企業兼大株主大気社東証プライム:1979】「建設業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当連結会計年度における研究開発費は1,166百万円であります。

当社は、技術開発センター(神奈川県)、テクニカルセンター(神奈川県)の2研究開発組織において、空調設備及び塗装設備の各分野における技術開発を前期に引き続き精力的に実施し、多くの成果を得ました

 セグメントごとの研究開発は以下のとおりであります。

(1)  環境システム事業

 当連結会計年度における研究開発費の金額は613百万円であります。

① TAIKISHA INNOVATION GATE Shinjuku開設

 当社では「技術の大気社の強化」のため、顧客との接点の増加、課題の把握、開発促進などを目指し、本社の一部に技術開発センター直結のサテライト設備「TAIKISHA INNOVATION GATE Shinjuku(以下TIGS)」を開設いたしました。交通の便の良い新宿に設けることで、新規顧客や、既存顧客の新規部門の方への開発技術を含めた技術紹介を通じ、顧客ニーズの把握と技術開発へ展開、及び顧客との協創による新たな関係構築を目指し活動を開始いたしました。

 当連結会計年度は、TIGSと技術開発センター、顧客事業所訪問での開発技術の紹介など、顧客との新たな関係構築へ向けての活動を強化し、延べ90件の技術提案を実施し、10件の顧客との協創(技術導入、評価、フィールドテストなど)に繋げました。今後もこの活動をさらに活発化させ、カーボンニュートラルや快適で安全な環境構築など社会が求める課題への対応を実施いたします。

② CO2分離回収

 当社では、カーボンニュートラル(以下C/N)への取組として、自然エネルギー活用や省エネルギーでは対応しきれない部分の対策としてCO2吸脱着技術の開発に取り組んでおります。

 当連結会計年度は、昨年来より実施していた回収したCO2利活用に加え、同技術の空調設備への展開を検討いたしました。これにより、近年の外気CO2濃度の高まりに対して既存建物では容易に換気量を増加させることが難しいことへの対応や、外気量削減による省エネ効果が期待できると考えております。また、回収時のエネルギー消費によるCO2発生量を回収量より少なくし、回収したCO2を利活用することで、室内環境を維持しながら、C/Nが実現可能となります。その実現を目指し、システム効率、エネルギー評価などを行いました。同時に検証結果をもとに、CO2吸着剤へ求められる性能を明確化し、その開発技術を持つ企業と共同で吸着剤の改良及び性能評価を実施いたしました。性能面での評価を終了し、次ステップでは、吸脱着装置の構築、フィールド試験などを行い、装置としての提供や、回収したCO2の新たな活用先の開拓を実施してまいります。

③ 除菌装置

 当社では、COVID-19や将来の新たなパンデミックに備え、快適で安全な空間の提供を目指し、空調用除菌装置(エアライザー)の開発を行いました。

 当連結会計年度は、空調設備に付加する除菌装置の開発を実施いたしました。近年、深紫外線(UVC)LED開発が進みその効率も向上し、コストの低下も進みました。同時に光触媒技術も進化しておりこれらを活用することで高機能、高性能の空調用除菌装置を開発いたしました。

 テナントビル等で多く利用されている空冷パッケージエアコンのフィルターセクションを、除菌機能を合わせ持つエアライザーに置き換えることにより、ウィルス、菌やカビを不活化させ、安全な空気の提供が可能となります。また、当装置は、紫外線と光触媒の利用により空気中の揮発性有機化合物、臭気の分解機能も有しております。これらの安全な空間を作る機能と、当社の従来からの快適な環境を構築する技術を組み合わせて、全ての働く人へ安全で快適な環境を提供することを目指します。

④ DXの活用(現場巡回ロボット、試運転支援)

 当社では、DXを活用した働き方改革へ向けた取組として、ロボットによる現場巡回技術の開発を行っております。以前より取り組んでいるロボット制御技術に加え、施工時の活用にフォーカスした現場巡回、現場画像の取得、活用にも取り組んでおります。

 当連結会計年度は、当社技術開発センター新研究棟工事の際に、4足ロボットに360度カメラを搭載し工事現場内を巡回させ記録を行い、位置情報と画像の紐づけや画像の活用方法について検証を実施いたしました。また、日々工事現場特有の状況変化があり、非GPS環境の中で、正確な位置情報の取得方法などについて検証をいたしました。

 取得位置情報の精度などには課題がありますが、位置情報に紐づけされた日々の記録画像を活用することで、施工進捗管理などへ活用が可能になります。同時に、外部事務所からインターネットを経由した巡回ロボットの操作や画像送信なども併せて行い、遠隔事務所から制御する際の課題や必要機能などの把握も完了いたしました。

 今後はこれらの取得情報をBIM(Building Information Modeling)と連携することで、記録画像をもとにした工程管理手法などの開発、検証を計画しています。今まで人が主体で行ってきた作業を、ロボットへ置き換えることで、作業効率改善を通じた働き方改革の実現を目指します。

 また、製薬医薬向けバリデーション技術の一つである、フィルターリーク試験システム(バリデーション・エース(以下VA-m))の電子デバイス工場への展開と検証を実施いたしました。

 クリーンルームを施工時に、その品質検証として、最終フィルター(HEPAやULPAフィルター)のリークがないことを検証します。これまでは、計測器から出力させる試験結果を紙で管理し、試験結果報告書へ作業員が転記しておりました。VA-mの改良版を利用することで、計測から試験結果のまとめまでを一括で処理をすることが可能となり、これらにかかる手間の大きな削減をすることが可能となりました。

 さらに、フィルターリーク試験では手順に従って作業員が主導で吸い込みプローブを走査させていましたが、これらを自動化する装置の開発に着手いたしました。協力業者様と共同で実現場での検証を実施し、課題や開発の方向性などの把握いたしました。現在のところデーター処理部分の自動化まで到達いたしました。今後はフィルターリーク試験全体の自動化を行い、さらなる作業効率低減、働き方改革を目指します。

(2)  塗装システム事業

 当連結会計年度における研究開発費の金額は552百万円であります。

① フィルム加飾(ドライ加飾)システムの開発

 自動車メーカー各社は、気候変動のリスクを踏まえて経営戦略にCO2排出量削減目標を織り込んでいます。各社とも主要な排出源は同じで、加工工場の上流側排出(Scope3)、加工工場の直接排出(Scope1,2)、加工工場の下流側排出(Scope3)の3つがあり、これらの排出源への対策は自動車産業における共通の課題です。

 なかでも、加工工場の直接排出に関しては、自動車製造工程において最大のエネルギーを使用する塗装プロセスの変革が大きなカギを握っています。当社では、塗装プロセスでのカーボンニュートラルの実現に向け、自動車メーカー各社と連携し、CO2排出量をゼロとするような塗装設備の開発・提供に取り組んでいます。

 その一例が、ウェット塗装からドライ加飾への生産技術革新です。ドライ加飾とは、従来のスプレー塗装(ウェット塗装)に代わり、フィルムを真空吸引・加熱によって貼り付けることで、自動車の外装をフィルム加飾(ドライ加飾)する技術です。

 重ね塗りの過程で塗装と乾燥を繰り返すウェット塗装に対して、フィルム加飾(ドライ加飾)では、従来の塗料を使用した塗装に比べて加工工場での直接排出部分で大幅に使用エネルギーを抑えることができ、50%以上の削減を達成しています。低炭素化が実現する上に、排水・排気処理装置も不要となるメリットもあります。また、加飾フィルムならではの模様・柄・照光などの意匠性の拡大や、遮熱等の機能性の付加も可能です。今後、加工工場の上流・下流部分で、被塗物基材やフィルム基材のリサイクルなどの工程革新が実現することにより、さらなるCO2排出量の削減効果が期待できます。当社では、従来のドライ加飾技術の課題であった、凹凸がある複雑な立体形状に対しても、3次元真空圧空成形(TOM)工法を採用することで、フィルムを加飾(貼付け)することを実現。乗用車の一体型バンパーのような大きく凹凸のある複雑な立体形状へも、フィルム貼合ができるようになっています。

 ドライ加飾プロセスの確立に向けて、近く自社研究施設内に、量産ラインを想定したドライ加飾システムのデモラインの構築を計画しています。当社では今後も脱炭素社会の実現に貢献するため、自動車をはじめ、様々な生産ラインにさらなる付加価値提供技術となるドライ加飾の技術開発を推進していきます。

② カーボンニュートラル乾燥炉の開発

 世界中にて地球温暖化における環境問題が表面化してきている中、CO2排出量の削減への早急な取組が急務となっています。自動車製造工場においては、塗装工程からのCO2排出量が大きな割合を占めており、当社では塗装設備に対しての様々な対策を提案しております。当社技術となるドライブース、少風量ブース(i-LAVB)などのCO2削減提案により、2021年には自動車塗装1台あたりのCO2排出量64.9kg-CO2/台(2005年度比で59%削減)を実現し、今後2025年度に50kg-CO2/台、2030年度には40kg-CO2/台に削減することを目標に掲げております。この目標達成のためには再生可能エネルギー、水素燃料などのエネルギー供給側の転換、及び塗装工程の進化を含めた対策が必要であり、当社はオール電化の検討や水素燃料設備の導入に伴う機器能力の把握・制御方法・安全対策等の技術確立など幅広く、より早く対応を進めております。

 塗装工程において、品質が良く、耐候性の高い塗膜を形成するために、塗装ブース内の温湿度調整や塗膜乾燥に十分な熱源が必要となり、多くは天然ガスに依存しております。この天然ガスの代替エネルギーを活用すべく、当社では座間テクニカルセンターの乾燥炉設備に、数種類の電気ヒーター、水素バーナーを導入し、NOx、CO、水分発生の基礎技術を比較検証するとともに、塗装設備に対する技術、制御、安全などのシステム検証も実施しており、顧客が安心して使用できる設備の提供準備を進めております。

 顧客もCO2削減への取組を推進する中、電気ヒーター、水素バーナーへの関心は非常に高く、具体的な検討やテスト的な導入も実施いただいております。引き続きカーボンニュートラル実現へ向けてエネルギー変革や塗装工程の進化に対応し、顧客の要求に応えられるシステムを開発推進してまいります。

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