企業兼大株主大和ハウス工業東証プライム:1925】「建設業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。

<CEOメッセージ>

 


 

代表取締役社長/CEO 芳井 敬一

 


創業100周年の夢の実現へ

折り返し地点から描く10兆円の風景

大和ハウスグループは1955年の創業以来、「世の中の役に立つからやる」という創業者の想いとともに歩んできました。その結果、創業者が“夢”として掲げた「創業100周年に売上高10兆円」の折り返し地点である売上高5兆円を2023年度に超えることができました。歴代の経営陣をはじめ従業員が一丸となって、さまざまな事業のアイデアをデザインし、実行し、幅広い事業ポートフォリオを構築しながら、目標へと向かってきた、まさに大和ハウスらしさを体現してきた成果だと思います。

“将来の夢”(パーパス)の「生きる歓びを分かち合える世界の実現」に向けて、現在当社グループは戸建住宅事業、賃貸住宅事業、マンション事業、商業施設事業、事業施設事業、環境エネルギー事業の6つのコアセグメントで事業を展開しています。過去を振り返ると、売上高2兆円、3兆円、4兆円は中期経営計画にて計画した通りの道のりではありましたが、5兆円については、予期せぬ新型コロナウイルス感染症の影響等もあり、想定より1年遅れての達成となりました。しかし、この期間があったことは、次のステージに向けて事業ポートフォリオを見つめ直す機会になりました。売上高10兆円の達成に向けた道のりは、現在の事業を成長させるだけでは難しいと考えており、新しい事業の創出、そして何よりも事業を生み出す人財の育成が必要だと考えています。

そこで新たなビジネスモデルや市場の開拓を見据えて、コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)ファンドを設立し、最大300億円規模のスタートアップ投資を行うことを決めました。また「社会課題の解決が、人財の成長の原動力になる」という人財育成の観点も踏まえ、社内起業制度を設立し、同じく最大300億円を投資します。この第7次中期経営計画(以下、7次中計)で種まきをし、8次中計以降で次の成長の柱となる事業を育てていきます。

一方、まちの“再耕”実現に向けた「リブネスタウンプロジェクト」も進めています。SDGsの目標にある「つくる責任、つかう責任」は、建設会社として達成すべき目標の1つであると考えており、我々が50年以上前に開発した住宅団地の高齢化や空き家問題など地域が抱える課題に寄り添い、「つくった責任」を果たしていきます。現在は、地域住民の交流や地域の活気を取り戻すための取り組みとして、コミュニティスペースの開設や、イベント開催など、人のつながりを促す環境を整えています。多くの課題はありますが、各団地では多世代での交流や、産官学との繋がりが生まれ、「再耕」への道筋が少しずつ見えてきたように思います。

当社グループは社会のニーズに応じて事業領域を拡大してきましたが、どの事業においても「住宅の心」を継承しています。ものづくりでは、そこに住む人、施設を利用する人がより幸せを感じられるように、そして、その後も価値を提供し続けるにはどのようにしたら良いか、一人ひとりのお客さまに長く寄り添っていくことを考えながら事業を進めています。

2024年の初めは、能登半島地震や羽田空港における航空機衝突事故などがあり、自然の脅威、そして命の大切さについて再び深く考えさせられました。能登半島地震に対しては、当社グループとしても1月2日から初動対策本部を立ち上げ、現場とお客さまの安全確認や、復興支援等に尽力してきました。我々は自然災害から逃れることはできません。しかし、あらゆる危機・リスクに備え、日頃から準備をしておくことが大切であると再認識しています。

 

第7次中期経営計画の2年目を終えて

評価と今後の取り組み

海外事業の成長戦略

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海外事業は、私が担当していた当時から、次の成長の柱としてどのように育てていくか、考え続けてきた事業の1つです。4代目社長を務めた上村圭一氏が、海外事業部長として、携帯電話もない1980年頃、時には苦しみながらも知恵を絞って、米国、南米、東南アジア等世界各国で事業を進めてくれました。この財産を受け継ぎ、今は各地域で最適な事業を展開していますが、最終的には、世界に向けて、住宅事業、賃貸住宅事業、商業施設事業等、幅広い事業領域で成長を目指す、いわゆる「大和ハウスモデル」そのものを輸出するのが私の夢です。

そのような海外事業の中でも、特に米国は重点エリアと位置付けています。7次中計の初年度は想定していなかった米国の住宅金利の上昇や、資材価格の高騰などがあり、受注スピードが一時的に鈍化した時期もありました。しかし現場での工期短縮や最適な販売手法の選択など様々な努力により、米国戸建住宅事業3社(Stanley Martin社、Trumark社、CastleRock社)の引渡戸数は順調に拡大しています。

機関投資家との対話で、M&Aにより取得した米国3社について多くの質問をいただきます。私は、米国での事業拡大においては、いかに良質な住宅を継続的に提供し続けられるかが重要だと考えています。そこで、各エリアに精通し、エリア特有のニーズに応じてノウハウを活かし、より一歩進んだ住環境を提供している3社をグループに迎えました。私たちのノウハウを彼らに共有するだけでなく、彼らから学ぶことも数多くあります。米国住宅市場においては分譲事業(建売住宅)が一般的であり、米国3社の従業員一人当たりの売上高は国内の戸建住宅事業と比較して優れています。お互いの良い点を共有しながら、グループ全体で生産性の高い事業を展開していきたいと考えています。

2023年度は、CastleRock社がアリゾナ州とテネシー州に進出し、Trumark社が中央カリフォルニアに進出。さらに2024年5月にはStanley Martin社がノースカロライナ州シャーロットに本社を置く土地開発・土地造成請負会社のPrestige社の取得を発表するなど、3社はお互いに切磋琢磨しながら事業拡大しています。米国3社トップとは定期的に集まり、今後の米国の住宅事業の拡大に向けて議論しています。2024年4月はコロラドで会議を開催し、7次中計最終年度の目標達成に向けた綿密な議論を交わしました。

私は、各社の成長への意欲を重視していますが、彼らの成長に対する貪欲さ、自主的に戦略を立てて次々と実行していく姿を見ていると、今後ますます期待が高まります。国内と同様に、戸建住宅事業にとどまらず、賃貸住宅や商業施設など幅広い領域での成長を目指す「大和ハウスモデル」の米国での展開に向けて、綿密なコミュニケーションを通じて、当社グループの方針を理解してもらいながら、今後も協業していきます。その面では、Stanley Martin社は、当初は戸建住宅しか手がけないとしていましたが、事業領域の拡大に対して意欲を示しており、賃貸住宅や分譲マンションへの参入も視野に入れつつあります。

 

 

米国戸建住宅事業の「工業化」の推進については、我々が日本で培った工業化の技術を一方的に押し付けるのではなく、実際に米国3社に日本の工場や施工現場も見てもらい、参考にしたいと思ってもらった部分のノウハウ、知見を共有しています。米国は労務費が高く、職人不足もあり、工業化の推進は各社の成長の鍵の1つになると考えています。工業化ノウハウの共有によるオフサイト化を進めることで品質の安定化を図り、グループ購買によるサプライチェーンの効率化に向けた支援などにも取り組みながら、引き続き米国事業の拡大に注力していきます。

国内住宅事業は、

分譲事業強化を推進

 


 

国内戸建住宅事業については、新設住宅着工戸数が低位で推移する中、分譲事業(建売住宅)強化を軸とした経営改革を進めており、お求めやすい価格帯の商品を充実させることで、より多くのお客さまに我々の商品・サービスをお届けできると考えています。その一つとして、価格以上の価値を感じられる注文住宅品質の分譲住宅「Ready Made Housing.」の提案を開始しました。我々が今まで提供してきた住宅メーカーの品質と長期サポートを兼ね備えた提案です。

分譲事業を拡大する狙いは、注文住宅と比較すると設計コストが抑えられるため、高品質な建物を安く提供できることです。分譲事業強化への取り組みは九州エリアから始めていますが、その成果は少しずつ表れています。2024年度は、エリアごとに分譲と請負の最適なバランスを見きわめながら、全国へと拡げていきます。

環境事業に注力し、

社会価値を創出

 


 

 

 

 

 

 

 

 

自然災害を目の当たりにする機会が増え、国としてもカーボンニュートラルを掲げる中で、当社もその実現は我々の責務であると感じています。2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、2030年度までに当社グループが新たに提供する建物は原則ZEH・ZEB率100%、またすべての建物に太陽光発電設備を搭載するという目標を設定しています。事業によって取り組むべき課題は異なるものの、商品開発から営業・設計・施工まで一体となってZEH・ZEB化の取り組みを推進しており、いずれも順調に進捗しています。また業界トップレベルの供給実績を持つという自負のもと、お住まいの方や建物を利用されるお客さまのウェルビーイングへの配慮や災害時の安全・安心を守る役割を担うなど、社会価値の創出にも取り組んでいます。当社グループが蓄積してきた知恵に加え、外壁や屋根材などの各メーカーのノウハウも採用し、志を共にする取引先パートナーとの協業による価値創出も目指していきます。

さらには木造建築を選好されるお客さまが多い中、Future with Woodプロジェクトを立ち上げ、今後、市場の成長が期待される非住宅建築物の木造・木質化にも挑戦していきます。持続可能なサプライチェーンの強化を図りながら、ネイチャーポジティブの観点からも生態系ネットワークの維持・回復に配慮した木造事業を、新たな成長の柱に育てていきたいと考えています。

理念体系を再構築し、経営基盤のさらなる強化を図る

さらなる成長に向けた

人的資本経営

 


 

社是に「事業を通じて人を育てること」「企業の前進は先づ従業員の生活環境の確立に直結すること」とあるように、当社は「人財」を価値創造の源泉として重視してきました。“世の中の役に立つ”事業を通じて社員の成長を促し、成長した社員が生み出す事業が新たな社会を創っていくという過程にこそ、人と企業の成長につながる経営の本質があると思います。

社是は創業者の想いがそのまま込められたもので、当社グループの理念体系の最上位に位置しています。この度、理念体系を再構築し、創業100周年に向けた私たちの新たな羅針盤としての“将来の夢”(パーパス)、そして新たにその実現に向けた5つの大切にしたい価値観を策定しました。この新・理念体系を浸透させ、様々なバックグラウンドを持つ多様な人財の多様な考え方を尊重し、たたえ合える文化を醸成することで、従業員一人ひとりが輝ける企業にしていきたいと考えています。企業の持続的な成長を実現していくためにも、時代に合わせて教育システムを再整備しながら人財の成長を促進させていきます。

2024年問題への対応

 

 

建設業界では、労働力不足や工期長期化等によるコストアップの課題に直面するなか、当社グループでは2021年度より施工現場の完全週休2日制(4週8休)を導入するなど準備を進めてきました。2024年4月より建設業界・物流業界での時間外労働時間に関する規制が適用される、いわゆる2024年問題がいよいよ始まりました。2024年度の業績計画策定時には、当社の現場を支えていただいている協力施工業者への配慮が、より一層必要となってくることを鑑み、そして何より法令を遵守することを最優先とし、十分な工程・予算等を踏まえた計画とさせていただきました。並行して、自社で柔軟に工期等をコントロールできる分譲事業比率の上昇により、生産性向上や適正工期の確保を進め、継続して働き方の改革に取り組んでいきます。労働時間については、残業時間の見える化をはかり、部下が長時間労働にならないよう上司に徹底させており、万が一、長時間労働になってしまいそうな場合に、その理由を従業員から直接私に届ける「社長 2024年問題BOX」も設置しました。投稿内容から長時間労働につながりかねない原因を特定し、改善を図る取り組みも全社的に行っています。

物流業界においても重層的な下請け構造のため業者間の対話が生まれにくく、2024年問題は大きな課題となっています。当社は物流施設開発シェアNo.1企業として、施設建設だけに留まらず、DXの活用を含めた幅広いソリューション提供を進めることで、トラックドライバーの雇用環境改善につながる働き方改革、労働時間の削減に貢献してまいります。

様々な状況に対応できる柔軟な経営により、企業価値向上を目指す


 

 

 

 

 

 

 

 

毎年、年初に「今年の漢字」を一文字決めていますが、2024年は「伸」を選びました。人も業績も、環境の変化等、様々な状況に対応できる柔軟な伸び方をしてほしいという想いを込めていますが、1996年から3年間、社長を務めた石橋伸康氏の名前の一文字でもあります。当時、今ほど環境問題が重視されていなかった時代に「社会的な責任である環境対応に取り組まない企業は生き残れない」と、環境対応の大切さを説き、環境事業に取り組みました。石橋伸康氏の想いも意識しながら、世の中にとって大事なことを見きわめ、さらなる成長を実現していきたいと、改めて私自身、強く思っています。

大和ハウスグループは、従業員一人ひとりが、目標数字達成へのこだわりや推進力、そして一度決めたところに突き進む力を発揮したことで、これまでの成長を実現してきました。創業者の言葉や社是が今なお受け継がれている事実は、人と企業を育ててきた歴史を表しています。しかしながら、単なる売上高10兆円という高い目標値だけを従業員に強いるとなれば、本質を見誤らないとも限りません。業績を伸ばすだけでなく、ガバナンス、従業員の働きがいや働きやすさ、自然環境にも十分に配慮しながら、様々な状況に対応できる柔軟な経営を推進してまいります。

マテリアリティと第7次中期経営計画

大和ハウスグループでは、2030年頃のメガトレンドをふまえ、機会とリスクを認識し、“将来の夢”を実現するために取り組むべきマテリアリティ(最重要課題)を設定しています。マテリアリティをふまえ、第7次中期経営計画では、第8次中期経営計画以降の成長も見据えた企業価値の最大化に向けて、「収益モデルの進化」「経営効率の向上」「経営基盤の強化」の3つの経営方針に基づく8つの重点テーマに取り組み、持続的成長モデルの構築を目指します。

       ※ 大和ハウスグループへの影響(リスクと機会)の詳細については、統合報告書2024(2024年8月発行予定)をご覧ください。

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