企業兼大株主大日精化工業東証プライム:4116】「化学 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)企業理念、行動指針、必達

 当社グループでは、創業者である高橋 義博が1968年に制定した社是<必達>を経営方針の中心に据えて経営に取り組んで参りました。職場の目に付くところに掲示し、社是<必達>に込められた精神、考え方を常に確認すると同時に、従業員への浸透を図ることを行ってきました。

 社是<必達>の精神は、現在においても何らその価値を失っていないものと考えますが、既存の仕事、製品を軸に、役職員個々人の心構えや行動に重点を置いた内容としているため、近年の社会環境、経済環境が変化していく中で、社内外の人との関連性、新しい技術革新、製品開発への一層の目配り、社会の中における当社との連環という視点で、不十分さを感じるような状況になってきました。

 そのため、2015年12月開催の当社取締役会において、社是<必達>の考え方に加える形で、新たに<企業理念>、<行動指針>を規定し、経営方針を一層充実したものといたしました。

 これは、すべての経済原則や経営理論は「人」の行動原理に基づくものであるとの理解に立ち、まずは社内外を問わず全ての「人」に興味を持つべきであるとし、技術革新や商品開発など新しいことへの取り組みが、人や企業の活性化につながるという点を改めて確認し、一方、未来に目を向けると、人も企業も他者との連環(関連)の中で生き抜いていかざるをえないことを再認識した上で、社会に必要とされ、社会の発展に資する姿勢を打ち出していくべきとしたものであります。比較的平易な表現とすることで、若手従業員から経営トップに至るまで、<必達>と合わせて、浸透を図ることを企図したものであります。

 これらを踏まえ、当社グループは以下の<企業理念>、<行動指針>、<必達>の社是の下、事業活動を行うに当たって人財の付加価値を一層高めることに努め、全てのステークホルダーを尊重し連携を図りながら、地球環境保全などサステナブル社会に対する企業責任を積極的に果たしてまいります。

<企業理念>

・人に興味を持とう

・新しいことに興味を持とう

・未来に興味を持とう

<行動指針>

 人間は面白い。

 その面白い人間が作っているのが企業であり、また顧客である。

 全ての経済原則、経営理論は、人の行動原理に基本がある。

 人に興味を持とう。

 新しいことはワクワクする。

 技術革新や商品開発は顧客や市場を開拓すると同時に、人間も活性化する。

 新しいことに興味を持とう。

 未来を考えることは楽しい。

 未来は子供たちのものだ。

 未来を考えれば、人も企業も自分だけでは生きて行けないことが分かる。

 顧客の発展が無ければ、当社は富んでも長続きしない。

 更に、社会に生かされなければ、人も企業も存続し得ない。

 未来に興味を持とう。

 一方、当社には1968年に制定した、社是「必達」が存在します。上記の企業理念と共に、歴史ある社是「必達」を、誇りを持って遵守しています。

<必達>

 私たちはカラーエイジを担う大日精化の社員として<必達>の社是のもとに誇りを持って仕事をすすめよう

1.仕事は必ず目標を立てこれを必達しよう

1.正しい製品知識を身につけ製品普及のチャンスを積極的に求めよう

1.仕事を通じ製品を通じて会社の信用を更に高めよう

1.社会人として常に教養を高め反省を深める機会を持とう

1.仕事を通じて社会に貢献し大日精化を最高の企業体としよう

(2)経営理念

 創業者 高橋 義博の「自分の生活が好きな色彩によって包まれたいと思うのが私たちの念願」との遺志を引き継ぎ、世界中の「もっと便利に、もっと安全に、もっと自由に彩りたい」という願いをかなえることを使命として、当社グループは企業理念や社是<必達>のもとに、企業としての持続的成長と価値向上を目指した「CSR・ESG基本方針」を、そしてこれを補完するために近年の社会的課題である地球環境、ガバナンス、人権尊重、情報管理、品質管理、安全衛生、人財育成、健康経営などに関する各種方針を制定し、役職員がこれらを徹底することで、全てのステークホルダーの課題に寄り添い、彩りと特性を持った素材をさまざまな分野に提供し、実現しております。

 また、2023年10月には社内公募により、新ブランドメッセージ「彩りの、その先へ(今日の未知は未来への道)」を決定し、コア技術である①有機無機合成・顔料処理技術、②分散加工技術、③樹脂合成技術を更に深化させ、「色彩のその先の可能性」を追求して「機能性マテリアル分野のエクセレントカンパニー」を目指しております。

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、2021年8月に公表の2022年3月期を初年度とする3か年中期経営計画において、ROA(総資産経常利益率)5%、ROE(自己資本利益率)9%とすることを経営目標として掲げましたが、最終年度である3年目の2024年3月期では、ROA2.6%、ROE3.2%の結果となりました。

 これは、初年度はコロナ禍の落ち込みからの回復と同時に過剰な流通在庫が生じ、2年目以降コロナ禍の巣ごもり需要の反動減と長期にわたる在庫調整に加え、戦争影響、世界的なインフレ・原材料価格高騰の影響等を受けた結果と考えております。

2025年3月期を初年度とする新3か年中期経営計画「明日への変革 2027」においても、引き続き長期目標としてROA5%、ROE9%を掲げております。この目標に向けて、新中期経営計画の各施策を進めてまいります。

(4)経営環境及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題等

 当社グループの置かれている経営環境については、以下のとおりと認識しております。

①お客様の国内外の事業展開に寄り添い、収益性、効率性をご提案するために、当社では国内外の拠点の強みを活かし、国内、海外の一方に偏することなくバランスのよい業務展開をするべきであることが重要な課題であると認識しております。

②当社グループの持続的な成長のためには、ESGへの取組みがあらゆる事業活動の基本理念であり、環境配慮(E)、社会貢献(S)の実現のための研究・開発が果たす役割が、特に重要であると認識しております。このため社会全体の持続性、安全性、収益性、効率性、採算性などの側面から十分に検証の上で、前述の「(2)経営理念」に記載の「3つのコア技術」を更に深化させること、新たな技術を取り入れることに、人財と設備、資金を投入していく必要があるものと認識しております。

③ステークホルダーの皆様から信頼され常に選ばれる企業であり続けるためには、上記②で述べたように、長期的・持続的な成長とともに、製品や事業活動を通して地球規模の環境や社会問題へ取り組む企業姿勢と、意思決定の透明性、公正性を確保できるガバナンス体制の下で、従業員一人一人の思いが企業風土として醸成されることが企業価値の向上においても大きな影響を与えるものと再認識した上で、全社を挙げてE(環境配慮)、S(社会貢献)、G(企業統治)の側面から能動的に活動を促進することが必要と理解しております。

④今後更に、デジタル技術及びデータ分析の活用が、当社グループの競争力の源泉のひとつとして重要性を増し、経営目標を達成するための重要な手段であると認識しております。当社は基幹システムを2018年10月に刷新し、さらなる活用のための周辺システムの整備も着々と進めてきておりますが、より高度化していく外部環境からの要請事項に対し、これまで以上に、適時かつ適切に対応していく仕組みが必要であると認識しております。また、データ駆動型ビジネスへの移行を進め、効率的で確実性の高い戦略、独創性のある製品開発を強力に推進することが不可欠であり、そのためにも有効なデータ、優秀な人財と、柔軟で素早い意思決定が重要であると認識しております。

⑤当社グループの掲げる長期目標の達成には、人的資本及び知的財産への投資と活用によるイノベーションの創出が不可欠であると認識し、企業にとって財産である「人財」の育成と活気溢れる企業風土の醸成は重要な経営課題のひとつと考え、従業員のモチベーションとエンゲージメント向上を目指したHR戦略を推し進めます。また別途定める「人財育成方針」「社内環境整備方針」に沿って、企業と人財が互いに高め合っていくビジョンを共有し、持続可能な成長に向けて地道にかつ着実に、相互に磨き上げていくことにより、当社グループの成長と人財の成長との間に好循環を生み出すことができるものと確信しております。本件については、「2.サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本投資・人財育成及び人財の多様性の活用」にて詳細を記載しております。

 これらを踏まえ、当社グループの持続的成長と中長期的な企業価値の創出のため、2024年3月末までの3か年の前中期経営計画の施策の達成状況等を踏まえ、2025年3月期を初年度とする新3か年中期経営計画「明日への変革2027」において、次の戦略とともに資本効率を重視した経営を重点的に進めております。

 ア、技術主導による競争優位性の確保

 当社グループでは、保有する技術を、技術マネジメント手法を用いて再評価し、社会的なニーズ(ESG)への貢献を最優先課題として、オープンイノベーション、セグメント間のシナジー、知財戦略などを組み合わせ、3つのコア技術(1 有機無機合成・顔料処理技術、2 分散加工技術、3 樹脂合成技術)を深化させた技術開発に取り組んでおります。

 新3か年中期経営計画「明日への変革 2027」においても、これらコア技術は重要な基盤として、市場規模・収益性・成長性を評価し、新規発展分野として①IT・エレクトロニクス 機能性材料、②ライフサイエンス・パーソナルケアの二つを、継続発展分野において環境配慮型製品へのより一層のシフトをテーマとする③モビリティ、④環境配慮型パッケージングを開発の中心に据え、人財と設備と資金とを積極的に投入することを行い、技術主導による競争優位の確保を目的とした「技術オリエンテッド」体制の構築を進めております。製品の差別化、品質向上により社会貢献度を高め、同時に収益性の確保を図ることとしております。

2024年3月末時点における状況は、以下のとおりと認識しております。

①IT・エレクトロニクス 機能性材料

 二次電池用部材、導電性部材、熱伝導性材料、機能性ポリマー、高付加価値顔料・分散体などにおいて、オープンイノベーション・産学連携を強化し、新技術導入を着実に進め、基礎技術力アップを図ると同時に、応用開発においてもお客様にご採用いただいたアイテムも多数獲得できました。パイロット生産設備等の導入も着実に進めており、今後、ビジネスフィールドの拡大を目指すと同時に、売上高への早期寄与を図ります。

②ライフサイエンス・パーソナルケア

 化粧品材料においては、生分解性微粒子は量産化の検討に目途を付け、高性能化やコストダウン製法の構築を進めております。今後は、ご採用いただいたアイテムもあることから、更なる技術優位性の確保と量産プロセスの最適化を進め、拡販を進めます。

 キトサンは動物由来以外の原料による開発に着手し一定の進捗を得て、天然物由来の生分解性樹脂とともに、サンプルワークを開始し市場での性能評価を開始しております。

③モビリティ

 ウレタン・アクリル・シリコーンポリマー、軽量・高強度樹脂コンパウンドなどにおいて、水性化、バイオマス化などの環境配慮強化、リサイクル素材を利用した高強度コンパウンドの生産プロセスに目途をつけることができました。特に、ウレタン・アクリル・シリコーンポリマーにおいては、環境配慮を強化した製品設計が完了したアイテムの量産体制を構築し、事業拡大に貢献することとなりました。今後も積極的に設備投資を行い、収益の向上に努めます。

④環境配慮型パッケージング

 ガスバリア性を付与したインキ、パッケージ及びラベルのリサイクルが可能なインキ、バイオマス由来のインキなどを上市し、サンプルワークを開始いたしました。その後、バイオマスインキ、水性インキといった環境配慮型製品の採用が進み、グラビアインキのサステナビリティ製品の占める割合は60%となりました。今後も環境配慮型製品の提供は継続し、新たに機能性コーティング剤をラインナップに加え、より一層社会貢献度を高めることといたします。

 イ、事業基盤の強化のための海外事業の拡大

 当社グループの収益、成長の源泉は、国内・海外双方に存在し、GDP高伸長国での事業展開もバランスよく事業育成をしていく必要があるとの認識の基に事業を展開してまいりましたが、中国を中心に景気停滞の影響を受け生産数量の低調が続きました。新3か年中期経営計画「明日への変革 2027」においても、「地産地消」の推進と海外拠点の拡充及び新規ビジネスの創出を軸に、積極的な業務の展開に注力いたします。

2024年3月末時点における状況は、以下のとおりと認識しております。

(ア) カラー&ファンクショナル  プロダクト

 情報電子分野、高機能着色剤、機能性製品の開発テーマに注力いたしましたが、情報電子分野のIJ分散液・顔料は欧州向けの輸出が減少、また、高機能着色剤のフッ素樹脂用着色剤は、中国等の景気低迷等により低調に推移いたしました。今後は、情報電子分野で欧州を中心に新規顧客の開拓を行うと同時に、高機能カラーにおいてはインド、アジアにおけるフッ素樹脂用着色剤市場を拡大させることを目指します。また、樹脂コンパウンドの拡販を企図いたしましたが、EV化/電装部品は堅調な推移を辿ったものの、食品包装材用途は需要低迷により大幅に減少いたしました。今後は、生産能力の増強を含めた新規案件の検討を開始いたします。

(イ) ポリマー&コーティング  マテリアル

 北米、中国を中心に水性化を中心としたサステナビリティ貢献製品の展開を図った結果、コロナ禍の影響もあり一時的に停滞は見られたものの、水性表面処理剤の販売を拡大させることができました。今後、北米企業向け、又は国内車両メーカーの海外拠点向けとして、国内生産していた水性表面処理剤を米国拠点で生産することを計画しています。

(ウ) グラフィック&プリンティング  マテリアル

 インドネシアにおいては、グラビアインキの拡販と適切な価格修正により、販売計画を達成しております。今後は、旺盛な現地の需要に対応するために、増能力投資を計画しています。

 ウ、サステナブル社会の実現に向けたESG重視の経営推進

 前中期経営計画では、ESG経営を重視し、当社を取り巻くサプライチェーン全体の重要な課題として原材料調達段階から当社製品を使用した製品が廃棄されるまでを含めたライフサイクル全体において、「(ア) サステナビリティ貢献製品開発・拡販」、「(イ) 気候変動への取り組み」、「(ウ) 資源循環促進」、「(エ)生物多様性への取り組み」、「(オ) 社会貢献の一層の促進」、「(カ) コーポレート・ガバナンスへの一層の取り組み」を進めてきました。

 これらの課題に対して当初計画していた様々な取り組みはほぼ予定通り実行できたと考えております。

 同時に、情勢の変化、社会の要求の変化に合わせ、前中期経営計画の途中で課題の追加、見直しも行ってきました。

 新3か年中期経営計画「明日への変革 2027」においても、ESG経営の重視を継続し、前中期経営計画の中で認識した課題に向け 、当社内の改革に注力する必要があると考えています。特に前中期経営計画の2年目に追加した「(キ) 人的資本投資・人財育成」の重要性が日々高まっていると認識しており、新3か年中期経営計画「明日への変革 2027」では、人的資本投資・人財育成の重要課題として、モノづくりメーカーとしての従業員のエンゲージメント向上を目指した「HR戦略」を重点施策のひとつに掲げ、さらなる価値創出に努めてまいります。

(ア) サステナビリティ貢献製品開発・拡販

 当社グループでは、環境負荷低減に貢献できる環境配慮型製品に加え、人々の暮らしを豊かにする製品を含めたサステナビリティ貢献製品の拡販により、サステナブル社会の実現を推進しております。

 前中期経営計画では、サステナビリティ貢献製品の売上高を20%向上させることを目標に掲げて取り組んでまいりました。一部の市場においてコロナ禍と半導体不足からの事業回復が想定外に鈍化したことで数量では目標を僅かに達成できませんでしたが、為替変動などの影響により売上高は23%増となりました。

 新3か年中期経営計画「明日への変革 2027」では、前項「ア、技術主導による競争優位性の確保」で述べたように、製品開発を担う技術部門に経営資源を効率的に投入するとともに、人財の潜在能力を最大限に発揮させるHR戦略を、技術部門を始め大日精化グループ全社に積極的に活用してまいります。

(イ) 気候変動への取り組み

 前中期経営計画においては、省エネ対策として、太陽光発電設備の設置、ボイラーの運用改善、生産機械の高効率化、照明器具のLED化を実施すると同時に、買電を再生可能エネルギー由来の電力に切り換えることを進めました。合わせて、インターナルカーボンプライシングに関する社内整備を進めました。その結果、国内のCO2排出量(Scope1&2)は、2024年3月期に2021年3月期比で78%削減となり、前中期経営計画における目標を達成できました。(Scope2はGHGプロトコル・マーケット基準にて算定)

 新3か年中期経営計画「明日への変革 2027」では、気候変動に関する政府間パネル(以下、「IPCC」といいます)第5次と第6次評価報告書及び環境省によるIPCC評価報告書の解説を基に行ったリスク分析に沿って、地球の平均気温の上昇を1.5℃未満に抑えるための1.5℃シナリオ及び2050年カーボンニュートラルに向けた移行計画の策定に取り組んでまいります。

 新3か年中期経営計画「明日への変革 2027」における目標は、1.5℃シナリオ実現に向けた国際的な目標をふまえて、当社グループのCO2排出量(Scope1&2)を、2027年3月期に2020年3月期比31%削減に設定します。

 この目標の達成に向けて、国内で培ってきた省エネ対策を海外拠点にも展開することと現地のエネルギー事情に合わせた再生可能エネルギーの導入など、グローバルな脱炭素化を促進させてまいります。

 また当社製品を通じて世の中のCO2排出量(Scope3)も削減できるようにTCFDの枠組みに沿って当社グループの気候変動に関するリスクと収益機会を管理し、企業価値向上に貢献してまいります。詳細は「2.サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動への取り組み  TCFD提言に沿った情報開示」を参照ください。

(ウ) 資源循環促進(サーキュラーエコノミー)

 化石由来資源の枯渇防止と廃棄の際の環境負荷低減といった環境リスクの低減と収益機会の創出を目指し、当社グループでは、原材料のバイオマス化及び廃プラスチックの排出量抑制・リサイクル促進を進めてまいりました。

 前中期経営計画では、掲げていた目標を達成する事ができましたが、更なる改善の余地が確認できたことから、新3か年中期経営計画「明日への変革 2027」においても、引き続き原材料のバイオマス化及び廃プラスチックの排出量抑制・リサイクル促進を目指し、生産工程から生じるロスを削減するための工程管理の強化と廃プラスチックの分別強化をグローバルに展開してまいります。

 新3か年中期経営計画「明日への変革 2027」における目標は、前中期経営計画に引き続き当社グループの廃プラスチックのリサイクルにおき、廃プラスチックのリサイクル率を2027年3月期に前中期経営計画の平均値比3ポイント向上に設定します。

(エ) 生物多様性への取り組み

 化学物質を扱う当社グループは、事業活動のみならず製品のライフサイクル全般において生態系に与える様々な影響をリスクと機会の両面から把握し、生態系への負荷を最小限に抑える義務があると認識しています。前中期経営計画の3年目にはこの考え方に加え、当社技術を活かして「生物多様性の保全と持続可能な利用」に貢献する価値の創出に努める事が重要であると認識し、それまでの「環境負荷低減」というマテリアリティを「生物多様性の保全」に改訂いたしました。

 この課題解決に向けて、有機溶剤など化学物質の使用時に生じる大気汚染や水質汚染等の環境負荷軽減に向けた自らの管理活動と当社グループの製品使用段階で生じる環境負荷軽減に貢献する製品開発の両輪でTNFDの枠組みに沿って推進してまいります。

 また、当社グループが現在加盟しているCLOMAをはじめとするイニシアティブへの参加や事業所の近隣地域コミュニティーとの協働作業にも積極的に参加し、生物多様性の保全に努めていまいります。詳細は「2.サステナビリティに関する考え方及び取組 (4)生物多様性の保全に関する取り組み」を参照ください。

(オ) 社会貢献の一層の促進

 お客様とのかかわりにおいては、お客様の信頼と期待に応えられるように適切な化学物質管理(新管理システムの導入、リスクアセスメントなど)、品質管理(ISO9001による全社的なQMS活動実施、内部監査実施)、責任ある原材料調達(CSR調達基準によるサプライヤー調査)、サステナブルな物流業務の展開(輸送ロットアップ、在庫拠点集約など)に取り組んでまいりました。

 またお客様から積極的に選ばれるサプライヤーになるために、お客様からいただくサプライヤー調査には誠実に回答すると同時に自らの取り組みを反省する機会と捉え、当社グループの改善につなげています。

 従業員とのかかわりにおいては、ワークライフバランスの充実、女性、外国人、中途採用者の一層の活躍などの点から、人事制度の充実を図っております。

 またサステナブルな成長を実現させるためには従業員の心身の健康維持・増進と多様な人財が働きやすい職場環境・企業風土づくりが重要であるという考えから、2023年に健康経営宣言を行いました。健康経営を積極的に推進し、従業員がポテンシャルを最大限発揮することで事業活動を通じて社会に貢献してまいります。

 地域社会とのかかわりにおいては、生産拠点の近隣に対する安全・安心を最優先に防災活動に加え、生物多様性の保全の一環として近隣の生態系に一層の配慮を行い、環境負荷の低減と自然環境の保全に努めてまいります。これらの諸施策は着実に、継続的に実施することにより効果を得られるものであるため、今後も注力して対応してまいります。

(カ) コーポレート・ガバナンスへの一層の取り組み

 単に法令遵守、ルール遵守に留まるだけでは実質的なガバナンスの向上につながらないとの認識から、コンプライアンスの徹底のために経営層からのメッセージの発信・従業員からのフィードバックを継続的に実施しております。経営層からのトップダウンと実行部門からのボトムアップを活性化させた双方向コミュニケーションを充実させ、経営戦略を社員一人一人が「自分ゴト」として捉えて行動できるように社内環境を整備しています。また業務の有効性と効率を更に向上させるために、内部統制とコーポレート・ガバナンスの連携強化を図っております。

(キ) 人的資本投資・人財育成

 当社グループでは、新たな価値の創出には、新たな発想が必要であり、それには“人の力”が不可欠と考えています。“人の力”を引き出し、“人を育成する”ことで、人は価値を生み出す企業の財産であるとの認識から、当社グループでは「人材」ではなく「人財」と表現しております。

 前中期経営計画の3年目には、「人財育成方針」とその人財育成を実現するための「社内環境整備方針」を策定し、具体的な施策の検討を進めてまいりました。

 新3か年中期経営計画「明日への変革 2027」では、最優先に取り組む施策として、モノづくりメーカーの従業員としての“働き甲斐”、“誇り”、“仲間への貢献意欲”といったエンゲージメント向上を目指した「人事制度改革」を重点戦略のひとつに掲げ、さらなる価値創出に努めてまいります。

 エ、HR戦略・DX推進

 ア~ウの戦略を下支えするものとして、HR戦略とDX推進に注力してまいります。

(ア) HR戦略

 中長期的な企業価値の向上のためには、イノベーションが湧き上がる活力に満ちた企業風土を醸成させていくことが不可欠であると認識しております。「会社の目標達成=個々の従業員の理想の実現」となる状態を目指すことで、モノ作り企業の従業員としてのエンゲージメント向上を目指したHR戦略を推し進めていくことといたします。

 具体的には、経営方針や戦略を各従業員が理解・共感したうえで日々遂行する業務の目標に落とし込む事が必要と認識しており、その対応として経営層と従業員との対話を深めお互いの期待感を共有し、具体化させていく機会を増やしてまいります。

 また、従業員がお互いに仲間と組織のために自主的に貢献しようという意欲を醸成し、その意欲に基づき従業員が自ら高い目標を設定し、目標の達成に向けて挑戦し続けることができるよう指導し、かつ併走する管理職を養成するプログラムも含めた社内・社外の研修を充実させてまいります。業績評価の仕組みにおいては、従業員の階層ごとに評価項目や基準を明確化することで、納得感の得られる評価、成長につながる評価、心理的安全性の高い評価などの考え方を取り入れ、魅力ある会社になることで、エンゲージメントの向上と人財の育成を図ることができ、イノベーションの創出が達成できるものと期待しております。

(イ) DX推進

 業務のデジタル化による効率化、データ蓄積・共有の基盤構築を進め、生成AIによる業務効率化や当社グループ独自データ活用による戦略策定など、データ駆動型ビジネスへの移行を進め、効率的で確実性の高い戦略、独創性のある製品開発を強力に推進します。具体的には、①オフィスワークにおいては、ITツールの活用により情報探索・情報共有の効率を上げ、意思決定スピードを引き上げる、②マーケティングにおいては、担当する部門に関わりなく市場ニーズをデータベースとして蓄積し、市場ニーズと当社技術を結び付け新規案件を開拓する、③技術開発においては、使用する原材料や開発情報を横断的にデータベースとして蓄積し、これらを組み合わせ、MIにより開発期間を短縮する、④生産部門においては、生産現場の負荷を軽減しながらデータの蓄積・見える化を進め、早期異常発見率を高めることにより生産効率を上げる、などを実施していきます。このために、デジタルリテラシー向上のための研修や、具体的なプロジェクトなどを活用したOJTなども効率的に行うことなどにより、一層のデジタル人財の基盤強化を図ることといたします。

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