企業兼大株主大林組東証プライム:1802】「建設業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループは、社会及び顧客の多様なニーズに応えるため、環境保全、エネルギー対策等の社会に貢献する技術や、生産性向上、品質確保、コストダウン等に資する工法や技術のほか、事業領域の拡大を図るための技術開発など多岐にわたる分野の研究開発活動を実施している。

 また、研究開発活動の幅を広げ、効率化を図るため、国内外の大学、公的研究機関、異業種企業との技術交流、共同開発も積極的に推進している。

 当社グループの当連結会計年度における研究開発に要した費用の総額は165億円であり、主な研究開発成果は次のとおりである。

 なお、当社は研究開発活動を国内建築、海外建築、国内土木、海外土木、不動産及びその他の各セグメントには区分していない。

(1) 当社

① 大風量かつ吹出し口の結露抑制が可能な空調用誘引ユニット「in-DUCT™」を開発

 アトリウムやスタジアムなど、主に大空間や半屋外空間向けの空調用誘引ユニット「in-DUCT™」(インダクト)を開発した。

 地球温暖化による夏季の高温多湿化が進み、アトリウムやスタジアムなどの大空間や半屋外空間においても、快適な空調環境の確保が求められる一方で、これらの空間は外気の流入により湿度が高くなるため、空調設備には大風量の送風と吹出し口の結露防止対策が必要となる。

 空調機からの空気は「in-DUCT™」を通過する際に周囲の空気を誘引(空調機送風量の約50%)し、約1.5倍の大風量の混合空気(最大18,000m³/h)として送風される。そのため、室温と送風温度との温度差が小さくなり、吹出し口の冷却による結露を抑制できる。

 また、「in-DUCT™」は動力が不要で、気流方向さえ守られれば、本体を設置する向きに関する制約はなく、ダクトの一部として施工できることに加えて、配管など他の吊り物と近接設置しても、誘引空気の経路が確保できるデザインとなっているので、既存の空調システムへの設置や再利用が可能である。

 加えて、「in-DUCT™」は周囲の空気を誘引するため、空調機で処理すべき風量を、吹出し必要風量の約3分の2に抑えることができ、空調機の能力やダクトのサイズダウン、省スペース化が可能となるため、イニシャルコストは約20%削減できる。また、空調機の風量削減に伴い、消費電力は約17%削減でき、CO2排出量削減と、ランニングコストの抑制が可能となる。

② 建設現場のデジタルツインを構築できるアプリ「CONNECTIA」を開発

 高性能PCや特別なスキルを必要とせずに、容易に建設現場のデジタルツイン(※1)を構築できるデジタルツインアプリ「CONNECTIA」を開発した。

 これまで、デジタルツインを構築する現場の管理は、3次元モデルを扱える高性能PCの手配や、ソフトウェア操作に関する高度なスキルの習得が必要であり、加えてBIM/CIM、地形、点群などの静的データと、人や工事車両などの動的データを統合するには高度な技術が必要なことから、一部の建設現場で試験的に行われているのが実情であった。

 国立大学法人東京大学大学院工学系研究科と共同研究した「データ・システム連携基盤」(※2)の考え方を応用し、TIS㈱と、主にデータ統合の仕組みを構築した。

 そして、ビューアの操作性や快適性を向上させるため、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン㈱が提供しているゲームエンジン「Unity」を活用し、本アプリを開発した。

「CONNECTIA」は一般的なPCでも3次元モデルを快適に作動・表示でき、現実空間の情報収集や再現等の操作を単一のシステムで行うことができる。これにより、誰もが簡単に利用できる直感的でシンプルな操作性を実現しているほか、クラウド上にデータが保存されることで時間や場所を問わず現場状況をデジタルツイン経由で確認可能になる。

※1 デジタルツイン:IoTなどを活用して現実空間の情報を取得し、サイバー空間内に現実空間の環境を再現

 する技術

※2 大林組と国立大学法人東京大学大学院工学系研究科が開発し、概念実証を完了した、施工管理で扱う各種デ

  ータを相互利用することで施工管理業務の効率化をめざすシステム

③ 油圧ショベルバケットの土付着抑制部材「ジオドロップ™」を開発

 フッ素樹脂(PTFE)と金属を直接接合した部材「ジオドロップ™」を油圧ショベルのバケットの底面と側面に貼り付けることで滑りやすくなり、土の付着を抑制する技術を開発した。

 土の付着の抑制により、掘削・積み込み時のバケットに残った土砂を振り落とすための揺動・衝撃作業が9割削減され、油圧ショベルの稼働時間は1~2割抑制が可能となる。これにより、CO2排出抑制、騒音・振動の発生抑制、バケットの延命化などの効果が得られる。

 また、近年実用化が進められている自動・自律運転による油圧ショベルの生産性向上にも貢献する。

④ アコースティック・エミッション技術を用いた支障物切削負荷検知システムを開発

 シールド工事における地中支障物の切削において、「アコースティック・エミッション技術」(※)を用いて、

 切削時に発生する特有の弾性波を検知し、支障物との接触、切削時の負荷・衝撃を評価するシステムを開発した。

 支障物との接触、切削時の負荷・衝撃をいち早く検知・評価し、シールド機の掘進速度の調整と切削負荷を抑制することで、カッタービットの損傷を防ぎながら、支障物を確実に切削可能となる。

 また、想定外の支障物に突き当たった場合でもいち早く検知でき、速やかな対策を取れることから、シールド機への損傷を防ぎ、円滑な施工により工程確保が可能となる。

※ アコースティック・エミッション技術:アコースティック・エミッションとは、材料に変形、摩耗、破壊が起こった際に、内部に蓄えられた弾性エネルギーが、高い周波数をもつ音響信号「弾性波」として放出される現象。アコースティック・エミッション技術は、この「弾性波」を検出・評価する技術。

⑤ 高精度なZEB評価を可能にする業界初(※1)の設計支援システム「SmoothSEK™」を開発

㈱イズミシステム設計と共同で、BIMワンモデルからZEB認証の申請に必要な省エネ性能計算情報を自動抽出する業界初の設計支援システム「SmoothSEK™」(スムーズセック)を開発した。

2050年のカーボンニュートラル実現に向け、建築物のZEB化のニーズが高まっているが、ZEB認証に係る申請には、省エネルギー性能の算出に多大な時間と労力が必要であった。

 当社は、自社のBIM業務標準「SBS」(※2)に基づいたBIMワンモデルの一貫利用を推進しており、今回開発した「SmoothSEK™」をBIMワンモデルと連携することで省エネルギー性能の評価を正確かつ効率的に行えるようになる。

※1 自社調べ(2023年8月)。「建築物省エネ法で規定された『標準入力法』とBIMの自動連携」として。

※2 SBS(Smart BIM Standard):大林組のBIM業務標準。BIM一貫利用を幹とし、プロジェクト関係者が

 等しく理解できるBIMモデルをつくるための基準。

⑥ 場所打ちコンクリート杭の杭支持層到達確認システム「PiRuler-GEO™」を開発

 AIとICTの活用により、場所打ちコンクリート杭の施工において、杭支持層への到達状況を高精度でリアル

 タイムに確認できるシステム「PiRuler-GEO™」(パイルーラー ジオ)を開発した。

 場所打ちコンクリート杭は、土木・建築工事で多く採用されているが、複雑な地盤条件下において、杭の支持層

 到達状況の管理に多大な労力を要するという課題があった。

 「PiRuler-GEO™」は、掘削機から得られる計測データと、設計土質や経過時間などの独自指標を用いて、機械学

 習させたAIソフトによって支持層の土質と地盤の固さを推定する。掘削深度や支持層到達状況などの計測データ

 をリアルタイムで確認可能であるため、管理の安定化と省力化を図ることができるほか、手戻り工事の発生を抑制

 し、工期遅延の防止につながる。

 ⑦ 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の廃棄物をコンクリート材に再生利用する「リカボクリート™工法」を

 開発

 燃料電池車「MIRAI」の水素タンクに使用されている炭素繊維強化プラスチック(以下「CFRP」という。)

 の端材を、コンクリート補強用短繊維(※)として再生利用する新たな技術「リカボクリート™工法」をトヨタ

 自動車㈱と共同で開発した。

   CFRPは、軽くて強度が高く、耐久性に優れることが特長で、水素を燃料とする燃料電池車の水素タンクや航

 空機、風力発電の風車ブレードなどに利用されている。しかし、性能を保ったままで再利用することは難しく、端

 材として発生したCFRPは電炉で鉄をリサイクルする工程での原料としてのみの使用にとどまっていた。そのた

 め、CFRPが持つ強度を活かした再利用が課題となっていた。

 本技術は、CFRPに独自の熱加工を施し、適切な長さに裁断したうえで、コンクリートに添加することで、コ

 ンクリートのひび割れ抑制や靭性の向上を実現する。CFRPによる補強用短繊維は、新品の炭素繊維と比べて、

  CO2排出量を15分の1に、通常の補強鉄筋の使用との比較では9分の1にそれぞれ低減できる。

  ※ コンクリート補強用短繊維:コンクリートと混ぜることで、靭性(粘り強さ)を高めることができる繊維質の

 補強材

 ⑧ 建物の施工段階のCO2排出量を予測するシステム「カーボンデザイナー®」を開発

 建物の計画初期段階で、施工段階のCO2排出量を容易に試算できる、CO2排出量予測システム「カーボンデザイナー®」を開発した。

 従来のCO2排出量算定システムは、必要とする入力項目数が多いことや、入力値が未確定の場合は試算できないなどの課題があった。

 「カーボンデザイナー®」は、大林組の豊富な施工実績におけるCO2排出量や躯体材料などのデータを基に、計画初期段階で分かる項目(「工事名称」「工事請負金額」「延床面積」「建物用途」「工期」の5項目)を入力するだけで、施工段階の燃料、電力といったScope1(※1)、Scope2(※2)のCO2排出量を表やグラフで可視化する。

 また、通常の燃料、電力、資材の使用から低炭素型資材を使用した場合のCO2削減効果の試算も可能である。

※1 Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出

※2 Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出

⑨ コンクリート打設に関する情報を一元管理するシステム「COTOMS」を開発

 コンクリート打設作業における品質管理情報を統合的に管理するためのシステムである「COTOMS」(COncrete TOtal Management System コトムス)を開発した。

 コンクリート打設作業の管理者は、「COTOMS」を用いて、出荷、運搬、受入れ、打設、締固め、仕上げ、養生、検査の各プロセスの開始・終了時刻、コンクリート性状などの品質管理情報をPCやタブレットの一画面内で確認しながら管理・蓄積することが可能となる。

 「COTOMS」のシステム間情報連携手法(API)により、各プロセスにおける情報を集約・連携し一元管理することで、情報の連携速度と確実性が増し、コンクリート打設管理に要する時間を約30%削減できる。また、管理情報の確実な連携だけでなく、トレーサビリティが確保されることで、品質管理の精度が向上する。

 また、Webブラウザ及びインターネット利用環境があれば、発注者や協力会社、現場事務所や本支店などの支援部門ともリアルタイムに情報共有が可能である。

 加えて、さまざまな場所打ちのコンクリート工事で利用でき、工種や用途に合わせて、連携するシステムの組み合わせや表示画面のカスタマイズが可能である。

(2) 大林道路㈱

 アスファルト混合物製造時のCO2排出量を実質ゼロとする製造プロセスを確立

 アスファルト混合物製造時のCO2排出量を実質ゼロとするプロセスを確立した。

 アスファルト混合物の製造過程において、骨材を投入したドライヤーを加熱する際、燃焼バーナーの燃料として、A重油を廃食油に置き換えることで、温室効果ガス排出量を100%削減することが可能となった。電力は環境価値証書を購入し排出量をオフセットする。

 大林道路は、水素を代替燃料とした混合物の製造に既に成功しており、国内各所のアスファルト混合所のカーボンニュートラル化を進める。

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