安川電機 【東証プライム:6506】「電気機器」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当社グループは「安川グループ経営理念」のもと、「サステナビリティ方針」を2021年度に策定しました。この方針に沿ってマテリアリティを特定し、長期経営計画や中期経営計画における目標を展開することで、戦略的なサステナビリティの推進を図ります。また、進捗のモニタリングを行い、PDCAサイクルを回していくことで、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指します。
<サステナビリティ方針>
私たちは、安川グループの経営理念である「事業の遂行を通じて広く社会の発展、人類の福祉に貢献すること」を基本的な考え方として、その実践を通じて持続可能な社会の実現と企業価値の向上に努めます。 1.最先端のメカトロニクス技術によるイノベーション創出で、お客さまをはじめ社会への価値創造に貢献します。 2.世界中のステークホルダーとの対話と連携を通じ、公正かつ透明性の高い信頼ある経営を実現します。 3.世界共通の目標であるSDGsの達成を目指し、グローバルでの社会的課題の解決に取り組みます。 |
<当社グループのサステナビリティ推進のフレームワーク>
「安川グループ経営理念」のもとに策定した「サステナビリティ方針」の実現のためにマテリアリティを特定し、長期経営計画や中期経営計画における目標展開を図ることで、戦略的なサステナビリティの推進を図ります。
(1) サステナビリティについての取組み
① ガバナンス
当社は、社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置しております。
本委員会には関係部門の責任者、またアドバイザーとして社外取締役が出席し、グループ全体のサステナビリティを推進しております。また、マテリアリティに関する重点施策・方針の企画、審議、グループ展開、モニタリングを行っております。
サステナビリティに関する取組み状況等は、定期的に取締役会および経営会議に報告しております。
<サステナビリティ推進体制>
② 戦略
サステナビリティ課題・目標(マテリアリティ)の特定にあたっては、国際社会の動向や当社にとって関係の深い社会的課題を「ステークホルダーにとっての重要性」「当社にとっての重要性」の2つの視点で評価し、重要度の高い課題を抽出しました。それらの課題について取締役会を含む社内会議で討議を行い、その中で特に重要度の高い課題をマテリアリティとして特定しました。さらに、それぞれの強化領域および戦略の方向性を明確化し、定量的・定性的なKPIを設定しております。特定されたマテリアリティの解決を通じて、サステナビリティ方針で目指す持続可能な社会の実現と企業価値の向上に取り組んでおります。
<当社グループのマテリアリティ>
③ リスク管理
当社グループは、直接的あるいは間接的に当社グループの経営または事業運営に支障をきたす可能性のあるリスクに迅速かつ的確に対処するため、社長が指名した危機管理委員長が運営する危機管理委員会を設置しております。これにより、全社的なリスクの評価、管理、対策立案とその実行を行っております。
サステナビリティに関連するリスクについても、当委員会において評価、管理を行い、また危機発生時には危機のレベルに応じた対策本部を設置し、適切な対応を実施します。
危機管理委員会の内容については、取締役会、経営会議およびサステナビリティ委員会においても情報共有が行われ、サステナビリティ委員会においてマテリアリティならびに全社に係るサステナビリティやESG関連の重点施策・方針の企画、審議、グループ展開およびモニタリングを行うことで、全社におけるリスク管理の強化を図っております。
なお、当社グループにおけるリスクマネジメントの取組みについては「3 事業等のリスク」に記載しております。
④ 指標および目標
当連結会計年度における当社グループのマテリアリティに関する取組みおよびその進捗状況は以下のとおりです。
<事業を通じた社会価値の創造と社会的課題の解決>
マテリアリティ | i3-Mechatronicsを通じたパートナー連携で産業自動化革命の実現 |
目指す姿 | ソリューションコンセプトである「i3-Mechatronics」でお客さまの経営課題を解決する。 |
取組み | 「i3-Mechatronics」プロジェクトの成功事例の蓄積 |
2022年度進捗 | ・「i3-Mechatronics」コンセプトを実現するキープロダクト(YRM-Xコントローラ、 Σ-Xシリーズ、YASKAWA Cockpit)によるお客さまへのアプローチ強化 ・各業界のトップメーカーとの協業を通じた実績拡大 |
マテリアリティ | クリーンな社会インフラ構築と安全・快適な暮らしの基盤づくり |
目指す姿 | (a) 当社の技術力を活用し製品の環境性能を高め、製品拡販により世の中の環境負荷を低減させる。 |
(b) 当社のこれまでのメカトロニクス技術を応用展開し、新規領域へ挑戦する。 | |
取組み [目標] | (a) CCE100(Contribution to Cool Earth 100)(※1)の達成 [2025年度:100倍] |
(b) メカトロニクス技術を応用展開した取組み事例の拡大 | |
2022年度進捗 | (a) 65.5倍(見込み) |
(b) 「省エネ」「クリーンパワー」「食品・農業」「Humatronics」を中心にメカトロニクス応用領域での取組みを推進 |
(※1)2025年度に当社製品によるCO2排出削減貢献量を当社グループによるCO2排出量の100倍以上とする目標
マテリアリティ | オープンイノベーションを通じた新たな技術・事業領域の開拓 |
目指す姿 | (a) M&A/アライアンスを活用し新領域での事業拡大および技術をフィードバックする。 |
(b) 世界初、世界一の技術・製品開発に向け、社外との連携を推進する。 | |
(c) ベンチャー投資と協業を通じ事業シナジーを発揮する。 | |
取組み | (a) M&A/アライアンスを通じた新領域への取組みの強化 |
(b) 産学官連携の取組みの強化 | |
(c) YIP(※2)を通じたベンチャー投資の拡大 | |
2022年度進捗 | (a) 当社の事業領域である工場自動化およびメカトロニクス応用領域において、技術的シナジーの創出に向けてM&A/アライアンスを活用した成長機会の積極的な探索を継続 |
(b) 当社の将来技術に寄与する研究開発について、国内外との産学官連携を推進 | |
(c) ベンチャー投資:2件(累計件数:19件) |
(※2)安川イノベーションプログラムの略。2016年度から開始したCVC機能を併せ持った新規事業創出スキーム
<サステナブルな社会/事業に寄与する経営基盤の強化>
マテリアリティ | サステナブルな生産性の高いものづくり |
目指す姿 | (a) “安川ソリューションファクトリ”コンセプトの国内外展開によりグローバルでの生産効率化/最適化を進める。 |
(b) CO2排出量を削減し、世界的な気候変動問題へ対応する。 | |
(c) 「お客さまの設備を止めない」を最終目標としたライフサイクルでの最適保全メニューを提供する。 | |
(d) サステナブル調達ガイドライン遵守を原則としたサプライチェーン管理を実施する。 | |
取組み [目標] | (a) 最先端ものづくりの導入 ・自社工場における生産効率の改善(生産性指標(※3)の向上) [2022年度:+19%(※4) 2025年度:+23%(2019年度比)] |
(b) グリーンプロセスを通じた温室効果ガスの排出削減 ・温室効果ガス(CO2)の排出量削減 [2025年度:▲30%(※5)(2018年度比)] | |
(c) 製品の安全・品質向上 ・当社グループ全体のPL(Product liability:製造物責任)委員会体制による製品安全の担保 [2022年度:「PLの芽」摘み取り活動のグローバル展開の強化](※6) ・新たなシステム導入を通じた製品品質の向上 [2022年度:市場品質情報一元化システムのグローバル運用開始] | |
(d) サステナブルなサプライチェーンの構築 ・サステナブル調達ガイドライン遵守率の向上 [2022年度:遵守率100%(※4)(対象:安川電機の主要取引先) 2025年度:遵守率100%(対象:安川グループの主要取引先)] | |
2022年度進捗 | (a) 生産性指標:+21%(2019年度比) |
(b) ▲18.3%(見込み)(2018年度比) | |
(c) ・「PLの芽」摘み取り活動のグローバル展開 (「PLの芽」摘み取り件数:19件、製品改善展開:1件) ・グローバルでの品質情報の一元化 (グローバル生産拠点のデータのコード化・一元化により市場品質情報を管理) | |
(d) 遵守率:100%(対象:安川電機の主要取引先) |
(※3)国内工場間接・直接要員1人当たり売上高(2019年度比)
(※4)2022年4月目標値を変更
(※5)2022年5月の2050年カーボンニュートラル目標の改定に伴い目標値を変更
(※6)2022年10月目標を設定
マテリアリティ | 働きがいのある職場づくりと人材育成 |
目指す姿 | (a) 女性の活躍を推進することにより多様な人材の強みを発揮する。 |
(b) 人事理念に基づいた人づくりを実現し、社員の働きがいを向上させる。 | |
(c) 業務上の休業災害をなくし、安全な職場を実現する。 | |
(d) 従業員の人権意識を向上させ、人権が尊重された職場を実現する。 | |
(e) 「ものづくりの進化」を担う人材の育成に取り組み、それぞれの地域と共生・共創する社会貢献活動を推進する。 | |
取組み [目標] | (a) ダイバーシティとインクルージョン ・女性管理職比率の向上 [2025年度:単体・国内グループ:2倍(2021年度期初比)] |
(b) 人材育成 ・プロフェッショナル人材(※7)の比率向上 [2025年度:全社平均75%以上(※8)] | |
(c) 労働安全性 ・休業災害度数率の改善 [2025年度:単体 0.2以下の維持、国内グループ・グローバル主要生産拠点 0.4以下の維持] | |
(d) 人権と労働慣行 ・従業員の人権デューデリジェンスのプロセス導入・定着 [2022年度:国内グループ向け人権デューデリジェンスの実施 2025年度:グローバル主要拠点での実施(※9)] | |
(e) 地域社会貢献 ・「ものづくりの進化」を担う理系人材の育成 [2022年度:新たな「ものづくり人材育成プログラム」の開始] | |
2022年度進捗 | (a) 女性管理職比率:単体 1.8倍、国内グループ 1.5倍(2021年度期初比) |
(b) 全スキル項目に対するプロフェッショナル評価比率:41%(※10) | |
(c) 休業災害度数率:単体 0.00、国内グループ 0.12、グローバル 0.22 | |
(d) 国内グループ向け人権デューデリジェンスの実施 グローバル主要拠点での取組み状況の現状把握 | |
(e) 安川電機みらい館来館者数:7,837名 新たな「ものづくり人材育成プログラム」の実施 |
(※7)自身が任された業務内のスキルにおいて人に教えることができるレベルまたは一人で遂行できるレベルの人材
(※8)2022年4月目標値を変更
(※9)2022年10月対象を変更
(※10)2022年度期末時点において設定した全スキル項目のうち一定のスキルレベル以上にある項目の比率
マテリアリティ | 公正かつ透明性の高いガバナンス体制 |
目指す姿 | (a) 投資家との建設的な対話を通じ、持続的な成長と企業価値の向上を図る。 |
(b) セキュリティ組織のレベルアップを図り、自律的かつ継続的な情報セキュリティ体制を構築する。 | |
(c) コンプライアンスリスクの早期発見により重大化を未然に防止する。 | |
取組み | (a) コーポレートガバナンス・コードを活用した“攻め”のガバナンスの強化 ・コーポレートガバナンス・コードの各原則の実施(未実施の場合は合理的な説明) |
(b) 情報セキュリティの強化 ・システムにおける社内外セキュリティ監視・対策と外部監査機関によるセキュリティレベル評価・改善 | |
(c) コンプライアンスの強化 ・内部通報等を活用したコンプライアンスの強化 | |
2022年度進捗 | (a) 「プライム市場」選択企業に求められるコーポレートガバナンス・コードの各原則の実施 |
(b) サービス導入により自社でのシステムに対するセキュリティ脅威分析実施、リスク調査と早期対策の実施 | |
(c) 内部通報その他コンプライアンス事案への適切な対応を継続中 |
(2) TCFD提言に基づく気候変動関連の情報開示
当社グループは2019年9月にTCFD提言への賛同を表明し、2020年9月には環境省のTCFDに沿った気候リスク・ 機会のシナリオ分析支援事業へ参加するなど様々な活動を進め、2021年5月にTCFD提言に基づく気候変動関連の情報を開示しました。今後も引き続き気候変動関連の情報開示を充実させ、より一層環境に配慮した事業活動を継続していくことにより、持続可能な社会の実現への貢献と企業価値のさらなる向上を図ります。
<TCFD提言に基づく情報開示>
① ガバナンス
当社はサステナビリティ方針に基づき、取締役会および経営会議において持続的に成長するための重要課題としてサステナビリティ課題・目標(マテリアリティ)の特定および解決に向けた施策を決定しております。また、サステナビリティ推進体制として、社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置し、関連部門の責任者に加え、アドバイザーとして社外取締役が出席し、グループ全体のサステナビリティ施策のモニタリングおよび展開加速を図っております。
気候変動への対応についても、重要課題についてはマテリアリティに位置付け、サステナビリティ委員会にてモニタリングを行うとともに、それ以外の施策を含む全体遂行については、社長が任命した環境推進統括者が運営する環境推進体制においてPDCAを管理しております。なお、取締役(社外取締役および監査等委員である取締役を除く)の報酬内容においては、持続可能な企業活動の実現および社会課題への対応を目的に、当社製品を通じたCO2排出量削減目標達成度を評価に組み込んでおります。
② 戦略
当社の主要事業である、モーションコントロール、ロボットおよびシステムエンジニアリングについて、気候変動が及ぼすリスクと機会について検討を行いました。
リスクと機会は、政策や規制など気候変動対策や社会的要求の変化等によって生じる“移行”リスク・機会と、自然災害や気温の上昇などによって生じる“物理”リスクが考えられます。これらのリスク・機会を抽出し、事業活動に与える影響を「大」「中」「小」の3段階で評価しております。以下に掲載している抽出したリスクと機会について、影響度が「中」「大」のものについて、2030年の社会を想定した2℃、4℃のシナリオ分析を行いました。その結果、4℃シナリオでは低炭素化は推進されず、異常気象の激甚化が想定され、これにより引き起こされる物理的リスクへの対応が最も重要と考えられます。2℃シナリオでは、異常気象の激甚化へのある程度の対応も必要ですが、それ以上に材料・資源価格上昇への対応が重要となります。一方、低炭素化が推進されることで、FA機器・産業用インバータ・再エネ発電用機器およびそれを用いた企業の工場・設備の生産性向上・省エネ性能を高めるソリューションビジネスの需要が拡大することが機会となることが分かりました。
これら分析結果の財務計画への影響は、リスクによる当社の売上減少よりも、機会による売上増加の方が大きいことが分かりました。
また、この機会への対応としては、安川グループが長期経営計画「2025年ビジョン」で目指す「i3-Mechatronics」を軸とした工場の自動化/最適化の取組みおよび社会の持続的な発展に向けた新たなメカトロニクス応用領域への挑戦において、展開を進めます。
<リスク・機会要因に関する事業影響>
シナリオ分析に用いた主なシナリオ
・主に移行リスクを分析するために使用 IEA(※1)、SDS(※2)、STEPS(※3)
(※1)国際エネルギー機関 (※2)持続可能な開発シナリオ (※3)すでに公表済みの政策によるシナリオ
・主に物理的リスクを分析するために使用 IPCC(※4)、RCP2.6(※5)、RCP8.5(※6)
(※4)気候変動に関する政府間パネル
(※5)世界の平均気温が産業革命以前より2℃程度上昇するシナリオ
(※6)世界の平均気温が産業革命以前より4℃前後上昇するシナリオ
③ リスク管理
当社グループは、直接的または間接的に当社グループの経営あるいは事業運営に支障をきたす可能性のあるリスクに迅速かつ的確に対処するため、社長が指名した危機管理委員長が運営する危機管理委員会を設置しております。これにより、全社的なリスクの評価、管理、対策立案とその実行を行っております。
気候変動に関連するリスクについても、当委員会において評価、管理を行い、また危機発生時には危機のレベルに応じた対策本部を設置し、適切な対応を実施します。
危機管理委員会の内容については、取締役会、経営会議およびサステナビリティ委員会においても情報共有が行われ、全社の危機管理について監督およびモニタリングを実施するとともに、リスク評価とマテリアリティ分析の整合性を図ることで、全社におけるリスク管理の強化を図っております。
④ 指標および目標
当社は、全人類における社会課題である地球温暖化の抑制に向けて、2050年に当社グループのグローバルの事業活動に伴うCO2排出量(スコープ1+スコープ2)を実質ゼロ(カーボンニュートラル)とするとともに、そのマイルストーンとして2030年の同CO2排出量を2018年比で51%削減する目標「2050 CARBON NEUTRAL CHALLENGE」を 設定しております。さらに、サプライチェーンの上流や下流のCO2排出量(スコープ3)に対しても2030年の同CO2排出量を2020年比で15%削減する目標を設定しております。
本マイルストーンは、2023年1月にSBTイニシアチブ(※7)から世界平均気温を産業革命の前と比べて1.5℃未満の上昇に抑えるための科学的根拠に基づいた目標であるとして認定されました。
また、当社はコア技術であるパワー変換技術を活用した世界最高性能を誇るインバータなどの製品供給を通じ、世の中のCO2排出量削減に貢献するため、2025年に当社製品によるCO2削減貢献量を当社グループによるCO2排出量の100倍以上とする目標「CCE100」を掲げて事業活動に取り組んでおります。
これらの目標の達成に向けて、当社ではインターナルカーボンプライシング制度(社内炭素価格:5,000円/t-CO2)を導入し、積極的な環境投資を進めております。
当社のスコープ1、スコープ2およびスコープ3の排出量は以下のURLをご参照ください。なお、当事業年度のデータは、本年9月以降の掲載を予定しております。
https://www.yaskawa.co.jp/company/csr/group/esg-data
(※7)Science Based Targets initiative:企業のCO2削減目標が科学的な根拠と整合したものであることを認定する国際的なイニシアチブ
(3) 人的資本
当社グループは、「安川グループ経営理念」に基づき、事業の遂行を通じて広く社会の発展、人類の福祉に貢献できる人材の確保、育成、最適配置を行うことで生産性を向上し、持続的な発展を目指します。また、多様な従業員一人ひとりが最大限に能力を発揮できるよう、安心して働くことができる職場環境の実現を目指しております。
当社グループでは、グローバルで共通の人事理念を制定し、人材や人事諸制度に対する基本的な考え方を定めております。従業員が志を持ち、高いモチベーションで自律的に学び、新たな価値創造にチャレンジし続けることを理想とし、その実現に向けた人事制度、働き方および人材育成などの改善に継続して取り組んでおります。これらの取組みを通じ、従業員一人ひとりがお客さまへ貢献している実感を得ながら働きがいを高め、個々の目指す姿に向けた従業員の成長と当社グループの競争力向上の好循環につなげ、持続的な企業価値向上を目指します。
<人事理念>
〔求める人材〕 安川電機は会社創設以来、時代時代のニーズを先取りして新しいことに絶えずチャレンジし続けてきました。プロフェッショナルな意識を持ち、失敗を恐れず皆と協力しながら新しいことにチャレンジし続ける人材を求めています。 〔人づくり〕 従業員一人ひとりが自己実現できるよう、チャレンジできる成長の機会の提供を行います。文化、慣習、言葉の壁を越えてグローバルにビジネスの拡大に寄与できる人材の育成を、自己啓発、OJL、OFF-JLを通して行います。 〔働く環境づくり〕 日々の会社生活が心身ともに健康に過ごせる労働環境の整備に最大限の努力を行います。職場環境からあらゆる差別を廃止し、ハラスメントの防止に努めます。また、ワークライフバランスを推進するため、多様な働き方を実現する取り組みや諸制度の構築を行っていきます。 〔評価と処遇〕 定期的な上司と部下の面談を通して、一人ひとりが期待される役割を明確にします。頑張って成果を収めた人が評価される制度を構築し、評価基準の情報開示を行うことにより透明性を高めます。発揮された成果については、合議による評価の実施により公正さを保ち、報酬、昇級・昇格の処遇において公平に報います。 |
① 人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針および取組み
2025年ビジョンの達成のため、次の3つを求める人材として方針を掲げ、採用・育成の具体的な方策に展開しております。求める人材の1つ目は「自ら考え新たな領域にチャレンジし、活躍できる人材」、2つ目は「グローバルに競争し、勝つことのできる人材」、3つ目は「多様性を許容し、組織と人材を引っ張り、束ね、支える人材」です。
優れた製品やサービスでより良い社会づくりを目指す当社では、従業員の成長が企業最大の財産(価値)と位置付けるとともに、「会社の役割は従業員の自己実現の場を提供することにある」という考えのもと、「与えられる教育」から「自ら学ぶ教育」へと個々人の自律性を尊重した教育体系を導入しております。従業員は、「求められる人材像」や「目指す目標」と「現在の姿」とのギャップを把握したうえで、さまざまな教育・従業員研修制度を活用し、「自己実現」を目指します。
また、キャリアプラン制度を通じて従業員一人ひとりの意欲や適性にあわせた長期的な人材育成を行っております。
さらに、経営陣が「人づくり推進担当」となって、従業員に夢や人材育成方針を直接語りかけたり、従業員が社長に直接ホンネの意見や要望をぶつけたりするミーティングを行うなど、双方向コミュニケーションを重視した独自の制度を導入し、人材育成の向上を図っております。
(a) 人材育成
人事理念に基づき、従業員が自ら成長する風土の醸成を意識した活動を進めております。
教育体系は、業務を通じて学ぶOJL(On the Job Learning)を中心に位置づけ、これを補完するOff-JL(Off the Job Learning)と自らの価値を高める自己啓発とで構成しております。自己啓発は、会社が援助対象と認めたものについて、一定の自己負担を前提に会社が援助を行います。
直近では、以下のような項目を重点施策として取り組んでおります。
(ⅰ)安川グループ経営理念の浸透
当社において根本となる活動方針や判断基準が「安川グループ経営理念」であり、企業を取り巻く環境が激しく変化していく中でも、ぶれない軸を持ち理念を体現できる人材を増やすために理念教育を実施しております。
(ⅱ)プロフェッショナル人材(プロ人材)の育成
グローバルな競争が求められる現在のビジネス環境において、企業としての優位性を保つためには、人材一人ひとりのプロフェッショナル化が求められています。プロ人材が増えれば増えるほど、組織の競争力は高まり、「変化への対応」「危機への対応」を柔軟に行うこともできるようになると考えております。
プロ人材の比率を向上させるために、「OJLシート・スキルチェックを活用した保有スキルレベルの視える化」や「キャリアパスモデルによる、身に付けるべきスキル・能力ならびにステップアップのための道筋の視える化」等を行うことで、従業員全員が必要な能力・スキルを積極的に学び、自立(自律)的な成長を促す環境をつくります。また、事業環境の変化に対応した教育体系を構築することにより、適切なタイミングで必要な教育を行い、グループ全体の組織能力向上に取り組んでおります。
(ⅲ)若手人材の育成
当社における若手人材(入社5年目以内)に求める姿として、「物事を論理的に考え、適切に相手に伝えること」を掲げ、人材育成を進めております。また、2017年度より、当社技術社員として必要な一定の知識の幅(深さと広さ)の習得を目的として、技術系新入社員に対し「安川フレッシャーズテクニカルスクール(YFTS)」を開校しております。これらにより、各人が保有する力をビジネスシーンや業務において、十分に発揮できるような取組みを行っております。
(ⅳ)経営層と一般社員との対話集会
経営層との直接対話(対話集会)を重視した独自の人づくり推進活動を展開しております。社長自ら「人づくり推進担当」として、進化する安川電機を担う人づくりをモットーに、従業員とのコミュニケーションの輪を広げ、双方向の対話を通して、参加者のモチベーション向上とチャレンジする人材の育成を強化しております。
(b) ダイバーシティとインクルージョン(※1)
当社は長期経営計画「2025年ビジョン」において、ダイバーシティ(人材多様性)推進を掲げ、多様な人材の強みを生かせる風土づくりに取り組んでおります。変動の激しいグローバル市場にスピーディに対応するため、企業の進化と競争力強化を目指し、次の3項目を人材多様性推進のミッションとしております。
<人材多様性推進のミッション>
1.多様な価値観や考え方を持った人材の採用と育成によって、環境変化に強い企業体質を構築します。 2.多様な意見や視点を取り入れ、イノベーションが必然的に起こる社風を創出します。 3.あらゆる差別要因を排除し、従業員の個性を認めることによって働きがいのある職場環境を実現します。 |
VUCA(※2)の時代、取り巻く経営環境の変化にスピーディに対応するため、当社は、次の100年も成長し続ける企業となるため企業の進化と競争力強化を目指し、日本社会の課題となっている女性活躍のみならず、多様な人材の強みを生かせる風土づくりに取り組んでおります。当社グループ全体では、管理職の約13%(2022年度)を女性が占めていますが、当社単体では、技術立社のメーカーとして技術系採用が多く、その母数となる理系の女子学生の比率が少ないこともあり、結果として女性管理職の比率が低いという課題を抱えております。また直近の社内アンケート結果から、管理職を目指したい女性従業員の割合が向上している一方で、男女の性別役割意識については改善傾向にはあるものの、依然として男女でギャップがあることが分かりました。これら課題の解決に向けて、サステナビリティ方針に基づくマテリアリティの1つとして、女性管理職比率を2025年度に2021年度比2倍(単体)にする目標を掲げております。具体的な取組みとして、文系理系職問わず女性採用を積極的に推進しております。また、女性管理職育成のための研修を実施し、スキルアップやマインドチェンジのみならず、女性社員を育成する職場管理職の意識変革や関わり強化の取組みも実施しております。
(※1)一人ひとりが「職場で尊重されたメンバーとして扱われている」と認識している状態のこと
(※2)Volatility Uncertainty Complexity Ambiguityの頭文字を取った造語で、先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態のこと
(c) 多様な人材の配置
当社では、多様なライフスタイルを持った従業員が働きがいを感じて仕事ができるよう適材適所に人材を配置することを基本的な考え方としております。そのために、従業員一人ひとりの能力発揮と自己成長が求められるとともに、自ら考えたキャリアを発信する場を提供することで、キャリアを実現する人材配置の実現に取り組んでおります。
グローバルでは、世界規模で考え、地域に根ざして活動する「グローカル経営」を基本的な考え方とし、海外オペレーションの現地化を促進しております。
② 社内環境整備に関する方針および取組み
顧客価値創造活動による企業価値の最大化と「働きがいのある会社」を目指すという基本的な考えのもと、評価制度の見直しを中心とした「人事制度改革」や、働き方改革関連法などの社会情勢に対応した「労働時間管理制度改革」を大きな柱として、労働生産性を向上させるための改革を推進しております。
(a) 働き方改革
一人ひとりが働きがいを持てる企業文化・風土を醸成することで、当社の経営基盤を強化するとともに、従業員一人ひとりの顧客価値創造活動を通じて企業価値の向上を目指す考えのもと、具体的な方策を展開しております。
方策 | 目的 |
評価・報酬制度の見直し | 仕事の成果について、デジタルかつ公平に評価し、成果を重視したメリハリのある処遇を実現する |
勤務エリア限定制度の導入 | 多様な働き方を認め、各個人に合わせたスタイルで仕事をしてそれを公平に評価し処遇する |
格付・資格制度の見直し FA(フリーエージェント)制度の導入 | 入社年次に関わらず意欲と能力のある人材にチャンスを与え、競争原理の中で自発的な成長を促進する |
上記を含め、「2025年ビジョン」達成のために必要な組織や人材、外部環境の変化を見据え、組織力および人材力強化に向けた取り組みを進めております。
また、2021年度からは、新型コロナウイルス感染拡大に伴う出社や外出の自粛で、時間や場所にとらわれない多様な働き方が新常態(ニューノーマル)として定着しつつあり、この働き方の選択肢を増やすため、テレワーク制度を導入しました。
あわせて、出社しているかどうかに関わらず、職場や個人の生産性を上げて成果を出せる環境の整備やそれを上司が評価できる仕組みを整備しております。
(b) 評価・報酬制度
国内においては少子高齢化やグローバル化が進行し、デジタル技術が進化する中で、若手人材の就業意識の変化や、高度専門人材の事業上での重要性向上等により、人材の獲得競争が進んでおります。このような中、優秀な人材を確保して活躍を推進するため、採用や従業員のパフォーマンス向上、リテンションおよび将来的な成長等を総合的に加味した魅力的な処遇の実現に向けた評価・報酬制度の改定を行いました。
新しい評価・報酬制度においては、年功での知識・スキルの蓄積を評価する考え方を弱め、職務を遂行し得られた成果を公平に評価し、一人ひとりが担う役割と職務の大きさをベースにした報酬を可能とすることで、従業員の働きがいを高めることをねらいとしております。
また、企業の価値創造の主体が従業員であることを鑑み、2022年度に中長期インセンティブ制度を従業員に拡大しました。経営への参画意識の向上をねらいとし、中期経営計画の達成度合いに応じて管理者以上には株式報酬を、従業員には持株会奨励を兼ねた現金報酬を支給し、企業価値向上への意識を高める制度としております。
さらに、賞与については、営業利益率が10%を超えた場合に上限なく増加し、一方で営業利益率が下がった場合にはその分減少させるという利益への連動性を高めた制度としております。従業員の意欲的なチャレンジが将来の会社の成長やリターンにもつながるという観点から、モチベーション向上を図っております。
(c) ES(従業員満足度)アンケート
2016年度より単体社員全員を対象としたES(従業員満足度)アンケート調査を毎月実施しております。アンケートを通じて経営施策の理解や浸透度、職場の繁忙感および人事制度への満足度等を測ると同時に、社員の抱える諸課題を解消し、中期経営計画の目標達成や長期経営計画「2025年ビジョン」の実現に向け、経営層と全社員がより一体となった企業風土の醸成を目指しております。
アンケートでは定期的に働きがいを感じる従業員の割合を定量化しており、働きがいの肯定回答率は80%前後の高い値で推移しております。
アンケート回答率は毎月90%を超え、さまざまな意見や要望が寄せられております。アンケート分析結果は毎月社内公表しており、全ての意見や要望に対するフィードバックにも努めております。
(d) 従業員持株会
福利厚生の一環として安川電機従業員持株会を運営しております。安川電機およびその関係会社の従業員を対象として、奨励金を拠出金に加算して株式の購入に充当する制度です。
なお、2022年度の持株会加入奨励を兼ねた中長期インセンティブ制度の導入により加入率が大幅に向上し、関係会社を含む対象従業員の70%以上(2023年3月時点)が加入しております。従業員の経営への参画意識を更に高め、業績向上に対するモチベーションを高めるとともに、中長期的な企業価値の向上を図ります。
(e) 労働安全衛生・健康経営
当社は、安全衛生業務を総括管理するため全社総括安全衛生管理者をおき、中央安全衛生委員会を年2回開催しております。この委員会メンバーは労使同数で構成され、各事業所代表者およびグループ会社代表者はオブザーバーとして参加します。各事業所およびグループ会社は、中央安全衛生委員会で決定された方針をもとに、月1回開催されるそれぞれの安全衛生委員会の中でブレイクダウンした独自の方針を決定し管理・運用しております。具体的には、災害事例の周知やその対策、パトロールの指摘事項と改善内容の確認、ヒヤリハットの報告および長時間労働対策などに取り組んでおります。
健康経営については、「安川グループ経営理念」実現のため、2015年に「安全宣言」を制定し、2019年には「働き方改革」の取組みを盛り込んだ「健康安全宣言」に見直し、従業員の健康づくりを推進してきました。2023年度からは「健康経営宣言」として社内外に広く宣言し、健康経営の推進を加速いたします。
<安川グループ「健康経営宣言」>
安川グループ経営理念である、『安川グループの使命は、その事業の遂行を通じて広く社会の発展、 人類の福祉に貢献すること』を実現するため、従業員一人ひとりの働きがいのベースとなる健康づくり をサポートし、健康で安全に明るく働きがいのあるグループを目指します。 1.会社で働くことによる病気やケガをなくします。 2.自律的に健康安全活動を実践する従業員を増やします。 3.従業員一人ひとりが安全で明るく働きがいのある職場・働き方を実現していきます。 |
(ⅰ)労働安全衛生
労働安全衛生マネジメントシステムの考え方を基本に、各職場において、安全に作業を行うための作業基準書の整備と教育訓練、リスクアセスメントおよび日々の業務における災害防止活動を行っております。
また、これらの活動が安全衛生方針や目標の達成につながっているか内部監査を行い、指摘項目について各事業所の安全衛生委員会の中での指導を徹底することでさらなる改善を図っております。これにより、当社および国内グループにおける労働災害の度数率は同業種の平均を下回る水準を維持しております。
(ⅱ)従業員の健康サポート
各種健康診断では、関連する法令や検査の特性を十分に考慮し、作業環境の把握や対象者の選定から検査実施と事後措置まで、有機的かつ効率的な運用を図っております。業務上の疾病予防はもちろんのこと、生活上・就業上の支援に重きを置いた保健指導や教育を行っております。
(ⅲ)メンタルヘルス対策
精神医学的な病気や障害は、他の病気と同様、誰にでも起こりうる疾患であると位置づけ、必要に応じた生活上・就業上の支援を行っております。
また、従業員の健康および生活にさまざまな影響を及ぼす心理的ストレスへの対策の一環として、ストレスチェック制度を活用し、その結果に基づく個人と職場へのフィードバックを行っております。
(ⅳ)疾病休業者の職場復帰支援
やむを得ず病気やケガで休業した従業員が職場に復帰するときは、本人はもちろん所属長や管理部門および産業医が協力し、可能な限りの人的サポート体制や物理的環境を整え支援を行っております。
③ 指標および目標
上記①②の方針および取組みに関する主な指標と目標は以下のとおりです。
指標 | 目標 |
プロフェッショナル人材(※3)の育成 (単体・業務スキルに対するプロフェッショナル評価比率の向上) | 全社平均75%(2025年度) |
働きがい・成長機会の肯定回答率 (単体・ES(従業員満足度)アンケート) | 80%以上(2023~2025年度) |
(※3)自身が任された業務内のスキルにおいて人に教えることができるレベルまたは一人で遂行できるレベルの人材
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