とレジリエントなサプライチェーン構築
拡大する需要に対して生産能力・生産性の向上を図るとともに、環境変化やリスクに強いグローバル生産体制を構築します。
方針3 メカトロニクス応用領域の事業拡大によるサステナブルな社会の実現に貢献
(a) Energy Saving
グリーンプロダクツの拡販によりお客さまの省エネ性向上と環境負荷軽減を実現します。
(b) Clean Power
新製品を軸に事業を本格拡大させ、世界トップクラスの創エネを実現します。
(c) Food & Agri
コア技術を結集し、食の安全と安定供給を実現します。
(d) Biomedical Science
ゲノム解析や再生医療分野における自動化等を通じて、すべての人が人間らしく、より豊かに、輝ける未来を実現します。
方針4 YDXとサステナビリティ経営の深化による経営基盤の強化
(a) PLM(Product Lifecycle Management)の再構築をベースとしたYDXチェーンによる新たな価値提供
YDXの第2フェーズとなる「YDX-Ⅱ」ではPLM再構築によるお客さまへの価値を創出します。
(b) マテリアリティへの取り組み強化を軸としたサステナビリティ経営の推進
サステナビリティ課題に対するマテリアリティを設定し、ステークホルダーのみなさまの期待に応えるサステナブルな経営を実践します。
③ 中期経営計画「Realize 25」の遂行状況
財務実績
2023年度実績
売上収益: 5,756億円
営業利益: 662億円
営業利益率:11.5%
ROE: 13.6%
ROIC: 11.8%
配当性向: 33.0%
2023年度の主な取り組み
中期経営計画「Realize 25」の達成に向けた2023年度の主な取り組みは以下のとおりです。
方針1 i3-Mechatronicsソリューションによる価値創出
(a) お客さまの価値創出につながる技術開発力の強化
未自動化領域の開拓を狙った新型自律ロボット「MOTOMAN NEXTシリーズ」と生産現場のセルを統合制御しi3-Mechatronicsを実現するYRMコントローラ「YRM1010」の販売を開始しました。
(b) i3-Mechatronicsによる自社の「ものづくり」進化
内製化拡大を実現する国内ロボット機械加工工場の建設を完了しました。
(c) お客さまのサプライチェーンへの戦略的なアプローチの強化
i3-Mechatronicsを実現するキープロダクトによるお客さまへのアプローチを強化し、各業界のトップメーカーとの協業を通じた実績を拡大しました。
(d) 製品ライフサイクルにおける製品・サービス品質の革新
市場サービスデータの一元化・構造化を行い、製品品質状況・市場稼働状況の集約管理を開始しました。
方針2 世界一/世界初の自動化コンポーネントを軸としたグローバル成長市場攻略
(a) グローバル最適生産体制の構築とレジリエントなサプライチェーン構築
グローバルにおける主要部品の内製化や事業部共通の重点部品の一括調達により、生産/調達体制および需要地生産体制の強化を推進しました。
方針3 メカトロニクス応用領域の事業拡大によるサステナブルな社会の実現に貢献
(a) Energy Saving
安川インバータGA700シリーズの大容量帯の販売を開始し、大型の一般産業用機械や設備への適用を可能としました。
(b) Clean Power
脱炭素社会実現に向けて新型の太陽光発電用パワーコンディショナ「Enewell-SOL P3A」の市場投入を行い、国内における自家消費市場での取り組みを強化しました。
(c) Food & Agri
米国でいちごの植物工場を展開しているOishii Farm Corporationとの資本業務提携により植物工場の自動化を推進しました。また、JA全農と協業開発を進める「きゅうりの葉かき作業の自動化」は本格的な導入フェーズに移行しました。
(d) Biomedical Science
再生医療分野におけるロボットを活用した自動化プラットフォームの構築に向け、外部パートナーとの共同研究を進めました。
方針4 YDXとサステナビリティ経営の深化による経営基盤の強化
(a) PLM(Product Lifecycle Management)の再構築をベースとしたYDXチェーンによる新たな価値提供
PLM再構築のベースとなる安川データレイクの基盤整備を進めました。
(b) マテリアリティへの取り組み強化を軸としたサステナビリティ経営の推進
「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
(4) 経営環境および優先的に対処すべき課題
2024年度の当社グループを取り巻く経営環境は、半導体・電子部品市場の投資再開が見込まれる等、製造業における自動化・省力化に関する設備投資が回復する見込みです。
2024年度は中期経営計画「Realize 25」そして長期経営計画「2025年ビジョン」の確実な達成に向けて、DX(Digital Transformation)をベースにソリューションコンセプトである「i3-Mechatronics」をもう一段進化させるとともに、市場の変化を捉えた戦略をグローバルに展開し、更なる収益性の向上に努めてまいります。
2024年度の重点実施項目は以下のとおりです。
① お客さまの“コト”を実現するi3-Mechatronicsの進化
徹底したお客さまの“コト”(改善・進化)の理解に基づくソリューション提案、そして、それを実現する
“モノ”(製品・技術)の提供を拡大させるとともに、自社の生産現場におけるi3-Mechatronicsの実践による自動化領域の拡大とモノづくりの高度化を進めていきます。また、グローバルでの協創によるi3-Mechatronicsの進化を目指し、i3-Mechatronicsプロジェクトで実証したソリューションの水平展開や、YRMコントローラを基軸としたグローバル展開を実行していきます。
② グローバル成長市場の動向を捉えた戦略展開によるビジネス拡大
グローバルにおける主要なお客さまとの連携強化を通じ、半導体市場の投資の再開を確実に捕捉します。また、国内中核販社および拡販パートナーの役割連携による国内半導体市場でのプレゼンスを向上させるとともに、拡大が期待されるBEV(二次電池式電気自動車)領域のモノづくりやサプライチェーンの変化に追随した自動化ソリューションの提供を目指してまいります。
製品面では、2023年度に市場投入した「MOTOMAN NEXT」の拡販を加速させるとともに、サーボ・インバータ市場におけるお客さまの“コト”の理解に基づく製品戦略を再強化していきます。
③ メカトロニクス応用領域の事業拡大に向けたパートナー戦略の推進
カーボンニュートラルに向けて拡大する創エネ・省エネ需要をしっかりと捉え、新型の太陽光発電用パワーコンディショナ「Enewell-SOL P3A」を拡販していきます。また、メカトロニクス応用領域におけるアライアンスとして、“食”や“農業”、そして“バイオメディカル”における自動化領域でパートナーとの協業を進めていきます。
④ 「YDX-Ⅱ」プロジェクト推進強化によるサステナビリティ経営の実践
生・販・技・サービスのデータ連携によるPLM再構築、そして、その基盤となる安川データレイクの構築等、
全社一丸となって「YDX-Ⅱ」プロジェクトを推進していきます。
また、「One YASKAWA」の確立に向けた安川グループ経営理念の理解深化を継続し、安川グローバルにおいて、集約したデータに基づくサステナビリティ経営の実践を通じ、企業価値の更なる向上を目指してまいります。
各セグメントにおける具体策は以下のとおりです。
〔モーションコントロール〕
ACサーボモータ・コントローラ事業においては、半導体市場等の立ち上がりを確実に捕捉するため、販売活動を強化します。また、i3-Mechatronicsを実現させる「YRMコントローラ」やACサーボ「Σ-X」(シグマ・テン)シリーズなどを軸としてグローバルに展開し、収益のさらなる拡大を図ります。生産については、i3-Mechatronicsを実践した変種変量に追従できる自動化ラインを進化させて生産性向上を図ります。
インバータ事業においては、ターゲット市場におけるお客さまの“コト”の徹底した理解に基づく販売活動の強化を図るとともに、グローバルでの需要地生産や部品内製化等により生産力の強化を進めていきます。太陽光発電市場においては、パワーコンディショナ「Enewell-SOL P3A」を中心に国内の自家消費市場の攻略を強化して売上拡大を図ります。
〔ロボット〕
i3-Mechatronicsソリューションの実践・展開による提供価値を進化させるとともに、市場の変化に追従した事業展開を加速してまいります。
また、2023年度に市場投入した「MOTOMAN NEXT」の拡販パートナーとの連携活動の強化を通じてプレゼンスの向上を図るとともに、多様化する市場ニーズを捕捉します。加えて、半導体やEVなどの注力市場においては、市場の立ち上がりを確実に捉え、事業拡大を進めていきます。
生産については、国内外の生産拠点の自動化・省人化を拡充し、需要変動に強い効率的な生産体制を構築します。
〔システムエンジニアリング〕
鉄鋼プラントシステム・社会システム分野では、AI・IoT技術によりカーボンニュートラル需要に対応した付加価値の高いサービスの提供に努めます。クレーン分野では、アジアを中心とする港湾クレーン等の成長市場への追従を図ります。
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