大林組 【東証プライム:1802】「建設業」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
(1)経営の基本方針
長期的な視点に立った会社経営を基本に、経営の効率化と収益力の向上によって、企業価値をより高めていくことを目標としており、その実現を通じて、株主、顧客、取引先、従業員、地域社会など、すべてのステークホルダーの信頼と期待に応えられる経営を目指している。
(2)経営環境及び対処すべき課題
① 経営環境
当社グループの経営環境については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績」に記載のとおりである。
② 対処すべき課題
ア 安全最優先への取組みについて
当社では、2023年9月19日に「東京駅前八重洲一丁目東B地区第一種市街地再開発事業建設工事」において、
鉄骨建方作業中に鉄骨の梁が崩落し、6名が被災、うち2名が死亡するという重大災害が発生した。本災害によ
り尊い人命が失われ、一命をとりとめた方も重症を負うなど、工事に従事される方の安全を守れなかったことは
当社にとって痛恨の極みであり、その責任を真摯に受け止め、ご遺族の皆さまと被災者及びそのご家族に対して
誠心誠意対応するとともに、現在も捜査中の当局に対して全面的に協力している。
当社グループとしては、二度とこのような事故を起こさないとの強い決意のもと、「安全に一切の妥協をしな
いこと」、「事業に関わる全ての人の安全を確保すること」を経営の最優先事項であることを改めて認識し、そ
れらを実現するための取り組みを推進しており、引き続き株主をはじめとしたステークホルダーの皆様からの信
頼回復に努めていく。
(ア)当該現場における対応
■対策本部の設置~工事再開
災害発生直後に、社長の任命の下、建築全般を所掌する副社長執行役員を本部長として対策本部を設置し
(他に安全本部長や建築本部長などの役員、部門長等がメンバーとして参画)、2024年1月中旬までの約4か
月間にわたり工事を中断して、当局による捜査、調査に協力する(現在も捜査は継続中)とともに、事故に至
ったあらゆる可能性を排除することなく安全対策(※)を実施することで、諸官庁、発注者等の関係各所の了
解を得て、2024年1月16日に工事を再開した。
(※)安全対策 | |
① 施工計画の再構築及び再承認等 | ●鉄骨工事計画の見直し 東京本店工事部門・安全部門の管理の下、鉄骨工事の施工ステップや組み立て中の鉄骨を支える支保工等の強度計算、落下対策等を改めて見直し、本件事故原因のあらゆる可能性を考慮のうえ安全性を十分に確保した施工計画を再構築 ●その他重要工程の施工計画の見直しと承認フローの強化 鉄骨工事以外にも重点管理すべき工程を特定し、当該工事計画を見直すとともに、社内チェック体制を強化 |
② 施工管理体制の強化 | ●安全専門の総括監督者、工務計画の専門班設置など工事事務所の班編成、要員体制を増強 ●上記体制増強の下、すべての計画変更・作業変更におけるリスクアセスメントの実施徹底 ●常設部門(工事部、安全部等)によるパトロール強化 ●労働安全衛生に関する第三者専門機関による安全診断の月2回受診 |
上記の対策については、労働安全衛生に関する第三者専門機関による診断評価を受け、その意見を反映した
ものとなっている。
■役員の報酬返上
当局による捜査は継続中であるが、重大災害の発生を重く受け止め、当工事の責任ラインに属する社長以下
の役員6名が報酬の一部返上を実施した。
(イ)全社における再発防止策
■全社の鉄骨建方工事に関する緊急安全総点検(災害発生直後に実施)
■「重点管理工事の安全衛生リスク管理実施要領」の策定
工法や計画の検討不足等によって発生する事故・労働災害を未然に防止することを目的として、リスクの高
い工事を「重点管理工事」として定めたうえで、工事事務所と常設部門が一体となって安全衛生リスクを管理
する実施要領、フローを策定した。
■「安全最優先への取り組みについて」の策定、着手
社長の諮問機関である「経営計画委員会」にて全社の安全対策の審議、取りまとめを行い、「安全最優先へ
の取り組みについて」として経営会議及び取締役会メンバーに報告のうえ、取り組みに着手している。
「安全最優先への取り組みについて」で掲げる主な施策 | |
① 安全監察監の各店への配置 | 安全衛生に関する優れた専門知識を有する外部人材を「安全監察監」として任用し、外部の客観的視点と法令に基づく厳格な指導・助言を行う安全本部直属の機関として各店に配置する。 |
② 安全に対するコミットメントの強化 | 従業員一人ひとりの安全意識を高めるためにはトップのコミットメントが重要であることから、その動機付けとして、各本支店長に自主的な目標設定を求めるとともに、各会議体における直接の発信機会を設ける。 |
③ 安全に関する教育・研修の見直し | 当社としての基本的な安全基準を全従業員に漏れなく習得させるための各本支店、土木・建築事業間の育成水準の統一や、「自分ごと」として考えさせるワークショップ形式の導入など教育内容の見直しを実施するとともに、安全研修の頻度を上げるなど教育機会の増加を図る。 |
④ 大規模現場組織編成ガイドラインの策定 | 大規模建築現場において、特に組織編成を行う上で重要と考えられる役職者及び法令等に基づく責任者の選任・責務を明確化することを目的として、「大規模現場組織編成ガイドライン」を策定し、標準モデルとして全社展開する。 |
また、2024年3月14日、本災害の再発防止に加え重大災害抑止に向けた安全管理体制の強化に関する本支店
幹部役職員向け及び本支店協力会社向けの周知会を開催した。
周知会の概要 | |
出席者及び人数 | 各本部長、本支店長及び本社・本支店の関係各部門長等 540名 本支店協力会社 代表者等 219名 |
内容 | ① 2023年度に発生した重大災害に繋がる災害事例 ② 本災害の概要及び再発防止策の説明 ・個別の再発防止について ・全社対応の取り組みについて ⅰ 「安全最優先への取り組みについて」で掲げる各種施策 ⅱ 「仮設支保工(ベント)工事」の社内審査ルール化及び図解資料の追記・改訂 ⅲ 重点管理工程を特定した安全衛生リスク管理の実施要領の策定 ⅳ 社内イントラネット上への重大災害事例のアーカイブ化 |
<周知会の様子> | <重点管理工事の安全衛生リスク管理実施要領> |
森田建築本部長による再発防止策の説明 |
|
イ 大林グループ中期経営計画2022追補について
当社グループは、2022年3月に公表した大林グループ中期経営計画2022『事業基盤の強化と変革の実践』において、2022年度、2023年度を「建設事業の基盤強化への取組み」の期間とし、連結営業利益1,000億円をボトムラインに業績の安定を図るとともに、2026年度までの「変革実践への取組み」により、中長期的な成長への道筋を確立することとしていた。
しかしながら、想定を超える事業環境の変化(建設資材価格の高騰、生産力拡充を上回る建設需要の拡大継続、海外での金融政策の変化など)が生じてきた中、収益性は当初計画を下回って推移し、また、建設事業の存続の前提となる安全と品質の面では、重大災害を根絶できておらず、このような当社グループの現況に鑑み、2023年度までとしていた「建設事業の基盤強化への取組み」を2024年度以降も継続し、徹底することとし、本年5月に「大林グループ中期経営計画2022追補」を策定、発表した。
中期経営計画2022では投下資本利益率(ROIC)を経営指標目標に採用し、資本効率性を重視する経営に取り組んでいたが、これをより一層推進するため、必要自己資本の水準を1兆円と設定して戦略的な資本政策を実行することとし、あわせて自己資本当期純利益率(ROE)を経営指標目標として「2026年度までに10%以上」と定めた。同時に、生産性の向上や新技術によるコストダウンに注力するとともに採算性を重視した受注戦略に取り組み一定の成果が上がってきたこと、社会全体で適正な価格転嫁への動きが進んでいることなどを踏まえ、現時点で想定される業績見通しに基づき中期経営計画2022の経営指標目標(投資計画・キャッシュアロケーションを含む)を一部見直した。
また、当社グループの持続的成長に向けては、国内建設事業を中核とし、それ以外の事業が国内建設と同等以上の業績を創出するグループ事業体制の将来的な構築を目指し、組織体制やガバナンス体制の整備等、経営基盤確立に向けた「変革実践への取組み」を中期経営計画2022期間で遂行する。
当社グループは「大林グループ中期経営計画2022追補」に定める施策を着実に実行し成長を図るとともに、資本効率性を重視する経営を推進することで、中長期的な企業価値向上に努めていく。
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