大和証券グループ本社 【東証プライム:8601】「証券業」 へ投稿
企業概要
本項における将来に関する事項は、別段の記載がない限り、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)ガバナンス
1-1.監督体制
気候変動を含むサステナビリティ課題への対応については、取締役会が監督しています。取締役会は、下記「1-2.執行体制」に記載のサステナビリティ推進委員会で議論又は執行役会等で審議した気候関連の課題と対応について、取締役会規則に則り必要に応じて報告を受けるとともに、同規則において決議事項として定められた、経営の中核となる事項や取締役会が重要と認めた事項について決議しています。これまでに、例えば経営ビジョンである「2030Vision」、「環境・社会関連ポリシーフレームワーク」や「大和証券グループ カーボンニュートラル宣言」について決議した他、リスクアペタイト・ステートメントのトップリスクに、気候変動を追加する決定を行うとともに、「人権方針」についても決議しました。そのほか、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に沿った情報開示(気候変動シナリオを含む)、外部機関のESG評価向上に向けた非財務情報開示等や人的資本開示に関する取組みについての報告を受けた議論、また、決算や「中期経営計画のレビュー」の決議に際したサステナビリティKPIの進捗状況等の確認等を行っています。取締役会には、サステナビリティに深い知見を有する社内外取締役が在籍しており、サステナビリティ課題への取組みに対し実効性の高い監督を行うことができる体制となっています。
1-2.執行体制
気候変動を含むサステナビリティに関連した業務やグループ方針について、代表執行役社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会にて定期的に議論を行っています。同委員会には、サステナビリティ推進を統括するサステナビリティ担当執行役、複数の社内取締役(うち非業務執行取締役1名)を含む役員、さらにサステナビリティの主要テーマに専門的知見を有する社外委員3名が参加しています。同委員会ではこれまでに、例えば「環境・社会関連ポリシーフレームワーク」の策定・改定や「大和証券グループ カーボンニュートラル宣言」の策定等について検討・助言を行っています。
気候変動を含むリスク管理に係る方針や施策については、執行役会の分科会であり、リスク管理の責任者である最高リスク管理責任者(CRO:Chief Risk Officer)の執行役が出席するグループリスクマネジメント会議において議論しています。同会議では、TCFDの気候関連シナリオに基づく定量分析結果などについて毎年報告しています。
また、2021年に策定した「2030Vision」において、ダイバーシティ&インクルージョンをマテリアリティの一つとして位置づけ、多様な個性を認め合い、誰もが活躍できる社会の実現を目指し取組んでいます。2022年度よりダイバーシティ&インクルージョン推進委員会を設置し、代表執行役社長が委員長となり、四半期に一度、全国の部室店から社員をアドバイザーとして選任し、議論を行っています。
サステナビリティ推進委員会での議論内容については、適宜、執行役会に報告され審議・決定を行います。また、グループリスクマネジメント会議で議論された気候関連シナリオに基づく定量分析結果は、TCFDの提言に沿った情報開示案の一部として、サステナビリティ推進委員会での議論を経て、執行役会に報告されています。
1-3.当社グループ横断的な体制
当社グループ横断的にサステナビリティを推進する体制として、大和証券各本部及び主要なグループ会社においてサステナビリティ責任者を設置の上、横断的なワーキンググループを通じてサステナビリティに資するビジネスの推進やサステナビリティKPIの進捗管理を行っています。当該ワーキンググループで議論された内容については、適宜、サステナビリティ推進委員会に報告する体制となっています。
1-4.役員報酬制度
当社グループは、気候変動を含むサステナビリティ関連の課題への役員の取組に関するインセンティブを強化するため、サステナビリティKPIを業績連動報酬の評価体系に組込んでいます。特に気候関連のKPIとしては、SDGs関連ビジネスへの投資残高やSDGs債リーグテーブルが含まれています。
1-5.リスクアペタイト・フレームワーク
当社グループでは、経営レベルでのリスクガバナンスの強化を目的に、リスクアペタイト・フレームワークを活用しています。ビジネス戦略達成のために進んで受け入れるべきリスクの種類と総量をリスクアペタイトとして定め、流動性、自己資本等の観点からリスクアペタイト指標を選定し、受け入れるリスクの水準を設定し、管理・モニタリングしています。当社グループでは、このような枠組みをリスクアペタイト・ステートメントとして文書化し、グループ内へのリスクアペタイトの浸透と経営管理態勢・リスク管理態勢の水準向上を図り、リスク文化の醸成に努めています。
1-6.3つの防衛線
当社グループは、実効的なリスクガバナンス態勢を構築するため、「3つの防衛線」に係るガイドラインを定め、リスク管理の枠組みを整備しています。「第1の防衛線」であるフロント部門では、業務上の各種リスクを認識し、自律的リスク管理を推進します。全社的なリスク管理は、「第2の防衛線」としてリスク管理部門・コンプライアンス部門などが行い、内部監査部門は「第3の防衛線」として「第1・2の防衛線」が有効に機能しているか検証・評価等を行います。
(2)戦略
(気候変動)
2-1-1.気候関連のリスクと機会についての認識
当社グループでは、気候変動シナリオに基づく定性分析を行い、事業、財政状態及び経営成績に負の影響(悪影響)を与える可能性があるリスクの例、及び正の影響を与える可能性がある機会の例につき整理し、サステナビリティ推進委員会での議論を経て、執行役会及び取締役会での報告及び審議を行っています。
なお、かかる分析に用いた想定シナリオ等については「2-1-4.気候関連のリスクを踏まえた戦略のレジリエンス評価」をご参照下さい。
<気候関連のリスク>
気候関連のリスクは、脱炭素社会への移行に伴うリスク(移行リスク)と物理的な被害に起因するリスク(物理的リスク)に大別されます。前者にはカーボンプライシングやエネルギー政策などの法律や規制の導入・変更(政策・法規制)、急速な技術革新による社会・産業の変化(技術)、企業の事業環境の変化や製品及び資産等の価格変動(市場)、気候変動対策に関する企業・組織に対する評判の低下(評判)などがあります。また、後者には異常高温等による健康被害(慢性)や豪雨・巨大台風などの災害(急性)などがあります。
当社グループの主な移行リスクの例として、気候変動対策としてのカーボンプライシングの強化等に伴う経済・企業業績の悪化による多様な収益機会の減少(政策・法規制)、移行期に有意な影響を受ける業種における引受業務の減少や産業構造の変化への対応の遅れによる自社保有資産の価値低下(市場)、気候変動対策の取組み不足や環境負荷の高い事業に係る投資・引受に伴う当社グループの評判悪化と広範なビジネス機会の減少(評判)などが挙げられます。
当社グループの主な物理的リスクの例として、異常高温等による健康被害を受けた従業員に係る就労・事業遂行の制約(慢性)、豪雨・巨大台風の増加による太陽光/風力発電設備の発電効率悪化、及び各事業拠点等の被災(急性)などが挙げられます。
<気候関連の機会>
政府の「GX実現に向けた基本方針」では、脱炭素社会の実現に向けて、今後10年間で官民のブレンデッド・ファイナンス※1を含む150兆円超のグリーントランスフォーメーション(GX※2)投資の実現が掲げられています。当社グループにとっては、金融機関としてGX投資に関するプロダクト設計、ストラクチャリング及び運営支援を行うところに事業機会があると考えています。当社グループでは、かかる観点から、気候変動シナリオに基づく定性分析を行い、当社グループの事業、経営に正の影響を与える可能性がある機会の例を、以下のとおり事業部門ごとに挙げています。
※1 公的資金と民間資金を組み合わせた金融手法
※2 温室効果ガス(GHG)排出削減と産業競争力の向上の実現に向けた、経済社会システム全体の変革
① お客様のサステナビリティへの関心の高まりによる、SDGs/ESG関連の新たな金融商品の提供機会増加
(リテール部門)
② グリーンプロジェクト及び脱炭素社会への移行に要する資金調達などの引受増加(ホールセール部門)
③ 再生可能エネルギーなど脱炭素分野のM&Aの増加(ホールセール部門)
④ 気候変動へのインパクトを考慮した投資信託や気候変動対応に積極的な企業を組入れた投資信託への資金流入(アセット・マネジメント部門)
⑤ 環境性能の高い不動産・実物資産を裏付け資産とする投資法人・私募ファンドの組成・運用
(アセット・マネジメント部門)
⑥ 脱炭素社会への移行に貢献する新産業・企業への投資機会の拡大(投資部門)
⑦ 太陽光発電所など再生可能エネルギーへの投資と外部資本の導入を通じた投資機会の拡大(投資部門)
⑧ 脱炭素社会への移行を支援するソリューションビジネス機会の拡大(シンクタンク)
⑨ ネットゼロに向けた取組みを通じたレピュテーション向上による事業機会の拡大(グループ全体)
2-1-2.気候変動に関連して推進する戦略的な取組み
各事業部門で特定した気候関連のリスク(特に移行リスク)と機会への対応策として、下記の取組みを推進していきます。なお、物理的リスクへの対応策としては、事業継続計画(BCP)を策定し、異常気象、風水害などによる社会インフラの停止により本社機能等が停止することがあっても、重要業務を継続できる体制を構築しています。
① 脱炭素社会実現に資する商品・サービスの開発・提供(リテール部門、アセット・マネジメント部門)
当社グループは、脱炭素社会の実現に資する商品・サービスの開発・提供をさらに強化していきます。また、かかる戦略の一環として、脱炭素社会の実現に向けたソリューションを提供する企業に投資するファンドを含め、社会課題解決に関連したファンド及びETFの拡充に注力していきます。
② サステナブルファイナンスの推進・強化(ホールセール部門)
当社グループは今後もサステナブルファイナンスの推進・強化に取り組んでいきます。
大和証券では2020年10月にサステナブルファイナンスの専門チーム(現 サステナビリティ・ソリューション推進部)を設置し、デット・エクイティ等のプロダクトの区分を超え、投資家や発行体のニーズに沿ったサステナビリティ関連のソリューションを提供しています。
この他、大和証券のエクイティ調査部ESGリサーチ課においては、機関投資家向けにESGに関する調査・分析を行っており、今後も幅広い情報発信に注力していきます。
③ サステナビリティ分野のM&Aアドバイザリー強化(ホールセール部門)
当社グループではサステナビリティ分野のM&Aアドバイザリーを一層強化していきます。2019年10月にオランダの再エネ事業アドバイザリーであるGreen Giraffe Advisory B.V.に50%出資しており、2021年2月にはタイの 9Basil Co., Ltd.等との合弁会社DC Advisory (Thailand) Co., Ltd.を設立するなど、グローバルM&Aのネットワークを強化しています。
④ サステナビリティを意識したソーシング・投資推進(投資部門)
当社グループでは、再エネ分野等を中心としたサステナビリティ分野への投資を一層推進していきます。2018年7月に大和エナジー・インフラ株式会社を設立し、日本のみならずグローバルに再エネ分野等での投資を拡大しています。2019年12月には、再エネ事業を開発・運用するドイツのAquila Capital Holding GmbHとの戦略的提携を行い(2020年に持分法適用関連会社へ移行)、欧州においても太陽光発電所等への投資を加速しています。
⑤ サステナビリティ関連のソリューション提供(シンクタンク)
大和総研によるリサーチ・コンサルティング業務において、サステナビリティ関連のソリューション提供をさらに強化していきます。具体的には、気候変動による経済・社会への影響に関する情報発信や政策提言、TCFD対応をはじめ気候関連リスクに対する経営戦略の立案やプロジェクト支援などのコンサルティングを強化し、お客様の企業価値の向上に繋げていきます。
⑥ カーボンニュートラルの実現(グループ全体)
当社グループにおけるレピュテーショナルリスクを踏まえ、GHG排出量ネットゼロの実現を推進します。詳細は、「2-1-3.カーボンニュートラル実現に向けた移行計画」をご参照下さい。
⑦ ステークホルダーとのエンゲージメント強化(グループ全体)
当社グループでは、お客様の脱炭素への移行を金融面で支援するため、発行体や投資家をはじめとするステークホルダーの皆様とのエンゲージメント(建設的な対話)を強化しています。例えば、「環境・社会関連ポリシーフレームワーク」を基に、環境や社会に対して多大な負の影響を与える可能性がある事業に関するリスクを認識した上で、投融資先等とのエンゲージメント等を通じた適切な対応に取り組んでまいります。
2-1-3.カーボンニュートラル実現に向けた移行計画
当社グループは「大和証券グループ カーボンニュートラル宣言」と同時に、その実現に向けたロードマップを公表し、カーボンニュートラル実現に向けた取組みを進めています。
<2030年までの自社のGHG排出量(Scope1・2)ネットゼロ>
Scope1(事業者自らによる直接排出)・2(他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出)のGHG排出量のネットゼロについては、重点方針「自社の環境負荷低減」に沿って推進します。具体的な取組みとしては、省エネ活動の継続及び再エネ電力の導入等を進めていきます。前者については、各施設における省エネ技術/システムの導入やエネルギー利用の効率化などを行っていきます。また、後者については、当社グループ拠点(国内・海外)における再エネ化に注力するとともに、カーボンオフセットの活用等についても検討を進めていきます。
<2050年までの投融資ポートフォリオのGHG排出量等(Scope3)ネットゼロ>
脱炭素社会の実現に向け、当社グループの排出量だけでなくサプライチェーン全体での排出量の管理・削減が求められており、特に金融機関にとっては、投融資ポートフォリオのGHG排出量の管理が重要です。当社グループは、重点方針「パリ協定と整合的な目標設定と透明性のある情報開示」に沿って、目標設定や情報開示を推進していきます。
<金融ビジネスを通じた脱炭素社会へのスムーズな移行の支援>
総合証券グループとして、金融ビジネスを通じた、お客さまの脱炭素化に向けた取組みへの支援にも引き続き取り組んでいます。(参考「2-1-2. 気候変動に関連して推進する戦略的な取組み」)。
2-1-4.気候関連のリスクを踏まえた戦略のレジリエンス評価
当社グループは、気候関連のリスクを踏まえた戦略のレジリエンス評価(シナリオ分析)を実施しました。シナリオ分析の流れとして、複数の気候変動シナリオ(多様な気候変動事象とその他の広範な変化について想定したもの)に基づいて、気候変動が事業活動に及ぼす影響を定性的に評価しました。そして、これらの評価に基づき、当社の戦略や対応方針を検討しています。
<想定シナリオ>
二酸化炭素(CO2)の累積排出量と世界の平均気温上昇との間に正の相関があるとの科学的関係から、CO2排出削減の経路が将来の気候変動の大きな鍵を握ると考えられます。この削減の進捗速度と手法の優劣に加えて、災害等の自然現象、気候事象に固有の社会的変化、その他の広範な経済事象など、考慮すべき要素は多岐に及び、将来の姿は一概に決まるものではありません。今回のシナリオ分析では、多様な経路が想定されているNGFSのシナリオ※を参考にして検討を行いました。
※ 各国の中央銀行や金融監督当局等が参加するNGFS(気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク)が策定した金融システムの影響評価シナリオ
<分析結果(事業活動に及ぼす影響の定性的分析)>
経済及び産業の停滞・収縮、金融市場の変化(株価下落、クレジットリスク増大等)、豪雨・水害等の被害、並びに異常高温による健康被害などが、相対的に懸念される要素として挙げられました。シナリオに当てはめると、経済停滞・金融市場の変化などはCO2排出削減に伴い経済・社会が混乱するケース、豪雨・水害被害及び異常高温などはCO2排出削減が遅れるケースにおいて、相対的に顕在化すると見込まれます。
一方で、エネルギー転換等が事業に及ぼす影響については、化石資源の削減に伴う既存事業への負の影響と、再エネ等の新エネルギーの増加に伴う新たな事業機会という正の影響が混在しており、全体では中立に近い要因と位置付けられます。なお、CO2排出削減などの気候対策への取り組みは企業の評判(レピュテーション)を左右する可能性があり、当社グループのビジネス全般に間接的に影響を及ぼすと見込まれます。
<今後の対応>
今回のシナリオ分析は、現時点で得られる情報やデータを基に仮定を設定し、分析対象を限定して検討したものです。気候関連リスクの考慮対象は幅広く、リスクの発生時期と規模は多様なパターンが想定されます。当社グループは、今回のシナリオ分析により得られた解釈と結果を保守的に解釈しつつ、今後はより多くの情報と関連データを入手して分析手法の改良を図ります。また、シナリオ分析を通じたリスクの抽出をより精緻化し、当社グループの適切な開示に反映させることに努めていきます。
(人的資本)
2-2-1.人的資本経営に対する考え方
当社グループは、金融・資本市場を通じて社会及び経済の発展に資することをミッションとして、企業理念の一つに「人材の重視」を掲げています。この企業理念に基づき、2030年の「ありたい姿」として策定した「2030Vision」、その実現に向けた足元の計画である中期経営計画において、人材戦略を経営戦略の一環と位置づけ、多様な個性を認め合い、誰もが活躍できる社会の実現を目指しています。
中期経営計画における人材戦略では、「社員の成長とキャリア実現の支援」「未来を創るプロフェッショナルの育成」「エンゲージメントと生産性の向上」「健康経営のさらなる進化」を基本方針とし、エンゲージメントの高い社員が、当社グループに共感し貢献したいと自ら考え行動することで、企業の持続的な成長を生み出すことによる価値創造を目指しています。
2-2-2.人的資本経営の入り口としての採用
より優秀な人材を採用すべく、グループ各社の特性に応じた採用活動を実施しています。大和証券では、新卒採用において応募者が作成した2,000文字の「自分史」を読み込み、本人の価値観・行動に影響を与えた経験などを共有・把握した上で、現場の部室店長など複数の目で採用対象者を選出しています。また、多様な知識・経験をもつ人材の採用を企業の持続的な成長につなげるべく、2022年度からキャリア採用※1を本格化させ、グループ全体で2022年度に200名採用という目標を掲げて取り組んだ結果、同年度において154名を採用しています(2021年度比1.9倍、新卒を含む年間採用人数658名のうち27.7%)。また、採用後に当社グループに定着し活躍できる環境を整備するため、オンボーディング施策として1週間にわたる入社後プログラム、定期的なパルスサーベイ※2と上席者面談、メンター制度、経営トップを含む懇親会などを実施しています。
※1 正社員としての就業経験があり、当社グループが事業を行っている業界への知見や特定の職種での勤務経験のある方を募集する採用形態
※2 入社後に職場の働きやすさや悩みなどをヒアリングするアンケート
2-2-3.人材育成方針
「社員の成長とキャリア実現の支援」
「人材」に投資をすることにより、その価値を高め、「人財」へと磨き上げること、そして、企業の成長につなげていくこと、これが当社グループの目指している姿です。当社グループは、ハイブリッド型総合証券グループとして「貯蓄からSDGsへ」を実現する証券ビジネスを軸に、さまざまな新規ビジネスを手掛けています。そのため、必要とされる「人財」の定義も大きく拡がっており、人材育成においては、全社員がキャリアオーナーシップを持ち、求められるものが何なのかを考え必要なスキルを習得できるよう、カスタマイズされた教育研修プログラムや、キャリア実現を後押しする制度を整備しています。また、自律的なキャリア選択の機会として、年に2回、自身の希望するキャリアや職場環境に対する想いを記す「自己申告書制度」や当社グループ内の様々な業務に自ら手を挙げて異動を実現する「公募制度」を設けています。加えて、常に自身のキャリアビジョン実現のため積極的に業務やスキル向上に取り組めるよう、グループ各社や本部部署の業務内容や求める人物像等を知ることのできるサイトの設置や、説明会などを開催しており、2022年度はグループ内公募に237名の応募がありました(2021年度比2.1倍)。
「未来を創るプロフェッショナルの育成」
中期経営計画の達成に向けては、高度な専門人材の獲得・育成や、社員の専門知識の習得、デジタルスキルの向上が重要と考え、KPIとしてデジタルIT人材やCFP・証券アナリスト資格取得者数を掲げています。中でもデジタルスキルは誰しもが身に着けるべきものと捉え、2022年度には全社員を対象とした「Daiwa Digital College」を新設し、社員のデジタルスキルの向上に努めています。また、金融・数理・デジタル等の高い専門性を活かしたキャリア形成をサポートするため、2021年度より総合職の中にジョブ型の要素を取り入れた「エキスパート・コース」を新設し、さらなる活躍を支援しています。
2-2-4.社内環境整備方針
「エンゲージメントと生産性の向上」
当社グループでは、社員の働きがいを追求するため各種人事制度の整備や働き方改革を継続しており、結果として、当社グループの全従業員を対象とする年2回の「自己申告書制度」にて調査している従業員満足度は、2023年1月の調査において94.8%となっています。また、2021年度には、従業員の満足度向上をより生産性や業績の上昇につなげるべく、企業業績と相関関係にあるエンゲージメントを包括的に計測することをコンセプトに、匿名の「エンゲージメントサーベイ」を導入しています。当該サーベイにより、グループ各社がそれぞれの強みや課題を把握し、改善を行うとともに、社員一人ひとりの成長と生産性の向上に向けた活動を継続しています。
「生産性の向上」においては、人への直接的な投資のみならず、人が使うシステムの整備も含め「人的資本投資」と考えています。基本的なシステムインフラの整備を行うことで従業員の可処分時間を創出し、「デジタルIT人材」の積極的な育成や、デジタルツールを駆使した、蓄積したデータの分析・研究・活用を行うことで、効率的なビジネスの仕組みづくりに取り組むと同時に、社員一人ひとりがより一層イノベーティブな業務に取り組めるよう環境を整備しています。今後も、エンゲージメントサーベイにおける「持続可能なエンゲージメント」、「デジタル化への取組み」や「業務運営体制」の評価をKPIに、さらなる改善を図ります。
「健康経営のさらなる進化」
当社グループでは、労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格であるISO45001や、厚生労働省「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」を参考に、適正な労働条件や職場環境の整備をはじめ、社員が心身ともに健康で働き続けられるよう、労働安全衛生の確立に積極的に取り組んでいます。また、社員のウェルビーイング向上により生産性を高め、組織として高いパフォーマンスを発揮し続けることを目指し、CHO(最高健康責任者)に人事担当役員を選任している他、毎年、グループ全役職員の健康状態を分析した「健康白書」を作成し、CHO主催の「健康経営推進会議」を四半期ごとにグループ横断で開催し、健康経営のための取組みの評価・改善を行っています。さらに、人事部・総合健康開発センター(医務室)・健康保険組合の3者が協働して健康施策に関する企画・発信を行う他、日常的に意見交換を実施することで実効性を高めており、健康経営によって解決を目指す経営課題への取り組みとして、2022年度はメンタル不全の未然防止のためのマインドフルネス研修の他、睡眠に関する施策、歯科の健康施策を導入し、社員のパフォーマンス向上に向けた取り組みを強化しました。近年では、全国に勤務する社員がオンラインで医務室を利用できるオンライン診療を導入し、婦人科を含む様々な科目の診察や薬の処方に加え、こころの健康に関する相談も行っています。これらの結果をモニタリングするため、プレゼンティーイズム損失割合※1やアブセンティーイズム平均値※2に関する目標値を設定し、定期的に進捗状況の評価を行っております。
※1 プレゼンティーイズムは、何らかの疾患や症状を抱えながら出勤し、業務遂行能力や生産性が低下している状態。プレゼンティーイズム損失割合は、病気やケガがないときに発揮できる仕事の出来を100%として、過去4週間の自身の仕事の出来をパーセンテージで評価するアンケートを実施し、全従業員の平均値と100%との乖離を算出したもの。数値が小さいほど生産性が高い
※2 アブセンティーイズムは、病欠、病気休業の状態。アブセンティーイズム平均値は、過去1年間に自分自身の病気を理由として何日欠勤したかを問うアンケートを実施し、全従業員の平均値を算出したもの。平均日数が少ないほど生産性が高い
健康経営推進体制
2-2-5.人権
グローバル化により世界経済が拡大する中、世界では、格差や貧困の拡大、気候変動等の環境問題の深刻化、感染症の拡大、紛争の勃発等の難題が数多く発生しています。人権侵害をめぐる問題はこれらと密接に関連しており、当社グループでは、企業活動が人権に及ぼす負の影響の拡大を防ぎ、企業活動による人権侵害に関する企業の責任を果たすため、2022年に「人権方針」を制定しました。「人権方針」は、2011年に国連にて承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」や、2017年に日本政府が策定した「ビジネスと人権に関する国家アクションプラン」に準拠しており、具体的な取り組みについては、人事担当役員を委員長とする「人権啓発推進委員会」にて検討を行い推進しています。
2-2-6.ダイバーシティ&インクルージョン
当社グループでは、特に注力すべき重点分野の一つとして「ダイバーシティ&インクルージョン」を掲げており、社員一人ひとりが強み・個性を活かして最大限にパフォーマンスを発揮できるよう、ジェンダー・年齢・障がい・採用ルートなど、様々な観点からダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。
浸透度等をモニタリングし状況に応じて改善を目指すべく、マネージャーに対する多面評価に「多様な人材が活躍できる環境整備をしているか」等のダイバーシティ推進に関する項目を導入した他、エンゲージメントサーベイの結果における「ダイバーシティと個の尊重」というカテゴリーの数値をKPIとして確認しています。また、大和証券では、全国の部室店にダイバーシティ&インクルージョン企画担当者を任命し、意見集約や提言活動を実施することにより、トップダウンとボトムアップの双方向による企業風土の変革に取り組んでいます。
2-2-7.女性活躍推進、ジェンダーギャップ解消に向けた取組み
当社グループの社員に占める女性の割合が40.7%(2022年度末/提出会社及びすべての国内連結子会社)となっており、ダイバーシティ推進における最重要課題は女性活躍推進であると考えています。各社の事業特性や人員構成は異なりますが、グループ一体での推進を図るため、2014年度より四半期ごとに各社の人事担当役員が集う「女性活躍ミーティング」を実施し、各社の状況に応じた目標に関し、進捗状況や好事例などを共有することで連携を深めています。
2-2-8.ファイナンシャル ・ウェルネス
社員の金銭状態(家計)が悪化すると、ストレスや心理的な負担が増加し、生産性やモチベーションの低下につながるだけでなく、社員による不祥事等も発生しやすくなり、当社グループの信頼性にも悪影響を与える可能性があります。当社グループでは、社員に対し適切な金銭管理を促すことで個人の経済的な健康度の維持・向上にも努めており、奨学金支払いの負担軽減に向けた「奨学金返済サポート貸付」や、「持株会」「つみたてNISA」に奨励金を付与する等、社員の経済的自立を支援しています。また、財形貯蓄制度、ストックオプション制度、住宅取得のための融資制度を設けている他、退職後の資産形成に向けた確定拠出型年金(401K)制度等を導入することで、社員の幸福度・満足度の向上を図り、生産性を引き上げることを目指しています。
(3)リスク管理
3-1.サステナビリティに関するリスク管理
当社グループの経営ビジョン「2030Vision」のコアコンセプトである「貯蓄からSDGsへ」を実現するためには、事業特性やリスク・プロファイルを踏まえてサステナビリティ関連のリスクを認識し、かつ適切な評価のもとに管理していくことが重要であると考えております。
サステナビリティ関連の課題の一つである気候変動関連のリスクについては、当社グループのリスク管理枠組みを文書化したリスクアペタイト・ステートメントにおいて認識すべきリスクとして取りあげています。気候変動リスクは、当社グループが認識すべき他の各リスク(市場リスク、信用リスク、流動性リスク等)を発生又は増幅させる要因であるため、既存のリスク管理の枠組みの中で気候変動リスクの影響を考慮できるように体制を継続的に整備していきます。
人的資本関連のリスクについては、サステナビリティ推進委員会やダイバーシティ&インクルージョン推進委員会、健康経営推進会議等の会議体において、広く協議を行っているほか、人権に関するリスクについては、人権啓発推進委員会での議論や内部通報制度の運用等を通じて、管理を行っております。
3-2.トップリスク
リスク事象のうち、当社グループの事業の性質に鑑みて特に注意すべきものをトップリスクとして選定し管理しています。トップリスクの選定にあたって、経営陣が広範なリスクを認識・議論できるように、社内外より収集したリスク事象をもとに、関連部署が整理・抽出したリスク事象をトップリスクの候補として「見える化」します。その上で当社グループの取締役・執行役が、当社グループの業績に与える影響度と当該リスク事象の発生可能性からフォワードルッキングに評価し、当該候補からトップリスクを抽出し選定します。
特に当社グループでは、気候変動をトップリスクの一つとして位置付けており、ストレステストを活用したシナリオ分析を行なった上で、その結果を経営陣に報告し、開示しています。
(4)指標及び目標
(気候変動)
<自社のGHG排出量(Scope1・2)>
脱炭素社会の実現に向け、GHG排出量の削減が求められています。当社グループは「大和証券グループ カーボンニュートラル宣言」において2030年までの自社(連結ベース)のGHG排出量(Scope1・2)ネットゼロを目指しています。これらの目標達成に向け、GHG排出量を毎年モニタリングしています。
今後のカーボンニュートラルに向けた移行計画については、「2-1-3.カーボンニュートラル実現に向けた移行計画」をご参照下さい。
指標 | 目標 | 実績 | |
2021年度 | |||
自社のGHG排出量 | Scope1 | ネットゼロ (2030年まで) | 954 |
Scope2 | 18,790 |
(単位:t-CO2)
実績値の集計対象及び算定方法
[国内]法令上、エネルギー使用量・CO2排出量の報告義務のある大和証券・大和総研の2社。なお、当社グループが事務所として賃借するグラントウキョウノースタワー及び当社グループが保有する大和八重洲ビルからのGHG排出量のデータについては、上記2社以外のグループ会社の分も含む。
[海外]ロンドン・ニューヨーク・香港・台北・シンガポール・ソウル・ワシントンD.C.・ムンバイ・マニラの各拠点。
[算定方法]エネルギーの使用の合理化等に関する法律及び地球温暖化対策の推進に関する法律に定める算定方法に従い、電力・都市ガス・重油・軽油・灯油・蒸気・冷水の使用により生じるCO2を対象として算定。小数点以下は四捨五入。
(人的資本)
<人的資本経営>
ダイバーシティに関する指標 | ||||
| 2021年度末 | 2022年度末 | 目標 | |
女性取締役比率 ※1 | グループ本社 | 28.6% | 28.6% | 2030年までに30%以上 |
女性管理職比率 | 大和証券 | 18.3% | 19.9% | 2020年代に30%以上 |
連結 ※2 | 15.1% | 16.9% | - | |
キャリア採用比率 ※3 | 連結 ※2 | 20.0% | 27.8% | - |
※1 有価証券報告書提出日現在において、女性取締役比率は35.7%
※2 連結は提出会社及びすべての国内連結子会社を指す
※3 キャリア採用比率は年度内の総採用者数に対するキャリア採用者の比率
<人材育成方針>
資格関連KPI | |||||
| 2021年度末 | 2022年度末 | 目標 (2030年度末) | ||
CFP・証券アナリスト 資格取得者 | CFP | 連結 ※1 | 1,321名 | 1,469名 | - |
証券アナリスト | 1,509名 | 1,550名 | - | ||
合計 | 2,830名 | 3,019名 | 3,000名以上 | ||
デジタルIT人材人数 ※2 | 連結 ※1 | 34名 | 92名 | 200名以上 |
※1 連結は提出会社及びすべての国内連結子会社を指す
※2 デジタルIT人材:当社グループ内における社内資格「デジタルITエキスパート」認定者
教育投資にかかわる費用 ※1 | ||
| 2021年度 | 2022年度 |
教育投資にかかわる費用(連結 ※2) | 18.7億円 | 21.8億円 |
従業員一人当たり※3の教育投資にかかわる費用 | 0.15百万円 | 0.17百万円 |
※1 教育投資にかかわる費用とは、従業員の研修の運営に必要な講師等の研修費や施設運営費を指す
※2 連結は提出会社及びすべての国内連結子会社を指す
※3 事業年度末時点での国内連結従業員数をもとに算出
<社内環境整備方針>
従業員満足度 ※1 | ||||
| 2021年度下期 | 2022年度上期 | 2022年度下期 | 目標 |
大和証券 | 98.0% | 98.0% | 98.0% | 80%以上 |
連結 ※2 | 95.4% | 96.6% | 94.8% | 80%以上 |
※1 年2回、当社グループの全社員が提出する「自己申告書」において、勤務先としての大和証券グループに対する満足度を4段階評価で回答させ、上位2項目を満足として捉えて集計
※2 連結は提出会社及びすべての国内連結子会社を指す
「エンゲージメントサーベイ」スコア ※1 | ||||
|
| 2021年度下期 | 2022年度上期 | 2022年度下期 |
持続可能なエンゲージメント ※2 | 大和証券 | 81% | 82% | 81% |
連結 ※3 | - | 79% | 79% | |
デジタル化への取組み | 大和証券 | 65% | 65% | 68% |
連結 ※3 | - | 64% | 67% | |
業務運営体制 | 大和証券 | 46% | 49% | 50% |
連結 ※3 | - | 46% | 47% |
※1 数値及び分析資料はサーベイパートナーであるタワーズワトソン社より提供。数値は、全従業員のうち各カテゴリーの設問に対して肯定的な回答をした従業員の割合を設問ごとに集計の上、当該カテゴリーの全設問における当該割合の平均値を算出したもの
※2 持続可能なエンゲージメントとは、生産的な職場環境、心身の健康などによって維持される、目標達成に向けた高い貢献意欲や組織に対する強い帰属意識を指す。タワーズワトソン社は、同スコアが高い企業は当該企業が属する業界の平均的な成長率を上回る業績成長を見せる傾向にあるとしており、当社グループでは、「持続可能なエンゲージメント」とその構成要素を体系的に把握しながら、分析結果を全社的な施策や各組織における改善活動に活用している。
※3 連結は提出会社及びすべての国内連結子会社を指す
<健康経営推進体制>
労働安全衛生・健康経営に関する指標 | ||||
|
| 2021年度 | 2022年度 | 目標 (2030年まで) |
プレゼンティーイズム損失割合 ※1 | 連結 ※3 | 15.2% | 12.6% | 10.0%未満 |
アブセンティーイズム平均値 ※2 | 連結 ※3 | 3.4日 | 3.1日 | 3.0日以下 |
※1 病気やケガがないときに発揮できる仕事の出来を100%として、過去4週間の自身の仕事の出来をパーセンテージで評価するアンケートを実施し、全従業員の平均値と100%との乖離を算出したもの。数値が小さいほど生産性が高い
※2 過去1年間に自分自身の病気を理由として何日欠勤したかを問うアンケートを実施し、全従業員の平均値を算出したもの。平均日数が少ないほど生産性が高い
※3 連結は提出会社及びすべての国内連結子会社を指す
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